燃える死体との戦闘中、和徒、文、妹紅は行方不明だった紛い者、犬走椛に襲われる
なんとか迎撃をするも、文は腹部を切られていたため永遠亭へ行くことに
永林の治療中、和徒はトイレを探すがてゐに騙され帰り道が分からなくなってしまう
怒声と衝撃音を聞いた和徒は音の発生源である部屋を開けると、中にいたのは大和撫子を擬人化したような美少女だった
「その程度の復帰阻止じゃ私は落ちないわ!」
「こなくそっ」
「ふんっ」
ピキイイイン
「今のメテオ当たってんのかよ!」
「永林に目の診察でもしてもらったらどうかしら?タダでやってもらえるよう頼んであげてもイイけど」
「うっせえ、次だ次ッ」
「そんな向きになっちゃって。ぷぷっ、ハンデつけてあげようか?」
「そう言ってられるのも今のうちだ」
「そのセリフ3回目よ」
すっげえ仲良くなってた。
今俺とスマブラで遊んでいるのは蓬莱山輝夜という、永遠亭の姫らしい。らしい、というのはどうやら彼女はかの古典文学のなかでも誰もが知る竹取物語の登場人物、かぐや姫本人なのだという。
誰もが振り向く美貌とかぐや姫という話、鈴仙が姫様と呼んでいたことから、俺は勝手に姫扱いされていると考えている。
しかし、その絶世の美女っぷりとは裏腹に、性格は子供っぽく、逸話通りの人物か疑ってしまうほどだ。最初は美しさに気が滅入ってしまい、会話するのも難しかったが、性格も相まってゲームをするうちだいぶ打ち解けていった。
そして、俺が部屋に入った時聞こえた音は台パンの音だったらしい。無用の心配だった。
そんなこんなで俺と輝夜はスマブラで激闘を繰り広げている。
「何が激闘よ。私が手を抜いてあげてるからでしょ」
「嘘つけ。さっきまた台パンしてたじゃねえか」
戦績は互いに2勝2敗。現在ストックはお互い1:1。パーセントは俺の方が大きいが、まだなんとかなる。
崖ぎわで入り乱れ、攻防が激化する。
不思議と、この勝負でどちらが上か決まる予感を俺も輝夜も感じていた。
カタカタカタ
聞こえるのは、コントローラーの音とお互いの息遣い。
その時、部屋の障子が開け放たれた。
「やっと見つけた!文さんの治療終わったので着いてきてください、和徒さん」
障子を開けたのは鈴仙。
突然の訪問者に、俺と輝夜の意識がゲームから削がれる。
「輝夜ァッ」
ボゴぉ
グキッ
鈴仙だけでなく妹紅まで部屋に入ってきたと思ったら、いきなり輝夜にドロップキック。
ノーガードで顔面に喰らった彼女は鳴っちゃいけない音を首から発し、倒れ込む。
よく見たら首が180°ほど回転している。確実に死んだだろう。
「ちょっと!部屋で死ぬと畳が汚れるからやめてって言ってるでしょ」
「知るかそんなこと」
首が徐々に逆回転していき、元の位置に収まった輝夜が悪態をつく。
シンプルに気持ち悪い。顔が良いことで、ホラー要素全開で笑えなくなっている。
「言ってなかったかしら?私も蓬莱人なのよ。そもそも蓬莱の薬だって私の能力の産物なのよ」
輝夜も不老不死だということか。
「悪いが輝夜、モニターを見てみろ」
「なっ?!」
画面にはスマブラのリザルト画面が映し出されていた。
結果は俺の勝利。妹紅が乱入したタイミングでコンボを仕掛け、バーストさせていたのだ。
「ちょっとあんた人の心とかないの?こんな絶世の美女が死んでた最中に勝つなんて」
「自分で絶世の美女とか言うのは恥ずかしくないのか?」
「だって事実じゃない」
否めない。そこに腹が立つ。
「とりあえず俺の勝ちってことで。じゃあな!」
「きいいいいいいいッッッ」
「勝ち逃げ最高!」
鈴仙に連れられ、妹紅と部屋を出た。
「輝夜のあんなに楽しそうな姿、久しぶりに見た」
「私も久しぶりに見た」
「そうなのか?」
妹紅と鈴仙の輝夜に対する感想に驚く。打ち解けるまで早かったし、一緒にいて楽しいタイプだと思うからそうは思えないけどな。
「姫様は常に退屈なの。何千年と生きて、これからも生き続ける
「だから飢えてるのよ。新鮮さに
「姫様の相手をしてくれたこと、礼を言うわ」
「そりゃどうも」
「最近じゃ殺し合いにも消極的だったもんな」
