オーガフォームの制御方法を模索するため、フランに会いに行った和徒。
しかし、時刻が吸血鬼にとって就寝中の昼間ということもあり、1時間待つことに。
その間気温が異様に低くなっった原因を探るため霧の湖を訪れてチルノを探すことになったが、そこに鈴仙が現れた。
ユナイトカードを全て私に渡せ。
今、鈴仙はそう言ったのか?
「どうしたんだよ。藪から棒に」
「私も最初はそんなこと思ってなかったわ。でもね、この前の地底での闘いぶり。あれを見てしまったら放任なんてできないわ」
地底での闘い。それは勇儀との闘いを指すのだろう。
しかし、一体なぜそのことを知っている?
それも自分の目で見たかのような口ぶりだ。
「断る。っていったらどうするんだ?」
「こうするのよ。『ピュアドライバー』ッ」
鈴仙が取り出したカードから一本のベルトが顕現し、装着される。
それは俺の持っているカオスドライバーとは全く違う代物だ。
「変ッ身ッ」
鈴仙自身が描かれたユナイトカードがベルトに差し込まれ、レバーを倒すと赤い光に包まれる。
『ピュア・マッドネス』
金色になった髪と黒く染まったウサ耳。
「その姿、紛い者になったのか?」
「いいえ、これはあなたのベルトと似ているようで異なるシステム。私のベルトはユナイトカードが持つ力を純化し、この身に還元したのよ。
「さあ、早くカードを渡しなさい。私がいる以上、もうあなたが戦う理由なんてありはしないのだから」
なるほど。パルスィが紛い者から戻った件。あれは鈴仙が分離させていたのか。
俺は紛い者を元に戻すために戦ってきた。けれど、鈴仙が紛い者からカードを分離できるなら、その役目は俺じゃなくても良いかもしれない。
「だが断る」
「なら、こうするしかないわね」
「俺は自分で自分が強いと思っている奴に抵抗するのが好きなんだよ!『カオスドライバー』ッ」
本当のところ、断った理由は自分でもよく分からない。
恋心とこれは同じだ。
自分で自分の気持ちはわからないが、本能的に、なぜか嫌だ。
鈴仙が俺の方へ駆け出してくる。
俺もベルトを装着し、レバーを引いてカードをセットしようとするが、
「させませんよ」
「くっ」
鈴仙は手遊びのごとく右手を拳銃のようにし、カードを持っていた手を狙撃してきた。
無防備状態で受けた攻撃により、カードがその場へ散らばってしまう。
その隙を狙って放たれる飛び蹴り。
「はぁっ!」
「変身前に攻撃するのはズルだろッ」
「そんな甘いこと言っているようじゃ、この先死ぬわよ」
「クソッタレ、変身!」
『ORIGIN』
カードを拾う余裕がないため、オリジンフォームで応戦。
至近距離での格闘戦だ。
「ふんっ」
ジャブを繰り出す鈴仙。
だが、ついこの前勇儀と殴り合いをやったばかりだ。
こんなジャブならオリジンフォームでも容易く避けられる。
ひらりと躱してローキックでカウンター。
「甘いんじゃないかしら?」
よく見れば、ジャブを撃ってきた拳は拳銃の形になっていた。
至近距離の射撃。これは避けきれない。
すかさず指先から無数の光弾が発射されて俺の体に直撃する。
「よくもやってくれたじゃねえか。『ホロウエッジ』ッ」
召喚された黒い剣。相手が銃ならこちらは剣で行かせてもらう。
「なんて考えてるんでしょ?『ブレイド・ストライク』」
鈴仙が新たなカードをベルトに差し込んでレバーを倒した。
カードに描かれていたのは白髪で刀を携えた少女。
鈴仙の手にも白色に光る一本の太刀が握られる。
「私、剣も使えるように昔訓練も受けてたのよ?」
「そうかよ!」
互いの剣が交差し、金属音が絶え間なく鳴り響く。
こうして刃をぶつけ合ってわかったことが一つある。
鈴仙は、脚力、厳密に言えば跳躍力がかなり高い。
その力はベルトを使った影響なのかはわからないが、アクロバティックな剣舞に押されてしまう。
「ぶった斬られなさい!」
光の太刀が一層輝き、斬撃が形をなして飛んでくる。
「そんなのもアリなのかよ?!『ホロウ・ミラクルエッジ』」
早苗のカードを剣に翳し、技で斬撃を受け流す。
「やっぱり経験値が足りなさすぎるわ。『ネバー・ストライク』」
俺が受け流している隙に鈴仙が別のカード使う。
カードの人物に見覚えがある。
あれは輝夜のカードだ。一体これから何が起きるんだ?
