三つの力を合わせて使うという
『HEROIC』
黄色い光が収まると俺の姿は一変していた。
肩にかかるほどの長さだった黒髪には黄色のインナーカラーが入り、片側はお下げを前へ垂らしたヘアスタイルへ。
女子高の制服姿は、赤ではなく青へ染まった博麗の巫女服に。
袖には緑の蛇と蛙が描かれ、スカートには星空の模様。
ベルトに使った3人の見た目をミックスして俺にプラスしたと思われる。
「巫女の真似事か?オラッ」
「魔法使いの要素もあるっぽいぜ」
「ぐぼぁ!」
紛い者が殴りかかってくるが、避けてボディにカウンター。
オリジンフォームよりもパワーもスピードも上昇している。それになんと言うか、動きが読みやすい。
「調子乗ってんじゃねえ」
連続パンチを繰り出してくるが、全て捌ける。奇妙な感覚だ。さっきから第六巻のように勘が働いて、一切ダメージを受けていない。
既視感のあるスペルカードが手元に出現する。
「英雄『スターダストレヴァリエ』」
さっき見た魔理沙の模倣スペルカードまで使えるようになっている。
「だったらこれならどうだあああああ」
紛い者がみるみるうちに巨大化し、20メートルほどまで大きくなった。
魔理沙の情報通り、密度の能力による技らしい。
結合度が5になったことで能力の使い方が上達している。
「潰れろ」
「ちょっ」
拳を振り下ろされたため、急いで飛び立つ。
霊夢に稽古はつけてもらったが、魔理沙との弾幕ごっこで空中戦の並列処理に課題が多く残っていることを思い出す。
しかし、まるで最初からできていた言わんばかりに飛行能力が上昇していた。
「カードを使えば技術まで習得できるのか」
巨大な手から放たれる薙ぎ払いをヒラリと避け、スペルカードを打ち込む。
「英雄『夢想封印』」
「ぐわあああああ」
情けない声とともに巨大化は解除され、元のサイズまで戻った。
このまま一気に畳み掛けるしかない。空中から一気に急降下し、飛び蹴りを放つ。しかし、
「これなら通用するよな?」
体を霧にしてかわされる。まずい。瞬間移動でヒットアンドアウェイに出られたら打つ手なしだ。
「おらよッ」
「のわっ」
背後からの足払いをくらい、転倒してしまった。しまった。このままでは次の攻撃を避けられない。
蹴りが目の前に迫る。パワーアップしたとはいえ顔面にクリーンヒットを貰えばタダでは済まない。
「恋符『マスタースパーク』」
紛い者の背中にレーザーが命中し、蹴りが空振りに終わった。
「いくら魔力が枯渇してるからって、この霧雨魔理沙様を忘れてもらっちゃ困るぜ」
「助かった!」
「このクソ魔法使いがッ」
隙を見逃さずお札をばら撒く。お札は吸い付くように敵の四肢に張り付き、発光した。
「なんだこの札は、体が動かねえ」
「この札は対象の動きを一定時間縛ることができるらしいぞ」
「そのままぶちかませ!和徒」
脳内でイメージをする。イメージ元は、魔理沙のマスタースパーク。
右手を前に突き出し、左手で腕を支える。右手のひらに八角形の紋章の入った魔法陣が展開される。
手元に新たなスペルカードが出現し、消えた。
「『ヒロイックスパーク』ッッ!」
黄色に光る極太レーザーが紛い者を飲み込んだ。
「様子を見にいかなくてもいいのかしら、霊夢」
「やっぱりあんた、何か関わってるでしょ」
時は少し遡り、魔理沙と和徒が飛び去った後の博麗神社の縁側にて。
「だいたいあのベルト、一体何なのよ。少しは説明しなさい」
「そう言われてもねえ。私だって詳しいことは分からないわよ」
「嘘おっしゃい。あんたみたいななんでも知っておきたいタイプの妖怪が知らないはずないでしょ」
「ちょっと、私の扱い酷すぎない?」
扇で口元を隠し、博麗の巫女と横並びで座る妖怪は答えた。
「あのベルトは、この異変を解決する鍵、とだけ言っておこうかしらね」
「そのもったいぶる癖、紫の悪い癖よ」
紫はカードを取り出し、眺める。表にはBORDERの文字が書かれている。
「でも、まさか霊夢があの子に自分のカードを渡すとは、私も思っていなかったわよ?」
「勘よ、ただの勘。そうした方が良さそうだっただけ」
「あのベルトにカードを使う機構があるのに気づいたってのは勘じゃないでしょ」
「うっさいわね。面倒だから全部勘でいいのよ」
微笑みながら霊夢の顔を覗き込む。
「なら、その勘であの子の持つ『程度の能力』には気づいたでしょうね」
「...もちろんよ」
「それなら安心だわ。今はまだ大丈夫だけれど、あの力は今後幻想郷を脅かすほどの力になりうるのだから。その時はわかってるわよね?」
「ええ。始末すればいいんでしょ?幻想郷のために」
「正解。じゃあ、正解のご褒美にこれをプレゼントするわ」
突如紫の手元の空間に裂け目が生まれ、黒く、長い箱が出現する。
「何よこれ」
睨みつける霊夢。
「そう警戒しないで頂戴。きっと役に立つわ。ベルトの彼、彼女?によろしく頼むわね」
「ちょ、待ちなさいよ。もう!」
紫は大きな空間の裂け目に飲み込まれ、姿を消した。
「少しはこっちの苦労も考えなさいよ」
このつぶやきは誰にも聞こえていない。
手応えがあった。瞬間移動して避けた時とは違う、確かな手応えが。
しかし、ここで思い出す。紛い者は殺す以外楽にしてやる方法がないと言う事実。
そして、もしかしたら今の一撃で俺が人を殺してしまったんじゃないかと言う恐怖が込み上げてきた。手が僅かに震える。
土煙が晴れると、そこには倒れた男性と一枚のカード。紛い者の姿はどこにもない。
魔理沙と共に男性の元へ急いで駆け寄る。
「おい、大丈夫か、おい!」
起こそうとするも返事がない。死体かと思ったが脈もあり、呼吸もしている。
どうやら生きているらしい。
落ちていたカードを拾うと、表にはDENSITY、裏には二本角の幼女の絵。
情報を照らし合わせる限り、おそらく萃香のカードだろう。
「初めてだ。ここまで結合した紛い者が人間に戻るのは...」
「え?どういうことだ魔理沙」
「和徒の、ベルトの力だ!和徒なら紛い者を元に戻せるッッ!」
魔理沙の声が響き渡る。
安堵した。魔理沙の言うことが本当なら、今、俺は人を殺さずに済んだらしい。手の震えが収まった。
「これなら異変を解決できるかもしれねえぞ、とと」
魔理沙がバランスを崩す。先ほどのマスタースパークで魔力を使い切ったらしい。
「魔理沙も魔力がもうないんだろ。ちょっと休憩しよう」
「そうだな。悪い悪い」
そう言い、変身を解除しようとした瞬間、
「紛い者が出たと聞いて、急いで来ましたよ魔理沙さん!と、どなた?」
空から声をかけられた。
見上げると、そこには青い巫女服を着た緑髪の少女。
変身が解除されて粒子が散り、元の俺の姿に戻る。
早苗と目が合った。
ヒロイックフォームはバランスの取れた強化形態。コンセプトは”主人公”。
というか、オリジンフォームが弱すぎる。あんなんもう弱体化形態だろ。
実質ヒロイックフォームが基本形態なまである。
カードをベルトに使って強化形態になれば、本家ほどのスペックではないがスペルカードも使える。