地霊殿に訪れた和徒と早苗はさとりから、燐は勇儀に、空はモザイクの男に自身のユナイトカードを渡したことを聞く
案内役を買って出たこいしに、勇儀の元へ連れて行ってもらうことに
一方鈴仙は1ヶ月姿を見せていないパルスィの家へヤマメが案内していた
「着いたよ。ここがパルスィの家だ」
ヤマメに案内してもらっておよそ15分、旧地獄の都市部である旧都の外れへと私はやってきた。
コンコンッ
「ごめんくださーい」
家主へ向かって呼びかけるも、返事は返ってこない。
しかし、家の中には誰かいるような気配は感じる。
ガラガラッ
「あれ?鍵が空いている」
まるで「どうぞ入ってください」と言わんばかりに、不用心な玄関。
玄関の先は暗くてよく見えないが、漂ってくる腐敗臭はかろうじて分かる。
「ちょっと待って鈴仙。まさか、入るつもり?なんていうか気味悪いよココ」
「道案内ありがとう。もう帰って良いわ」
「帰って良いって言っても...」
気味が悪いと言いつつも、この場にとどまるヤマメ。
言動が一致しておらず、煮え切らない態度に鈴仙はため息をつく。
「親切心で教えてあげるけれど、怖いもの見たさでそこにいるならやめた方がいいわよ。別に帰ったところで臆病者だとか非難するつもりもないし」
「うっく...後で何があったか教えなさいよね!」
そう言ってヤマメは蜘蛛の子を散らすように駆けて行った。
「さて、それじゃあ入りますかね」
漂う腐敗臭を堪え、廊下を進む鈴仙。
パチッパチッと何かが弾ける音。
「匂いの元はここかしら」
匂いの根源と思われる部屋の扉を開けた時、そこにあったのは
燃える死体の山だった。
「やっぱりヤマメは来なくて正解だったわね、『ピュアドライバー』ッ」
鈴仙はカードを2枚取り出し、1枚から奇妙なベルトが召喚される。
ベルトが装着されるとレバーを引き上げ、鈴仙自身が描かれたもう1枚のカードがセットされた。
「変ッ身ッ」
『ピュア・マッドネス』
レバーを倒したことでカードがベルト内部に取り込まれ、鈴仙の体が赤黒い光に包まれる。
光が収まると現れたのは、髪は紫から金色へ、ウサ耳は黒と赤になった鈴仙の姿だった。
「さあ、お掃除よッ」
先ほどと同様に別のカードをセットする。そのカードには十二単を纏った大和撫子の少女の絵。
「『ネバー・ストライク』」
煌びやかな弾幕が放たれて燃える死体たちは一掃されるも、その中から下敷きになっていた少女が起き上がった。
「パルスィ?」
そこにいたのはパルスィであってパルスィではない。
なぜなら、パルスィに見てくれこそそっくりだが、彼女に黒い羽は生えていないし、胸部に赤い球はないし、右手を多角柱状の物体が覆っているなんてことはありえないのだから。
「なるほど、地獄鳥の紛い者になってたってわけね」
「おう!待ってたぜ。お前ら地上から調査に来た奴だろ」
拍子抜けしてしまった。
こいしが「勇儀ならきっと飲み屋街にいるよ!」と言うので着いてきてみれば、居酒屋のテラス席で豪快に酒を煽る一本角の女性。
座っていても分かる屈強な肉体。おそらく俺の身長を優に越していることだろう。
しかし、驚いたのはその容姿ではない。
驚いたのは、紛い者に全く見えなかったからである。
今まで戦ってきたのは、人里の人間、フラン、椛と、どれも攻撃的な様子だった。
けれども、この勇儀という紛い者は極めて理性的で、特に騒ぎを起こしているといったこともなかったのだ。
おまけに、俺たちのことを待っていたとまで言った。
一体どう言うことだ?
