東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

パチュリーの魔石によって霧の湖から姿を現したチルノ
レティのカードと結合した氷雪能力は和徒のオーガフォームをも凌ぐ
そんな最中、レミリアのヒントから和徒は暴走状態の克服に成功する
氷漬けにされた和徒に氷柱が迫まったその時、横槍を入れたのは鈴仙だった


輝きと狂気の瞳とエピローグ

「ぶげええええ」

 

完全に不意の一撃をもらったチルノが吹っ飛んでいく。

 

「一応は礼を言っておくぜ、鈴仙」

 

吹雪が吹き荒れる中、鈴仙がひとっ飛びでそばに着地する。

 

「一つ質問してもいいかしら」

 

「なんだ?」

 

瞳が一層赤く輝く。

じっと見ていると飲み込まれそうな深い紅。

 

「和徒、あなたは一体何のために戦うの?強くなろうとする理由は何?」

 

「.........」

 

戦う理由、か。

真面目に考えたこともなかったな。

いや、昼間に鈴仙が襲ってきた時にもちょっぴり考えたような気もする。

 

俺が戦う理由は、幻想郷で発生する紛い者に関する事件を解決するため。

 

違う。

それは俺が紛い者からカードを分離できる力を持っていたから。

文が事件解決の記事を載せるために俺と契約したからだ。

つまり、俺は金のために戦っていたのか?

 

違う。

守矢神社で居候している身だから、出費はそれほど多くない。それに、外の世界と比べて娯楽に金を使う機会が少ない。

 

なら、俺は何のために戦っているんだ?

 

 

俺は早苗を追って幻想郷へやってきた。

 

俺が小さい頃に親は先立ち、親戚の家で孤独に過ごしていた。

 

 

これだ。

俺はいろんな人に置いてかれて生きてきた。

そして、俺は幻想郷でやっと追いつくことができた。

 

「俺は置いてかれないために強くなる。手を伸ばしても辿り着けないのはもう御免だ。

 

「そして、誰も置いていかれないために俺は戦う。手を伸ばせない人のために、俺が代わりに手を伸ばす」

 

もう俺みたいなやつが生まれないように。

誰も俺と同じ思いをしないように。

 

「そう...」

 

鈴仙が深呼吸をし、改めて口を開く。

 

「和徒、ごめんなさい。昼間のことについて謝罪させてほしいの」

 

「なんだよ急に」

 

「私はあなたのことを誤解していたわ。いえ、これは同族嫌悪というべきね」

 

「同族嫌悪?」

 

「ええ、あなたに昔の私の姿を重ねて見てしまっていたのよ。何もかもから逃げ出した惨めな私を」

 

はっきり言って俺は鈴仙の過去については詳しくない。というか、つい先日の燃える死体の一件で知り合ったのだから、普段何をしていて、何を食べていて、どんな音楽が好きかすら知らない。

しかし、今、一つだけわかったことがある。

自己肯定感の低さ。劣等感。

これらが鈴仙を形作っているのだろう。

 

「私は私を誤魔化しながら生きていた。でも、あなたは違った。あなたは立ち向かっていた

 

「あなたの姿は輝いて見える」

 

ここまで褒められると、なんというか照れ臭い。

 

「なるほどな。いいぜ、許す。ただし、一つ条件がある」

 

「条件?」

 

「あいつをぶっ飛ばすの、手伝ってくれよ」

 

 

「あたいは怒ったぞおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 

 

「もちろんよ」

 

氷の妖精が冷気を撒き散らしながらこちらへ向かってくる。

 

「ところで何か策はあるのかしら?」

 

「ああ、とっておきの奇策がある。奇策士和徒だ」

 

「私は何をすればいい?」

 

「俺が奴に近づく、だから適当に援護してくれッ」

 

「了解!」

 

互いにチルノへ向かって駆け出す。

 

「む、何か企んでるな?!」

 

「くそ、待てやコラー!」

 

自信満々で接近してくる俺たちから察したのか、距離を取られる。

これじゃあ奇策が成功しない。

 

「『ダウジング・ストライク』」

 

4つのエネルギー弾が猟犬のごとく追いかける。

 

「く、この」

 

