東方三混和   作:語り部梔子

29 / 66
前回のあらすじ

レミリアとフラン、咲夜のおかげで鈴仙を退けた和徒。
フランから暴走を制御するヒントをもらおうとするが、手がかりは掴めなかった。
しかし、レミリアは和徒の持つ「程度の能力」がその鍵になるといい、パチュリーが作った魔道具で和徒の力を明らかにした。


理性と能力と絶対零度 その1

程度の能力。

幻想郷では実力者はもちろん、その辺の人妖でさえ持っていることがあるとされる力。

それは持ち主を幸せにすることがあれば、不幸にすることさえある。

 

「『調和を生み出す程度の能力』?」

 

それが、俺の持つ力の名前だった。

 

「これはまた随分と複雑な能力を引き当てたわね」

 

ため息混じりにそう呟くレミリア。

全くその通りである。

せめて何かを操るとか何かを扱うみたいな力にしてほしい。

それにしても、調和とは一体何だ。

ハーモニーを作るってめちゃくちゃ弱そうだぞ。

 

「結局のところ、能力ってのは本人の解釈次第よ。イメージが重要なのだから」

 

「レミリアの能力は、運命を操る程度の能力だっけ」

 

「そうよ。けれども、これは「自分が勝つ運命に設定する」みたいに便利な力じゃないわ」

 

「そうなのか?てっきり無敵の力かと」

 

「私にできるのは運命の決定的な分岐点を観測することだけ。私はその分岐点で面白そうな未来へ舵を取って楽しんでいるのよ」

 

だから私といる者は数奇な運命を送ることになる、と付け加える。

 

運命の分岐点を観測するという解釈。

なるほど、彼女の能力も複雑なものだが、自分の解釈で上手に扱えるようになる良い例だろう。

 

「そして、ここは丁度あなたにとって分岐点なのよ。あなたがオーガフォームを扱えるようになるかどうかで未来が変わる。

 

「もしできなければ、あなたは大切な物を失うことになるわ」

 

そんなに重要なイベントなのかよ。

すげえプレッシャー。

 

「そうならないように、このレミリア・スカーレットが手を貸してあげたんじゃない。手がかりはあなたの能力。それが運命を好転させるきっかけ」

 

そうは言っても調和についてイマイチ閃かないんだよな。

 

「私の推測だと、すでにその能力は使えているはずよ」

 

「なんだって?一体何に使ったって言うんだよ」

 

「ベルトよ。そのベルト、今の所あなたしか使えなかったんじゃないかしら」

 

レミリアの指摘は事実だった。

守矢神社へ初めて訪れた時、諏訪子様がベルトを使ってみたいというので渡してみたが、ベルトから弾き飛ばされてしまったのだ。

それについて俺は初めて使った人しか使えないのではと考えていたが、俺が調和を生み出すことで平気だったのかもしれない。

とすると、俺はすでに能力を発動できるのだ。

 

「私が口出しできるのはここまでね」

 

「えー、もうひと押し何か助言を」

 

「そんなものないわよ。私ができるのは運命の分岐点の観測。自分の運命は自分で切り拓きなさい」

 

運命を見ることができるからこそ、自分の力で未来を掴み取る。

フランが紛い者になった際も最前線で戦っていた。

能力はそう言った本人の価値観から後天的に生まれるという見方もあるかもしれない。

 

「ところで和徒、あなた私に貸しがあったわよね」

 

「ぎくっ」

 

レミリアが凄惨な笑みを浮かべてこちらを見つめる。

それはこれから獲物をいたぶる捕食者のような目つきだった。

 

「どうかお手柔らかに...」

 

「私はあなたの友人よ?限度くらいわかっているわ」

 

「ははは、そうですか」

 

「週に1回血を飲ませなさい」

 

全然わかってなかった。

あれか?吸血鬼と人間じゃ限度って単語の意味が違うのか?

 

「安心しなさい。何も前回ほどの血を吸おうってわけじゃないわ。ほんの少しでいいの」

 

「えー」

 

「パチェからもらったあの魔道具、あれの制作費はいくらだったかしら。ええっと確か桁が1、10、100、1000、10000...」

 

「お嬢様、私の生き血をお飲みください」

 

深々と頭を下げた。

幻想郷における俺の収入源は今の所、文の書く新聞しかない。

あれ以上の桁を言われたら俺の破産は確実だ。

そうなってしまえば、紅魔館の執事ルートである。

悪い気はしないが、現状そうなるつもりはない。

 

「賢い選択ね、それじゃあ上裸になって首筋を差し出しなさい」

 

「服を着たままでもできるんじゃないのか?」

 

「できるにはできるけれど、その服は赤じゃない方がいいわよ」

 

脱がないと俺の服が真っ赤に染まるぞってことか。

 

仕方なくTシャツと肌着を脱ぐと、椅子から立ち上がったレミリアが俺の膝にまたがる。

俺は座っているので、かがまなくていいこの姿勢は楽だ。

 

しかし、一つ大きな問題がある。

 

「遠いわ。もっと抱きしめなさい」

 

そう、レミリアは幼女体型である為引っ付かないと牙が届かないのだ。

その結果、上裸の男が幼女を膝に乗せて抱きしめるという犯罪臭がプンプンする構図になってしまうのである。

 

「何を恥ずかしがっているのかしら。まだ血を吸ってないのに息があがっているわよ」

 

最初に伝えておきたい。

俺は断じてそういう趣味があるわけではない。

しかし、先ほどから妙にレミリアが艶かしいのだ。

くそ、これも性欲を処理していないことが原因なのか?

 

胴には肉があまりついてなく、肋骨が服越しにピタリと張り付く。

髪からはふわりと花のような香りが鼻腔を侵入し、脳をふやかす。

 

チクッと牙が肌から血管へ侵入し、血液が漏れ出した。

その痛みさえ今は心地よい。

 

そんな快楽的な刺激も気づけば終わってしまい、口元を赤く濡らしたレミリアが俺の瞳を見つめてくる。

冷血さをのぞかせる赤い切長の目、人形のように整った鼻、獰猛さをむき出しにした口。

幼さゆえの脆さと吸血鬼の強さという相反する要素を混ぜ込んだ身体が俺を魅了する。

 

どちらが先だったかは分からない。

気づけばお互いの唇を重ねていた。

ファーストキスは鉄の味。

鉄の味がする液体を相手の口内から奪い合うように舌を絡ませる。

ズジュル、クチュ、と鳴る水音。

ああ、もっと、もっと、彼女が、レミリアがほしい。

 

互いの身体を仕切る布が邪魔だった。

レミリアの服に手をかけ、キャミソール姿にひん剥いて再び触れ合おうとした瞬間、

 

「レミィ、この異常気象の原因が分かっ...た......わ.........」

 

扉を開けて入ってきたのはパチュリー。

彼女の名誉のために説明しておくが、ノックはしていたらしい。

しかし、それに気づかないほど夢中になっていたのだ。

 

「どうぞごゆっくり」

 

再び二人きりの空間に戻る。

俺の頭はすっかり冷え切っていた。

 

「パチェのせいでチャームが解けちゃったじゃない」

 




吸血鬼のスキル、チャームってあんまり使ってる作品ないですよね。
キスしかしてないからBANはされないはず。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。