東方三混和   作:語り部梔子

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今回はバトルパート

前回のあらすじ

永遠亭に帰還して永林から手当てを受けた鈴仙は、輝夜から助言をもらい、再び和徒の元へ向かう。
紅魔館周辺の気温が著しく低くなった原因が霧の湖の中心にあると、パチュリーは考察する。
和徒は魔石を受け取り、紅魔館を発つ。


理性と能力と絶対零度 その3

「あたいの昼寝の邪魔をするのはおまえかああああ!!!」

 

「いや、昼寝というにはもう遅いだろ」

 

時刻は逢魔時。人間の時間は終わり、妖怪の時間となるその境目。

パチュリーから受け取った魔石を霧の湖に投げ入れたら、轟音と共に一匹の妖精が顔をだした。

青紫のメッシュが入った水色の髪に氷の羽。髪の色は若干違うが、こいつがチルノで間違いないだろう。

さっき探した時に見かけなかったことから、一日中寝ていたことが伺える。

 

「ん?、霊夢?早苗?誰だ?」

 

こちらはすでに戦闘態勢。二人の巫女の力が備わっているヒロイックフォームから連想される名前。

 

「初めましてだ、俺は真島和徒」

 

「あたいはチルノ!幻想郷で最も強い!」

 

どうやら頭が残念なタイプらしい。

なんとか説得に応じてくれないだろうか。

 

「起こしてしまって悪いんだが、こういうカードを最近見かけなかったか?」

 

「今日見た!なんかあたいの体から光って出てきた!」

 

モザイクの男とは関係ない紛い者か。

それにしもこいつと同じ気質になった力の持ち主、相当バカの可能性があるな。

 

「OK、実はその力は危険なんだ。お前の体から取り除くからちょっと我慢してもらえないか?」

 

「うーん、嫌だッ!!!だってカードがあたいとくっついてから力が湧いてくる。今のあたいは超最強」

 

「交渉決裂か。ならば力づくで分離させてもらう。英雄『夢想封印』ッ」

 

陰陽玉が宙を舞い、チルノへ迫る。

 

「うわーん、霊夢の技!」

 

チルノは逃れようと飛び回るが、追尾性能を振り切れず陰陽玉が肉薄する。

しかし、チルノに着弾することはなかった。

 

「バカな...」

 

「あれ?凍ってる?」

 

チルノと陰陽玉の距離はおよそ30cm。その時点で凍りつき、微動だにしなくなったのだ。

 

『この異常な低温、レティという雪女の一種のカードと結合したと考えられるわね』

 

出発前にパチュリーから聞いた話が脳内で反芻される。

氷の妖精と雪女。同じ氷雪系の力の持ち主。

このような芸当ができてもおかしくはない。

 

「やっぱりあたいは最強なんだッ」

 

自信を取り戻したチルノが吹雪を起こす。

くそ、霊力で体を覆っていなければ今ので氷漬けだったぞ!

 

「だったら、『ヒロイックズパーク』ッッ」

 

ヒロイックスパークは俺の使える技の中で最も火力が高い。

これなら静止することなく当てられる。

吹雪で視界が不安定だが、わずかに見えた影を頼りに狙いを定め、右手をかざして解き放つ。

 

「どわーーーッッッ」

 

爆発音が聞こえる。手応えありだ。

しかし、なぜ吹雪はやまない?

カードが分離できているなら吹雪が止んでチルノの姿が見えないとおかしい。

 

「なーんてね」

 

背後から降り注ぐ氷柱。

 

「うぐっ」

 

あまりの温度の低さによって、傷口で血が固まっている。

第六感が反応したから左肩に突き刺さっただけだが、一体どういうことだ?