全身から発する膨大な冷気によって凍つく光弾。

 

「一瞬スピードを緩めたよなぁ?」

 

俺との距離はおよそ3m。

いける。

 

「『ホロウエッジ』ッッ」

 

手元に顕現するは漆黒の刀。

 

「こうなったらかくれんぼだ!」

 

「なっ」

 

チルノを中心とした吹雪が突如発生し、視界がジャックされる。

さらには人影が無数に現れ、これではチルノと氷像の区別もつかない。

 

「『ニュークリア・ストライク』ッ」

 

「ぎゃ?!」

 

吹雪の中漂う光球。

お空が生み出す太陽のごとく煮えたぎり、熱線は本物のチルノを映し出す。

 

「見つけたわ!和徒!!!」

 

「最高だ!『ホロウ・ディスティニーエッジ』ッッッ」

 

レミリアのカードをかざした刀から緋色の槍が生成される。

 

俺とチルノの距離は1mを切った。

至近距離から解き放つ。

 

「うおおおおおお」

 

「ちょっとタンマ!!!!」

 

急いで氷の壁が作られるも、0距離で刀から発射された槍はドリルのごとく突き進む。

 

「はああああ!!!」

 

「うぎいいいいいい」

 

 

 

「嘘でしょ...?!」

 

しかし、緋色の槍が氷の壁を突破することなく、突き刺さった姿がそこにあった。

 

「焦らせやがって...氷の妖精なのに汗かいちゃったよ」

 

言葉通り、滝のような汗を浮かべたチルノは不敵に微笑む。

 

「和徒、撤退しましょう!」

 

「何言ってるんだ?鈴仙」

 

「え?」

 

「この位置、この角度がいいんじゃあないかッッ」

 

槍を防がれるのは想定済みだ。

 

「奇策ってのはこういうことなんだぜ、『オーガブレイク』」

 

「ん?」

 

高密度のエネルギーをまとった拳が、槍の柄の先端を撃つ。

 

「まさか...和徒はそれが狙いで?!」

 

撃鉄のごとく槍に衝撃が加われば、当然槍は打ち出される。

 

「パイルバンカーだッッッ!!!」

 

槍は氷の壁をぶち抜き、氷の妖精の腹部には風穴が生まれた。

 

「ぎゃああああああああああ」

 

チルノの体から一枚のカードが弾き出され、ぽっかり空いた穴は少しづつ塞がっていく。

 

「妖精って不死身なのか?」

 

「妖精は概念そのものだから、そうそう死なないのよ」

 

 

 

 


 

 

 

 

「で、これは一体どういうことなんだ?」

 

チルノからカードを回収した後、鈴仙とはもう夜だから紛い者については明日話し合おうと決まった。

 

そんなこんなで守矢神社に帰ってみれば、

 

「和徒、おかえりなさい。結構遅かったわね。戸棚にあったお菓子もらってるわよ」

 

「なんで輝夜がここにいるんだ?」

 

「私、家出してきたの」

 

姫様家出中。

俺は明日どういう顔で鈴仙に会えばいいんだ?

 

そんな俺を嘲笑うかのように、狂気の象徴たる月は輝く。

 

 

 

 


 

 

 

 

「ようやく揃いましたね」

 

無縁塚。スーツ姿の人影の声が木霊する。

 

宙に浮かぶ3枚のカード。

 

「豊聡耳神子、四季映姫・ヤマザナドゥ、そして、古明地さとり。心を覗き込む彼女らの力は一体何を示すのでしょうか」

 

3枚のカードが混ざり合い、一本のベルトが生成される。

 

「名を冠するなら、『ハートレスドライバー』」

 

奇妙な拳銃を片手に、笑い声が響き渡った。

 

人影の行方は誰も知らない。

 

 

 

 

2章『重なる狂気』 閉幕

 

新章『封じられた秘密』 開幕

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。

2章は鈴仙という新たな変身者、オーガフォームをいかに強く描写するかに悩みました。
燃える死体に始まり、氷の妖精に終わるというのは、一種の遊び心ではあります。
実を言うと、レミリアをヒロインに加えたのはライブ感でもありました。

次回設定資料集を載せるので、何か質問あればご気軽にどうぞ。
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