ベルトに使えそうなカードの枠は3枚。
「なるほど、早苗に幼馴染ね〜」
「早苗も言わば外来人みたいなものだし、いてもおかしくはないわね」
俺と早苗の関係性を二人に説明したところ、納得してくれたようだ。
「それより、その反応から察するところ、やっぱり早苗も幻想郷にいるのか」
「ええ、いるわよ。あそこは色々やらかしてくれるから本当参っちゃうわ」
「私は楽しいから好きだぜ」
「あんたは遊びでやってるからでしょ。こっちは仕事よ仕事!」
「悪いんだが、戯れ合うのは後にして早苗の情報を教えてくれないか?」
「戯れあってないッ!!」
霊夢からお叱りを受けてしまったが、情報が手に入りそうなので一歩前進。
「私も詳しいことは知らないんだけど、外の世界では神々に対する信仰が減った結果守矢神社で崇め奉られている二柱の神が存在を維持するのが難しくなったんですって。そんな時、幻想郷へ来ないかというスカウトを受けて神社ごと幻想入りしたそうよ」
「さっき幻想郷が忘れ去られた者が集う場所って言ってたけれど、幻想入りしたから早苗のことも神社のことも記録がなくなったってことか?」
「ええ、そういうこと。幻想入りをすれば、世界から記録も記憶も失われる。言い換えれば、世界から忘れ去られると幻想郷に行き着くことにもなる」
ここで、一つ疑問が生じる。俺という存在だ。
俺は早苗や守矢神社のことも覚えていたし、おそらく世界から忘れ去られるような生活をしていたわけでもない。霊夢が示した条件に当てはまらない。
「そう、あなたは幻想郷にとってイレギュラーなのよ」
「なんか和徒かっけえな、イレギュラーって」
どうやら魔理沙は心に少年を飼っているらしい。
「まあ、あなたのことは紫に相談してみるわ。死刑になったらごめんなさいね」
「笑えねえよ」
「実験動物になったらちゃんと供養しておくから安心しとけよ」
「だから笑えねえって」
急に不安になってきた。まともな生活だけは送らせてくれ。
「もう一つ頼みがあるんだけど、いいか?」
「守矢神社に連れて行け、でしょ」
「相変らず感が鋭いなー」
「こんなの考えれば誰でもわかるわよ」
「それじゃあ...」
「悪いけど答えはNo」
「なんでだよ、幼馴染なんだから早苗に会わせてやればいいじゃんか」
「正確に言えば、今日は無理ね。今日、和徒にはやることがあるから」
「やること?」
悪い笑みを浮かべて霊夢は言った。
「修行よ」
「ぶべッ」
尻から地面に落下し、痛みを覚える。
「集中力切らしちゃだめって言ってるじゃない。ほらもう一回」
「くっそおおお」
まだジンジンする尻を蹴られ、また空へ飛ぶ。
霊夢のあのセリフの後、文字通り修行が始まった。霊力のコントロールの修行である。
なぜ修行の必要があるのかと聞くと、
「1回戦うだけで倒れてるようじゃ、この先死ぬわよ。博麗の巫女が直々に稽古つけるんだから感謝しなさい」
とのことである。
修行内容は、霊力を使った身体強化と防御、飛行、霊力弾の生成と操作。
霊力防御の修行では霊夢に一方的にボコられながら攻撃される箇所に霊力を固めるというもので、酷い目にあった。もう二度としたくない。
「ようやく安定してきたわね」
「なら、次は霊力弾か」
「いえ、そのまま飛びながらの霊力防御の修行よ」
「え」
「だははは」
大笑いする魔理沙を睨みつけた。
体から粒子が漏れ、男の姿へと戻る。どうやら限界らしい。
「じゃあ、今日の修行はここまでね」
「ちょっと待て。今日って言った?もしかして明日もある?」
「当たり前じゃない。あんたが戦った低級妖怪くらい楽に倒せるようにならないと話にならないわ」
「それまで、俺はどこで暮らせばいいんだよ」
「ここよ」
「え?ここって」
「そう、うちの神社に特別に泊めてあげる」
一つ屋根の下に男女二人っきりというのは常識的に...
「手出したらぶっ飛ばすから安心しなさい」
心強いというか、恐ろしいというか。
「もしなんかあっても早苗には黙っておくから安心しとくんだぜ」
「変な配慮はやめろ。何も起きないし起こすつもりもない」
「魔理沙、明後日にはここへまた来て頂戴、その時には仕上げておくから」
「おう、それじゃあまたな、二人とも」
タイムリミットは明後日。それまでにある程度戦えるようにならなければ。
「早苗、またその写真を見てるのかい?」
「ッ!諏訪子様でしたか」
妖怪の山に佇む神社にて、祟り神と現人神が言葉をかわす。
「和徒とお別れして10年くらいかー」
「あっちでも元気にしてますかね」
「あの時渡したお守りが守ってくれているといいけれど」
思い空気が漂う。
「もしかして、やっぱり後悔してる?こっちに来たこと」
「いえ、私の運命は神奈子様と諏訪子様と共にあります」
「とか言っちゃって。もし外の世界に行きたくなったりしたら言ってよ。あのスキマ妖怪に頼み込むからさ」
「いいんです。なんというか、和徒ならまだ私のことを覚えていてくれそうなので」
「もしそうならまさしく奇跡だ」
現人神は祈った。かつての幼馴染であり、想い人の無事を。
彼女はまだ知らない、その者が同じ地を踏み締め、再会の時期が迫っていることを
「おう、ちゃんと来たぜ二人とも」
「待ってたわ魔理沙」
俺が幻想入りした日から二日後、霊夢が魔理沙に博麗神社へ来るよう伝えた日。
「これから和徒には魔理沙と戦ってもらう。ここで負けたら早苗に会えないと思いなさい」
試練が与えられた。
次回、魔理沙VS和徒