東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

慧音に憑依したハートは新たな武器、サイコアックスで鈴仙と早苗を返り討ちにする。
鈴仙は肩を槍で撃ち抜かれ、早苗は脇腹を抉られてしまう。
早苗は決死の覚悟で神奈子、諏訪子のユナイトカードと結合して紛い者へと変貌し、ハートを退けることに成功した。



約束と神話と救世主 その3

「特に異常はないわね」

 

「診察ありがとうございます」

 

肩に重傷を負った鈴仙さんを連れ、永遠亭にて永琳さんの診療を受けていた。

 

「まさか紛い者になった後、自力で戻ることができたなんて。それも2枚結合したのでしょう?」

 

「はい、神奈子様と諏訪子様のカードが輝いて、あとは無我夢中で結合していました」

 

あの時の強い鼓動が頭にこびりついて離れない。

 

「鈴仙からも言われたでしょうけど、また結合しようなんて絶対思わないことね」

 

「肝に銘じておます。それと、鈴仙さんの怪我は?」

 

「思ったより状態が悪いわ。2日は安静にしておかないと」

 

むしろ2日で済むのは、さすがの腕前だろう。

 

「本日はありがとうございました」

 

「はい、お大事にね」

 

永遠亭を後にして守矢神社へ飛び立つ。

今日のことは、二柱には内緒にしておこう。

心配をかけるわけにはいかない。

 

 

 


 

 

 

和徒が外の世界へ旅立って7日後。私がユナイトカードと初めて結合してから2日経過した。

 

「早苗様、その節はどうもありがとうございました」

 

「いえいえ、巫女として当然のことをしたまでですよ」

 

人里での戦いを見ていた人がいたらしく、そこから噂が広まって守矢神社は大盛況だった。

 

「救世主様だ!救世主様がいたぞ!」

 

「これからも我らをお守りください」

 

「ああ、ありがたや」

 

なんと言うか、私が求めていた信仰の形ではなくなってしまった。

この神社に祀られているのは私ではなく、神奈子様と諏訪子様だ。

いくら現人神とはいえ、ここまで煽てられると気分は良くない。

 

それだけならまだしも、今まで出現していた紛い者を退治していたのは私だと言う人まで現れた。

曰く、人里で博麗の巫女ではない巫女の少女が紛い者を退治したとか。

それは間違いなく和徒のことだ。

私は文字通り紛い者で、和徒が本物。

 

「やめてください、私は救世主なんかじゃありません」

 

しかし、周りは聞く耳を持たない。

これが人間。人は一人では生きてけず、何かに縋る外ない。

否が応でも思い出してしまう両親の顔。

私を家族、実の娘ではなく現人神として接する人間の姿。

 

かつての目標であった信者の大量獲得が叶ったにも関わらず、虚しさが残る。

これが私のしたかったこと?

私は何のために頑張っていたんだっけ?

 

「そう思い詰めるな、早苗」

 

注連縄を背負った長身の女性が私の肩に手を添える。

 

「神奈子様...」

 

「人間は自分を救う存在を神と崇める。神の違いなど二の次だ。これは昔から変わらない」

 

「でしたら、神奈子様や諏訪子様はどう向き合ってきたのですか?」

 

「ハッ、向き合うも何もないさ。たとえ相手が誰であれ。己を信じ、崇め、奉り、畏怖する者に加護を与えることよ」

 

やはり古代から信仰を受けている神様は違うな。

今回みたいな事案が過去にもあったのだろう。

私はそんなふうに割り切れるだろうか。

 

「あら、少し見ないうちに大賑わいですねえ」

 

鳥居を潜って珍しい人物が顔を出す。

 

「お久しぶりですね、青娥さん」

 

壁抜けの邪仙、霍青娥。

紫さんに匹敵するほどの胡散臭さを持ちながら、人間と友好的な女性。

 

「何やら、ここ最近発生している混沌異変の解決に尽力しているだとか」

 

「いえいえ、私は私にできることをしているまでです」

 

言ってから、自分の失言に気がついた。

 

「でしたら、今困っている私のことも助けてくださらない?」

 

この類の人妖はいつも人の善意につけ込んでくる。

 

「大丈夫ですよ、早苗さんなら問題なく対応できると思っているので。信者の皆さんもそう思うでしょう?!早苗さんにできないことはないってッッ」

 

境内にいた信者が一斉に私の顔を見る。

視線。視線。視線。視線。

外堀を完全に埋められた。

 

「青娥、あんまりウチで好き勝手すんなよ」

 

神奈子様が呆れ顔で話に入ってくる。

神力が吹き出し、威圧感で押しつぶされそうだ。

 

「そんな滅相も無い。実は先ほど噂に聞くユナイトカードなるものを見つけましてね。私にはそれが本物かどうか確証が持てなかったので、お詳しいという早苗様に対処をお願いに来たのですよ」

 

この女、とうとう私に様まで付け出した。

確実に何か裏がある。

 

「早苗、怪しいが要件が要件だ。見てやれ」

 

「...分かりました」

 

「大変ありがとうございます、救世主様」

 

挑発を受け流し、案内に従って空を飛ぶ。

 

 

 

 

5分程度の飛行時間を経て、魔法の森。

 

「たしか、この辺りだったのですがねえ」

 

「いい加減その下手な芝居をやめたらどうですか?」

 

「あら?なんのことでしょう」

 

「異教徒であるあなたが私に相談なんて、おかしな話でしょう?」

 

「ふふ、お若いですね。あ、あそこにありましたよ!」

 

青娥さんの視線の先には、大木の根元に落ちた一枚のカードがあった。

 

「ね?本当の話だったでしょう?」

 

くっ、まさか白だったとは。

一応は見に来て正解だった。

 

「さあ、確認なさってくださいな」

 

青娥さんの前に出て、カードを拾い上げる。

カードに描かれた人物を確認しようとしたその時、

 

カチッ

 

木の根元から聞こえた機械の起動音。

結界を張るよりも先に爆ぜた。

 

「うぐうううっっ」

 

ブービートラップ。

カードを見つけたことで油断してしまった。

 

「だから若いと言ったんですよ、ねええッッ」

 

蹲っていたところに、蹴りが炸裂する。

 

「がはっ」

 

う、息ができない。

 

「さあ、早く結合したらどうですか?成れるののでしょう、紛い者に」

 

彼女の狙いは何だ?なぜ私を紛い者にさせようとする?

意識が朦朧としてきた。

 

誰か、助けて。

 

助けてよ、和徒...




ACTIVE 神奈子

適度に曇らせないとね
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