霊夢から外の世界へ行って紛い者の小傘を退治するよう依頼された和徒は、出発前に紅魔館へと向かった。
紅魔館でレミリアから運命を変えるだろう道具として咲夜のナイフをもらい、帰りの道中で文から高速移動のコツを教わって、準備を整える。
翌日の夕方、博麗神社を起点に外の世界へ飛び出した。
結論から言うと、驚くほど順調に事は進んだ。
夜中にコンパスが示す方へ飛び、日中はネットカフェやカラオケといった店で寝る。この繰り返し。
そんなこんなで3日経過し、京都にて、とうとう小傘との距離を500m圏内まで詰めることができた。
移動する理由が無くなったので、周辺地域の聞き込みを開始した。
その翌日。つまり今日。
「君、未成年だよね。最近ここら辺で人を驚かそうとしてる子供がいるっていう通報が多いんだけど、心当たりないかな」
最初に断っておくが、このセリフは俺の発言ではない。
むしろ俺が言われている側である。
制服を着た警察官から。
小傘がこの地域に滞在している事は、この人のセリフから確定したと言える。
だが、まさかその疑いをかけられるなんて思いもしなかった。
「いや、むしろ俺はその事件について調べている最中で」
「本当に?学生証とか持ってる?」
「...ないです」
「リュックの中身見せてもらってもいいかな」
「わかりました」
めちゃくちゃ疑われてるじゃん!
でも、そんなやましい物なんて入ってなかったはずだし、
「君、何これ」
「あ」
警察官が取り出したのは、俺がレミリアからもらった銀のナイフだった。
「メリーはこれ、どう思う?」
「これって?」
「これよこれ!最近この街にでる子供の噂!」
「子供なんてどこにでもいるでしょう」
「それがただの子供じゃないんだって!なんでも、物陰から突然出て驚かしてきたかと思いきや、金髪の女性の写真を見せて知り合いか聞いてくるらしいのよ。それで、気がついたら消えているなんて絶対人間じゃないわよ」
「ふーん、金髪ね」
メリーと呼ばれた少女は、ポケットから取り出したカードを見つめる。
そのカードには、彼女に似た雰囲気を持った女性が描かれていた。
どちらも髪の色は金色である。
「どう?興味出た?」
「まあ、新しい活動のネタとしては良いかもね」
「それじゃあゼミも終わった事だし、調査に行くわよ」
秘封倶楽部。それが彼女たちの名。
「蓮子、一つ聞きたいのだけれど良いかしら」
「どうぞ」
「あなた、その噂について事前にある程度調べてきたのよね」
「ある程度、と申しますと?」
「たとえば、目撃された場所や出現しやすい時間だとか」
「...」
「ねえ」
「...今から調べます」
夏も終わりに近づいたとはいえ、ずっと歩いてばかりでは流石に堪える。
「それなら、あそこの公園でちょっと休みましょう」
たまたま視界に入った公園へ歩みを進める二人だったが、ここで妙な二人組が目に止まった。
一方は、彼女たちよりも年下に見える少年。
もう一方は、制服に身を包んだ警察官。
補導にしてはおかしな時間であるうえ、少年の目が驚くほど泳いでいる。
何か事件を起こした犯人だったのだろうか。
こういう場合、メリーは無視する。面倒ごとに巻き込まれてしまうのは御免だからだ。
しかし、蓮子は違う。好奇心に惹かれ、すでに話しかけていた。
「お巡りさーん、どうかしたんですか?」
「ん?君たちは誰だい」
「私たちはこの街に住んでる大学生なんですけど...って何ですかそのナイフ」
「これは、その子のリュックに入っていたナイフだよ。いくら思春期といってもこれはないだろう」
どうやら少年は警察官から荷物を調べられているようだった。
それにしてもナイフを所持しているとは何と危険なことだろうか。
「他にも、こんなカードをいっぱい持っていたんだけど君たち若者の中で流行っているのかい?」
取り出されたのは、十数枚のカードの束。
様々な少女と英語が刻まれているカード。
それを見た途端、彼女たちは顔を見合わせた。
そう、そのカードはメリーが持っているカードと同じタイプのカードだったからである。
「あ、もしかして、君が例の子か!いやあ、探してたんですよー」
「何?知り合い?」
「はい、私たちは最近この街にでる『驚かす子供』の調査をしてて、ネットで協力してくれる人の募集したら一人いたんですよ。この公園で待ち合わせしてたから、会えてよかったなー」
嘘である。蓮子はネットで募集などしていないし、公園で待ち合わせもしていない。
しかし、この少年はメリーが持っているカードについて確実に何か知っている。
もしここで警察署に連行なんてされてしまえば、二度と会えるか分からない、
「それなら、このナイフは?」
「それはきっと護身用ですよ。身を守れるようにって伝えてたんで持ってきちゃったのかな?あはは」
「ほら、話合わせて」
「あ、そうそう、実はこの人たちを待ってたんです。色々迷惑かけてすみませんでした」
「...あ、そう」
メリーが少年に耳打ちした事で、会話が進んでいく。
ひとしきり訝しんだ後、警察官は納得したようだった。
「今回は見逃すけど、子供がそんな危険な物持ってちゃダメだから」
「はい、肝に銘じます。あ、できればその通報とやらについてお話し聞かせてもらっても良いですか?」
どうやら、この少年も噂の調査をしているようだった。
奇遇である。
「いやあ、助かりました。ナイフを見られた時はどうなるかと」
「いいのいいの。まさか警察官から情報収集できるなんて思ってもいなかったし。あ、自己紹介がまだだったわね。私は宇佐美蓮子」
「私はマエリベリー・ハーン。メリーでいいわ」
「俺は真島和徒って言います」
運命のナイフが出会いをもたらした。
BORDER 境界 ???
とうとう秘封倶楽部と合流です。