東方三混和   作:語り部梔子

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答え合わせの時間です。


剣と愛憎と吸血鬼 その4

鳴り響く轟音。土煙が舞う。

 

「大丈夫ですか、咲夜さん」

 

「ええ、なんとか」

 

フランが分身したことでフォーメーションが崩され、俺は咲夜さんと共に二人のフランの相手をしていた。

魔理沙とレミリアはそれぞれどこか別の部屋に行ってしまったようだ。

 

「申し訳ないのですが、ナイフが効かない以上私はあまりお役に立てそうにございません」

 

「分かりました。俺がどっちも撃破します」

 

とは言ったものの、今のところ勝ち目は薄い。今のところ俺にある決定打になりうる技はヒロイックスパークしかない。

ならば、どう当てるか。一体なら当てられるだろうが、その隙にもう一体のフランに襲われる危険性がある。

 

「フランもお話しに混ぜてよッ」

 

「禁忌『カゴメカゴメ』」

 

一方は剣で薙ぎ払いを行い、もう一方が遠距離からスペルカードを放つ。

自分同士だからかコンビネーションが抜群だ。

 

「こっちも使っちゃお、QED『495年の波紋』」

 

「そんなんアリかよッ?!」

 

二重に張られた弾幕によって、咲夜さんと分断される。

 

「あは、ようやく離れてくれたね咲夜。私じゃなくてあの女の方が大切だったんでしょ!」

 

先にスペルカードを使った方のフランが咲夜さんに肉薄する。

しかし、フランの目の前にはいつの間にかガラス瓶があり、直撃して中身の液体が振りかぶる。

 

「何?この水」

 

「聖水です。並の吸血鬼では致命傷になりうるほどの」

 

「......あ、あは、あははは、あははははははははッッッッ!!」

 

「和徒様、どうやら聖水も効果がないようです」

 

「違うよ咲夜、効果大アリだよ。何だか体が軽い。元気が出てきたもん。あははははは」

 

致命傷を与えるはずの聖水が逆にバフ効果を与えている。

明らかにおかしい。

 

「ねえ咲夜、今の聖水でフランのこと殺すつもりだったんでしょ。フランはこんなに咲夜のことを大事に大事に大事に大事に思ってるのにさぁッ」

 

「『オリジンブラスト』ッッ」

 

「フンッ」

 

激昂状態のフランから守るために光線を撃ったが燃える剣で防御され、剣をへし折ることしかできなかった。

 

「逃げてください咲夜さん!」

 

「それはできません。私はあなたを守るよう命令されました。なのでここで逃げれば命令違反となります」

 

「フランのいうことは聞いてくれるのにお姉様の言うことは聞くんだね」

 

「お嬢様、どうやら私はここまでのようです」

 

「じゃあね、愛しいメイドさん」

 

「やめろおおおおお」

 

咲夜さんの喉元に、折れた剣が迫る。

 

 

 

「風符『風神一扇』」

 

ステンドグラスが割れ、突風と共に放たれた弾幕によって剣が振られることはなかった。

 

「これはまたスクープみたいですね。悪魔の妹、紛い者化、なんて見出しとかどうでしょう」

 

「文っ!!」

 

「完璧で瀟洒なメイドなんてものはその程度何ですか?これじゃ主人もしょうもなさそうですね」

 

「お嬢様への侮辱、普段なら制裁を加えますが先ほど命を助けてもらった以上、これで貸し借りはなしですよ」

 

「和徒さん、お届け者ですよ!」

 

文から黒く、長い箱が投げ渡される。

 

「何だよこれ」

 

「妖怪の賢者、八雲紫さんから霊夢さんが受け取ったらしいです。あなた宛で」

 

「俺宛?」

 

箱を開けると一本の剣が入っていた。刃、峰、柄に至るまで黒く、闇のように深い黒である。

ふとこの剣の名前が閃く。霊夢がベルトに名前をつけたときもこうだったのかもしれない。

 

「ホロウエッジ」

 

剣を箱から取り出し、構える。

文にフランがニヤつきながら話しかけた。

 

「天狗のあなたも一緒に遊びたいの?」

 

「私は遊びじゃなくて仕事なんですけどね」

 

「そっちのフランとばっかり遊んでないで、こっちのフランのことほっとかないでよーッ」

 

文がスペルカードを使ったフランとは別に、先ほどまで弾幕を張っていたフランが咲夜さんの元へ急降下してくる。

 

「試してみるか」

 

ホロウエッジの刀身に霊夢のカードをかざす。

 

『ホロウ・フライエッジ』

 

刀の周りに陰陽玉が生成される。

おそらく今、フランの意識はどちらも乱入してきた文に向いている。。仕掛けるなら今だ。

 

「俺のことも放っといてんじゃねえええ」

 

急降下したフランにすれ違いざまで一閃。

 

「あがががが」

 

フランが灰になって消滅する。

 

「今のは分身です!4体のうち本物は1体のみです」

 

「了解」

 

「なんなのお前!お姉様と咲夜を私から奪って。絶対許さない」

 

「悪いが言ってることがさっぱりわからん。『ホロウ・ストームエッジ』」

 

文のカードによって、刀身を軸として小型の竜巻が発生する。

 

「死んじゃえええええ」

 

へし折れた剣を片手に接近してくるが、間合いに入る前に俺は剣を振るった。

 

「あは、そんなんじゃ届かなッ?!」

 

「ああ、剣は当然届かない。だが竜巻は直撃したようだな」

 

「ぐはあッッ」

 

竜巻によって壁に叩きつけられたフランを狙い、右手を突き出す。

 

「とどめだ、『ヒロイックスパーク』」

 

極太レーザーによって、またも灰と化した。

 

「これもハズレか」

 

「ヒュー、良い絵が撮れましたよ」

 

「ありがとうございました、和徒様」

 

「ところで、これは一体どういう状況なんですか」

 

文の質問に対し、魔理沙とレミリアの元へ移動しつつ答えた。

 

 

 

 

「なるほど、それはたしかに妙ですね」

 

聖水がダメージを与えるどころかバフとなる。

今にして思えば、銀のナイフも同じように切り傷を治していた可能性がある。

 

「弱みを強みにされたら生き物としてどうしようもないですよ。あー怖い怖い」

 

弱みを強みにする。デメリットをメリットに変換する。

 

「一つ咲夜さんに聞きたいんですけど、フランが外に出るようになった時もああやって憎しみを露わにしてたんですか?」

 

「いえ、あの時はむしろ「一緒に遊びたい」というような無邪気さが強かった気がします。なので、今回のような剥き出しの殺意と憎悪は初めてです」

 

咲夜さんからの返答により、謎が解けたかもしれない。

 

「これは、俺の予想なんですが、フランは今反転の力を持っているんじゃないですかと思います」

 

「「反転の力?」」

 

「最初に会った時、紅魔館の面々を愛しく思うほど壊したくなると言っていました。そして、体も吸血鬼の弱点の要素によって強化されています」

 

「つまり今、フランさんの愛情は憎悪へ、弱みは強みへと反転しているのではないか、ということですね」

 

「俺はこの幻想郷にどんな妖怪がいるのかは知りません。ただ、俺のいた外の世界にもそういう反対のことをする奴をこう呼びます

 

「天邪鬼、と」

 

二人の表情がハッとなり、文がユナイトカードの正体を告げる。

 

「フランさんと結合しているのは、何でもひっくり返す程度の能力の持ち主、天邪鬼の鬼人正邪のユナイトカードで間違いありません」

 




次回、1章クライマックス
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