東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

早苗とカードの分離に成功した後、守矢神社の面々は改めて仲直りをした。
連日の被害を補填すべく、和徒は今日も仕事を手伝う。


幼女と演舞と女帝の力 その1

「こちらが本日のメインディッシュ、肉じゃがでございます」

 

連日に続き、今日の授業が終わった俺は紅魔館へと足を運んだ。

外の世界から帰ってきて早々に挨拶回りは済ませたが、どうやら咲夜さんも早苗にコテンパンにされていたらしく、人間である彼女はまだ床に伏せている。

パチュリーが回復魔法をかけたのでもう仕事に復帰できるそうだが、今まで断固として休養を取らなかった彼女が休む良い機会とレミリアが考え、強引に寝かせているらしい。

しかし、完璧で瀟洒な従者無しで紅魔館の家事が回るかと言えば、答えはNOだ。

紅魔館には咲夜さんの他にも妖精メイドなるものがいて、ある程度の雑務はこなせるらしいが、いかんせん知能がイマイチなのだ。

普段は咲夜さんが的確に指示を出すことで成り立っている家事を、司令塔無しで行うことは出来ない。

なので、その代役を俺が受けることになった。

以前親戚の家に居候していたこともあり、俺だって人並みには家事をこなすことはできる。

そういうことで、今日の夕食は俺の作った肉じゃがだ。

家庭の味といえば、肉じゃがである。

 

「フフっ、それにしても執事服が様になっているわね。和徒」

 

「お褒めに預かり光栄でございます、お嬢様」

 

先ほどからレミリアは上機嫌だ。

その理由は考えたくもないが、十中八九俺がレミリアに傅いているからだろう。

俺はかつて、紅魔館への勧誘を断り、守矢神社を選んだ。そんな相手が一時的とはいえ自身の従者となっているのだから、さぞ愉快なことだろう。

 

「あー」

 

そう言って小さな口を大きく開け、俺の顔を見つめるレミリア。

なんだ?あくびか?それにしては長い気がするけれど。

 

「ほら、私の口へ運ばんか」

 

「え、俺が食べさせるの?」

 

「私専属の執事なんだから当たり前だ」

 

「でも咲夜さんはやってなかったでしょ」

 

「咲夜はメイド長だ。役職が違う」

 

「屁理屈だ!!」

 

パワハラだ!

労基に訴えてやる。紅魔館の人事担当は誰だ。弁護士を呼べ!

 

「ふむ、咲夜が働けない分の紅魔館の損失はいくらだったかしら。えーっと、確か...」

 

「どうぞお嬢様、肉じゃがが冷めてしまいますよ」

 

「それでよろしい」

 

俺は一体どれほどレミリアに借りを作ればいいのだろうか。

下手すれば一生執事コースだってありうるぞ。

そんなことを考えながら、俺は肉じゃがをレミリアの口にせっせと運んだ。

 

「......」

 

こいつ、めちゃくちゃ上品に食べるな。

さすがカリスマ吸血鬼。

 

「どうしたの和徒、そんなに物欲しそうな顔して」

 

「あ、いや別にそういうわけじゃなくて」

 

「食事の片付けを終えたら私の寝室に来なさい。その欲望を満たしてあげるわ」

 

「だから違うって!」

 

輝夜とか文もそうだけど、幻想郷の長生きしてる女ってなんでこうセクハラをかましてくるんだ?

おっさんが若い女の子にセクハラするのと同じ現象なのか?

 

「それは残念だわ。ごちそうさまでした」

 

「どうも」

 

マナーの良さという温度差で風邪を引きそうだ。

夏風邪になっちまうぞ。

 

「ところで次はいつくるのかしら」

 

「まだ決まってないけど」

 

「そうね、だったら明日とかどうかし...」

 

「レミィ、その辺にしておきなさい」

 

レミリアと共に食事をしていたパチュリーが口を挟む。

助け舟を出すならもっと早く出してくれとも思ったが、何もしてくれないよりはマシなので口にしなかった。

 

「パチェ、あなたはいつも良いところで邪魔するわね」

 

「咲夜を宥めるこちらの身にもなりなさい」

 

「はいはい、分かったわ。それじゃあ和徒、首筋を見せなさい」

 

「...ほらよ」

 

借りていた執事服を着崩し、首元をレミリアに曝け出す。

レミリアはあどけなさの残るその白く小さい指で皮膚をなぞると、狙いを定めて牙を突き立てた。

ツーッと血を抜けれていく感覚。先日味わったばかりだが、未だに慣れない。

十数秒すれば、牙は引き抜かれ、跡だけがそこに残る。

 

