東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

燃える人影の調査依頼を慧音から受けた和徒
文と共に夜の人里を見張っていたところ、妹紅と合流して調査対象を見つけた
正体は紛い者が動かしていた死体であった
青白く燃える死体も出現し、妹紅は首を攻撃されて倒れてしまう
さらに、3人は死体に囲まれてしまった

ところどころ過去の話を加筆修正しています。


焔と狼と行方不明 その2

「英雄『神の風』」「風符『風神一扇』」

 

青白く燃え盛る死体たちに向かってスペルカードを喰らわせる。

囲まれはしたものの、飛び道具は持っていないようなことからこちらの方が有利だと思われる。

 

「文!妹紅の手当てを頼んでもいいか?」

 

「その心配は必要ありません。なぜなら...」

 

「私は不死身だからだ」

 

倒れていたはずの妹紅が起き上がり、口元の血を拭う。

 

「私は老いることも死ぬこともない蓬莱人だ。私がどれだけ傷つこうと心配する必要はないのさ」

 

「幻想郷には不老不死までいるのかよ」

 

そう感嘆していた刹那、3人の間を何かが一瞬にして通り抜けた。

 

 

今、何が通り抜けた?

誰もがそう思ったに違いない。

 

気がつけば、文は脇腹から血を流し、妹紅の右腕は宙を舞い、俺の左脚には切り傷がついていたのだった。

俺は直感で防御したため、軽傷で済んだのは奇跡だろう。

 

何かが通り抜けた先にいたのは、白と紫が入り乱れた頭髪、装備された刀と盾、山伏のような帽子を被った少女の姿。

誰だ?いつからいた?

鉄仮面のような表情は何も語らない。

 

「椛!今まで一体どこに...うぐっ」

 

「喋るな文ッ出血が激しくなるぞ」

 

俺の忠告を聞き入れた文が黙り、代わりに妹紅が説明を行う。

 

「こいつは白狼天狗の犬走椛だ。そして、程度の能力を持ちながら紛い者となり、今現在まで行方不明だった奴さ」

 

以前話に出ていた。程度の能力を持ちながら紛い者になったケースは2件。

片方は封印され、もう片方は行方不明となったと。

こいつがその後者に該当する奴ってことか。

だが、なぜ今になって突然姿を現したんだ?

 

椛の前面に6つの赤い魔法陣が展開される。

 

「こいつに結合しているのはパチュリー・ノーレッジのカードだ!」

 

妹紅の忠告と同時に、魔法陣から火焔放射が放たれる。

即座に避けようとするも、切り傷によって反応が一瞬遅れた。

避けきれない!

 

「どけえッ」

 

いつの間にか右腕が再生していた妹紅が俺を突き飛ばし、全身が炎に包まれる。

 

「炎なら慣れっこなんだよボケ」

 

歯を食いしばり、煉獄に耐える妹紅。

椛の意識は今、妹紅に向いている。

脇腹を負傷して倒れ込んだ文や突き飛ばされたおれになんて微塵も興味がないように。

仕掛けるなら今しかない。

 

「『オリジンブラスト』ッ」

 

俺が使える技の中で溜め動作がなく、そこそこの威力が保証されている技。

腕を十時に組み、右手から発射された光線は奴の右肩に炸裂し、火炎放射が中断される。

 

「よくやった和徒!文を連れて退却するぞ」

 

このまま妹紅と連携すれば椛に勝てる可能性はある。しかし、文は負傷しており、どんどん燃える死体は集まってきている。

確かにここは撤退が正解だ。

 

「わかった」

 

「時効『月のいはかさの呪い』」

 

妹紅が敵を撹乱している隙に文をお姫様だっこし、飛び立つ。

依然として出血は止まらないが死ぬことはないだろう。

 

「流石にお姫様抱っこは恥ずかしいというか」

 

「非常事態に何言ってんだバカ」

 

「いちゃついてないで着いてこい。永遠亭に向かう」

 

朝日が顔を出した。

 

 

 

 


 

 

 

 

永遠亭。以前霊夢から聞いたことがある、迷いの竹林に存在する診療所。

なんでも、そこにはかつて月に移住していた人間がいるらしい。

その人は月の頭脳と呼ばれるほどの天才で医学薬学にも精通しているのだとか。

 

「開けてくれ!怪我人だ」

 

「こんな夜明けになんのようですか...」

 

