東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

幻想郷から、封印から解き放たれた紛い者である小傘を追って外の世界へ来た和徒。
潜伏地域へたどり着くも警察官に捕まってしまったが、和徒と目的を同じくした蓮子とメリーによって助けられる。
お互いの秘密を打ち明け、共に目的を達成しようとしたその瞬間、小傘の襲撃を受けてしまった。
咄嗟の判断で和徒は二人を抱えて逃げるも、強烈な一撃をもらい、墜落してしまうのだった。


噂と出会いとフィールドワーク その3

「やばいやばい、落ちてるんだけど?!」

 

「どうやら私の人生はここまでのようね」

 

「何諦めてるのよメリー!誰かなんとかしてえええ」

 

「ああ、今なんとかしてやる!『ホロウエッジ』」

 

手元に黒い刀が顕現し、文のカードをかざす。

 

「『ホロウ・ストームエッジ』ッッ」

 

嵐を纏った刀剣を地面へと投げ飛ばすと、その軌跡に突風が巻き起こる。

突風は俺たちの落下速度を徐々に弱め、俺たちは何事もなく公園に着地した。

 

「し、死ぬかと思った」

 

「私は腰抜けて歩けないわ」

 

「安心するのはまだ早いぞ」

 

強力な妖力反応の接近をビンビン感じる。

このまま走って逃げ切るのは不可能だろう。

ならば、迎え撃つのみ。

 

「ギャハハハハッ、死ねええ!」

 

上空から急降下した小傘は、得物の傘を力一杯振り下ろす。

二体の妖怪と結合した膂力と落下エネルギー。

当たれば致命傷は確実。

 

『OGRE』

 

バギンッッッ

 

「なっ?!」

 

振り下ろされた傘はピッチャーフライのごとく受け止められた。

3つの鬼の力を宿すオーガフォームには遠く及ばない。

ひび割れたのは俺が踏みしめていた地面。

渾身の一撃が片手で受け止められた小傘は動揺が隠せない。

 

「お返しだぁっ」

 

「ぶげえ」

 

小傘の隙を突いて放たれた左ストレート。

利き手ではないにしろ、その威力は折り紙つきである。

吹っ飛んだ小傘は鉄棒に体が打ち付けられ、金属がグニャリと曲がる。

 

「このパワー、まさか鬼?」

 

「大正解、正解者にはコイツをプレゼントだ」

 

小傘に肉薄し、追撃の拳を振り抜く。

しかし、その一撃は届かなかった。

 

「これは、妖力壁...?」

 

小傘と俺の間に作られた妖力の障壁。

とてつもない分厚さに阻まれて防がれたのだ。

 

「だがよ〜、この壁、こんなに分厚くて広範囲に作って良いのか?相当燃費悪いだろ?オラァッ」

 

ガンッ

 

「ヒィっ」

 

「うおおおおおおお」

 

妖力壁に拳が何度も打ち付けられ、瞬く間にヒビが入り始めて砕ける。

 

「そらぁっっ!」

 

「ぎゃああ」

 

次の妖力壁を作る間もなく回し蹴りが炸裂した。

 

「さあ、お前の目標を話してもらおうか」

 

「こ、来ないでー!」

 

闇雲に弾幕を張る悪あがきにでた小傘だったが、その程度の攻撃ではびくともしない。

弾幕の中歩みを進め、拳の射程距離内へ小傘を入れる。

それが圧倒的な『鬼』のフィジカル。

 

「意地でも吐かないってんなら、トドメを刺すしかないな」

 

右の拳に力を貯め始めた。

 

「ちくしょう!覚えてやがれっっ」

 

「『オーガブレイク』」

 

捨て台詞を吐く小傘へ向け、妖力がチャージされた必殺の拳が解き放たれる。

しかし、小傘に命中することはなかった。

 

「消えた...だと?!」

 

そう、目の前から忽然と姿を消したのだ。

霊夢からの情報では、瞬間移動に関する能力は持っていなかったはずである。

ならば、一体どうやって消えたのか。

何か見落としている気がする。

 

「蓮子さん、メリーさん、今小傘が何をしたのか見てたか?!」

 

「私には一瞬にして消えたように見えたけど」

 

蓮子さんの位置からも同じように見えたか。手詰まりだな。

 

「和徒君、参考になるか分からないけれど、彼女が消えた際、物体の大きさの境界が歪んで見えたわ」

 

「そうか!体を小さくしたのかッ」

 

