早苗の起こした異変の後始末として、和徒は紅魔館で執事になったり寺子屋で先生になったり大忙し。
そんな中、のっぺらぼうの幼女、シンとルーミアが心配だという大妖精とその親友チルノに連れられ、和徒は尾行を始めたのだった。
尾行開始から2時間経過。
シンとルーミアは人里内で買い食いをしたり空き地で追いかけっこをしたりと、まあ子供らしく遊びまわっていた。
子供の遊びなんて人間だろうが妖怪だろうが特に変わらないらしい。
大妖精が嫌な予感を感じていた手前、彼女らが解散するまで後を追っても俺は構わないのだが、一つ大きな問題を抱えていた。
「あたい、もう飽きたー」
尾行を始めた時はノリノリでカッコつけていたチルノに限界が来ていた。
妖精と言っても、やはりチルノも子供。シンとルーミアが買い食いしている時はよだれを垂らしていたし、隠れていることも忘れて空き地に飛び出そうとしてさえいた。
だんだんと日も暮れて今は逢魔ヶ時。
妖精二人は家に帰した方が良いかもしれない。
「もう暗くなってきたし、帰るか?」
「お願いします。あと少しだけ、少しだけ付き合って欲しいです」
「...大ちゃんが頑張るなら、あたいも頑張る」
どうしても不安が払拭されない大妖精が食い下がり、チルノも乗っかってきた。
ここまで来た手前、納得して帰らせるのも筋か。
よし、慧音先生には怒られるだろうけれど、とことん付き合ってやるか。
「分かった。満足するまでいてやるよ」
「ありがとうございます!」
険しい表情だった大妖精の表情がパッと明るくなる。
そんな笑顔に見惚れかけていると、チルノが声をかけた。
「あれ、シンとルーミアどこいった?」
「何い?!」
俺たちが目を離した瞬間、二体の妖怪の姿は消えていた。
まさか尾行に気づかれたか? いや、仮に気づかれたとて子供の足だ。まだ追いつけるはず。
場所は人里の中でもすでに郊外。家はあれど住んでいる人も少ない地域だ。
飛べばすぐに見つかるだろうが、それは相手から見ても同じ。
今できるのは、とにかく走って探すこと。
「ッ! 見つけた」
直感を頼りに走り回り、とうとうルーミアの後ろ姿を捉えた。
やはりこの移動距離、俺たちを撒こうとしていたと考えて良さそうだ。
「ルー...もごもご」
見つけたルーミアの名前を大声で呼びかけたチルノの口を、大妖精と俺が急いで塞ぐ。
ちょっと気を抜くと何をしでかすかわからないな。
幸いにもルーミアは気づかなかったようだ。
むしろ、ルーミアの前方から来た誰かに注意が向っている。
いや待て。何かおかしい。
どうしてルーミアは一人なんだ?
シンはどこに行った?
ルーミアの元へ来た人影の姿が顕になる。
それはシンのように女でも泣ければ幼くもない。
スーツ姿のモザイク顔。
「ドゥーっ?!」
その刹那、首元に寒気が迸った。
咄嗟にチルノと大妖精の頭を掴んで、俺諸共地面へ押さえつける。
「きゃあっ」 「ぶげえっっ」
可愛い悲鳴を尻目に背後を確認すれば、そこには真横へ一刀両断にされた家屋の塀。
この線の高さは俺の肩の高さと一致する。
「チルノ、大妖精、いきなり押さえつけて悪かった。だから、俺の後ろに隠れてろ」
塀の残骸は滑らかに倒れ、犯人の姿が顕になる。
ダイヤルのついた鉄扇を片手に佇む変面の幼女。
「どういうつもりだ? シン」
「今ので仕留めたつもりだったんだけどなあ、ざあんねん」
「つまり敵で良いんだな?」
「そうだよお。のっぺらぼうってのも真っ赤な嘘、潜入するためのねえ」
「教師に歯向かう生徒は更生させろって慧音先生が言ってたっけ」
お互いカードと変身アイテムを取り出し、周囲に闘気が満ちる。
俺のカードは霊夢、魔理沙、早苗の3枚。対するシンのカードはドラムスティックを持った赤髪の少女。
「『カオスドライバー』」 「『ユートピアファン』」
「変身ッ」 「装着」
『HEROIC』 『BEAT・Install, 始原のビート ~Pristine Beat』
シンの周囲にシンセドラムが展開され、変面に三つ巴の印が刻まれる。
彼女が使ったカードが誰のカードなのか全く知らないが、一つだけわかるのは音楽に関するということ。
「8ビートお!」
そう言うとシンセドラムを叩いていないにも関わらず、一定間隔でリズムが刻まれ始めた。
どう言う能力なんだ?情報アドバンテージで後手に回っているぞ。
「はあっ、 とう!」
「『ホロウエッジ』ッ」
シンが鉄扇を振り回し、黒い刀で受け切る。
なんてことない攻撃の連続。だけど、何か変だ。攻撃が規則的すぎる。一定間隔で放たれる鉄扇と蹴り。強弱までもが同じ。まるで、演舞のような猛襲。
「...16ビートにチェンジ」
「んなッ?!」
シンセドラムが刻むビートが変わった途端、攻撃の密度が変化した。
一撃の重さが軽くなったのは幸いだが、この速さ、捌ききれない!!
「じゃーんっ」
「しまった...」
今まで使ってこなかった手刀。不意をつかれて刀の向きが大きく逸れる。
次の攻撃はこのままボディで受け止めるしか、
「『ビート・シャイン』」
鉄扇に備え付けられたダイヤルを回したシンの左足に妖力が蓄積された。
攻撃のリズムから、次の一撃は強い攻撃が来る。
妖力はバチバチと雷を纏い、蹴りのモーションへすでに突入。
俺は刀を手放し、腕を十字に組む。
「『オリジンブラスト』」
至近距離で放たれる光線。
しかし、シンは空中へ跳んで躱す。
そのまま空中で一回転して俺の頭上へ。
「てやああ!!」
電撃の踵落としが目前に迫る。
BEAT ビート 堀川雷鼓
シンは3人目の眷属でした。