妹紅の案内に従い、迷いの竹林を進んだ先には噂通り、診療所が存在した。

門を開けて出てきたのは紫髪にウサ耳の少女。

月から降りてきた人ってのはこの人か?いや、ウサ耳は月を連想させるという点では会っているが、人間とはとても言い難い。

 

「永林を呼んでくれ、治療が必要だ」

 

「すでにここにいるわ」

 

門の向こうからさらに女性が出てくる。

月のように白い頭髪に赤と青の奇抜な服装、メリハリのある体のラインと哀愁を感じさせる目元。

幻想郷の知り合いは少女と形容できるような、成長途中の少女を感じさせるが、この人は熟達した色気を纏った女性と感じられた。

 

「ブン屋じゃない、手酷くやられたわね。治療が終わったら呼ぶから待ってなさい。鈴仙、彼女らを案内しておいて」

 

「了解しました」

 

白髪の美人が文を受け取り、俺と妹紅は鈴仙と呼ばれたウサ耳少女に続く。

 

「初めまして、真島和徒さん。私は永遠亭にて師匠である八意永林の弟子をしている、鈴仙・優曇華院・イナバよ」

 

「あれ?以前会ったことないよな?どうして名前を」

 

「私と師匠も紛い者について調査をしていてね。そしたら慧音さんからあなたの話を聞いたの」

 

みんな結構おしゃべりだな。

 

「それにしても、男の人みたいな名前を聞いていたから女性だなんて驚いたわ」

 

「男で合ってるぞ」

 

変身を解除する。

 

「え?男?どういうこと?一体どういう仕組みで...」

 

「俺にもさっぱりわからん」

 

「女の子になって不便なことなどはないの?」

 

「結構あるな。たとえば身長が縮んで目線にギャップがあったり、胸があると動きづらいなと思ったり」

 

「とても興味深いわ。師匠も以前性別を反転させる薬を作ったけど同じ仕組みなのかしら」

 

そんなこんな話していると、座布団が敷かれた部屋についた。

 

「ここで待ってて頂戴。1時間でもすれば師匠が来るわ」

 

「ありがとう」

 

「なあ鈴仙、輝夜のバカは今何してる?」

 

「まだ朝早いから寝てるんじゃ」

 

「起きたら殺すって伝えとけ」

 

「はいはい」

 

妹紅って良い奴っぽかったけど意外と物騒なのか?

評価を改める必要があるのかもしれない。

 

 

 

 

あれから20分くらい経ったと思う。

どうしよう。猛烈にトイレに行きたい。

ただ、初めて来る屋敷で正確にトイレにたどり着けるのだろうか。

案内されるときも、門から奥の方へ通された。

不安だ。しかし、背に腹は変えられない。

 

「雉を撃ちに行ってくる」

 

「おう」

 

 

 

廊下を歩き続けて5分経過。

妹紅に退室を伝えたは良いものの、トイレの方向を聞いておけばよかった。

くそ、何やってんだ俺。

しかし、我慢するのも難しくなってきた。

 

そんな時、救世主が現れた。

目の前からウサ耳を生やした童女が歩いてきたのである。

屋敷を案内してくれた鈴仙もウサ耳が生えていた。

きっと鈴仙の仲間に違いない。

 

「そこの君、悪いんだけどトイレの場所を教えてくれないかな」

 

「わかった、ついてくるウサ」

 

後から聞いた話なのだが、この時道を教えてくれたウサ耳童女はかなりタチの悪い悪戯好きだったようである。

つまり、俺は屋敷の中でも一番離れてるトイレの場所を教えられたそうだ。

 

 

 

 

「一体どこだよここ、さっきも通らなかったか?」

 

案の定迷子になってしまった。守矢神社も元々外の世界にあっただけあって、高性能なトイレだったが、この屋敷のトイレは一線を画すものだった。

いや、トイレの性能なんて現実逃避をしている場合ではない。

どこか目印をつけたら楽だったろうが、ダンジョンじゃあるまいし、勝手に人様の邸宅にそんなことはできない。

 

「あああああッ」ドンッ

 

今し方通り過ぎた部屋から怒声と鈍い音が聞こえた。

何事だろうか。まさか、何者かに侵入されたとか。

道を引き返し、障子を開ける。

 

「大丈夫ですか?!」

 

「あ?あんた誰?」

 

そこには十二単に身を包み、10人中12人が美少女だと評価するに違いない少女がいた。

大和撫子を体現したかのような黒髪黒目。

しかし、彼女はあぐらをかき、その手には外の世界でいう最新型ゲーム機があった。

 

「もしかして外来人?スマブラできる?」

 




てゐもひっそりと登場。
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