東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

外の世界で暗躍していた紛い者の小傘を撃破した和徒は、ついに守矢神社にて早苗と再会した。
和徒の必死の訴えによって、早苗は本来の人格を取り戻しかけるも、ドゥーに阻まれてしまう。
早苗と和徒、互いを想う幼馴染は殺し合う運命となってしまったのだった。


信仰と殺意と伝える言葉 その3

「くそ、なんて連射速度してやがる」

 

高速で飛ぶ和徒のすぐ背後をマシンガンよろしく鉄輪が穿つ。

和徒はその気になれば早苗の元まで急接近できる。

しかし、それは最短距離で移動できればの話だ。

最短距離とは鉄輪の射線上ど真ん中。もし通れば八つ裂きになることは間違いない。

とすれば近づくための手段は、細かい移動で徐々に距離を詰める他ない。

 

「ってのは面白くねえよなあ」

 

意外にも、和徒は静止して右手を突き出した。

無数の鉄輪が目前に迫る。だが、着弾よりも早く和徒の腕輪が輝いた。

 

「『フェニックスプロミネンス』」

 

太陽を想起させる程の熱線が右手から噴出され、その軌道を中心に半径2mの雨が全て蒸発した。

その熱量は、神が創造せし金属でさえ無に返す。

一瞬にして早苗が撃ち出した鉄輪は気化し、光り輝くガスとなった。

熱線はそのまま早苗を捉えたが、結界で弾かれてしまう。

 

「十分、ここまで近づけたぜ」

 

両者同時に拳を振り抜く。

 

スパンッ

 

和徒のジャブが先制攻撃となり、早苗の拳は空を切った。

 

「うぐあ」

 

いくら神の力を手に入れたと言えども、天狗の速度には及ばない。

和徒は両拳に蒼炎を灯し、ラッシュを浴びせる。

 

「うおおおおおおお」

 

早苗は体表を強力な神力で覆っているため、並の攻撃では傷一つつかない。

しかし、打撃の直前に火炎でその神力を焼き切ることで、ダイレクトにダメージを与えられる。

和徒はその仕組みを理解していたわけでは無かったが、直感的に行っていたのだ。

 

シュッシュッ バスンッ

 

虚空を殴る神拳と、細かく穿つ火拳。

フェニックスフォームはスピード特化形態。故に肉弾戦における一撃一撃は比較的軽いが、受けながら攻撃するオーガドームと違い、フェニックスフォームは避けながら戦う。早苗の攻撃はかすりもせず、和徒の拳は的確に削っていく。

戦いは一方的でサンドバックにされる早苗だったが、ここで反撃に出た。

諏訪の鉄輪は投擲専用ではない。無から生み出すその金属は、当然拘束にも使える。

 

ガチンッ

「な、これは手錠?!いや、鉄輪を繋げたのかッ」

 

殴り合いの中、早苗は拳同士が交差するタイミングで鉄輪を和徒の左手首に引っかかるように創造し、そのまま数珠繋ぎに小さい鉄輪を鎖のように繋ぎ合わせ、早苗自身の手首にはめたのだ。

 

「手錠のデスマッチですよ!」

 

そう言うと早苗は左肘を背後へ思いっきり引っ張った。

和徒はその膂力に耐えきれず、つんのめってしまう。そこへすかさず早苗は膝蹴りを放ち、和徒はもろに顔面で受けてしまった。

 

「あがあっ」

 

鼻血が吹き出し、早苗のスカートにもこびりつく。

そのまま流れるように和徒の胴体に叩き込まれる裏拳。

ミシミシと音を立ててめり込む神拳。

意識が吹っ飛んで後方へ倒れそうになる和徒だが、早苗は左手を右肩の方へ引き寄せることで引っ張り上げ、ダウンすら許さない。

 

再び和徒にボディブローを打ち込まんとする早苗。

ここで和徒はあえて手錠の引き合いの勝負に出なかった。行ったのは跳躍。

弧を描くようにして早苗の頭上に来た和徒は右手に握る火球を握りしめて叫ぶ。

 

「『フェニックスバースト』」

 

右手から解き放たれる光流。

手錠が繋がれたままでは早苗は和徒との間に結界を作ることができない。

結界を作って手錠を解くか、光流をノーガードで受けるか。ノータイムの強制二択。

早苗が選んだのは、

 

「やっと解放してくれたかよ」

 

結界を使った防御。ただし、簡易的な結界にはすでにヒビが入っている。

和徒は左手の開放感に、不敵な笑みを浮かべた。

しかし、そんな表情もすぐさま一変することとなる。

和徒の周囲に展開された弾幕。今にも標的を射抜かんと浮かぶ凶弾。

光流を止めて弾幕を避けるか、弾幕に耐えて光流を撃ち続けるか。

強制二択の意趣返し。

 

「くそったれが!」

 

