東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

鈴仙からユナイトカードを全て渡せと要求された和徒だったが、その要求を拒否したことで戦闘が勃発した。
常に和徒の上を行く鈴仙に追い詰められるも、オーガフォームで逆転を謀る。
しかし、オーガフォームで理性を維持できる制限時間を超えてしまい、鈴仙の狂気を操る程度の能力によって傀儡と化してしまう。
そんな中、和徒を助けに現れたのは、吸血鬼の姉妹。
レミリアとフランが鈴仙に相対する。


対立と暴走と霧の湖 その3

左腕を確認する。

動かすだけでも激痛が走るものの、感覚があるのは不幸中の幸いというべきだろうか。

 

ありとあらゆる物を破壊する程度の能力。

その本質は万物が持つ弱点、『目』という部分を手元に出し、握りつぶすことで破壊しているという絡繰りだ。

その防御無視のパワー、きっと能力の射程距離は短いはず。

今、フランと私の距離はおよそ30m。

ありえない。この距離から干渉できるはずがない。

 

「ねえねえお姉様、フラン、力の加減上手くなったでしょ?」

 

「ああ、以前だったら腕が木っ端微塵だったろうな」

 

木っ端微塵というワード。

なるほど、そういうことか。

能力の本質は、『目』を手元に出す能力。

遠くの物は目を出しにくい。

しかし、すでに『目』が露出していたとすれば?

 

左腕はある箇所の傷が最もひどい。

それは、和徒さんのラリアットを防御した箇所。

オーガフォームはフランの力を使える。だから、『目』を露出させることでダメージを増やすことができる力を持っていたと考えると辻褄が合う。

だからあの距離からでもフランは『目』を潰すことができたのだろう。

 

「それで、あなたたちの目的は?」

 

「その男の解放、とでも言っておこうか」

 

レミリアが鋭い眼光で睨みつける。

視線で射抜くとはまさにこういうことを言うのだろうか。

 

考える。今、この状況で取るべき最良の選択肢は何か。

和徒さんに「吸血鬼を攻撃しろ」と命令したとして、2:2の戦況。

おそらくあちらは和徒さんに手荒な真似はできないはず。

彼(彼女)を盾にすれば勝てる可能性は十分にある。

 

こう考えるのは二流だ。

吸血鬼の姉妹が揃って目の前にいる。この異常性に気づけないようではまだまだだ。

彼女らがいるのに、従者の姿が見当たらないのはおかしいのだ。

完璧で瀟洒な従者、十六夜咲夜はどこかに息を潜め、私の隙を窺っているに違いない。

つまり、これは2:3の戦況なのだ。

 

左腕を負傷したままその人数を相手にするのは流石に分が悪い。

ユナイトカードをベルトにセットし、撤退の準備を整える。

 

「本当なら彼のカードを回収したかったのだけれど、仕方ないわね」

 

パチンっ

 

私が指を鳴らしたことで、彼が変身を解除する。

 

「...はっ、鈴仙ッ」

 

「あなたの身に余るその力の危険性、よく覚えておきなさい」

 

姉妹が和徒に気を取られた隙をついて跳び上がり、ベルトのレバーを倒す。

 

「『ディスタンス・ストライク』」

 

小野塚小町のカードの力により、永遠亭まで擬似ワープ。

どうやらこの付近には紛い者がいるようだし、手当てをしたらまた来るか。

 

 

 

 


 

 

 

 

「なるほど、事の発端はそのオーガフォームとやらなのね」

 

鈴仙が一瞬にして消えた後、茂みから出てきた咲夜さんに介抱され、今は紅魔館にてお茶会の最中。

オーガフォームはやはり鬼の力だけあって、鈴仙の苛烈な攻撃も大事には至らなかった。

 

「それで、フランはどうやって自分の力を制御してるんだ?」

 

客室にて丸いテーブルを囲んでいるのは、俺、レミリア、フランの3人。レミリアのそばには咲夜さんが控えている。

 

「制御なんてしてないよ?」

 

「は?」

 

あっけらかんとしたフランの返答に拍子抜けしてしまう。

しかし、以前は狂気に触れて閉じこもっていたと聞いていたが、それは間違いだったと言うのか?

