東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

鈴仙は紛い者となったパルスィと対峙し、ナズーリンのユナイトカードを使って戦局を有利に進めることで撃破した

和徒は萃香のユナイトカードをホロウエッジに用いて勇儀に善戦するも、三歩必殺をくらって追い詰められる
鬼を討つのは鬼の力、フラン、正邪、萃香のカードをベルトにセットし、オーガフォームとなって逆転を狙う


地底と鬼と友情 その4

『OGRE』

 

赤い光から現れたのは、様変わりした和徒の姿。

瞳は真紅に染まり、黒髪にも同色のインナーカラーが入って結われたサイドテール。

両腕と髪に繋がれた、三角錐、球、立方体の分銅。

側頭部と額に生えた2対の角。

悪魔の妹に似た半袖とラップアラウンドスカートにストラップシューズ。

ただし、本家と違い赤と黒が前面に押し出され、矢印の模様が散りばめられている。

 

「なんとかうまくいったみたいで安心したぜ」

 

ぶっつけ本番だったが変身できる組み合わせだったようだ。

 

「いきなり妖力を纏うなんて、どうやったんだい?」

 

「さあな、鬼の力を借りただけさ」

 

「そうかい。だったら鬼らしくコレでいこうか」

 

三歩必殺でぶっ飛ばされてしまった時にホロウエッジはどこかへいってしまった。

だから、互いに拳を握る。

不思議な感覚だ。全身から力がみなぎっている。

 

「ドラァッ」「フンッ」

 

両者の拳が同時に顔面を捉える。

体がよろめくも間髪いれずもう一発。

今度は突き同士が激突。

力と力のぶつかり合いによって、一帯に衝撃波が炸裂した。

 

「語られる怪力乱神たる私と互角のパワーなんて、人間を超えてまさしく鬼さね」

 

「なら、俺も四天王の仲間入りさせてもらおうかな」

 

「ハッ、言うじゃないか」

 

吹っ飛ばされた俺を追いかけてきた早苗とこいしが見物してた群衆に混ざる。

 

「和徒?!その姿は一体...」

 

「鬼の力を取り込んだパワー特化形態だ」

 

「お兄さん人間やめてるー」

 

「おいおい、ギャラリーとつるんでないで喧嘩の続きしようじゃないか」

 

勇儀の呼びかけに視線を戻す。

両者、力は均衡。さすれば、どちらが上か白黒はっきりつける最適な方法は一つ。

 

「ラッシュの速さ比べってのは鬼の中では御法度か?」

 

「いいや、むしろあたしら鬼には大好物さ」

 

そう言うが速いか、拳を振るう。

先ほどとは違い、突きの連続打撃。拳同士がぶつかることもあれば、顔面や胴体に直撃もする。

 

「うおおおおおおおッ」「はあああああああッ」

 

まるで空間がひび割れるてしまうような程の振動。実際に、周辺の建物はグラグラと揺れ悲鳴をあげている。

 

「すげえぞあの嬢ちゃん、姐さんと殴り合って平気だぜ」

 

「負けるな姐さーん」

 

「全財産ベットしたから何が何でも勝ってくれッ」

 

その戦いぶりに観客もヒートアップ。大盛り上がりだ。

旧都で喧嘩が見せ物として人気な訳である。

 

「これ、お兄ちゃんの勝ちだね」

 

「なんで分かるんですか?こいしさん」

 

「だって、さっきからお兄ちゃんが殴られるたびに、力強さが増してるんだもん」

 

「そうなんですか?」

 

そう言って、用心深く和徒を観察する早苗。

 

「言われてみれば、さっきより動きにキレがあるような」

 

「多分、傷つくほど強くなるみたいな力でもあるんじゃなーい?」

 

こいしの推理は確信をついており、正邪のひっくり返す力が作用していたのである。

 

「そろそろ決めようじゃないかッ」

 

「俺もそう思ってたところだぜ」

 

勇儀の提案により拳のラッシュは幕を閉じ、両者最後の一撃に備える。

 

「四天王奥義『三歩必殺』」

 

「くそっ、またそれかよ」

 

「一歩」

 

再び勇儀の妖力が爆発的に増加する。

 

「二歩」

 

「『オリジンカッター』ッ」

 

周囲に三日月上のカッターを展開し、放たれた弾幕を防御する。

 

「三歩」

 

勇儀が拳を握りしめ、カッターを強引に突破して肉薄してきた。

俺も拳に妖力を集中させる。

 

「『オーガブレイク』ッ」

 

勝負は一瞬。互いに腕が交差する。

クロスカウンターの構図となった。

 

全力のパンチというのは、少しの力が加われば軌道は大きく逸れる。

 

「なっ?!」

 

腕輪に繋がれた分銅が、勇儀の腕に触れたことで三歩目の必殺は虚空を目掛けて突き進む。

 

「オラアァッッ」

 

こちらの必殺の拳のみが相手へ届き、爆裂した。

 

「三歩必殺、攻略完了だ」

 

