青娥の罠にハマった早苗は鈴仙を呼ぶも、カナンや芳香が加わったことで窮地に立たされる。
覚悟を決め、2枚のユナイトカードと結合した早苗に対し、青娥はハートレスドライバーで2枚のカードで変身したのだった。
「はああっ」
地面から生えた御柱をそのまま投げ飛ばす。
しかし、直撃する前に隆起した大地が壁となり、防がれてしまう。
「だったらこれでも喰らいなさい!」
洩矢の鉄輪が周囲に展開され、一斉に襲いかかる。
「貴方の坤と私の大地、どちらが強いか賭けてみるのも悪くないですね」
しかし、応じて青娥さんも岩石を砲弾のように打ち出して相殺する。
それどころか、岩石砲は鉄輪を潜り抜けて私は何発も被弾してしまった。
「これが本物の力よ、わかったかしら?」
「まだまだあ!」
御柱をカタパルトのように射出し、同時に駆け出して接近戦を図る。
私の身に宿るのは軍神と祟り神。
肉弾戦ならこちらが上だ。
「私に結合しているのが天人の力だけじゃないって忘れてないかしら」
「なっ?!」
振り返れば、すでに私の背後には入道が佇んでいた。
雲居一輪さんのカードが結合していることを失念してしまった。
視線を戻せば、青娥さんはベルト上部を叩いて拳に赤いエネルギーを纏っていた。
挟み撃ちだ。避けられない。
正面の青娥さんは拳をさらに岩石で押し固め、背後の大入道は巨大な拳を形作る。
「潰れなさい!『シングルスマッシュ』ッッ」
「あがああああっっっっ」
鳩尾と背中、両面から加わる巨大な圧力に一瞬意識が飛ぶ。
「並の人妖なら圧死しているはずなのだけれど、さすが神の力。タフね」
確実に肋骨は折れている。内臓にも深いダメージが入っているはずだ。
私が紛い者になってすでに1分経過している。
残り時間はおよそ30秒。
乾の力で無理やり肺に空気を押し込み、吐き出した酸素を取り戻す。
次の一撃で仕留めるしかない。
全身の神力を手元に集める。
「奇跡『神の風』」
「そんな搾りかすの神力で倒せると思っているのかしら。だとしたら傲慢ね」
全身全霊のスペルカードさえ、土壁に防がれてしまう。
間髪入れず、青娥さんはベルトの上部を2回叩いた。
「これが現実よ、救世主様。『デュアルバレット』」
拳銃のように構えた右手から、赤と青の弾丸が撃ち出される。
弾丸は腹部を貫き、後方の木々を薙ぎ倒す。
「がはっ...」
膝から崩れ落ち、全身から力が抜け落ちる。
ドクンッッ
ああ、時間切れだ。
カードがもう離れない。結合度が2になってしまったのだろう。
これで私も幻想郷における害獣。討伐対象だ。
敵を倒すために怪人に成り果て、その敵すら倒せない。なんて無力なのだろう。
救世主なんて笑わせる。何が神だ。
こんな私に何が守れるのだ。
『私は私を信じる人間のために、ここに来た』
脳裏に浮かぶビジョン。
古代の日本だろうか。諏訪子様が見える。
『ほう、たとえそれがどれだけ無謀な戦いだとしても?』
対面しているのは神奈子様?
以前、二方は敵同士だったと聞いたことがある。
カードが結合してその記憶が流れ込んできているのかもしれない。
『もちろん、例えどんな手を使っても意地汚く生き残るさ』
『祟り神と畏怖されるだけはあるな。だが、これを見てもそんなことが言えるのか?』
『貴様ッ』
神奈子様が掲げたのは人間の男性の生首。
心優しい面影がある。
『そうだ、洩矢諏訪子。これは貴様の伴侶の生首だ。直接殺したのは私だが、貴様が殺したのと同義だぞ?』
『ふざけるなっ、その手を離せ』
『ほらよ、その首持ってとっとと降伏するんだな』
無造作に放り投げられた頭部を諏訪子様は受け止め、大粒の涙をこぼす。
『ごめんよ、私が弱いから。私が無力だから。もっと強くて偉大だったら貴方を守れたのに』
『さあ、洩矢諏訪子。このまま戦うか?』
『私は...』
ドクンッッ
「うっ、ここは現実世界?」
過去回想が途切れ、ようやく現実世界に帰ってきた。
あの生首の男性はきっと私の祖先だろう。私は諏訪子様の血を継いでいるからなんとなく分かる。
「あら、可愛らしい帽子としめ縄ね」
「これは...?!」
結合度が3に到達したのか、諏訪子様の帽子と神奈子様のしめ縄が装備されていた。
自分がバケモノになってしまった実感がようやく湧いてくる。
もう後には引けない。
このまま進めば、私の自我は汚染されて完全なる怪物へと変貌していくだろう。
だったら、例え私が私でなくなったとしてでも、幻想郷の平和を守ってみせる。
だから、力が欲しい。誰にも負けない、この幻想郷を統べるほどの力。本物の救世主となるために。
「さようなら、東風谷早苗。神殺しの邪仙を名乗らせてもらうわ」
『俺がいない間任せたぞ』
和徒、その約束守って見せます。
だからどうか、お帰りなさいと言えない幼馴染を許してください。
そして諏訪子様、あの日貴方は神奈子様になんと答えたのですか?
「ああああああああああああ!!!」
「この吹き上がる神力、とうとう結合度が4に達したようね」
満身創痍で神力も微々たるものだったはずの早苗が起き上がる。
その瞳は冷徹で、人を見下したような。いや、人を人と思っていないような傲慢さ。
「はああああっ」
「ぐ、なんて力なの?! 鬼と互角じゃないかしら」
結合度が4を超えると、ユナイトカードから引き出される力はリミッターを外れる。
かつて日本の歴史に名を残した軍神の闘気は天人や入道とは比べものにならない。
「『サイコアックス』!」
「ああ!」
早苗は鉄輪をメリケンサックのように持って振り下ろし、青娥はそれを斧で受け止める。
「『タイム・シャイン』」
どこからか放たれたエネルギー弾が早苗に着弾し、動きが止まる。
射手はガスマスクを被ったメイド。煮るの眷属の一人。
「ドゥー、迎えに来てくれたの?」
「はい、彼女の結合度を上げる目的は達成されましたからね」
暴走する現人神を残し、憎悪を向けた相手は消え去った。
TIME 時間 十六夜咲夜
あと少しで主人公視点に戻ります。
ハートレスドライバーに一枚以上カードが装填されてる時にボタンを1回押すと『シングルスマッシュ』、2枚以上カードが装填されてる時にボタンを2回押すと『デュアルバレット』。
3枚で3回だと...?!