確かに手応えがあったのに。

いや、そういうことか。

吹雪で視界が悪いことを利用して、自分を真似た氷像を狙わせ、油断したところに奇襲。

クソッ、会話で頭が悪そうだと思って油断した。

 

「あとどれくらいで動けなくなるかなあ」

 

「なっ?!」

 

左肩の氷柱からどんどん氷が広がっている。

まずい。このまま放置していれば、奴の言うように動けなくなるのも時間の問題だ。

 

ベルトのバックルを開け、別のカードを差し込む。

 

『OGRE』

 

「ふんっっ」

 

氷柱を怪力で引き抜く。

幸い、覆っていた氷のおかげで出血はない。

 

「オラァ!」

 

「どわあああ?!」

 

チルノを狙った氷柱の投擲。

しかし、命中するよりも早く氷の壁が生成されて防がれる。

 

オーガフォームでいられる時間は残り2分02秒。

弾幕が氷漬けにされるなら、肉弾戦しかない。

 

「うおおおおお」

 

「追いかけっこ?鬼さんこっちら〜」

 

こちらが接近戦を目論んでいることを感じ取ったのか、チルノも俺から距離を取る。

舐めやがって。これが鬼ごっこなら、とっくに追いついている。

しかし、吹雪の中、氷柱が雨のように降り注ぐ中捕まえるのは難しい。

 

残り時間は43秒。

鈴仙と戦った時と同じだ。このまま時間切れまで粘られると勝ち目はない。

 

「これでもくらえ!」

 

飛んできた氷柱を受け止め、投げ返す。

 

「おっと」

 

「今だ!『オーガブレイク』」

 

瞬間的に拳にエネルギーを溜め、氷柱に怯んだチルノを目掛けて振り抜く。

 

「どんな防御力してんだよ...」

 

「危なかったー」

 

拳は数十センチもの分厚い氷にぶちあたり、そのエネルギーの余波でチルノの手が少し溶けただけだった。

 

「はあああ!!!」

 

「うっ」

 

今度は俺が隙を突かれ、氷漬けにされてしまう。

まだ頭部は凍っていないが、あと数分も持たないだろう。

いや、それよりも自我を保てる時間がもうない。

 

残り2秒。

 

1

 

 

 

『俺の時間だぜ』

 

意識が沈んでゆく。

 

 

 

 

いや、まだだ。俺が暴走状態に入ったこの瞬間。俺はもう一人の俺と共存できる。

克服するならこの瞬間しかない。

 

なあ、お前は一体何者なんだ?

 

『俺はお前の悪感情。怒り、恐怖、絶望、憎しみ。それらの集合体』

 

『萃香の力で集まった感情は、フランの狂気で増幅され、正邪の反転によって主人格と入れ替わる』

 

なるほど、カードが複雑に作用しあって生まれた現象なのか。

 

そして、鍵は俺の能力だとレミリアは言った。

 

「言っておくが、俺を消すことなんざできねえそ」

 

そのつもりはもうない。だって、お前は俺自身なんだから。

 

代わりに、調和させてもらう。

 

『調和だと?』

 

お前の人格と俺の人格、これらが分離しているから暴走が起きる。

 

だから、俺はお前を俺の「野生」として取り込む。

 

『なんだと?そんなことできるはずがないッッ』

 

いいや、できるさ。俺はベルトを使う時にすでに「調和を生み出す程度の能力」を使っているらしいからな。

 

ほうら、ベルトが輝いてきた。成功している証拠だろ。

 

『ふざけるな!そんな都合がいいことあってたまるか』

 

悪いな。すでにこれはレミリアによって定められた運命なんだよ。

 

 

 

息が荒くなる。

どうやら無事に成功したみたいだな。頭はとんでもなく痛いが、ちゃんと意識を保っている。

 

「あれ、起きたんだ」

 

チルノが俺の顔を覗き込んでくる。

 

あ、そういえば氷漬けにされて体が動かないんだった。

 

「これでとどめ。大ちゃんたちに自慢しよっと」

 

氷柱が周囲を漂う。

チルノに負ける未来は見えてなかったのかよ、レミリア。

観念して目を閉じた時、

 

「『マッドネス・ストライク』」

 

突如として光弾が炸裂し、氷の拘束から解き放たれる。

 

「あなた、狂気を克服したのね」

 

月光を浴び、鈴仙の瞳が真紅に輝いた。

 




鈴仙は和徒を助けに来たのか、それとも倒しに来たのか。

次回、2章クライマックス。
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