東方三混和   作:語り部梔子

65 / 66
前回のあらすじ

始まった和徒と早苗の死闘。
姿を次々に変えて和徒は善戦するも、早苗の殺意をもった一挙手一投足でに敗北を余儀なくされてしまった。


信仰と殺意と伝える言葉 その4

雨が降り注ぐ守矢神社の境内にて、地に伏す者と立ち尽くす者がいた。

前者は体から粒子が漏れ、先ほどまでの巫女服とは異なるブレザーに身を包んで泥に塗れていた。

後者は禍々しいほどの神力を纏い、最愛にして、自身に楯突く最後の敵の命を奪おうとしていた。

この聖戦の結末は、あと数分で決まる。

 

「う、まだだ...」

 

和徒は満身創痍。されど立ち上がる。もう二度と後悔したくないから。

早苗はそれに答え、次の一撃で仕留めようと神力で光弾を生成し始めた。

 

「なあ、早苗。昔、雨の中二人して傘もささずにはしゃいで怒られた時のことを覚えてるか?」

 

立っているのも不思議な状態で語りかける和徒。

 

「あの時はさ、記録的な豪雨でお互いの声を聞くことすらままならかったよな

 

「ざあざあ降りで前すら見えなかったけど、おまえと一緒だったから楽しかった

 

「俺、お前と一緒にまたバカやりたいよ」

 

早苗の表情は変わらない。そこにはやはり以前の明るくて優しい、不器用な少女の面影はない。

光弾の輝きは最高潮に達した。光の矢が放たれる。

 

「だから、俺はお前を殺さない」

 

その軌道は外れ、頬を掠めただけだった。

これは、早苗が意図的に外したからではない。

第三者の介入があったからだ。

 

「よくやった、和徒。時代が時代ならお前は英雄だ」

「早苗の婿に来る権利をあげるよ」

 

早苗の両サイドから腕をがっちり掴んだ二柱。神奈子と諏訪子。

光弾を放つ瞬間、それは決着の瞬間であり、最も神経が緩む。

その隙を今か今かと待ち構え、雨に隠れて接近していた二柱が奇襲を仕掛けたのだ。

 

「なぜ、貴様らは封印しておいたはず」

 

「おまえ、自分の神力がデカすぎて索敵が苦手なんだってな、霊夢から聞いたぜ?」

 

早苗が唯一神として君臨するにあたって、最も大きな弊害であった博麗神社。

だから早苗は霊夢を再起不能に追い込み、本殿も破壊した。

霊夢は紛い者の分離ができない。しかし、早苗を殺すわけにもいかない。

少しでも多くの情報を手にいれ、和徒に託す。

外の世界から無事に帰還するかもわからない外来人を信じて待つこと。

それが霊夢の賭け。そして、持ち前の勘でその賭けは成功した。

 

『今の早苗は半径25mまで自分の神力が溢れているから、その範囲内で彼女は索敵ができないわ』

 

敗北したものの大きな情報を持ち帰っていた霊夢。

実際、御柱のバリケードの裏でレーザーを撃つ準備をしていた和徒の動向に、早苗は気が付かなかった。

 

「お前にはわからないと思うが、この境内にあるのはお前の神力だけじゃない」

 

和徒が守矢神社に帰還した時に感じた違和感。

膨大な早苗の神力とは別に、強い神力を発している場所があった。

それは神社の脇にあった蔵。

和徒が幻想郷を発つ前、蔵はただの蔵だった。

しかし、帰ってみれば神力を放出する蔵になっている。

 

「だったらよ、お前とは別の神力を発する蔵をぶっ壊してみる価値はあるよなあ?」

 

そもそも、ヒロイックスパークは早苗を狙った一撃では無かった。

守矢神社の蔵、そこに縛り付けられている二柱の封印を破壊するための攻撃だった。

そして、現に封印は解かれ、雨に紛れて早苗を捉えることができた。

 

「それならもう一度倒すまでッ」

 

「そうはいかないぞ、早苗」

「あんたの力はあたしらの力だろ?」

 

早苗はカードと結合したことで乾坤の力をその身に宿している。

その力の持ち主は他ならぬ神奈子と諏訪子。

結合していた力と同じ力を早苗にぶつければ、当然相殺される。

そこに残るのは、素の早苗の力のみ。

 

「もう、終わりにしようぜ」

 

和徒は残り少ない霊力を両手にため始めた。

だが、早苗も諦めない。

今でこそ神奈子と諏訪子に神力を制限されているが、彼女らは封印から解かれたばかりで全力を出せない。

このまま力が拮抗し続ければ、勝つのは早苗だ。

となれば、早苗は和徒をどうにかできればこの戦いの勝者となる。

 

「くらえええ」

 

威力や強度よりも、生成速度を優先して神力を練り上げて作られた光弾が放たれる。

立っているだけで精一杯の和徒には、避ける力は残っていない。

かといって、そのまま受けるわけではない。

和徒は咄嗟に懐からナイフを取り出して投げつけた。

 

「バカな?!」

 

「レミリアからもらった、運命を変える咲夜さん印のナイフさ」

 

ナイフは神力に潰されて砕け散る。

脆く作られた光弾も同様に霧散した。

これで時間は十分に稼がれた。

和徒が両腕を十字に交差する。

 

「『オリジンブラスト』」

 

撃ち出されるは始まりにして、原点の得意技。

 

「はああああああ」

 

早苗も負けじと素の神力で防御する。

お互い霊力と神力は底をつきかけている。

根性と覚悟が勝負を決すだろう。

 

「届けええええええええええええええええッッ!!!!!」

 

雄叫びと共に光線は勢いを増して、とうとう邪神へ到達した。

 

「力が、カードが、離れていく!!」

 

徐々に体から分離していく2枚のカード。

決死の抵抗で二柱から逃れようとするも、その体は掴まれたまま。

 

「「和徒ッ」」

 

結合は臨界点を超え、ようやく解き放たれた。




DESTINY 運命 レミリア

知恵と根性で泥臭く、初期形態で撃破
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。