東方三混和   作:語り部梔子

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前回のあらすじ

シンとルーミアを追跡していた和徒、チルノ、大妖精。
そこで、彼らはシンがドゥーと同じニルの眷属だと知った。
雷鼓の力を扱うシンの一撃が迫る。


幼女と演舞と女帝の力 その3

「うがああっ」

 

十字に組んでいた腕をそのままずらし、クロスさせた腕で踵落としを受ける。

骨を伝わる衝撃と痺れ。ジンジンとひりつく痛みに歯を食いしばる。

咄嗟に結界を張って防御したこと、シンが16ビートというスピード特化で攻撃力が下がっていたことが幸いし、チルノと大妖精のところまで転がっていくだけで済んだ。

 

「大丈夫ですか、和徒先生」

 

「平気だ、ぜ」

 

「痩せ我慢もほどほどにしなよお」

 

大妖精に心配をかけまいと踏ん張るも、シンからは看破されて煽られる始末。先生としては情けねえな。

目の前では、未だ鳴り止まないドラムのビート。

あの猛襲の相手をするにはヒロイックフォームじゃ分が悪い、ここはフェニックスフォームに...

 

「殺すなと命じたはずですよ、シン」

 

「っ!!」

 

「ええー?」

 

ルーミアを連れて登場するドゥー。

どういうことだ? 殺すなだと?

疑問は尽きないが、今するべきことへと思考を切り替える。

立ち塞がるののは、シンとドゥー。対してこちらは俺、チルノ、大妖精

不満そうにドゥーの方へ振り返ったシンの隙をつき、ベルトのカードを差し替えた。

 

『』

 

巫女服が青い炎に包まれ、姿が変わる。

パチパチと火花が散り、焦げた匂いが広がっていく。

シンのあの速度、フェニックスフォームなら追いつけるはずだ。

 

「あはあ、先生。やる気だねえ」

 

ホロウエッジを逆手に持ち直し、疾風のごとく駆け出す。

神力で覆われた鉄扇と黒い刃がぶつかり合い、鈍い音がドラムに混ざる。

 

「『フェニックスフェザー』」

 

「とおっ」

 

蒼炎に燃える羽根の猛攻をリズム良く弾いていくシン。

しかし、その隙をついて肉薄した俺は刃を振り抜いた。

 

「スピード特化でパワーが落ちてるのはお互い様でしょ?」

 

「なっ?!」

 

横薙にするつもりで振るったはずの剣が、拍手をするようにシンに止められてしまう。

ニヤリと笑ったシンは、足先に神力を込めてカウンターを狙う。

だが、今の一撃は囮だ。本命は二の矢。

 

「『フェニックスインフェルノ』!!」

 

背中から生えている黒い翼がその一声で燃え盛り、推進力を得る。

シンは急いで両手をホロウエッジから離そうとするが、もう遅い。

俺の左手はすでに奴の顎先を捉え、アッパーカットが炸裂した。

宙へ飛ばされたシンはノーガード。体を炎で包んだ俺はタックルで追い打ちをぶちかます。

 

「あがあっ、あづいいいいい」

 

背後にあった家屋に激突し、シンは圧力と熱の責苦に叫ぶ。

右手に火球を生成し、必殺スペルに移ろうとしたその時。

 

「『デス・ボンバー』」

 

ドゥーの銃口から撃ち出された巨大な蝶がこちらへ迫る。

くそっ、今ならシンにとどめをさせる。だけど、それはすなわちこの蝶の攻撃を避けないということ。

満身創痍でドゥーの相手は不可能だ。止むを得ず、後ろへ飛び退く。

 

「あっぶねえ!!」

 

鼻先を通過する蝶。ほのかに香る死の匂いに思わず息が止まる。

蝶はそのままシンの元で霧散した。止めこそ刺し損なったものの、シンの継戦は難しいだろう。

俺は、モザイクの男『ドゥー』の方へ体を向けて武器を構える。

 

「次はてめえの番だぜ? ドゥー」

 

