「日符『ロイヤルフレア』」
「くっ」
「隙ありッ!恋符『マスタースパーク』」
動かない大図書館と白黒の魔法使いの連携によって、フランの姿が灰と化す。
「助かったぜパチュリー」
「この屋敷の問題だから当然よ」
「そうかよ」
「それより、今のフランは分身よ。本体を叩かないと意味がないわ」
「そういやそうだったな、じゃあまたな!」
「私も後から向かうわ」
魔理沙が図書館を発つ。
「程度の能力を持つ者の紛い者化。あの時のようにはならないと良いのだけれど」
魔理沙の後ろ姿を見つつ、パチュリーはつぶやいた。
「お嬢様!ご無事ですか」
長い廊下を移動し、レミリアの元まで辿り着く。
「咲夜か。そっちは無事だったみたいでよかったわ」
「あれ?ここまで辿り着くなんて予想外ー。でもちょっぴり遅かったね」
レミリアは立っているのも不自然なほどボロボロで、一方フランは服が多少乱れているものの無傷であった。
その対照的な姿から嫌な仮説が思い浮かぶ。
「まさか、ダメージの対象も反転できるのか?」
「反転?今のフランは反転させる能力を持っているのか?」
先ほどの推論を知らないレミリアが俺に尋ね、フランが答える。
「せいかーい、この反転の力がバレてるみたいだから教えてあげると、「お姉様がフランに負わせた傷」を反転して「フランがお姉様に負わせた傷」にしたんだよ」
「なるほど、通りで手応えがあったのに無傷で、こっちは知らぬ間に怪我をしていたのね」
「ふふふ、びっくりした?」
「ああ、驚いたし、安心したわ。フラン」
「安心?どうして?」
「その反転の力、おそらく自身の感情にも作用しているのでしょう?」
「は?」
「私に対するこの溢れんばかりの殺意が愛情の裏返しだと分かって安心したのよ」
「私はお姉様が憎くて憎くて...」
「だからその感情が愛情だってことよ」
「え?は?え?」
フランが頭を抱えて俯く。
自身が抱いていた殺意と憎悪。それらをぶつけた対象に、その感情が愛だと諭される。
愛することで、愛される。憎むことで、憎まれる。
今までそう考えてきたフランにとって、憎んだ対象が自身のことを憎まず、受け入れようとしている事実。
彼女の頭の中はパニックになっていた。
「妹の愛情を受け止めるのも、姉の勤めね」
レミリアがそうつぶやいたと同時に、彼女の手元にカードが生成される。
「これは、今作られた私のユナイトカードみたいだわ。和徒、これをあなたに託す」
そう言って、カードが俺に投げ渡される。
「カードを分離できるのはあなただけなのでしょう?任せたわよッ」
レミリアが空中でうずくまるフランの元へ飛ぶ。
「お嬢様ッ、反転の力にどう対抗されるつもりですか?!」
「見てなさい咲夜、これが姉妹愛よ」
レミリアの接近に気づいたフランが燃える剣を振りかぶる。
「来るなーーーッッ」
しかし、動揺しているのか軌道は大振りで遅く、避けるのは容易いだろう。
「え?」
「グハッ...どうしたのフラン?もうあと数センチで刃が私の心臓に触れるわよ?」
レミリアは避けなかった。フランの燃える剣はレミリアの肩から胸の中央付近まで達しており、血が勢いよく吹き出している。
「もうあなたを一人にはさせないわ」
「お、お姉様...」
「大丈夫よ。私がそばにいる。自分自身に怯えなくて良いの。私が全て受け止めるから」
レミリアが俺に目配せをし、フランを抱きしめる。
この時、フランの心にあった憎悪は薄らいでいった。
憎しみを身を挺してまで受け止める姉の姿はドス黒い心の闇に一筋の光を指したのである。
憎悪の代わりに生まれたのは安心感。
さっきまで壊したいほど憎かったものを愛しく、大事に感じる。
心の反転は弱まっていた。
「もう少しの辛抱よ、フラン。ちょっぴり痛いだろうけど我慢しなさい」
合図をもらった俺は、レミリアからもらったユナイトカードをホロウエッジにかざす。
刀身がピンクのオーラを纏う。
「『ホロウ・ディスティニーエッジ』」
突きの動作とともに、オーラが槍状に変化して射出される。
そして、槍はレミリアとフランの腹部を貫き、串刺しにした。
これでフランは物理的にも次の攻撃が避けられなくない。
「これで私とあなたの運命は一つになったわ」
「お姉様、フラン伝えたいことがあるの」
突如、背後から大声で呼びかけられる。
「おーい、この霧雨魔理沙様を忘れちゃいないか?」
「忘れてなんかねえよ!この前話したアレやるぞ」
「おう!」
遅れてやってきた魔理沙が右手を突き出し、俺も同様に右手を突き出す。
「お姉様、フランね、
「紅魔館のみんなが、お姉様が、大大大大大好き」
「「英雄恋符『ツインスパーク』ッッ」」
2本の極太レーザーが螺旋を描き、1本の特大レーザーとなって吸血鬼の姉妹を飲み込んだ。
「おい!大丈夫か二人とも!」
ユナイトカードを回収し、レーザーの跡地に横たわった二人に呼びかける。
「うぅ、咲夜?」
「妹様、起きられましたか」
「ごめんなさい!フラン、みんなにいっぱい酷いことしちゃった。すみませんでした」
「私との仲だろ?フラン。良いってもんよ」
「そのセリフは一番聴かせるべき相手がいるんじゃないかしら?」
またも背後から声をかけられる。
「お、パチュリー。遅かったな」
紫のダボっとした服を纏った女性はパチュリーというらしい。
「あんたが早すぎるのよ」
「お久しぶりですね、パチュリーさん」
「例の一件以来ね、ブン屋」
文が挨拶を交わしてが、何か過去に因縁があったような口ぶりだ。
「皆さん、宜しいでしょうか」
咲夜さんの呼びかけによって視線が一点に集まる。
「お嬢様が目を覚ましません」
「お姉様?!」
「ちょっと見せなさい」
パチュリーが前に出てレミリアの体を診察する。
「これは出血多量ね、あと数分で死ぬわ」
「「「「「えええええええええええ」」」」」
ただでさえボロボロだったのに肩から胸まで切り裂かれて、腹を貫かれた後に特大レーザー直撃してんだから生きてる方がむしろ奇跡