かつて居候していた親戚の一人娘、真島遥に再会した和徒。
彼女との会話で、和徒は置いて行かれる者について考え直し、幻想郷で戦う決意を再度固める。
一方、和徒が外の世界へ向かった日。早苗は和徒との関係に苦悩する中、諏訪子のユナイトカードを手にしたのだった。
あの後遥は吹っ切れたらしく、帰ることになったため駅まで送って行った。
それにしても、どうして俺の母親が博麗神社のお守りを持っていたのだろうか。
あのお守りのデザインは、幻想郷にある博麗神社と完全に一致している。
もしかして、俺の母親は幻想郷と何かしらの関わりがあるのか?
「おーい、聞いてる?」
「え、あ、すみません。考え事していて」
「ちょっとしっかりしてよ〜。戦えるのは君だけなんだからさ」
「あはは...」
「それにしても、日が落ちるの早くなったわね」
「確かに、まだこんな時間なのに」
蓮子さんは空を見れば時間が分かる。
戦いには役立たない能力だけれど、外の世界で過ごす分にはかなり便利な能力だと思う。
「お二人はいつ頃から能力を自覚したんですか?」
俺の能力はいつ頃から備わっていたのか不明だが、幻想郷に来ただけでは分からなかった。
レミリアの魔道具でようやく意識して使用することができるようになったものの、調和を生み出せる上限や下限は未だ不明だ。
「私は小学生の高学年の時かな。なんていうか、元々霊感が強い方だったっていうのもあるんだろうけど、校外学習で天体観測をした時に、はっきりと自覚した。周りの誰もそういう知識や能力を持っている人がいなかったから、私は自分が特別なんだって思って、オカルトの道に進んだよ」
「その話、私も初耳だわ」
「だって聞かれなかったし」
能力の自覚からオカルトの道へ。
蓮子さんが面白そうな事件へ首を突っ込まずにはいられないのも、それが原点なのかもしれない。
「悪いけど、私は最初から『境界』が見えていたから自覚とかはないわ。記憶喪失だったし」
「記憶喪失?!」
「ええ、私は大学生以前の記憶がまるでないの。記憶がないと言っても、言葉が話せなかったり、常識が通用しないという風ではなかったわ。言うなれば、誰かのセーブデータを途中からプレイしている感覚ね」
「ご家族から何か情報が得られなかったんですか?」
「それがないのよ。情報がないのではなく、家族という記録すらなかったわ。だから、私はこの謎を解くために怪異現象に立ち向かうことにしたの」
話をきいているかぎりじゃあ、まるで世界に突然マエリベリー・ハーンという存在が出現したみたいじゃないか。
やはり、今回メリーさんが狙われた原因はその出自なのでは?
「それにしも、どうしてそんな話を?」
「それは、これほど科学が発展した世界でどうしてオカルトを探求するのか気になっ......」
どうやら会話を中断しなくてはならないらしい。
満月を背にし、傘お化けが一匹登場。
「キヒヒっ、リベンジマッチだよ」
「フッ、望むところだ。小傘。『カオスドライバー』」
ベルトを装着し、カードをセットする。
「変身ッ」
『OGRE』
再び顕現する鬼の怪力。
「残念だけど、対策済みだよ」
大地を踏み締めて肉薄するも、急上昇して距離を離される。
「待ちやがれッ」
強化された脚力で飛び跳ねるが、追いつけない。
チルノに結合していた『FROST』のカードを使えば捕まえられるかもしれないが、カナンとの戦いの後にお空の『NUCLEAR』と交換したから生憎手元にはない。
気がつけば、奴の背中には大きな黒い翼が展開されている。
「この羽、まさか鴉天狗?!」
「御名答。今宵は満月。妖怪にとって最も力が引き出される日。だからようやく私に結合していた鴉天狗、姫海棠はたての力がようやく100%使えるようになったのさ」
なるほど。通りでこの前戦った時は2枚も結合している割に強くないと思ったぜ。
ここからが本当の戦いだな。
「おいおい、私にばっかり注目して大丈夫か?」
「なっ?!」
小傘は飛びながら、地面へ向けて弾幕を放つ。
その先にいるのは蓮子さんとメリーさん。
急いで彼女たちの元へ駆けつけ、弾幕をこの身で受ける。
「うぐああああっっ」
この前より、妖力弾の威力も上がっている。
「ほら、おかわりだよー」
再度放たれる弾幕。
オーガフォームがいかに頑丈といえども、このまま喰らい続けるのはマズイ。
『HEROIC』
オーガフォームからヒロイックフォームへと変身し、結界で防御する。
ギャリギャリギャリッッッ
結界が削られていく音。
ようやく弾幕の終わりが見えたかと思えば、妖力弾が巨大化して押し潰してきた。
「何いッ?!」
咄嗟に二人に覆い被さって防御するも、鋭い痛みが襲いかかる。
自分の体を小さくするのと同じように、妖力弾も大きくできるのか。
クソ、タイマンならまだしも、二人を守りながら勝てるビジョンが見えない。
「この前の仕返しだよっ」
小傘は巨大な妖力弾を片手に生成した。
1発なら防ぐことができるはずだ。だが、その次は?
あいつはこうやって俺を痛めつけること楽しんでいるに違いない。
きっと何発もぶつけてボロボロになる様を見たいはずだ。
「和徒くん、大丈夫?」
「ああ、絶対守るから安心しろ」
ただの痩せ我慢。
現実は非常である。何か手はないのか。
「お願い。誰か助けて...」
メリーさんの祈りの言葉。
この時、メリーさんが握っていたユナイトカード。八雲紫のカードがほんの一瞬煌めいた。
「それじゃあ喰らいな!まずは1発目ッ」
小傘が片手を大きく振りかぶる。
しかし、妖力弾が撃ち込まれることはなかった。
「ぐはっ」
どこからともなく飛んできた自動車が直撃し、小傘が吹っ飛んだからだ。
「私を呼んだのは君たちかい?」
上空に裂け目が生まれ、少女が一人出現する。
どこかの高校の制服と黒いマントに身を包み、特徴的なリボンのついた帽子を被ったその顔立ちは、どこか蓮子さんを彷彿とさせる。
「まずは私から名乗らせていただこう
「私の名前は宇佐見菫子
「秘封倶楽部の初代会長さッッッ!!!!」
BORDER 八雲紫
次回、3章クライマックス