「まさかシンをのしてしまうとは。君の成長速度は侮れませんね」

 

ドゥーと結合しているカードは、咲夜さんのカード。その能力は時間操作。

フェニックスフォームなら、時間停止を用いた瞬間移動やノーモーションの連続攻撃だって対応できるはずだ。

 

「さあ来い、時を止めてみろ!!」

 

この前人里で戦った経験を踏まえて、紅魔館で咲夜さんから時間停止の強み弱みについてくまなく聞いておいた。

確か咲夜さんはこう言っていたはず。

 

『止められる時間はほぼ無制限ですが、長く止めるほど体力を消耗します。それに一度時間を止めたら、次に止められるのは数回呼吸で間を置かなくてはなりません。この能力、無敵というわけではないのですよ? 和徒さん』

 

気をつけるべきなのは、奴が時間を止める瞬間。その瞬間を見極めて、カウンターを叩き込む。

 

「...」

 

しかし、ドゥーは一向に時間を止めようとしてこない。

それどころか、背後にいたルーミアへ手を伸ばした。

人質をとるつもりか? 今すぐにでも助けに行きたいが、動き出したタイミングで時間を止めて罠を張られるとも限らない。

ルーミアには悪いがここは様子見をするしかないのか。

 

「真島和徒、あなたは先代博麗の巫女についてご存知ですか?」

 

「なんだ? 藪から棒に」

 

「いえ、八意永林のことですから先代博麗の巫女の姉が失踪したことについては既にご存知だと思います。しかし、その妹である先代博麗の巫女本人はなぜいないのか。これについては知らないのでは?」

 

言われてみれば、確かにそうだ。

地球外生命体との交戦で、博麗の巫女の姉は博麗大結界に敵を封じ込めて外界へ飛ばされてしまったと鈴仙は言っていた。だけれど、その妹が死んだとか、行方不明になったとかは何も言っていない。

 

「先代博麗の巫女。彼女はある大妖怪を封印する任務を受け、殉職しました」

 

なるほど、冷たい言い方だが博麗の巫女の死に方としては妥当かもしれない。

だが、どうしていきなりその話を始めたんだ?

 

「へえ、それで? その『封印された大妖怪』とやらはどこにいるんだ?」

 

ニヤついた笑みを浮かべて奴を挑発する。

この会話は時間稼ぎの類かもしれないが、こちらから仕掛けるのは分が悪い以上仕方ない。先にアクションを取らせる。

 

「彼女は今、ここにいますよ」

 

「はあ?」

 

何を言っているんだ? ここにいるだって?

ここにいるのは、俺、ドゥー、シン、チルノ、大妖精、最後にルーミア......

 

「さあさあ、永遠に紅い幼き月、幽冥楼閣の亡霊少女、永遠と須臾の罪人。新しき世代の女帝たちの力をもって、今、『陰の魔王』を呼び覚ましましょう!!」

 

ドゥーの手に握られた3枚のカード。『DESTINY』『DEATH』『NEVER』

それらが一枚ずつルーミアの体に溶け込んでいく。

 

「うっぐ...」

 

ルーミアは呻き声をあげてうずくまる。

カードが一枚入れば頭部のリボンが激しく輝きだし、二枚入ればリボンがちぎれ飛び、三枚入れば体から黒い瘴気が溢れ出した。

一体何が起こっているんだ?

まさか、本当にルーミアがその封印された大妖怪だっていうのか?

そんなことを考えている間に、大きく膨れ上がった瘴気の中から人影が浮かび上がった。

 

「大丈夫か!! ルーミ...ア......」

 

そのシルエットは俺の知っているものとは違う。

チルノや大妖精のような幼い女の子の姿ではなく、10代後半の女性だろうか。

 

 

「ルーミアというのは先代博麗の巫女が縛るために与えた名前。彼女の真名は

 

『空亡』」

 

 

「うがああああああああああああああ」

 

黒き太陽が現代に甦える。




DEATH 西行寺幽々子

お久しぶりです。少しずつモチベーションが回復してきました。
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