東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

輝夜は和徒との家出の日々を通して、永林と向き合う覚悟を決める。
しかし、新たなベルトに宿る人工付喪神『ハートレスドライバー』に憑依されたてゐの襲撃を受ける一同。
撃破するも、今度は輝夜に憑依した上に、行方不明の紛い者、犬走椛も参戦してくる始末。
和徒と鈴仙は絶体絶命のこの状況を切り抜けることができるのか。


月夜と不死鳥と疾風迅雷 その1

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

「うっ」

 

かつて紅い霧の異変を起こした吸血鬼よろしく、緋色に光る槍を振り回す十二単の少女。

その表情はかつての大和撫子のような謙虚なものではなく、牙を剥き出しにした下品な笑み。

 

「ほらほら、逃げんナッッ」

 

いくらハートに憑依されたと言っても、攻撃を躊躇ってしまう鈴仙。

蓬莱人とはいえ、主人を撃つのは気が引ける。

しかし、相手はそんなことに配慮などしない。

止むを得ず、弾幕で応じる。

 

「いいねえ、いいねエ。そうこなくっチャ」

 

「な、嘘でしょ?!」

 

「この体、蓬莱人だロ?」

 

ハートは弾幕を避けなかった。それだけでなく、防御すらしない。

むしろ、あえて顔面で被弾して輝夜の痛々しい素顔を見せつけ、ノーガードで迫ってくる。

見る人が見れば卒倒しそうなグロテスクな惨状。

 

「おまけに、今僕が使っているのは吸血鬼のカード。この程度、あっという間に完治するんだヨッ」

 

「うがっ」

 

鈴仙が怯んだ隙に間合いを詰め、振り回された槍の打撃が襲う。

至る所から出血していたはずが、時間が巻き戻ったように、ハートは元の美しい体を保っていた。

 

「こっちの気も知らないでやってくれるじゃない」

 

「そんなもの知るカ。心なんて無いのだかラ」

 

血を吐きながらも、覚悟を決める。

徹底的に殺す気でなくては、自分が死ぬ。

これから主人をどれだけ痛ぶろうとも、受け入れる気概を持つ。

もう、逃げない。

 

「『ダウジング・ストライク』」

 

指先から放たれる4発の弾丸。竹林を縫って、ハートへ迫る。

 

「その技は昨日見たんだヨ」

 

吸血鬼に重力は関係ない。

竹に対して垂直に立ち、次々に跳躍して回避する。

 

「だったらこれも躱せるわよね?」

 

着地地点で待ち構えていた鈴仙の回し蹴り。

 

「もちろんダ」

 

地面に槍を突き立て、空中で静止を図る。

しかし、すでに鈴仙はベルトに永林のカードをセットしていた。

 

「やはり、動きを止めたわね。この距離で避けられるかしら?『メディカル・ストライク』ッ」

 

「くはっ」

 

注射器の如く射出された弾丸がハートの頭部を射抜く。

 

「はあああああっ」

 

体制を崩したところへ、鈴仙の拳のラッシュが炸裂する。

吸血鬼の力を得たハートにとって、この程度のダメージはすぐに回復される。

ところが、一向に治らなかった。

頭からの出血は止まらず、全身に力が入りにくい。

 

「どういう気分かしら?一方的に嬲られるのは。心について学べそう?」

 

「な、何が起こっテ...」

 

「理解しなくていいのよッ「ブレイド・ストライク」」

 

両手に出現した二振りの刃がハートの両足を切り飛ばす。

 

「このままダルマに「待って、鈴仙!私よ、痛いからやめてッッ」、うっ」

 

両足に続けて両腕に手を掛けようとしたその時、輝夜が呼びかけた。

普段なら、これがハートの騙し討ちだと気づけただろう。

しかし、輝夜に対する罪悪感から、ほんの数秒動きを止めてしまった。

 

「答え合わせといこうカ」

 

ハートは鋭いその爪で、自身の首を切断した。

ダルマどころか、頭、胴、両脚の4つに別れてしまった体。

それでも、吸血鬼と蓬莱人の力で瞬く間に治り、馬乗りになっていた鈴仙を殴り飛ばす。

 

