東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

慣れない高速戦闘に精神をすり減らしながらも、カナンとの疾風迅雷の勝負を制した和徒。
外の世界では、小傘はマエリベリー・ハーンの暗殺を企てていた。


月夜と不死鳥と疾風迅雷 その4

迷いの竹林にて燃え盛る、蒼炎の嵐。

その中から、一枚のカードがひらりと和徒の元へ流れ着く。

刻まれたACTIVEの文字と注連縄を背負った女性。

 

「これは神奈子様のユナイトカードじゃねえか。あいつが持ってたのかよ」

 

業火から這い出てきた女性が煙と焦げ臭い匂いをあげながら、ぶつぶつと何かを呟いている。

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

 

「おっかねえな、こりゃ」

 

仮面はところどころ溶け、シャフトを杖のようにして向かってくる。

和徒は再び構え、カナンがパチュリーのカード取り出し、使おうとしたその時、

 

「それ以上は許可できませんよ、カナン」

 

時間でも止まっていたかのような、出現。

ガスマスクのような仮面を取り付けた女が立っていた。

 

「丁度良かった。ドゥー、お前もブチのめしてやるよ」

 

「生憎、私はまだ右手が治っていないので戦うつもりがありません。私は彼女らの回収に来たのですから」

 

ドゥーは先日ちぎり飛ばした片腕は治ってきてはいるものの、手首から先がなかった。

 

「そんなこと、させると思うか?」

 

和徒の腕輪に火が灯る。

 

「和徒、無理しないで頂戴。あなたはもうとっくに限界のはずよ」

 

「いいや、俺はまだ...うっ」

 

体から青い粒子が霧散し、ブラウス姿のオリジンフォームへ姿が変わってしまう。

 

「カナン、あなたには『八意永琳が不在の場合に限り、戦闘を許可する』と伝えておいたはずですが?」

 

「だ、だって」

 

「言い訳は結構」

 

項垂れるカナンの手から、先ほど使おうとしていたパチュリーのカードを取り上げるドゥー。

そのままパチュリーのカードは投擲され、椛と再度結合する。

 

「彼女にはまだ紛い者でいてもらう必要があります」

 

さらにドゥーは新たなカードを射出し、無情にもそれは椛の体に吸い込まれる。

そのカードにはSAINTの文字と髪が紫と黄色のグラデーションになった女性が描かれていた。

 

「がぁっ、ああああああああああ!!!!!!!」

 

竹林に木霊する椛の絶叫。

一つの体に二枚のユナイトカード。

再起不能となった肉体にかかる強烈な負荷。

 

「やめろッ」

 

「いいえ、やめません。これで二重結合は完璧に達成されました。実験は次のステージへ進めます」

 

「椛を一体何だと思ってやがる」

 

「実験動物、モルモット、素材、道具、何と言えばあなたは喜びますか?」

 

「ふざけんなっ」

 

両腕を十字に組む。

 

「おっと、それでは退散させていただきますか」

 

「逃すかッ『オリジンブラスト』」

 

残り少ないエネルギーを振り絞って撃ち出す光線。

しかし、それは白狼の盾に防がれる。

 

「なっ」

 

「流石聖白蓮の力。その状態でもこれほどの運動能力を引き出せるとは。それでは、さようなら」

 

モザイク柄の壁が広がり、ドゥー、カナン、椛が溶けるように消えていく。

和徒の体はもう変身を維持できなくなり、元の男へと戻ってしまう。

 

「ちょっと、一体何があったのよこれ!」

 

ここ数日聴き慣れたが、やけに懐かしく感じてしまう声。

 

「輝夜、元に戻って良かった」

 

「元に戻る?どういうこと?」

 

「さっきまでお前は憑依されて...」

 

鈴仙はハートに憑かれた輝夜の上半身と下半身を切り飛ばしていた。

この場合、どのように治り、復活するのか。

切り離された体がくっついた?

