一時的に幻想入りし、戻ってきたメリー。その手には紫のユナイトカード。
一方、輝夜は家出をして守矢神社に居付き、見返りとして和徒に膝枕を提示したのだった。
「ダメです」
「あ、はい」
早速輝夜のお膝元へと滑り込もうとしたところ、部屋へ入ってきた早苗がゴミを見る目でこちらを見ていた。
女の子のこういう視線、結構心にくるな〜。
「でも、言質は取ったから明日はよろしく頼むわよ?」
「後払いってか」
明日、輝夜に振り回されるのは決定事項らしい。
おっと、早苗さんの視線がより厳しいモノへと変わったぞ?
なんでだろうね
「それじゃあ、私はこのまま寝ようかしらね」
そう言って、俺の布団を広げる輝夜。
こういう時って「俺が床で寝るから布団は使ってくれて構わない」とか俺が先に言うんじゃないの?
有無を言わせずgo to bed on floorなの?
「しゃーねえ、床で寝てやんよ」
「ふふ、実はこれ持ってきたのよ」
その手に握られていたのは、2台のNintendo3DS。
こいつ神か?
懐かしのゲーム機でテンションが上がらねえ奴はいねえ!
「もちろんカセットもあるわよ」
うわ、こういういっぱいカセット入れるやつ持ってた!
「まずはマリカーからやろうぜ」
「言っておくけど、バグ技のショートカットは禁止よ」
「OKOK」
俺のドリフトが火を吹くぜ!
「いや、輝夜さんは私の部屋で寝てもらいます」
「「えええええーーーーーー、マリカーやりたい!!!!」」
「ダメなものはダメです」
「ひえええええ」
早苗に引き摺られ、部屋を後にした輝夜であった。
ん?そういえば、鈴仙と明日会う約束したよな。確か、鈴仙がこっちに来るんだっけ。
輝夜いるのバレたらマズくね?
「何から話すべきか迷いますが、おそらく一番気になっているであろうこのベルトについて話しますかね」
ちゃぶ台の上にコトンッと置かれたベルト。
輝夜が守矢神社に来た翌日、同所に尋ねてきた鈴仙が情報共有を始めた。
心強い存在であることに間違いはない。
ただし、輝夜を匿っているので、否応にも変な汗をかいてしまう。
「なるほど、これがもう一つのベルトですか」
目敏いののか、運が良いのか、俺が昨日紅魔館に行った結果を聞きに来た文も同席し、傍では諏訪子様が昼寝をしている。
居候の俺にあてがってもらえた二階の一人部屋。
ちゃぶ台を囲む俺、鈴仙、文。
「このベルトは、純子という神霊のユナイトカードから師匠が制作したベルトであり、紛い者を部分的に順化することでカードと分離させることができます」
「このベルトは和徒さんのベルトと違って1枚しかカードが入らないんですね」
「はい、自分自身のユナイトカードで純度を高めることにより変身しているので」
「私もこのベルト使えますかね?」
「使えますけど、廃人になりますよ」
「「え」」
嬉々とした表情でベルトを巻こうとしていた文の手が止まった。
「純度が高まるとより心は狂気に近似します。なので、今のところ安全に使用できるのは私だけなのです」
俺がカオスドライバーを能力のおかげで使えているのと同じか。
「それでは、次にモザイクの男についてお聞きしてもよろしいですか」
さすが新聞記者というべきか、進行が上手い。
「文さんは、均一異変について覚えていますか?」
均一異変。聞いたことのないフレーズ。
霊夢が博麗の巫女として取り組んだ異変については、本人の口から大まかに聞いている。
ということは、霊夢が博麗の巫女となる前の異変だろうか。
「はい、均一異変についても記事にしましたからね」
「その均一異変ってのはどういう異変だったんだ?」
「たしか、20年くらい前に起きた異変ですね。力ある者は弱くなり、非力な者は屈強になる。と言ったように、幻想郷のそれぞれの種としての力が文字通り均一化されました。たしか一週間くらい続いたんでしたっけ」
非力な者が屈強になるということは、弱小妖怪も中堅妖怪程度には強くなるということである。
「異変が起きてすぐ、弱小妖怪が人里に攻めてきましたが、もちろん人間も強くなっているので返り討ちにしたんですよ。自分が突然強くなったら相手も同じじゃないかって考えますよね、普通」
ケラケラと文が笑ってみせるが、被捕食者側の立場としては笑えない。
「それに、いくら膂力や妖力が衰退した大妖怪といえど、その経験値は変わらないので下剋上も成功しませんでした。徒党を組んで妖怪の山を天狗から奪おうとする妖怪もいたので、仕事が増えて大変でしたけれど。まあ、つまり人騒がせな異変ってことですよ」
俺と文の視線が鈴仙に集まる。
この異変の話が何と関係があるのか聞くために。
「この異変の原因、何だったと思います?」
視線は鈴仙から俺へと返される。
「何かしらの能力者が幻想郷を転覆させようとしてたとか?」
「文さんは?」
「異変の収束後、八雲紫はこう言ってました。外の世界の戦争により結界が不安定になったと」
このドヤ顔、ムカつく〜
「今の話、和徒さんはどう思いました?」
「どうって、戦争の影響が異変を起こしたってヤツ?」
「はい」
均一異変が起きたのは20年くらい前。
外の世界の戦争。
おかしい。
「辻褄が合わないな。日本は20年前、戦争に参加なんてしちゃいない」
「正解です。八雲紫の話は、歴史の真実を覆い隠すベール。言わば、カバーストーリー。実際の原因は和徒さんの推測が半分当たっており、宇宙から飛来した『ニル』と名乗る生命体の侵略行為でした」
「ちょっと待ってください。幻想郷には博麗大結界があるはずです!」
宇宙生命体という突拍子も無い鈴仙の話に、文が待ったをかける。
「夜が明けない異変の際、月人は幻想郷に来れないことが八雲紫の口からはっきりと聞かされました。なので、宇宙生命体が大結界を超えるなんてあり得ません」
「幻でもあり、実在もしていたとしたら?」
昼寝していた諏訪子様が片目を開き、言葉を投げかける。
「和徒、火星人と聞いてどんな姿を思い浮かべる?」
「タコみたいなヤツ」
「じゃあ、和徒は火星人見たことある?」
「無いよ。だって火星に生き物なんていなかったんだから」
「つまり、和徒にとって火星人は幻想の存在になったってことだね」
「そうなるな」
「でも、火星人は観測できなかっただけで実在していたとしたら?」
幻想の存在でありながら、実在している火星人。
「その火星人に博麗大結界はどう反応するんだろうね」
シュレディンガーの猫みたいだ。
「諏訪子さんの解説、お見事です。結果として、博麗大結界はその宇宙生命体を止めることはありませんでした。なので、当時博麗の巫女の候補であった姉妹が対峙することになったのです。
「幻想郷のルールが一切通じない敵に苦戦した二人は、ニルを博麗大結界の溝に封印することに成功させますが、その代償として姉の方は外の世界へと飛ばされ、戻れなくなってしまいました。月日が経ち、ニルが復活を目論んで生み出した眷属こそが、あのモザイクの男なのです」
お久しぶりです。
思ったより説明パートが長くなってしまいました。
鈴仙が敬語なのは、守矢神社のトップである諏訪子がいるからです。
東方って月は密接に関わるけれど、宇宙人はあんまり出ませんよね。強いていうなら月人がそのポジションなのかな?