輝夜に憑依したハートに対し、鈴仙は『メディカル・ストライク』で再生能力を阻害することで追い詰めるも一瞬の躊躇からトドメをさせず、反撃を許してしまう。
一方、和徒は椛の高速斬撃に翻弄されるが重力を逆転させて不意をつく。
しかし、パチュリーの力を持つ椛にはあと一歩届かなかった。
覚悟を決めた和徒は、文、妹紅、お空のカードをベルトにセットし、フェニックスフォームへと変身した。
『PHOENIX』
蒼い光から和徒が姿を現す。
瞳は紺碧に染まり、黒髪にも同色のインナーカラーが入ったロングヘア。
頭部には白に赤色が差し込まれたリボン。
中央に赤い目が埋め込まれた白の半袖シャツとフリル付きの黒スカート。
左足のブーツの周りを光球が飛び回り、右足は頑丈な金属がブーツを覆っている
右手首にも多角柱の腕輪をは待ているが、何より特徴的なのは、背中の開けたシャツから見える地肌に生えた黒い翼。
椛は警戒を最大限高め、ヒット&アウェイを再開する。
しかし、椛の刀は和徒に容易く躱された。それどころか走る椛へと接近。
「逃さねえよ!」
蒼炎を纏った片足で放たれる飛び蹴り。その足先は爆発を伴う。
避け切れなかった椛は脇腹へと喰らい、高速移動の慣性を殺し切れず転げ回った。
ようやく勢いが止まったところで、すでに先回りしていた和徒が視界に入る。
咄嗟に魔法陣を生成して撃ち出される火球と岩石。
「ノロいノロい」
それらは和徒の残像に向かっていくだけで、もうそこには攻撃対象はいない。
椛は直感的に振り向いて盾を構えた。
これは、経験上背後から攻撃するだろうという読み。
普段から俊敏性を用いた攻撃を多用していたからこそ気づいた技。
黒い刃が盾を打つ。
「ちっ」
意識から抜けていたであろう一閃の防御に和徒は舌打ちをする。
わざわざ突き立てられた刀を一瞬のうちに取りに行った上で防がれたのだから、驚くのも無理はない。
そのまま椛はもう一方の手で横薙ぎにするが、和徒は勢いよく飛び上がり避ける。
天狗の速度に加えて両脚から火炎と爆発から推進力を得ている和徒の速度に今の椛は追いつけない。
だから、椛も奥の手を使った。
幾度となくその身を守ってきた盾を投げ捨てて飛び立つ。
攻撃を防ぐという名目上、盾は決して軽くはない。
身軽になった白狼天狗が最高速度を魅せる。
「『フェニックスフェザー』ッ」
追跡する椛に向けて、和徒は蒼炎に燃える羽の弾幕を解き放つ。
対する椛は竹林を隠れ蓑にしてさらに距離を詰め、接触まであと数秒。
「『フェニックスプロミネンス』!」
右手首に備え付けられた多角柱の腕輪が発光し、レーザーがぶっ放された。
体をのけぞることで数ミリ単位でかわした椛。
その刃が和徒の体を捉え、血飛沫が舞った。
「うぐっ」
腹部の傷から内臓が見えそうである。
しかし、傷口に青い炎が灯ったかと思えば、跡形もなく傷は消えていた。
「蓬莱人の力があることを忘れてんのか?」
そう言われて、椛は和徒にあったはずの無数の切り傷が消失していることに気がついた。
この姿の強みは機動力だけではない。
「今度こそトドメだっ『フェニックスバースト』ッッッ!!!」
胸元の赤い目を起点として青い巨大な火球がつくられ、右手から放つレーザーで射出される。
虚をつかれ、盾すら持たない椛は観念し、光流に飲まれた。
人里から徒歩数分、博麗神社への参道にて男が一人。
男は目の前にある不恰好な要石へ手を伸ばす。
要石に幾重にも重ねられたしめ縄がひどく不気味である。
しめ縄はあまり劣化しておらず、この要石は比較的最近設置されたものらしい。
それもそのはず。この要石は混沌異変が始まってから置かれたのだから。
「迎えに来ましたよ」
男の手にあった一枚のカードが要石へと吸い込まれる。
カードには「PHOTOGRAPH」と書かれたいた。
「さあ、目覚めなさい。封印されし紛い者」
幻想郷には、行方不明の紛い者と封印された紛い者がそれぞれ一人ずついた。
一方は下っ端哨戒天狗、犬走椛。結合したカードは「ELEMENT パチュリー・ノーレッジ」
「うらめしやー」
もう一方は愉快な忘れ傘、多々良小傘。結合したカードは「SIZE 少名針妙丸」
しめ縄が千切れ飛び、砕けた要石から傘おばけが姿を現す。
「これからあなたには、外の世界へと行ってもらいます」
男は彼女へそう告げる。顔はモザイクで表情こそ分からないが、楽しげな声色だった。
迷いの竹林の中、鈴仙とハートの戦いは勢いを増していく。
緋色の槍と白色の二人の刀が月夜のもとで強く輝く。
しのぎを削る両者だが、吸血鬼と蓬莱人の治癒能力がるハートの方が優勢であり、鈴仙は徐々に押されつつあった。
