オーガフォームに変身し、勇儀相手に殴り合いで勝利を収めた和徒。
しかし、力の代償に狂気に呑まれ、暴走してしまう。
早苗は和徒を止めようと奮闘するが力及ばず、オリジンブラストがこいしに迫る。
「やめてぇえええ」
私の叫び声も虚しく、突き進む光線。
「焔星『フィクストスター』」
しかし、上空から降り注がれた弾幕が光線をかき消した。
おかげでこいしさんは無事である。
「大丈夫ですかー?!こいし様」
「ごめーん、遅れちゃった」
「心配して来てみれば、案の定でしたか」
見上げれば、浮遊する3つの人影。
彼女らの助けがなければ、今頃どうなっていただろう。
「お空さん、お燐さん、さとりさん!」
「説明は後で聞きます。行きますよ、お空、お燐」
「「はーい」」
呼びかけに応え、地獄鳥と火車が弾幕を張る。
和徒も抵抗しているが、流石に二人分の弾幕だと身動きが取りずらいようだ。
「今のうちに、今助けますからねッ」
弾幕の間を縫って、さとりさんが和徒に近づいて頭に触れる。
「はぁッッ」
「アッ...ア......」
さとりさんが何をしたのかは分からないが、和徒が白目を剥いて棒立ちとなった。
今までの暴走が嘘みたいなほど、落ち着いている。
「一体何を?」
「彼の意識は狂気に呑まれた無意識状態にありました。なので、狂気を取り払った純粋な無意識に上書きしたのです。長くは持たないので、今のうちに変身を解除しましょう」
「分かりました」
急いで和徒に駆け寄り、ベルトを取り外す。
すると赤い粒子が解き放たれて男の姿へと戻り、目に意識が宿る。
「...ん?俺は一体何を、今どういう状況だ?!」
「やっと戻ったんですね!」
喜びを噛み締め、身体を強く抱きしめる。
「いてててて、勇儀の三歩必殺の後遺症に効いてるから離してッ」
「ここは目立ちます、詳しいことは地霊殿で話しましょう」
さとりさんがいたのを忘れていた。
急いで和徒から離れるも、耳が熱い。心を読むまでもなくこの恥ずかしさは見通されているだろう。
「本当に申し訳ない」
「いや、全責任はあたしらにある」
これ以上野次馬が集まらないうちに地霊殿へと到着。
まさか、オーガフォームに暴走作用があったとは。
しかもこいしをぶっ飛ばしてしまったらしい。
これは切腹するしかない。
「今回の件は様々な要因が重なって起きた事案です。なので、不問といたしましょう。こいしはどうですか?」
「いいよー、許す」
壁に打ち付けられたにしては案外元気そうな返事をするこいし。
さとりさんの宣告によって、反省会はお開きとなった。
地霊殿のペットの不用心、パルスィは仕方ないにしても、本来あり得ることのなかった勇儀の自主的な紛い者化、俺の暴走、確かに全員に責任があるのかもしれない。
「そういえば、パルスィはどうやって戻ったんだい?」
「実は私もよく覚えてないのよ。でも、誰かと戦ったような気はするのよね」
パルスィをカードから分離したのは一体誰なのか。
俺以外にも紛い者を元に戻すことができるのだろうか。
だとすれば、一体誰が、どうやって?
おそらくそいつが地獄鳥のカードを持っているのだろう。
深く注意しておこう。
「それから、」
「ちょっと待った、さとり。満身創痍の奴が多すぎる。だから、アレをしよう」
「アレですか...」
さとりさんの話を遮り、勇儀が提案をする。
アレ。アレとは一体何だろうか。
どうも嫌な予感がする。できればしないでほしい。
「確かに理にはかなっています。和徒さん、ここは我慢してくださいね」
「俺は何を我慢すればいいんだ?!」
「あのですね、俺も一応思春期の男の子なわけでして...」
「何言ってんだい!昨日の敵は今日の友。裸の付き合いを通して仲良くなるもんなのさ」
俺は拷問を受けようとしていた。
いや、これは本来喜ぶべき事象なのだろう。
しかし、到底そんな気にはなれなかった。
地底はその名の通り、地中に街が広がっている。
なので当然、温泉が名物なのだ。
それは単に、温泉街があるというわけではなくある程度の設備の整った家には温泉が備え付けてあるのである。
地霊殿も例外ではなく、むしろ一般的な温泉より大きな温泉が広がっていた。
地底の温泉は妖力や霊力が水に混じっているらしく、「怪我人はまず温泉に漬けろ」と言われるほど霊験あらたかな効能だという。
勇儀のいうアレ、とは温泉に浸かろうとのことだった。
けれども、地霊殿はあくまで住まい。
男湯、女湯などと別れていないのだ。
当然俺は譲った。いくら美少女と混浴できると言っても、落ち着かない。
さらに、さとりさんに見られている。
彼女を非難するつもりはない。煩悩をもった俺が100%悪いからである。
しかし、だからと言って、俺がチラ見えしてる谷間を見たり、濡れて露わになったボディラインを見たりでもし、いかがわしいことでも考えてしまうのは半ば本能、いわば無意識の行為であるのだが、それが発覚してしまえば女性陣から俺の株は大暴落間違いなしなのだ。
そんな俺の抵抗を嘲笑うように、「一緒に入ってくれないとやっぱり許してあげない」と言ったこいし。
絶対ワザとだ。俺を困らせるために、俺を罠に嵌めるために言っている。
けれども、俺は大きな貸しを作ってしまっていたのだ。
一人先に放り込まれた脱衣所で、腰にタオルを巻いた俺はあれこれ考えて一つの結論にたどり着いた。
逆に堂々とすればいいのである。
いや、むしろ女体なんて見慣れてますけど?むしろこんなにも色々な女性の裸体を拝見できると医学的知識に役立つなー。
こう常に思考すれば、煩悩をかき消せるだろう。
よし、完璧だ。
「うおー、すげえ。露天風呂だ」
外の世界ではそこそこいい値段の温泉宿クラスの露天風呂だ。
湯加減はちょっと熱すぎる気もするが、地底だから仕方あるまい。
「こうも広いと泳ぎたくなっちまうな」
先に身体を洗い流し、浸かる。
確かに、ごく微量だが、霊力と妖力も感じる。
今度疲れた時は地底の温泉に浸かるのがいいかもしれない。
ガラガラっ
「わー、広いですね、この露天風呂」
「地霊殿にはペットが多くいるので、これくらいのサイズがちょうどいいのです」
いかん、女性陣が入っていきた。
えーと、何をすればいいんだっけ。
そう、堂々として、医者っぽく立ち振る舞えばいいんだ。
「よう!待ってたぜ」
そう言って、声をかける。
皆一様に、タオルを巻いて出てきたようだ。
勇儀、体がでかいからタオルに収まってねえじゃん。
北半球見えてんぞ。
「和徒さん?」
いつの間にか近くにいたさとりさんが話しかけてくる。
ヤバい、目が笑ってないんだけど!
シリアス続きだったんで、ここらでコメディパートをひとつまみ。