和徒はすぐさま撃ち止めて体を捻り、すでに動き出していた弾幕を躱す。

その姿を早苗は虎視眈々と狙い、御柱を射出した。

 

「そんなに力比べがしたいなら付き合ってやるよ!」

『OGRE』

 

回避中にカードを差し替えていた和徒は紅の光に包まれ、バターを切るようにチョップで御柱を裂いて着地した。

 

「オラァ」「っ!」

 

両者、肩を突き出してタックルでぶつかり合う。

どちらもよろめいたが、硬直時間は早苗がわずかに長い。

和徒は勢いよく踏み込み、ドロップキックを喰らわせた。

 

止まらない和徒。さらに追撃のため早苗との距離を詰めて手刀で腹部を抉る。

早苗も負けじと両手に鉄輪でメリケンサックを作ってジャブを繰り出す。

 

「喧嘩慣れしてないのが丸わかりだったぞ」

 

突き出された手を掴んで投げられる早苗。膨大な神力で剛は優れていても柔は本人の力量がもろに出る。

 

「もう一丁!」

 

早苗の手を掴んでさらに投げ技を和徒は浴びせる。プロレスなら10人中10人が和徒の勝利を確信していただろう。

だが、これは正真正銘の殺し合いだ。そこに手心はない。

 

「これで決まりだ、『オーガブレイ...」

 

突如、和徒の頭上で感じた神力の塊の群れ。

見上げれば、そこにあったのはいくつもの御柱。

小さな点が徐々に大きくなってくる。

 

「こいつ、自分諸共、御柱の雨を浴びせる気かよッッ」

 

重力エネルギーが加わった御柱を防御しなければ、鬼の体と言えどもただでは済まない。

それは神の力を手に入れた早苗も同じこと。自分を守るために、自分ごと攻撃に晒す。悪あがきの諸刃の剣。

このままだと両者共倒れになるが、肉体の強度という面で和徒が勝利するだろう。

しかし、和徒はこの攻撃の結果、早苗が死んでしまうという可能性を見捨てることができなかった。

優しさ、故の甘さ。殺し合いにおいて、たったそれだけが命取り。

和徒は妖力のこもった拳を天高く振り上げた。

 

「『オーガブレイク』!」

 

吹き荒れる衝撃と爆風で、御柱は周囲へと吹き飛ばされた。

その僅か数秒。早苗は泥に塗れながらも起き上がり、両方の拳を和徒の腹部に押し当てる。

 

「うがあっ」

 

至近距離で砲弾のごとく放たれる神力の塊。

鬼の外皮だけならまだしも、その威力は体内を蝕み、堪らず血反吐をぶちまけた。

 

「『秘術「一子相伝の弾幕」』」

 

よろめいた和徒へ追い討ちのごとく展開されるスペルカード。

オーガフォームにバリア技はない。

ならば、全ての弾幕を撃ち落とすか、避け切るか。

選んだのは第三の選択肢。

 

「『ホロウエッジ』! 『ホロウ・サイキックエッジ』ッッ」

 

宇佐見菫子のカードをかざした黒い刀が地面に突き立てられると、先ほど吹き飛ばされたはずの御柱が浮遊してバリケードとなった。

神力でコーティングされた最強の盾。

しかし、そんなバリケードも弾幕という最強の矛で徐々に削られ、全ての御柱がへし折られてしまう。

その先にいたのは、黄色の光に包まれ、巫女服へと換装された和徒。

 

『HEROIC』

「ぶっ飛べ!!!『ヒロイックスパーク』」

 

早苗が和徒のことを視界に入れるよりも早く、和徒の右手に黄色の魔法陣が展開され、パワーを体現した極太レーザーがブチかまされる。

死角より放たれた不意打ちの大業。

当然、早苗によける術はない。得意の結界も間に合わない。

レーザーが早苗を飲み込んだ。

 

はずだった。

 

「瞬間移動?!いや、これは...」

 

「はい、あなたが狙っていたのは虚像です」

 

幻想郷で幾度も異変解決に一役買った、霧雨魔理沙でさえ敗れたトラップ。

乾を操る力によって空気中に作られたレンズ。神力をターゲットにして狙おうにも、境内を満たすほど神力が大きくて早苗の正確な位置がわからないため、視力を基準に光線を撃ったことで罠にハマってしまった。

虚像を射抜いたレーザーは、そのまま軌道上にあった守矢神社の蔵を全壊させただけ。目標対象の早苗にはかすりもしていない。

レーザーは未だ発射中であり、完全に無防備状態。

四方八方を神力の光弾が埋め尽くす。

 

「『大奇跡「八坂の神風」』」

 

「うわああああああああああ」

 

スペルカードの無慈悲な強襲に和徒は為す術がなかった。




PSYCHIC 超能力 宇佐見菫子

フォームチェンジラッシュって良いですよね。各フォームの必殺技を使っているとなおさら。
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