「あんたが勇儀で間違いないか?」
「いかにも、山の四天王にして語られる怪力乱神、あたしが星熊勇儀さ。早苗とこいしは知ってるが、お前さんの名は?」
「真島和徒。二つ名は無いが、紛い者に関する事件を追っている」
「ははーん、てっきり霊夢が来ると思ってたからおどろきだねえ。さては紛い者を元に戻すことができるとか?」
「その通りだ」
勇儀が席から立ち上がり、俺を舐め回すように品定めする。
「霊力も低く、筋肉も平均、外来人みたいな服。だが嘘を言っているようには見えない。よし、信じよう。何から聞きたい?」
「全部だ全部」
「そうかい。なら、そこに座んな。ほら、あんたたちどいたどいた!」
勇儀がさっきまで一緒に飲んでいたであろう妖怪たちを退け、席に座るよう促した。
相席していた妖怪たちも引き締まった肉体を持っていたが、序列関係は勇儀の方が上のようで、店を出て行く。
「ほら、まずは一杯」
そう言ってお猪口を渡される。お猪口の中には透明な液体、蒸せ返るようなアルコール臭。
「俺はまだ未成年だ」
「何言ってんだい。幻想郷じゃ何歳から飲んでも良いのさ。ほら、隣を見てみなよ」
言われるままに隣を見れば、早苗がお猪口を飲み干していた。
「くぅぅうっ」
恍惚とした表情を見せる早苗。こいつ、さては飲み慣れてるな。
早苗は自分と同じように外の世界で生きていたと思っていたので、なんかショック。
すでにこっちの世界に染まっていてしまったようだ。
郷に入っては郷に従えともいうし、仕方ない。
「おおっ、初めてにしては良い飲みっぷりじゃないか!」
くっ、絶対初めて飲む酒の種類じゃねえ。
もっと徐々に慣らして行くもんだろ普通。
「それじゃあ、話すとするか。
「あの日も確か今日みたいにこの辺りを飲み歩いていたんだが、必死な形相のパルスィが呼び止めてきたんだ。
「聞いてみれば、変な男に絡まれて紛い者になってしまったらしい。とは言っても、当時はまだ紛い者なんて話は地底に浸透してなかったものだから「お空の力を感じる」って言ってたんだっけ。
「核融合を操る八咫烏の力は異変の発端となるくらい危険な力だ。実際にあいつの理性はどんどん失われていったよ。
「それで、パルスィはあたしにこう言ったのさ。「私が誰かを傷つけないよう押さえつけてほしい。私は友達が少ないからあなたにしか頼めない」って。
「妬み嫉みを振りまくあいつに友達が少ないのは事実だ。あんな捻くれた奴と仲良くなろうってもの好きいないだろうよ。あたし以外にな。
「あたしは正直者が好きだ。あいつは素直じゃないけれど、剥き出しの感情で接してくれる奴だ。あたしはそんなあいつが友として、妖怪として好きだった。
「だから手を貸した。最初は力づくで押さえつけてたんだが、お空の力で抵抗されるようになってな。
「これ以上は厳しいと思ったあたしは、あたしも紛い者になることにした。
「だって、友達だろ?あたしは友達のためなら死んでやる。そうやって生きてきた。
「ただ、あたしはユナイトカードを持ってなかったから、持ってる奴から貰おうとしたんだ。
「それで、お燐が持ってるって聞いたんで、そのカードで結合した。
「結果は大成功だったね。実際、あたしが直接押さえなくても死体がやってくれるんだしさ。
「でも、段々と制御が効きづらくなってきた。
「だから地上にSOSを送った。かつての異変の時みたいに」
勇儀から語られた真実。友達を思う熱い心。紛い者となることの恐ろしさ。
「今もあたしも結構必死に押さえてんのよ。だから始めようぜ」
そう言って席を立った勇儀は俺の首根っこを掴み、飲み屋街の道のど真ん中へ放り投げる。
「どわっ」
「和徒ッ、大丈夫ですか」
「うわあ、すっごい飛んだねー」
「悪いけど、あたしはここじゃ最強。だから素直にやられて分離させてもらうわけにはいかんのさ。鬼の誇りに賭けてね。だから、あたしを倒してくれないか?」
さとりさんの言ってたとおり、戦いは避けられないのか。
早苗とこいしが見守る中、覚悟を決めてベルトを装着する。
「変身ッ」
本当はもっとバトルシーンを描くつもりだったんです許してください。
でも、鈴仙の変身をかけたので後悔はしてません。
使用したのはピュアドライバー。それは純化するあの方の力による産物。