「はぁッッ」
「なっ?!」
振り回される槍を受け止めた瞬間、状況が変化した。
度重なる重い攻撃に刀は耐久値を減らし、とうとう砕け、霧散してしまったのだ。
「これはさっきのお返しダ」
ハートはベルトの上部を左の握り拳で叩く。
その瞬間、ハートの右手に赤色の光が集まった。
「『シングルスマッシュ』ッ」
槍を大地へ突き刺して鈴仙へ肉薄したハートはそのまま腹部へ右拳を叩き込む。
「あがあっっ」
吹っ飛んだ鈴仙は何本も竹をへし折り、膝をつく。
昨日ドゥーにくらった『デス・ボンバー』はまだ癒えておらず、今の『シングルスマッシュ』で肉体は悲鳴をあげていた。
それでも、鈴仙は立ち上がる。主君のために。信じてくれる師匠のために。そして、共に戦う仲間のために。
「もう降参したラ」
呆れ顔でハートが言う。
しかし、鈴仙はそれを鼻で笑った。
「ふっ」
「?、なにがおかしイ」
「いえ、別に。ちょっとね」
「「ちょっと」何なんダ?」
「言ってもいいのかしら?」
「早く言エ!!!」
鈴仙は一度視線を泳がせ悩む仕草をした後、こう言った。
「人工付喪神とやらも油断するのね」
「はっ」
自身へ何かが高速接近していることに気がついたハートは振り向き、防御の姿勢を取る。
「『ホロウ・フロストエッジ』」
蒼炎に燃える不死鳥がすれ違いざまにハートの胸元へ刀を突き刺した。
その途端、ホロウエッジから爆発的な寒気が吹き出す。
「超低温下における再生速度はどのくらいなんだ?」
「真島和徒ッ!!!」
怒鳴り声を上げるハートだが、刺突箇所から体が凍っていく。
引き抜こうにも、刀身を掴めばその箇所も凍って抜けないのは自明である。
「『シングルスマッシュ』」
再度右手に赤いエネルギーを貯めたハートは、ホロウエッジを下から殴り上げる。
刀に触れる時間を一瞬に絞ることで、両手を欠損せず摘出する荒療治。
しかし、鈴仙はすでにそれを見越していた。
宙を舞う刀を掴み、魂魄妖夢のユナイトカードをかざす。
さらに、ピュアドライバーに小野塚小町のカードをセット。
刀を腰に据えたその姿は居合の構え。
「『ディスタンス・ストライク』」
鈴仙の姿が消える。
距離を操作する『ディスタンス・ストライク』は、擬似的な瞬間移動の技である。
目標地点と自分の距離を操作することで、自身の位置を高速でスライドさせる。それがこの技の原理。
ならば、刀を振り抜く動きと共に使えば、それすなわち居合斬りとなる。
「こう言えばいいのだったかしら、『ホロウ・ブレイドエッジ』」
胴体を真っ二つに輪切りとなったハートを後にし、鈴仙はつぶやく。
ハートが憑依していた輝夜の体は完全に凍結しており、胴体の切り口も氷で覆われ静止していた。
「和徒、悪いけどここまでみたい」
「お疲れさま」
鈴仙の返信が解除され、倒れる。
椛vs和徒
勝者 和徒
ハートvs鈴仙
勝者 鈴仙
「これは回収させてもらいますわ」
「ッ?!」
一体いつからいたのだろうか。
長身の女が輝夜の体からハートレスドライバーを取り上げていた。
「誰だてめえ」
「まあ、初対面の相手に酷い口の聞き方ですこと」
女の片手には身長と同じかそれ以上の長さの棒。
そして、女の顔は一面モザイクで覆われていた。
「私の名前はカナン。ニル様の眷属」
カナンはどこからともなくユナイトカードを取り出す。
刻まれた文字はTHUNDER。
「あれは、私が持っていた永江衣玖のカード...」
鈴仙が地に伏したまま和徒へ伝える。
「これはユートピアシャフトというらしいのだけれど、まだ使ったことがありませんの」
カナンは棒の中部にある出っ張りにカードをスライドした。
『Thunder Install』
そのままダイヤルを回してボタンを押すと、一枚の仮面が顕現する。
それは仮面舞踏会でも行われているような、煌びやかなものであった。
特徴を挙げるとすれば、紫に発光する稲妻の模様。
『黒い海に紅く ~ Legendary Fish』
「装着」
吸い寄せられるようにカナンの顔に仮面が張り付く。
「Shall we dance?」
夜はまだ開けない。
PHOTOGRAPH 写真 姫海棠はたて
フェニックスフォーム
青い高熱の炎と爆発を利用した高速移動で戦うスピードタイプ。
他の姿に比べて軽量化をしているので肉弾戦には弱いが、高い治癒力をもつ。
アウトレンジからの羽の乱射や右手首から放つ高出力レーザーが強み。
必殺技は『フェニックスバースト』。
ようやく倒したかと思えば、新たな眷属の登場。
そして、ドゥーは小傘に外の世界で何をさせるつもりなのでしょうか。
次回の更新はなるべく早くしたいです。保証はできませんが。