「頭に喰らったあの弾丸。あれが原因だロ?」

 

「うぐっ、良くわかったわね」

 

「あの弾丸には何かしらの薬と同じ効果があったのだろうナ。再生能力を阻害する効果ガ」

 

吸血鬼だろうが蓬莱人だろうが、脳が肉体に命令を発する。

脳の再生ができなければ、いかなる種族も十分に体を動かせない。

 

「だから、力を振り絞って頭部を分離させタ。蓬莱人がどのパーツから再生するのか賭けだったが、最も大きいパーツから再生するという読みが当たって良かったヨ」

 

ハートは地面に突き立てられた槍を再び手に取り、風穴が空いた自身の生首を叩き潰した。

 

 

 

 


 

 

 

 

白い影が音を置き去りにして駆け抜けていく。

姿を追うのは不可能。直感頼りのお粗末な防御。

 

「うっ、くそっ」

 

時折金属がぶつかり合う鈍い音が竹林に木霊する。

椛のフェイントやディレイを交えた斬撃が絶え間なく浴びせられている和徒は、じわじわと追い詰められていく。

皮膚には無数の切り傷。致命傷へと至っていないのは、紙一重のガードのおかげか。

 

「『オリジンカッター』ッッッ」

 

ヤケクソ気味に放たれる4枚の刃。

当然、椛の影すら掠めることはない。

追尾機能があるといえども、天狗の速度に追いつくことはなかった。

 

和徒の攻撃から、自身への有効打がないと判断した椛は決着を急ぐ。

すれ違いざまの一閃ではなく、力強い一撃を叩き込み、その場でさらにもう一振り。

 

和徒は一撃目を防御しきれず、黒い刀が宙を舞ってしまう。

得物で防ぐことはもうできない。

返す刀が和徒の首元へ迫る。

 

「この時を待ってたぜ」

 

「なッ?!」

 

ホロウエッジが地面へ突き刺さろうとするその瞬間、和徒は一枚のカードをその場所へ投げた。

それは、天邪鬼。鬼人正邪のカード。

 

「『ホロウ・リバースエッジ』」

 

万物をひっくり返す能力。

カードを認識した刀は、大地へとその力を行使する。

 

「重力は逆転するッッ」

 

逆転した重力下において、刃の起動を正確に描くことはできず、椛の攻撃は和徒に届かなかった。

 

「『オリジンブラスト』!」

 

「くっ」

 

溜め動作なく、腕を十字に組むだけで発射される得意技。

身動きがとりずらいながらも、和徒が射出した光線を椛は盾で防御する。

 

「背中がガラ空きだぜ」

 

「あがぁっっ」

 

あたりを彷徨っていたカッターが椛の背中を捉えた。

これには堪らず、両手の武器を落としてしまう。

 

「これでトドメだッ『ヒロイッ....」

 

もし椛がただの白狼天狗なら、間違いなく和徒は勝っていただろう。

しかし、椛は紛い者である。

 

気づけば、和徒の周囲を魔法陣が取り囲んでいた。

魔法陣から、火、水、土といった様々な攻撃が撃ち出される。

 

「うおおおおおお」

 

咄嗟に結界を何重にも張ることで耐え忍ぶが、重力の反転の効果も切れてしまった。

つまり、椛を倒す千載一遇のチャンスは無くなってしまったということ。

 

「しょうがねえ。だったら付き合ってやるよ。てめえの得意分野でな」

 

腹を括った和徒は3枚のカードを取り出した。

描かれているのは、鴉天狗、蓬莱人、地獄鳥。

 

カオスドライバーのレバーを引き、STORM、RESURRECTION、NUCLEARのカードをセットする。

 

「まだ試したことはないから、サンドバッグになってもらうぞ」

 

レバーを押したその瞬間、全身を燃えたぎるような蒼い業火が包み込み、爆裂した。

 

『PHOENIX』




PHOENIX 不死鳥

とうとう3つ目のフォームの登場です。
文、妹紅、お空の3枚を使うことを予想できた方はどれくらいいたでしょうか。

それにしても前回から1ヶ月も経った更新となってしまいました。
今月は更新を頑張ります。
また、初めて感想がついてとても嬉しかったです。
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