話には聞いていた、小人のユナイトカードと結合して手に入れた能力。

オーガブレイクを撃つタイミングに合わせて体を縮小して躱す。そのまま、混乱に乗じて逃走。

なるほど、初見で看過して追跡するのは難しいな。

残念だが、今回は諦めるしかない。

 

「悪い、取り逃しちまった」

 

ベルトを取り外して変身を解除する。

 

「え、本当に和徒くんだったの?!」

 

「いや、ファミレスで変身してたの蓮子も見てたでしょ...」

 

「それでもやっぱり信じられないって言うか」

 

「色々盛り上がっているところ悪いんですけど、とりあえず頼み事を一つしても良いですか」

 

二人の視線が俺に集まる。

 

「メリーさん、しばらくあなたの家に泊めてください」

 

 

 

 


 

 

 

 

「来ないですね」

 

「来ないわね」

 

「来ないな」

 

小傘の襲撃からおよそ3日が経過した。

あの後、俺は彼女らに「幻想郷の存在」「少し前に幻想入りした俺が、小傘を追って再び外の世界へ来たこと」「人用の力を使って姿を変えるベルト」のことを包み隠さず話した。あまりにも常識離れした内容を話しているという自覚はあったが、実際に命を狙われた以上、すんなりと信じてもらえた。

 

意外なことに、彼女らの反応は予想と真逆であった。活発な印象のある蓮子さんは、幻想郷の話にワクワクしていたようだったが、自分たちの現状を知るとひどく怯えたようだった。一方、どこか冷たい雰囲気を纏うメリーさんは幻想郷の話を聞いてもまるで「元々知識として知っていた」かのようにどこかそっけなく、小傘が探していた目的の人物であるとわかるとどこか楽しそうであった。オカルト研究のようなことをやっているにしても、蓮子さんの反応は一般的で、メリーさんはどこか異常であると感じざるを得ない。

 

そして、これは話していないのだが、メリーさんが狙われる理由に一つ心当たりがある。それは、メリーさんの持つ能力だ。

『境界』という単語。

つい最近聞いたばかりである。

博麗神社から外の世界へ行く際、霊夢は俺に帰還用の札を持たせた。外の世界と幻想郷の境界をいじることでどこからでも帰ることができる力。八雲紫の能力。思い返してみれば、小鈴ちゃんから借りた本『マンガで分かる!はじめての幻想郷』に描かれていた八雲紫の姿はメリーさんとどこか似ているし、彼女が持っていたユナイトカードの絵は漫画の絵と容姿が完全に一致している。

幻想郷の管理人とも言える八雲紫と関係があるマエリベリー・ハーン。狙われる理由が整いすぎている。

というか、小鈴ちゃんってかなり絵が上手いな。

 

そんなこんなで、蓮子さんも同伴することを条件に俺はメリーさんの下宿先に居着いているわけだが、一向に小傘が仕掛けてこない。確かに俺と言う用心棒がいる以上安易に暗殺を行うことはないにせよ、ここまで音沙汰ないと不気味である。

 

「え、嘘?!コレ支払い今日までじゃない。コンビニ行ってくるわ!」

 

「ちょっと、蓮子。一人で行動してはダメよ。ほら、和徒君も靴履いて」

 

「なんで事前に払って置かないんですか...ズボラだなあ」

 

「うっさいっ」

 

あの日以降決めた一つのルール。『決して一人で行動しないこと』

いつ、どのタイミングで襲ってくるか分からない以上、彼女らの単独行動は死を意味する。

狙われているのはメリーさんだから蓮子さんは平気だろう、と言う意見もあるだろう。

しかし、一緒に行動しているところを見られたため、人質にされる可能性だってある。用心するに越したことはない。

 

時刻はすでに深夜へと移ろうとしていた。

コンビニまでの距離はおよそ7分程度。短い方だが、油断は大敵。

いつでもベルトを装着できる用意をしながら着いていく。

 

「じゃあ、払ってくるわ」

 

「私もちょっと飲み物買おうかしら」

 

「だったら俺は外で見張っておきますよ」

 

そう言って、二人は店内へ入り、俺は外の駐車場で待つことにした。

彼女らと入れ替わるように出入り口から現れた人影。

その人物は俺を見るなり目を丸くさせ、

 

「え?和徒じゃん...」

 

と言った。

人影の正体は中学生くらいの女子。

俺は彼女を知っている。

彼女の名前は『真島 遥』。

俺が居候となっていた親戚の一人娘である。




名前こそ出ていないが、第一話でセリフは出ています。
オーガフォームは肉弾戦のみなら幻想郷でもトップクラス。
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