東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

早苗のスペルカードを喰らい、満身創痍となった和徒だが、神奈子と諏訪子の封印を解き、早苗の力を弱めて拘束することに成功する。
最後の力を振り絞った『オリジンブラスト』でとうとうユナイトカードの分離に成功したのであった。


信仰と殺意と伝える言葉 その5

雨は止み、守矢神社に一筋の光が差す。

巫女服の少女は両脇を二柱に支えられながらも、地面に寝そべる。

その足元には2枚のユナイトカード。

 

「うっ」

 

霊力を出し切り、和徒の変身が自動的に解かれる。

全身は血と泥に濡れ、痛々しくも彼女らの元へ歩み寄った。

 

「和徒、お前もそれ以上動くな。限界だろう」

 

「はい、あとは頼みまし...た」

 

言い切る前に力尽き、和徒の体を神奈子が受け止める。

 

「ありがとう、和徒。私たちの娘を。守矢神社を助けてくれて」

 

諏訪子はそう呟いた。

 

 

 

 

目を開ければ、もはや懐かしいとさえ感じる天井。

至る所に包帯が巻かれているが、それほど痛みはなく、自由に体を動かせる。

外を見れば太陽が照り付け、地面がとっくに乾いていた。

記憶はないが、少なくともあの戦いから1日以上は経過しているのだろう。

自室から廊下に出れば、トントンと小気味の良い包丁の音と味噌の香りが漂ってくる。

 

厨房を覗けば、緑髪の少女が料理中。

俺と同様に包帯をぐるぐるに巻いているが、異常はなさそうだ。

今までは当たり前のようだったこの日常も、もしかしたら二度と叶わなかったかもしれない。

そう思うと、たまらなく嬉しい気持ちが込み上げる。

 

「...あ」

 

少女が振り向き、俺と目が合った。

間違いない。俺の幼馴染、東風谷早苗だ。

 

「よ、よぉ、久しぶりー」

 

一言目に困った俺はそう言った。

デジャブかな?

互いに沈黙の時間が流れる。

そんなことも束の間。お互いに吹き出した。

そういえば、久しぶりに会った時も早苗はこんな笑い方をしてたっけ。

 

「はい、和徒。おかえりさない」

 

「ただいま、早苗」

 

これはきっと待ち侘びた言葉だった。

この言葉でようやく幻想郷へ、守矢神社へ、自分の居場所へ帰ってきた実感が湧いてきた。

背後から視線を感じて振り向けば、そこにいたのは諏訪子様。

トコトコと俺のそばにきて耳打ちしてくる。

 

「早苗との式はいつにするんだい?」

 

「は、ちょ、それはまだ、え」

 

「まだ、ってことは予定があるってことで良いんだね」

 

「...」

 

俺の答えは沈黙。肯定すれば揶揄われ、否定すれば強引に結ばされるだろう。

いい加減弄られるのも慣れてきたぞ。どうだ。

 

「私はいつでも構わんぞ」

 

いつの間にか至近距離にいた神奈子様がそんなことを言ってきた。

あなたってどちらかと言うと止める側じゃないの?守矢家の父親ポジションじゃないの?

 

「外堀は埋まってるから、あとは和徒の頑張り次第だね。なんなら今度こっそり早苗の飲み物に薬を盛ってやっても...」

 

「それはやめてください...」

 

諏訪子様は本気でやりかねない恐ろしさがあるからな。さすが祟り神。

 

「皆様集まったことですし、朝ごはんにしましょうか」

 

 

 

 


 

 

 

 

後日談というか今回のオチ。

早苗は特に後遺症もなく、守矢神社の巫女に舞い戻った。

今回の騒動の原因を考えると、直接的な要素は早苗が背負いすぎてしまったことだと考えられる。

しかし、間接的な要因は「不足」が招いた事態だった。

紛い者と戦う「力不足」、事態収束の「人手不足」、人間関係の「言葉不足」。

これは、おいそれと解決できる問題ではない。

だけど、それでも俺たちは進み続けなければならない。

だってそれは、神様でも、救世主でも叶えることはできない望みだったから。

 

「それでは、生徒へ自己紹介をお願いする」

 

「はい、本日から臨時の教師となりました。真島和徒です」

 

寺子屋の教壇に立った俺は、生徒へ向けて自己紹介を始めた。

早苗によって引き起こされた被害は、局所的ながらも大きな爪痕となった。

まだ傷の癒えていない者、壊れたままの建物。

だから、俺と早苗は手分けして復興にあたることにした。

俺の担当業務の一つは、寺子屋にて慧音先生の補佐。

彼女は半妖という種族らしく、傷はすでに治ったらしいのだが、しばらく授業を止めていた遅れを取り戻さなけばいけないらしい。

生真面目な彼女らしい理由である。

なので、俺は先生が授業をしている傍ら、生徒の指導を行うことになっている。

 

「あ、オマエ! このまえチルノのお腹に穴開けた奴ッ」

 

声のした方向を見れば、いつぞやの氷の妖精。

あいつ、ここの生徒だったのか。

 

「チルノちゃん、臨時でも先生なんだからそんな言い方良くないよ...」

 

隣にいる黄緑の幼女がそう言ってチルノを宥める。

その幼女の背中には、鳥というより虫に近い羽が生えていた。

きっとこの子も妖精なのだろう。

 

 

「あたいともう一回勝負しろ!!絶対勝つっ」

 

「そーなのかー」

 

そして、隣にアホっぽく語尾を伸ばす金髪の幼女。

この寺子屋の幼女ズッコケ3人組というやつか。

チルノの態度を見かねた慧音先生が口をだす。

 

「チルノ、勝負の前に確認だが、宿題は当然やってきているのだろうな?」

 

「え、しゅ、しゅく...だ...い......」

 

「まさか、やってきていないのか?」

 

「う、うわあああああああ」

 

いきなり立ち上がったかと思えば、廊下へ向けて走り出したチルノ。

しかし、それより早く慧音先生が頭を両手で捉え、頭突きを喰らわせた。

 

「あがっ」

 

すげえ。幻想郷は体罰が許されるのか。

そのままチルノは慧音先生に連れられて元の席に座らされた。

ふと、ここで違和感を覚えた。

教室で頭突きをされたチルノのことを見ていない生徒が一人いた。

このちょっとした騒動の最中、視線を俺に固定していた生徒がたった一人。

顔に変面をつけた幼女がずっとこちらを見ていた。

 

「ん?和徒。あの子のことが気になるのか?」

 

「ええ、まあ」

 

俺のぎこちなさから察した慧音先生が教えてくれる。

 

「彼女の名前はシン。のっぺらぼうだ」




MIRACLE 早苗

4章後編へ続きます
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