いや、事実は異なる。

上半身から新たな下半身が生えて復活したのだ。

それはつまり、

 

「和徒、それ以上姫様を見ることを許しません」

 

和徒の視線の先には、露出された輝夜の恥部があった。

突然のラッキースケベ。

和徒とて16歳の男子。絶世の美女の裸体などクリティカルヒットである。

 

「うわ、通りで寒いと思ったわ」

 

かつて十二単だったもので咄嗟に隠すが、明らかに長さが足りていない。

ここで、和徒はある違和感を覚えた。

 

「ん?たしかになんか寒いような」

 

輝夜が感じた寒さは、半裸故の寒さ。

とすると、自身が感じる寒さの原因は何か。

 

「あー、そういうことね」

 

胸元から未だ止まらない出血。

どうやら治りきる前にフェニックスフォームは解除されてしまったらしい。

出血多量により、意識がブラックアウトした。

 

 

 

 


 

 

 

 

「知らない天井だ」

 

ノルマは達成。

病室のベットから体を起こすと、胸元を重点的に包帯が巻かれた病院着の上半身。

永琳が手術してくれたのだろう。点滴も視界の端に見える。

 

「どう?体の調子は」

 

噂をすれば、永琳が入室してきた。

 

「あんな傷を負ったとは思えないくらいだ」

 

「そう。一応今日含め二日は安静にしておくことね」

 

「分かった。他の奴らは?」

 

「みんなとっくに目を覚ましているわよ。まあ、鈴仙も連日の戦いで相当疲弊しているから今は休んでいるけれど、てゐと姫様は元気に過ごしているわ」

 

「なら良かった」

 

「それにしても、あなた。姫様の家出を幇助したらしいわね」

 

ぶわっと冷や汗が吹き出す。

そういえば、永琳がカンカンに怒っているって鈴仙が言ってたような言ってないような。

 

「その結果、姫様は乗っ取られて危うく鈴仙も死ぬところだった」

 

「...すみませんでした」

 

「いえ、違うの」

 

「違う?」

 

「私の責任だわ。私が姫様としっかり向き合わなかったことが原因。だから、こうして誰も欠けることなく乗り越えることができた貴方には、感謝している。本当にありがとう」

 

てっきりゲンコツでもくらうだろうと覚悟していたから、拍子抜けしてしまう。

だけど、良かった。永琳も輝夜に向き合おうとしていたのか。

となれば、あとは本人たちの問題だ。

 

「あ、和徒。やっと起きたんだ」

 

「おう、ついさっきな」

 

部屋の扉に半身を隠し、輝夜が覗き込んでくる。

どうしたんだ?さっさと部屋に入ればいいのに。妙に緊張しているような仕草をしている。

 

「あのね、永琳。話があるの」

 

「何でしょうか」

 

そうか、輝夜も覚悟を決めたのか。

勇気を込めた一歩が踏み出される。

 

「私、仲間外れはやっぱり嫌!私と貴方は確かに主従関係で結ばれている。だけど、永遠亭のみんなは私にとって家族なの。

 

「だから、だからこそ。みんなと一緒に嬉しいことも辛いことも一緒に頑張りたい。

 

「そうして、この先もこおの地上で悠久の日々を共に過ごしたい。

 

「だめかしら」

 

出だしの声量に比べ、最後の一言はひどくか細かった。

だけど、その強い思いは最後まで変わらない。

 

「私が今までどれだけのわがままを聞いてきたと思っていたのですか?」

 

「え、えーと...3個くらい?」

 

「数え切れないほどですよ。そしてこれからもそのわがままを叶え続けるつもりです。さて、混沌異変についてはどこまで把握しておりますか?」

 

それが永遠の主従関係であっても、お互い向き合わなければすれ違ってしまう。

でも、永遠の時を過ごす彼女らは、いくらでもやり直すことができるのだ。

 

「和徒、あなたの言うとおり。ちゃんと伝えてみるものね」

 

「ああ、土下座する用意をしていたんだが、杞憂だったみたいだな」

 

輝夜は吹き出し、永琳にも笑みが溢れる。

 

「そうだ、和徒。手を出して」

 

俺が手のひらを差し出すと、握り拳を作った輝夜が何かを載せる。

 

「おまじないよ」

 

輝夜の手がどかされ、置かれたものが姿を現す。

そこにあったのは、

 

「な、なあ...これって移植用の奴?いたずらにしてはやりすぎだぞ」

 

指。

白磁のようなきめ細やかな白い肌。短さから察するに、女性の小指の第一関節だろうか。

若干生暖かい。

 

「私、真剣だから」

 

見れば、輝夜の左手の小指が明らかに短くなっていた。

 

「蓬莱の薬は私の能力の要素を含んでいるの。だから、この指と手を永遠に固定すれば、生えないし腐らない」

 

昔、女性が心中の証として、男性に小指を贈ると言う呪いがあったと聞いたことがある。

 

「これからもよろしくね。未来の旦那様?」

 

永琳の顔を見ず、布団に潜った。俺は生きて退院できるのだろうか。




SAINT 聖人 聖白蓮

輝夜がヒロインレースに参加しました。
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