「〜〜〜」
守矢神社は元々外の世界にあったからか、電界製品といった文明がそこかしこに残っている。
まさか追い焚き機能付きの風呂に浸かるなんて何日振りだったろうか。
風呂上がりの火照った体に夜風が当たって心地よい。
「鼻歌なんて歌うとは、元気いいなあ。何か良いことでもあったのかい」
「怪異の専門家ですか」
「見方によっては間違っちゃいないだろ」
神社の屋根上から声がかかる。
見上げてみれば、神奈子様が酒瓶片手に月を眺めていた。
神様もアニメやラノベを嗜んだりするのか?
「ちょっとこっちきて付き合えよ」
ふわりと浮かび、神奈子様のそばに行く。
霊夢につけてもらった修行のおかげで、変身せずとも低速だが浮遊くらいは出来るようになったのだ。
「一応言っておきますけど、俺未成年ですよ」
「何言ってんだい。幻想郷じゃあ常識に囚われちゃいけないのさ」
この神結構酔ってるな。
「なあ和徒。おまえさんは早苗のことどう思ってる?」
「ブフォっ」
思わず吹き出してしまった。酔っ払いに絡まれるってこんな感じなのか。
「別にどうもこうもないですよ。ただの幼馴染です」
「諏訪子になんか吹き込まれたんじゃないのか?」
「ええ、言われましたよ。婿に来いって」
「だははははは」
笑上戸かな?
「で、婿になるのか?」
「分かりません。今はまだ再会したばかりですから」
「そうか」
沈黙が訪れる。さっきまでテンションが高かったのに急に落ち着いたな、この神。
「なら、お二方はどう思ってるんですか?俺なんて今日いきなり現れたぽっと出の男ですよ?」
「そうだな。実際のところ、さっき婿に来るって言われたブン殴ってたよ」
「え」
もしかしてさっきパーフェクトコミュニケーションとってた?
神奈子様が物憂げな表情で語り始めた。
「早苗はさ、この時代には不相応な力を持ってしまったんだ。私たちの姿がはっきりと見えるだけならいざ知らず、現人神になってしまうほどの力をね
「そして、それはあまりにも異質だった。外の世界はどんどん科学が発達していって神への信仰がただでさえ薄れてるんだ。神がどうとか信仰がどうとか信じてくれる奴なんていやしない。
「巫女をしている物珍しさに惹かれて早苗に関わってくる人はいたらしいが、本当の神秘に恐れをなして離れていく。
「神ってのは恐れられてこそ神だからね。不思議なことじゃない。ただ、それがあの子の日常だった。
「そんなもの寂しい青春を過ごしていたからこそ、対等に接してくれた幼少期の和徒のことを想っていたのさ。
「まあ、私が何を言いたいのかって言うと、早苗はあんたのことを信じている。これは間違いない。
「だから、私はあんたを信じる早苗を信じることにした。
「今後は気をつけて行動しなよ。もし早苗に害をなす存在と私が判断すれば、天誅だ」
神奈子様と諏訪子様は、早苗にとって親代わりの存在なのかもしれない。
諏訪子様は早苗が幸せになるように、神奈子様は早苗が不幸にならないように見守り続けていたこの守矢神社に俺という異分子が加わることでどうなるのか。吉と出るか凶と出るか。
「諏訪子には気をつけなよ。可愛らしいなんて思って油断してたらあっという間に喰われちまっているから。さあ、子供は寝る時間だ」
「ありがとうございました。気が引き締められました」
「そうかい」
神奈子様は酒瓶を呷り、俺は屋根から降りてあてがわれた部屋へと向かった。
「......あんたの息子は立派に育ったよ」
神奈子の言葉は誰の耳にも届かない。
「「顔面モザイクの男?」」
翌日約束通り、魔理沙と自警団本部へ赴いていた。
慧音さんの予想通り、紛い者となった男が目覚めたらしく、すでに聴取を終えたらしい。
そして、紛い者となった原因として浮かび上がったのモザイクの男だ。
「ああ、喪服のような黒いスーツ姿だが、顔にモザイクがかかっていて何も見えなかったらしい」
「なんで男だと分かったんですか」
「声がどちらかと言うと男性寄りの声だったからそう判断したそうだ。声が低い女性という可能性もあるにはある」
「それで、その男が一連の話と同関係があるんだよ」
「今回、里で甘味処を経営している店主が紛い者になってしまったわけだが、営業中にその男が店主を呼んでカードを渡したそうだ。普通なら結合度が徐々に進行するはずが、店主は渡されてからの記憶がないらしい」
「つまり、その男は結合度をあげる何らかの方法を知っているってことか」
「そのようだな。今回の件を受けて、里の人間たちには見知らぬ人物から不用意に物品を受け取らないよう警戒を呼びかけた。紛い者を分離できなければ得られない情報だった、礼を言う」
そう言って慧音さんが頭を下げた。
「ところで、実は二人に会ってもらいたい人がいるんだ」
「会ってもらいたい人、ですか」
「ああ、和徒は初対面だろう」
「ってことは、あたしとは知り合いか」
「入ってくれ!」
扉が開けられ、一人の女性が入ってくる。
銀色の髪にメイド服。完璧という言葉を擬人化したような佇まい。
ナイフのような鋭い視線に、思わず見惚れてしまう。
「初めまして。紅魔館でメイド長をしております、十六夜咲夜と申します」
「真島和徒です。よろしくお願いします。」
「それで、咲夜が私たちに何の用なんだ?」
「実は昨日の戦い、陰で見ておりました。まずはその際に加勢しなかったことをお詫びいたします」
「あの場所にいたんですか?!」
「はい。しかし、鬼を倒すのには相応の火力が必要。私とは相性が悪かったので観戦させていただきました」
「確かに咲夜の能力でどうにかなる相手じゃなかったもんな」
「そこで、紛い者を分離できる力を持つ和徒様にお願いがございます」
咲夜さんが一度息を整えてこう言った。
「私の主人の妹様、フランドール・スカーレットが紛い者となってしまったため、カードとの分離をお願いしたいのです」
原作キャラの紛い者化
神奈子と和徒が話しているのは、物語シリーズのネタです。