そう思っていた矢先、鈴仙が俺へと弾幕を放つ。
その弾幕は煌びやかで思わず見惚れてしまいそうなほど美しい。
「うぐあああッッ」
しかしその威力は美しくない。
炸裂した弾幕で俺の体は吹っ飛ばされ、あたりに土煙が舞う。
「もうわかったんじゃないかしら?実力差が」
うつ伏せになった俺を見下ろしてくる鈴仙。
その目はひどく冷たい。
感情を殺しているかのような冷たい視線。
「...OU......D」
「何?聞こえないわ」
俺の返事が聞こえなかったらしい。
だったらもう一回言ってやる。
「ROUND2って言ったんだ」
「な?!」
体を起こした俺の姿を見て鈴仙が驚く。
厳密には俺が起き上がったことに驚いたのではない。
俺がベルトにカードをすでにセットしていたことに、だ。
「油断したんじゃねえか?」
レバーを押してベルトを閉じる。
『ORGE』
女子高生のような制服から一変して西洋風の服装へ。
「おらぁっ」
「チッ」
パンチをスレスレで避けた鈴仙だったが、何を思ったのか俺から大きく距離を取る。
「その姿についてはすでに分析済みよ。接近戦では無類の強さを誇るが、飛び道具が少なく、近距離以外が苦手」
「待ちやがれ!」
鈴仙の元へ肉薄しようとするが、その爆発的な跳躍力で再び距離を取られ、その間にも指先から放つ光弾が俺を襲う。
「くそっ、『オリジンカッター』」
「『ダウジング・ストライク』」
4枚のカッターで鈴仙を追跡させるが、変幻自在の軌道を描く光弾に撃ち落とされる。
「和徒さん、今、あなたに残されている時間は何秒?」
そうだった。この姿で自我を保っていられる時間はおよそ2分30秒。
おそらくあと動けるのは、40秒。
それがタイムリミット。
「これでどうだ、『オーガブレイク』ッ」
「そんな攻撃当たらなっ......?!」
拳にエネルギーを貯めて打ち込んだ場所に炸裂する技。
跳び回る鈴仙に当てるのは不可能に近い。
だから鈴仙は狙わない。
矛先は、
「地面を殴るッ」
大地が爆裂し、ある程度離れているとはいえ鈴仙にも相応の衝撃を浴びる。
「今だッッ」
俺はこの瞬間を逃さない。
体勢を崩した鈴仙へと接近し、ラリアットを喰らわせる。
「うぐっ」
クリーンヒットとはならず、左腕で防御されたが、かなり応えただろう。
「どうだ、まだやるか?」
地面へ叩きつけられた鈴仙へ問う。
『もっと暴れようぜ』
くそ、もうそんな時間か。頭の中に声が響いてくる。
変身を解除しなくては。
「解除なんてさせないわ、『ニュークリア・ストライク』...」
いつの間にかカードをベルトに差し込んでいた鈴仙が、指先から光球を撃つ。
「な?!」
その光球の爆発の威力は凄まじく、オーガフォームといえどもかなりのダメージが入る。
大きく仰け反り、後ずさるがまだ戦える。
しかし、この一瞬が命取りだった。
『時間切れだ』
意識が泥沼に沈んでいく。
「あああああっっっ」
響き渡る和徒さんの雄叫び。
「まるで獣ね」
以前見た時はある程度距離があったが今はたった数メートルしか空いていない。
周りに誰もいないことから標的は九分九厘私だろう。
しかし、不気味なのは暴走状態なのに私へ近づいてくる気配がない。
一体どういうことだ?
「オラッ」
地団駄を踏むように、和徒さんが地面を踏みつける。
この瞬間、私は油断していた。まるで子供の癇癪だと思っていた。
「うぐっ」
突如として地面から妖力が蹴りとなって出現したのだ。
あの姿は伊吹萃香の力も持っている。
おそらく地面への蹴りを一時的に霧散させ、地続きになった私の位置で集めたのだろう。
飛び道具がないと思って油断した。
不意打ちのごとき蹴りによって大きく姿勢を崩した私に向かって、拳を振り抜こうとする和徒さん。
これを待っていた。
「見たわね。私の目を」
至近距離で目が合った和徒さんと私。
拳は振り抜かれることなく静止したまま。
「狂気に染まった生物なんて、私にとって格好の餌食よ」
私が持つのは狂気を操る程度の能力。
正気の生物には幻覚を見せる程度だが、狂気の生物なんてラジコン操作ができるほどだ。
和徒さんはヒロイックフォームになれなかった時点で詰んでいたのである。
「さあ、カードを渡してもらおうかしらね」
「きゅっとして、どかーん!!」
和徒さんへ手を伸ばそうとした瞬間、その手が爆ぜた。
声のした方向を見ると、そこには日傘をさした二人の幼女。
片方は、青紫の髪。もう片方は金色の髪。
両者に共通するのはナイトキャップと八重歯と背中に生えた羽の存在。
「フランも混ぜてよー!」
「私の友人相手に相当楽しんでくれたようだな?」
「スカーレット姉妹...ッ」
血を吸う鬼の姉妹が、月から堕ちた兎を見下ろす。
BLADE 刃 魂魄妖夢
NUCLEAR 核融合 霊路寺空
少し更新ペース落ちるかもです