小傘を追って外の世界へと踏み出した和徒は、無事にこごさの潜伏地域にたどり着いた。
しかし、銀のナイフを所持していたこともあり、警察官から目をつけられてしまう。
そんな彼を救ったのは二名の少女。宇佐美蓮子とマエリベリー・ハーン。
運命的な出会いは何をもたらすのか。
銀のナイフが警察官に見つかった時はレミリアのことを恨みかけたが、結果として俺と同様に小傘の調査をしている二人に出会えたと考えるとプラスだった。
そんなこんなで、お互いの情報交換をするためにもファミレスに来ている。
夕飯にはまだ少し早い時間だが、年上らしく奢ってもらえるそうなので、ここはご厚意に預かろうと思う。
「いただきます」
「食べな食べな、食べ盛りでしょ?」
「ありがとうございます。ここ最近まともな食事を取れていなくて」
「そうなの?それは、家庭の事情とか?」
「いえ、例の事件について調べるために来たので色々節約を」
「何で和徒君はそこまで熱心に調べてるのかしら?」
「え?」
蓮子さんとの気さくな会話に切り込んできたメリーさん。
「私と蓮子はサークル活動として、大学周辺で起きてる事件だから調べているのだけれど、君は遠くからわざわざ来たわけ。16歳の男子が食費を切り詰めてまで調べることなのかと気になるのは自然でしょう?」
最もな指摘である。
「え、えっと、それは...」
まずい。何か考えろ。上手い言い訳を考えるんだ。
「ちょっとメリー、年下の男子をいじめちゃダメでしょ?」
「ふふ、ごめんなさいね。和徒君」
「え?」
え、もしかして俺からかわれてた?
そう思考すると同時に彼女たちの笑い声が耳に届く。
「実を言うとね。あなたが普通じゃないことはもう分かっているのよ。ほらメリー、あれを見せてあげて」
「このカード、見覚えないかしら」
そう言ってメリーさんが取り出したのは、意外なことにユナイトカードであった。
「ど、どうしてこのカードを?!」
「教えても良いけれど、君のことも話してもらう約束よ?」
「分かりました」
背に腹は変えられない。
そもそも小傘を追うという同じ目的を持った者同士なのだから、変にはぐらかさず情報共有ができてよかったと考えるべきだ。
「1週間前だったかしら、私、夢の中でこの世ならざる世界に迷い込んだのよ。そこは自然豊かだったけれども、生物学的に分類できないような化物もいたの。化物に襲われてもうダメだった思ったその時、このカードが元の世界が私を元の世界へ帰してくれたわ」
メリーさんの話に出てきた、自然豊かで化け物がいる世界。間違いない。幻想郷だ。
しかし、幻想入りした人間の体験としては妙に引っかかる。
かつて霊夢に聞いた話では、幻想入りする人間は一般的に2種類。
忘れ去られてしまったパターンか、八雲紫の手で神隠しにあうパターン。
どちらにも該当しない、俺みたいなイレギュラーなのではないだろうか。
「一つ質問したいんですけど、お二人は怪異、街談巷説、道聴塗説について調べるオカルトサークルなんですよね?もしかして霊感が強いだとか、何かしら特別な能力を持っていたりしますか?」
「ええ、私は『結界の境目が見える程度の能力』、蓮子は『星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力』を持っているわ」
メリーさんの『結界の境目が見える程度の能力』。これが幻想入りの原因だろう。
スキマ妖怪だと言われる八雲紫は『境界を操る程度の能力』という、彼女によく似た能力を持っている。
ならば、八雲紫が引き起こす神隠しをメリーさんが体験したとしてもおかしくはない。
「次はあなたの番よ、和徒君」
「分かりました。実を言うと俺は...」
突如として俺たちを襲った悪寒。
この不気味な雰囲気は俺たちの座っているテーブル席の側の窓から放たれている。
視線を送れば、青髪の少女がベタリと窓に張り付き、俺たちを見ていた。
いや、この表現は正しくない。正確には、彼女が持つ写真とメリーさんを見比べていた。
その後何か言葉を発したようだが、窓越しということもあって聞き取れない。だが、その言葉を直感的に理解した。理解してしまった。
『ミ・ツ・ケ・タ』
マズイ。何かマズイ。脳内で警報が鳴り響く。
この緊張感は、初めてフランに会った時のようだ。
「『カオスドライバー』ッ」
彼女が窓を突き破って店内に入ってくるのと俺がベルトを装着するのは同時。
「変身ッ」
キュイイイインッッッ
妖力弾が奴の右手に生成される。
コイツ、まさか店内で炸裂させる気か?!
『HEROIC』
限界までエネルギーを込められた妖力弾が形を維持できなくなり、爆ぜる。
散弾銃のように飛び散る光弾。
照明、食器、窓ガラス。至る所にぶつかり、悲鳴が其処彼処であがる。
しかし、この場所に流血した者はおろか軽傷者すらいない。
「...ヒヤヒヤさせんなよ」
咄嗟に貼った結界。妖力弾の全てを防ぐことは叶わなかったものの、この結界がなければあたりは負傷者だらけだっただろう。
「ひひひ、見つけたよ。マエリベリー・ハーンちゃん...」
小傘の気味の悪い笑い声。
やはり奴の狙いはメリーさんだったか。
彼女を狙う理由は分からないが、この瞬間俺の最優先事項が決まった。
メリーさんを守る。これが第一。
蓮子さんとメリーさんをそれぞれ両脇に抱え、破られた窓ガラスから飛びだす。
「え、あなた誰?!嘘、私飛んでる!!!」
「何なのよ、あの女の子は!どうして私の名前を?」
「二人とも困惑しているところ悪いが、緊急事態だ。どこか安全な場所に心当たりはないか?」
「あ、安全な場所って言ったってあるわけないでしょ?!」
すでに社会人の帰宅時間にさしかかっている。
少しでも二次被害を減らすために灯りの少ない方向へ飛ぶ。
「ねえ、何か光っているものがこっちに向かってきているのだけれど」
「チィッッ、もう来たか」
背後から迫る弾幕。
直感頼りになんとか避けるが、二人を抱えたままではギリギリだ。
「ちょっと、もう少し安全運転にはできないの?!」
「妖力弾に当たらないという安全の運転だ」
「あの子も来たわ!!」
「なんだって?!」
大きな妖力の接近を俺も感知した。
「ギャハハハハ」
「クソッタレが」
ギャリギャリギャリッッッ
傘の打撃が結界に直撃し、耳をつんざく音が響く。
肉薄される瞬間、間一髪結界を張ることができた。
だが、休む間もなく弾幕が再度展開される。至近距離で放たれる弾幕は当然速く、密度も濃い。
「うっ、この、あっ」
「髪の毛が掠ったんだけど?!」
「ごめん酔った、吐きそう」
しかし、二重に結合した紛い者相手にいつまでも避け続けることは叶わない。
「がはっ」
背中にくらった衝撃。
妖力弾をくらった俺は飛行を維持できず、蓮子さんとメリーさんの二人を手放してしまう。
3人の男女は天に足を向け、大地へ堕ちる。
FLY 飛行 博麗霊夢
投稿が遅くなった理由はシンプルに体調不良でした。