東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

昨夜の守矢神社にて、和徒の異質さについて問いただす輝夜だったが、早苗の覚悟を受け止めた。
時は現在、和徒は共に床へ就く輝夜に揶揄われつつも理性を保ち、朝を迎えたのだった。


憑依と心と三日目 その2

「これが今、私の持つ全てのカードね」

 

ドゥーとの戦闘から翌日、鈴仙は自身のユナイトカードを並べ、確認をしていた。

 

床に広がるカードは合計5枚。

MADNESS 鈴仙

SONG ミスティア

DOWSING ナズーリン

DISTANCE 小町

MEDICAL 永林

 

紛い者となった今泉影狼と交戦していた和徒に渡したカードは1枚。

NUCLEAR お空

 

奪われたであろうカードは5枚。

BLADE 妖夢

NEVER 輝夜

LUCK てゐ

LAND 天子

THUNDER 衣玖

 

「結構痛手じゃない」

 

ピュアドライバーは和徒のカオスドライバーと異なり、一枚のカードで変身することができる。しかし、カードの枚数が手数に直結するため、変身に使用する鈴仙自身のカードを除いた4枚のカードでやりくりしなければならないのだった。

 

「今度会ったらブン取ってやるんだから」

 

ガスマスクを思い浮かべ、決意を固める。

 

 

 

 


 

 

 

 

「結局夕方じゃねえか」

 

人里で一晩過ごし、早いところ輝夜を永遠亭に送り届けようとしたものの、なんだかんだ言い訳をつけて人里の隅から隅まで回ることになってしまい、夕日が差した。

 

「流石に今日こそは帰ってもらうからな」

 

「分かったってば」

 

すでに景色は人里の住居から竹林へと移ろいでいる。

ここから引き返すようなことがあれば、力づくで連れて行くしかない。

 

「ようやく見えてきたぜ」

 

「あーあ、永林になんて言おうかしら」

 

「素直に言えばいいんじゃねえの?」

 

「言えるわけないじゃない。窮屈だから家出したなんて」

 

「そうか?言葉にしないと伝わらないぞ」

 

「伝えても分かり合えなかったら?」

 

「その時はぶつかり合えばいい。俺は輝夜と永林さんがどういう関係なのか知らないけれど、真正面からぶつかりあわないと相手の本心なんてわからない。だから、言葉と行動で示すことが大事なんだ」

 

「...そうね」

 

「いざとなったら、俺が一緒にいてやる。土下座だろうが逃避行だろうがさ」

 

「ふふ、土下座って」

 

曇っていた表情がわずかに晴れた気がした。

 

「姫様!ようやく帰ってきた」

 

門で出迎えてくれたのは鈴仙とてゐ。

 

「全く、あの後ひどい説教をくらったのサ」

 

そう言えば、鈴仙に輝夜を匿っているのがバレててゐを生贄にしたんだったっけ。

 

「ごめん、鈴仙。輝夜に混沌異変のことを話しちまった」

 

「いいのよ。遅かれ早かれバレるだろうし。それより、無事で良かった」

 

「うどんげ、あの、私...」

 

「ちょ、待ってください。姫様」

 

俺の後ろから姿を覗かせた輝夜が口を開こうとするが、鈴仙が静止する。

 

「たぶん、その言葉は私じゃなくて師匠に言ったほうが良いと思います。私はその気持ちだけもらうので」

 

「...ありがとう」

 

このまま丸く収まりそうで安心だな。

 

「ところで、今、和徒は何枚ユナイトカードを持っているのサ」

 

何枚だろうか。言われてみると、数えたことがないな。

 

「えーと、1,2,3,...」

 

カードの束を取り出したその瞬間、てゐは腕を力一杯伸ばし、鷲掴みにしてきたのだった。

 

「ふんっ」

 

「ぶげっっっ」

 

カードが俺の手から離れそうになる直前、てゐの顔面に鈴仙の蹴り上げた爪先が命中したため、カードは俺の手に再度収まる。

 

「ちょっと、てゐ!どうしたの?!」

 

蹴りの勢いで宙返りをし、不気味にも美しい着地を披露するてゐ。

その手には一本のベルトが握られていた。

 

「あと一歩だったナ。こうなったら無理やり奪うしかあるまイ」

 

先ほどまでのてゐとは異なり、語尾が妙にカタコトである。

 

「てめえ何者だ?てゐに変装してたのか」

 

「ゲハハハハッ違う違ウ。この体は因幡てゐ本人のものだヨ。このベルトが僕サ。そもそも、我が主人の襲撃を受けて、ただ気絶してただけなんておかしいと思わないのかイ?おかげで楽に潜入できたけド」

 