そこには倒れた怪力乱神と一枚のカード。外来人が旧都最強を倒した瞬間である。

 

 

 

 


 

 

 

 

「あたしの負けだ。ありがとう」

 

倒れた勇儀に手を差し出して起こす。

 

「久しぶりに満足いく喧嘩だったよ」

 

「もう二度と勘弁だけどな」

 

 

「勇儀ーーーッ」

 

通りの向こうから橋いてくる少女が一人。

金髪なのは今までにも見たことあるが、エルフ耳は初めて見た。

 

「パルスィ?もう大丈夫なのかい」

 

「ええ、気づいたら旧都の道端で倒れてたのよ」

 

「そうかい。そりゃあ良かった」

 

熱い抱擁を交わす二人。

 

「これにて一件落着ですかね」

 

「そうみた、いだな....」

 

早苗に返答したその時、強烈な頭痛が俺を襲った。

 

『もっと喧嘩しようよ。楽しいもんだよ?』

 

なんだこれ。頭に声が響いてくる。まるで酔っ払いのような無邪気な声。

 

『狂気を乗りこなさない限り、貴方に未来はないよ』

 

さっき聞こえたのとは違う、これはフランの声か?

 

『全部ぶっ壊しちまおうぜッッ』

 

新しい声と共に意識が遠のいていく...

 

 

 

 


 

 

 

 

「和徒?どうかしたんですか?」

 

隣で棒立ちになっていた和徒に声をかける。

先ほどの勇儀さんとの激闘で疲れてしまったのでしょうか。

実際のところ、昨日の夜の人里の調査からずっと動きっぱなしでしたし無理もないですね。

 

「早苗お姉ちゃん、危ない!」

 

「え?」

 

気がつけばこいしさんに突き飛ばされていた。

しかし、こいしさんの姿はそこにはない。

今、何が起こった?

 

「大丈夫かこいしッ」

 

勇儀さんが声を張り上げ、その視線の先を追いかけると、ぶっ飛ばされて背後の壁にめり込んだ悟妖怪の姿。

 

なんというパワーだろうか。一体誰がこんなことを。

 

いや、本当は分かっていた。なのに、気づかないふりをした。してしまった。

認めたくなかった。あり得ない。そんなこと。

 

「あああああああああッッッ」

 

声の主が自分が犯人だと言わんばかりに雄叫びを上げる。

 

私の幼馴染だった。

 

妖気を垂れ流し、瞳は血のように赤く光っている。

誰がどう見ても正気ではない。狂気だ。狂気に染まっていた。

 

「うぐっ」

 

「ダメよ勇儀、もう戦える体じゃないわ」

 

和徒を止めようと勇儀さんが立ち上がるが、足がいうことを聞かず倒れてしまう。

そばで介抱しているパルスィさんだってボロボロだ。

 

今、あの人を止められるのはただ一人。

 

「私が止めなくちゃ」

 

幼馴染。気になる異性。大切な人。

 

だから、私が彼を止める。

 

「開海『モーゼの奇跡』」

 

スペルカードをすぐさま発動させ、牽制する。

願わくば、和徒がこれ以上誰も傷つけることがないように。

 

しかし、その願いも虚しくいくら弾幕をくらっても大きなダメージを負っている様子がない。

和徒の拳が真紅に輝いた。

 

「『オーガブレイク』ッッ」

 

四天王の勇儀を破った必殺技。

さっきは拳をぶつけていたが、今度は振り抜いた拳から光が球状のエネルギーとなって放たれた。

 

「その技、近距離オンリーじゃないんですか。だったら、大奇跡『八坂の神風』」

 

こちらの弾幕とあちらの光球が激突する。

弾幕は拡散しているのに対し、光球は一点集中。

明らかに押し負けている。

 

光球がどんどん私を目掛けて近づいてくる。

防御に回るしかない。

 

光球が爆ぜた。

 

「うっ、なんて威力なの...」

 

咄嗟に結界を何重にも張ったおかげで軽傷で済んだが、直撃したら致命傷だったろう。

 

「嘘でしょ?」

 

爆発の土煙の中からは出てきたのは、腕を十字に組んだ和徒。

 

知っている。この技を。あの技の発射速度には、今からだと結界が間に合わない。

 

「『オリジンブラスト』ッッ」

 

発射された光線が目前へと迫る。

 

「あっ」

 

足にダメージが来ていたのか、体がよろけてしまった。

これは奇跡というべきだろう。

 

光線の軌道は私の顔面を狙っていたために、私がよろけたことでその軌道から外れたのである。

 

しかし、奇跡とは単に良い現象のみを表す言葉ではない。

 

「こいしさんっ」

 

光線の軌道は、壁に打ち付けられて気絶していたこいしをも捉えていた。

 

万物は表裏一体。奇跡が重なってしまった。

 

 




暴走フォームっていいよね。

オリジンフォームの技は他のフォームでも出せます。
オーガフォームは弾幕を全て膂力に割り振っているので、飛び道具はオリジンカッター、オリジンブラスト、オーガブレイク(射撃バージョン)しかないです。
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