 

「閉じこもっていたのは事実よ。けれど、フランも嘘はついてないわ」

 

「うんうん、嘘ついてないっ」

 

「言うなれば、フランは狂ってはいるが落ち着いている、ということだ」

 

なんとも難しい表現だ。

しかし、おかげでなんとなく理解はできた。

フランは自身が抱える爆弾を起爆させずに保管している、みたいなことだろう。

だから、爆弾を解体する方法を聞いている俺とは話が噛み合わなかったのだ。

 

「じゃあ、どうやって落ち着かせているんだ?」

 

せっかくここまできたんだ。

ヒントになりそうな物は全て回収しておきたい。

 

「なんて言うかねー、もう一人の自分を作るの」

 

「もう一人の自分?」

 

「そう、「壊したい」「無茶苦茶にしたい」みたいな気持ちをもう一人の自分に見立てて、「今はその時じゃないよ」って教えてあげるんだー」

 

なるほど、さっぱりわからん。

もう一人の自分?二重人格ってことか?

 

「フランがわかるのはこれくらいかな」

 

「そうか、ありがとう」

 

「んー、まだ夕方だし、フラン眠くなってきちゃった」

 

「咲夜、フランをベッドまで運んでおきなさい」

 

「承知しました」

 

俺が紅魔館に訪れたのが昼過ぎ。

あれから氷の妖精の捜索と鈴仙の戦い。

怪我の手当てと経緯の説明。

空はすでに赤く染まり始めている。

 

フランがおねむなのは当然だ。

居眠りを始めたフランを抱え、咲夜さんが退室していく。

 

「どう?何か手がかりはつかめたかしら」

 

「残念ながらさっぱり」

 

「ふふふ、フランに期待するだけやっぱり無駄だったわね」

 

そう言って凄惨な笑みを浮かべるレミリア。

姉は妹の実力をよくわかっているようだ。

 

「私にはわかっているけれどね」

 

「何が?」

 

「オーガフォームの扱い方よ」

 

「なんだって?!」

 

「でも、タダで教えるわけにはいかないわ」

 

くっ、やはり妖怪。

弱肉強食の世界は常にギブアンドテイクだ。

 

「さっきあの兎から助けてあげたんだし、すでに貸しは1ついてるのよねー」

 

耳が痛い。

もしここでレミリアから話を聞けば貸しは2になってしまう。

 

「和徒は友人だから、特別料金にしてあげてもいいわよ?」

 

「特別料金でお願いします...」

 

俺の言葉を聞いたレミリアが、赤い瞳を一層輝かせる。

その瞬間感じとった。今の選択肢、失敗だったやつだ。

 

「今のは契約よ。内容も聞かずに契約を成立させるなんて、バカね」

 

「しまった」

 

「まあ、契約内容は後で決めるとして。この紙に名前を書きなさい」

 

そうして手渡されたのは、裏面にびっしりと魔法陣が描かれた紙とペン。

 

「これって契約書かなんか?もし破ったら死にます、みたいな」

 

「違うわよ!これはあんたにとっての手がかりを作る為の紙!本当失礼しちゃうわ」

 

外見年齢相応の怒り方をしたレミリアは、頬を膨らませて可愛らしいものだった。

けれど、それを口にしたら何をされるかわからないので、胸のうちに秘めておく。

 

「ほら、書いたぞ」

 

「ふむ、ちゃんと書けてるわね」

 

返却された紙にレミリアが指を当て、何やら呪文を唱え始める。

やはり、裏面の魔法陣が関係していたらしい。

 

ぼうっと眺めていると、突然紙が燃え上がった。

 

「火傷するぞ!手を離せ」

 

レミリアから紙を奪い取り、床へ投げ捨てる。

 

「くふふ、人間が吸血鬼の怪我を心配するなんて、パチェが聞いたらなんていうかしら」

 

こちらの心配を意にも介さず、燃えゆく髪をただ見ているレミリア。

一体何がどうなっているんだ。

 

「ほら、出てきたわよ」

 

「...ッ、これは、文字?」

 

紙は燃えて灰と化した。

しかし、異様なのはその灰。

灰が文字を描いていたのだ。

 

「これはパチェが作った、程度の能力を記す紙

 

「この能力が、和徒にとって力となるはずだわ」

 

そこに描かれていたのは、

 

『調和を生み出す程度の能力』

 




DISTANCE 距離 小野塚小町

2章はもう少し続きます。
1章のサブタイトルは和徒の能力が所以です。
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