「今日はご苦労様。また会いましょう」

 

「ああ、よろしく頼むぜ」

 

凄惨な笑みを浮かべ、館の主は口元の血を拭った。

 

 

 

 


 

 

 

 

翌日も当然授業はある。

寺子屋に来た時は生徒の名前を覚えるだけで精一杯だったが、ようやく慣れた来た気がする。

 

「そこは違うよ、チルノちゃん」

 

「え?大ちゃん、違うってどこが」

 

慧音先生の教え通り問題に挑戦するチルノだが、早々に間違えている。

正直、この大妖精と呼ばれているこの幼女には同情している。

常識人ゆえに貧乏くじを引かされているようだ。

 

「そーなのかー」

 

そして、このルーミアという子は何を考えているのかいまいち分からない。

なんてったって初対面の俺に「食べても良い人?」と聞いてくる始末。

倫理観のない妖怪のカルチャーショックを受けた。

当然この子にもお世話係はついている。

 

「ルーミアちゃあん、一緒に頑張ろう」

 

「うーん」

 

間延びした話し方と身につけた変面が特徴的な幼女、シン。

のっぺらぼうらしく、誰も彼女の素顔は知らない。

 

「何か分からないことがあれば言えよ、ルーミア」

 

生徒とのコミュニケーションにも慣れてきた。

中学生の時の職業体験を思い出すな。あの時は昔通った小学校に行ったんだっけ。

 

「和徒先生、ここについて教えてくださあい」

 

「どれどれ」

 

シンから教えを乞われ、そばに着いて話を聞く。

彼女は寺子屋の生徒の中でも新参者らしく、最初は一人でいることもお多かったらしいのだが、チルノたちと関わるようになって馴染めるようになったらしい。

口数は少ないが、根が真面目で信頼を直ぐに勝ち取ったのだろう。

慧音先生は主にチルノの面倒を見ているので必然的に俺はルーミアに手を焼く分、シンが救いだ。

今は手伝いとして寺子屋の臨時教師となっているが、いずれはアルバイトとして時々面倒を見るのもアリかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ今日の授業はここまで!気をつけて帰るように」

 

「はーい」

 

慧音先生の締めの挨拶を皮切りに、子供たちが教室を後にする。

俺にもこの子達みたいな子供時代があったのだろうか。

まだ10代なのにおっさんのような感想を抱いてしまうのは、カッコつけすぎか。

 

「おい和徒!あたいと一緒についてこい」

 

「ん?」

 

明日の授業のための資料作りに取り掛かろうとしたところ、チルノに呼び止められる。

 

「あたいと大ちゃんはこれからコウビするから来て欲しいって大ちゃんが呼んでるの!」

 

ちょっと待て。今なんて言った?チルノと大妖精が交尾?

もしかしてこれから百合の花が咲き乱れるのか?

 

「チルノちゃん!それを言うなら尾行だよ。だ、だってエッチな意味になっちゃう...うぅ」

 

「へ?エッチってなんだ?」

 

顔を真っ赤にした大妖精がチルノの袖を引っ張る。

なるほどね。読めたぞ。さては大妖精のやつ、常識人キャラだとは思ってたが結構おませさんだな?

 

「すみません、和徒先生。実はルーミアちゃんとシンちゃんが変だったんです」

 

「変って?」

 

耳はまだ赤いが、緊急事態なのか落ち着くまもなく大妖精が事情を説明し始めた。

 

「いつも私たち、授業終わったらそのままどこかで遊ぶのがお決まりの流れなのですけれど、今日に限って二人ともそそくさといなくなっちゃったんです」

 

「体調が悪かったとかじゃなくて?」

 

「いえ、むしろシンちゃんなんて今日一日そわそわしてたんです」

 

「あの二人、きっと隠したお菓子をお腹いっぱい食べるつもりなんだ!」

 

「ってチルノは言ってるけど」

 

「私としてはむしろそうであって欲しいのですが、なんだか胸騒ぎがするんです。シンちゃんって普段から私達とルーミアちゃんを見る目がどこか違う気がしてて」

 

考えすぎな気もするけれど、重要なのはまず信じることだ。

チルノが言うようにお菓子を隠れて食べてるって真相なら良いけれど、こういう日常の違和感が取り返しのつかないことになったりするからな。

 

「と言うわけで慧音先生、少し出てきます」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

この時の俺はまだ、すでに運命の歯車が大きく動き出していることに気づかずにいた。




DESTINY レミリア

体調不良と多忙で更新遅れました。
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