「妹紅、もしかして俺に嫉妬してんのか?」
「してるわけあるか!あいつは私の宿敵であり、仇だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「まあまあ、そう熱くならないで。着いたわよ」
鈴仙が部屋の戸を開けると、永林さんと患者衣を着てベッドに横たわる文の姿。
「遅かったわね。真島和徒君」
「そういうあなたは八意永林さん」
思わずジョジョ第一部の冒頭みたいなやりとりになってしまった。
「うちの悪戯兎が迷惑かけたわね。まさか屋敷の一番遠いトイレを教えるなんて」
え?俺騙されてたの?通りで道に迷ってしまったわけか。
次あいつに会ったらとっちめてやろう。
「とりあえず、文は今日一日安静にしていれば大丈夫だから安心して良いわよ」
「あやややや、ご迷惑おかけしました」
結構な出血量だったが、文が天狗だからなのか永林さんの腕が良いのからなのか、大事に至らなくて安心した。
「それよりも、先ほどの戦闘について話合いましょう」
自身の負傷の話題について転換を行う姿から、精神的にも回復したと思える。
「妹紅さんも言っていたように、あの時現れたのは私の友人にして部下である犬走椛であり、行方不明だった紛い者で間違いありません」
なるほど、やけに必死だなと思っていたが、結構親しい間柄だったのか。
確かに、白狼「天狗」と妹紅が言っていたし、同じ天狗ならそういうこともあるな。
そういえば、フランの事件の際、パチュリーと文の会話に何か含みがあるように感じたが、あれは椛の結合したカードがパチュリーのカードだったからだったのか。
おそらく、椛の調査の時にパチュリーから色々話を聞いたのだろう。
「今まで消息の一切を絶っていたのに、あのタイミングで登場したのは裏があるでしょう」
脳裏によぎるのは、モザイクの男。せめてあいつの足取りが掴めれば良いのだが。
「そして、燃える人影の出現位置をマッピングしたので見てください」
そう言って文は地図を取り出す。
地図には大まかな幻想郷の建造物や地域が描かれており、人里のある位置に丸印が付けられていた。
この地図俺も欲しいな。どこで手に入るか後で教えてもらおう。
「妹紅さん、あの人影がどの方向に歩いていたか覚えてますか?」
「ああ、たしかこっちの方向に...」
妹紅が丸印から指で動線を引く。
動線の先に、ある場所へ行き着いた。
「おい、この場所って」
「はい。博麗神社です。死体たちは博麗神社へ向かっていたのです」
「でも、なんで博麗神社に」
「これは私の仮説なのですが、死体に関する能力をもつ紛い者に引き寄せられているのではないでしょうか」
「霊夢が紛い者だって言うのか?」
「いえ、かつて博麗神社の間欠泉から地底の悪霊が溢れ出るという異変があったのです。つまり、本体は地底にいて、能力の余波が人里に影響をもたらしたのだと、私は考えます」
幻想郷には地底まであるのか。不老不死でも驚きだったのに地底なんてとんでもない要素まで出てきた。
「その仮説、信憑性は高いと思うわよ」
黙って話を聞いていた永林さんが口を挟む。
「たしか、死体に関する程度の能力の持ち主、火車の妖怪が旧地獄の地霊殿にいたはずだから、彼女からカードを奪ったと考えると筋が通るわ」
「永林が言うならきっと正解だろ」
「妹紅さん...私のこと信頼してないんですか?」
永林さんの賛同に反応した妹紅に、がっかりした文。
こいつどれだけ信頼されてないんだよ。
「それじゃあ、博麗神社に行ってくるよ」
「待ってください。守矢神社からも地底に行けるのでそちらから行くことをおすすめします。そちらの方が地霊殿に近いので」
「了解」
こちらに攻撃してくる死体が現れた以上、次の夜には負傷者がでてもおかしくない。
急がなくては。
「この竹林から抜け出すために案内してやる。ついてこい!」
「ありがとう!」
妹紅に連れられ、永遠亭を発つ。
「だそうよ。鈴仙」
「私も地底へ向かいます」
鈴仙は和徒とは対照的に博麗神社へと向かったのだった。
輝夜をヒロインに加えるか迷う