つまりあの時、俺がてゐの元へ駆けつけた時点でベルトが接触して憑依されていたってことか。

てゐはベルトを装着し、一枚のカードを取り出す。

カードに描かれていたのは、刀を握る白髪の少女。

 

「そのカードはドゥーに奪われたはずじゃッ」

 

「ボコボコにされた貴方を運んでいる最中に抜きとったんだヨ」

 

ベルトのバックルが下に開き、てゐはカードを挿入してバックルを閉めた。

 

「ヘンシン」

『BLADE Download』

 

てゐの髪は一瞬にして純白へ染まり、2本の刀が顕現する。

 

「僕の名前は、ハートレスドライバー。3枚のユナイトカードから作られしベルトより誕生した、人工付喪神。長いから、ハートとでも呼んでヨ」

 

新たなベルト。

3枚のユナイトカード。

人工付喪神。

まるで洪水のごとく浴びせられる情報。

 

「つまり、敵でいいんだな?変身ッ」

 

「憑依してるなら、その体を返してもらうまでよ!変ッ身ッ」

 

俺と鈴仙はベルトを装着して姿を変える。

 

『HEROIC』

『ピュア・マッドネス』

 

「はぁッ」

「どりゃっ」

 

弾幕を貼りながら接近する二人。

しかし、刀で弾幕を弾いていなすハート。

 

「『ホロウエッジ』ッ」

 

「いいねエ」

 

鍔迫り合いを行う両者。

その隙を見逃さず、鈴仙が指先から弾丸を放つ。

 

「やっぱり2対1は無理があったカ」

 

「今更後悔してもおせえよ、英雄『夢想封印』」

 

「うがあっ」

 

スペルカードをゼロ距離で被弾してよろめくが、ハートは堪えてスペルカードを繰り出す。

 

「『断命剣「冥想斬」』」

 

「させるかッ『ホロウ・ディスティニーエッジ』」

 

緋色に輝く槍により、ハートの渾身の一閃は防がれてしまう。

 

「クソったれガ」

 

「とどめよ『マッドネス・ストライク』」

 

鈴仙の指先に収束したエネルギー弾がハートを目掛けて射出される。

 

「ぎああああああ」

 

直撃し、ハートの無惨な叫び声が木霊する。

てゐの声帯だから胸糞悪い。

 

爆煙が晴れると、うつ伏せになったてゐの姿。

登場の割にあっけなさすぎる。

 

「大丈夫かてゐッ」

 

「う、頭がズキズキずるのサ」

 

「大丈夫そうだな」

 

一安心したところで変身を解除しようとしたその時、鈴仙が静止した。

 

「警戒を解かないで!さっきのベルト、ハートレスドライバーがないわッッ」

 

「何?!」

 

言われてみれば、てゐの近くにあるのは白髪の少女のユナイトカードのみ。

どういうことだ?

 

「ここだよ、ココ」

 

声の主の方を見れば、ベルトを装着した輝夜が恍惚とした表情を浮かべていた。

 

「命中の瞬間、この女の方に僕自身を投げたんだヨ。憑依の力があるんだから、周囲の警戒を怠っちゃダメじゃないカ」

 

クソっ。てゐに憑依したように、次々と体を乗り換えることができるのか。

 

「だったらもう一回ぶっ飛ばすだけよ」

 

「そう簡単にいくかナ」

 

突如背後から迫る白い影。

 

「うっ」

 

目前へと迫る刃を躱し、敵を見定める。

 

「最悪のタイミングだ」

 

空虚な瞳で俺を捉える白狼天狗、犬走椛。

よりにもよって厄介な紛い者。

文のためにも倒しておきたいが、ハートの相手もしなくてはならない。

 

「和徒!椛が持ってるあのカードって」

 

「なッッ、いつの間に...」

 

椛が握っていたのはレミリアのユナイトカード。

奇襲を仕掛けたのは、俺からカードを奪うのが目的だったのか。

椛がカードを投げ、ハートがキャッチする。

 

「ヘンシン」

『DESTINY Download』

 

輝夜の髪は青紫へと染まり、蝙蝠の如き翼と吸血のための牙を発現させる。

 

「今度は2対2。正々堂々いこうカ」




MEDICAL 医学 八意永林

ハートレスドライバー
簡易設定
接触した相手の心に憑依することができる。
潜在意識に潜んでいる時に気づくことは難しいが、表にでると語尾がカタコトになる。
ベルトにはカードを3枚まで入れることが可能。
強さは、使用するカードと憑依する肉体に依存する。

後半は怒涛の展開となりました。
2章最後に登場したベルトがようやく登場です。
仲間が敵に操られて変身する展開って良いよね。
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