東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

小傘の襲撃を受け、自由落下を行っていた和徒、メリー、蓮子。
文の力で窮地を脱し、オーガフォームで追い詰めるも、体を小さくさせた小傘に逃げられてしまう。
事情を話し、メリーの家で寝泊まりすることになって三日が経過し、和徒は従姉妹の真島遥と再会した。


満月とオカルトと世界の境界 その1

真島 遥。中学3年生。

両親健在。兄弟なし。一人っ子。恋人なし。

成績は上の下程度だったが、最近下降気味。

 

どこにでもいるような、ありふれた女子中学生。

強いて特徴を挙げるなら、親戚が居候していたことである。

『していた』と言うように、今はしていない。なぜなら、行方不明となってしまったからだ。

失踪当初こそ、家族は若気の至りと考えていたが、一向に連絡がない上に帰宅の気配も見せないため、警察へ通報した。

現在も見つかっておらず、彼女の母は責任を感じて体調を崩してしまった。

そんな特徴も、この世界にとっては普遍的。

あらゆる特異現象はこちらの世界には存在してはならないから。

 

 

 

 


 

 

 

 

「よ、よお。久しぶり...元気してた?」

 

なんというか、早苗に再会した時よりも気まずいのですが。

そりゃあ、小さい頃は親戚の中でも歳が近かったから慕われてはいたけれども、思春期を迎えると嫌悪感丸出しでいつしか会話すらしなくなったからな。

 

「...今までどこにいたの」

 

「ど、どこって」

 

どうする?メリーさんたちは能力を持っていたから良かったけど、完全な一般人相手に幻想郷について話すのはまずいよな。

 

「なんというか、自分探しの旅にね」

 

「ふざけないでよッッ」

 

突然の怒声。

いや、むしろ今まで堪えていた怒りがとうとう吹き出したのだろう。

 

「あんたがいなくなってから、パパは毎日警察に電話して、ママは寝込むようになって、私は...私は...私は自分のせいだって思ってた。私があんたなんかいなくなれって思ったから。願ったから。祈ったから。だからいなくなったんだって...そう思ってた」

 

溢れ出していく言葉と涙。

確かに、きっかけとしては遥とその両親の会話だということは否定できない。

だが、彼女らの心にここまで負担をかけてしまったのは俺の責任だ。

 

俺は早苗と別の道を歩み、その過程で空虚な日常を過ごしていた。

幻想郷に来てから、自分と同じように「誰かに置いてかれた人」を生み出さないよう、誰も離れ離れにならないよう戦ってきた。

誰よりも置いてかれた人の気持ちが分かっているはずだった。分かっていると思っていた。思っているだけだった。

俺は俺が置いて行った遥と彼女の両親のことを何一つ大事に考えていなかった。

俺は馬鹿だった。

 

「な、頭撫でんなアホっ」

 

「はは、昔はこうすると喜んでただろ?」

 

「もう中学生だし、なんなら来年には高校生!」

 

「良いんだよ、別に強がらなくたって」

 

「...ッ!」

 

「悪かったな。勝手にいなくなったりして」

 

「本当よッ私たち家族がどれだけ心配したと思っているの」

 

「ごめん。でも、帰るつもりもないんだ」

 

「どうして?私のことまだ怒ってる?」

 

「違うよ。怒ってない。俺はさ、自分の居るべき場所を見つけたんだ。そりゃあ、遥の家だって俺の居場所の一つだ。だけども、俺のことを求めている人たちがいる。俺にしかできないことがある。だから、戻れないんだ。本当にごめん」

 

脳裏に浮かぶ人妖の姿。

現人神、巫女、魔法使い、神様、天狗、吸血鬼、メイド、悟り、火車、地獄鳥、鬼、橋姫、兎、蓬莱人。

数え切れないほどの出会い。きっと俺は幻想郷に来て、ようやく歩き始めたのだろう。

 

「...分かった。パパとママにはそう伝えておく」

 

「良い子だ」

 

再度頭を撫でてやる。

ようやく泣き止んだようで安心していると、コンビニのドアの開閉音。

 

「あら、和徒君。その子は彼女さん?」

 

「あれー?その子の目腫れてない?もしかして泣かした?」

 

「話をややこしくしないでくださいよ」

 

「は、初めまして」

 

オドオドした様子で俺の後ろに隠れる遥。

いきなり女子大生に絡まれたら中学生といえど緊張するよなあ。

 

「こいつは俺の従姉妹の真島遥です。こっちの二人は蓮子さんとメリーさんな」

 

「どうもー」

 

「よろしく」

 

「よろしくお願いします」

 

少しは緊張がほぐれたかな?

 

「それで、なんで遥ちゃんはこんなところにいるのかな?」

 

そういえば、何でいるのか何も聞いていなかった。

どうしてこんなところにいるんだ?

家は割と遠かったはずだが。

 

「え、えっと、自分探しの旅に」

 

お前もかい!

遥は俺の父さんの方の従兄弟だし、血は争えないな。

と言っても、俺は母さんの方の親戚とは面識がないのだけれども。

 

「あ、渡さなくちゃいけないものがあったんだった!」

 

遥は急いでバッグの中をあさりだした。

そうして発掘されたのは、古ぼけた朱いお守り。

 

「このお守りは叔母さんが、えっと、あんたのママが「あんたに何かあった時に開けて欲しい」って残しておいた箱に入ってたらしいの」

 

お守りを受け取った俺は目を見開いた。

お守りには基本的に神社の名前が記されている。

その神社の名前は、

 

「博麗神社ッ...?!」

 

 

 

 


 

 

 

 

時を戻し、10日ほど前。

和徒が外の世界へ旅立った日の夜。

守矢神社にて。

 

 

 

 

「なんだか和徒が来る前の頃を思い出すね、早苗」

 

「そうですね」

 

諏訪子様の呼びかけに応える。

手元には一枚の写真。それは、和徒と再会するまで毎日のように彼の無事を祈るために使っていた物。

 

「もしかして、もう和徒は帰って来ないんじゃないかとか考えてる?」

 

「いえ、だって帰ってくると約束してくれましたから」

 

そう、確かに和徒は絶対に帰ってくると約束した。

だったら、私にできるのは彼を信じて待つことのみ。

 

「へえ、じゃあおやすみー」

 

「おやすみなさい、諏訪子様」

 

和徒としたもう一つの約束。

『和徒がいない間の幻想郷を守ること』

私にその約束が果たせるだろうか。

現人神なれど、巫女として未熟な自分。中途半端な自分。外の世界で神童と崇められるも、幻想郷ではそれが並。

一方和徒は、無自覚ながらも類稀なる霊力の才能を持ち、紛い者を救い出す手立てを持つ数少ない人間。

その実力は、あの輝夜が目を見張るほどである。

 

和徒はかつて私に置いて行かれたと考えているようだが、すでに立場は逆転している。

これは嫉妬でもなければ、羨ましさでもない。

あるのは、ただの無力感。私は彼が去った幻想郷を守ることができるのだろうか。

私には彼の隣に立つ資格があるのか。

 

輝夜と和徒がデートに行ったあの日、彼に伝えられなかった言葉が胸に引っかかる。

 

『           』

 

物思いに耽っていた私は自分の体から光る粒子が溢れ出し、一枚のカードが生成されていつつあることにようやく気づいた。

 

「これは諏訪子様のカードじゃないですか」

 

 

 

現人神の手に、二柱のカードが揃った瞬間である。




PASSIVE 坤 洩矢諏訪子

いよいよ3章も終盤に差し掛かってきました。
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