筆が乗ってしまいました。
「「「.........」」」
沈黙。俺と早苗だけならまだしも魔理沙まで沈黙。
やばい、突然再開しちゃったから第一声をどうするか何も考えてなかった。
ていうか、なんでこのタイミングで来るんだよ。せめてもうちょっと後にしてくれよ。
仕方ない。覚悟を決めろ、俺。
「よ、よぉ、久しぶりー」
くそっ、緊張して声が裏返ってしまった。しかもなんだよ久しぶりって。もうちょっと気のきいたセリフとかあっただろ、おい。
見ると、二人して震えてる。魔理沙は絶対笑いを堪えてるやつだ。あとでぶっ飛ばす。
「ぷ、くくく、あはははは、久しぶりですね。和徒」
おまえも笑ってたんかい!
顔が熱くなってきた。せっかくの再会なんだからかっこよくきめさせてくれ。
「聞きたいことは山ほどあると思うけど、このまま雑談とはいかないな」
俺は倒れている男性を指差し、そう告げる。
「この男性は一体?」
「紛い者だよ、萃香のカードと結合してたっぽくてな。すっげえ強かったんだぜ」
「紛い者を分離できたんですか?!」
「ああ、詳しいことは誰も分からないが、和徒が分離したんだ」
「魔理沙の説明通りだ」
「どうやら話さなくちゃいけないことがいっぱいありそうですし、とりあえずこの男性を自警団のところへ運びましょう」
男を担ぎ、3人で歩き始めた。
「着きましたよ、ここが自警団の本部です」
早苗から幻想入りまでの過程、そして幻想入りした後の出来事を聞いていたら、門に自警団本部と書かれた家へ到着。
俺の話をするのはもう少し後になりそうだ。
丁度門の中から女性が出てきた。髪は青と白が入り混じり、特徴的な帽子をかぶっている。
「お、慧音じゃねーか」
「む、その声は魔理沙か。会った時はまずあいさつだと言っただろ」
「まーまー堅苦しいのは好きじゃーねーんだよ」
「挨拶は好き嫌いの話ではなくてな、君、見ない顔だな。その服装から察するに外来人か」
魔理沙と言い争っていたようだが、俺の存在に気づいたらしい。
「真島和徒です。つい最近幻想入りしました。よろしくお願いします」
「私は上白沢慧音だ。人里では、自警団の管理と寺子屋の教師をしている。もし困ったことがあればなんでも言ってくれ。外来人は馴染むのが難しいと思うが力になるぞ」
「ありがとうございます」
「魔理沙も見習ったらどうなんだ」
「私のことはもういいって、それよりこの人の手当てをお願いしていいか」
早苗が担いでいた男性を見せる。最初は俺が担いでいたのだが、戦闘で疲弊していたので途中から早苗が役割の交代を申し出たのだ。
「わかった。早苗、紛い者の件はどうなったんだ」
「この人が紛い者だったそうです」
「なんだと?私はすでに結合度が4以上だと聞いていたが」
「ああ、最終的にな結合度は5だったぜ。だけど、和徒が分離したんだ」
「そんなことが可能なのか?」
首を傾げ、俺の方を見る。
「俺にもよく分からないんですが、このカードがその証拠です」
「それは、萃香のカードか。目撃情報の二本角とも確かに合致するな。信じよう」
「とにかく、私らもまだわかってないことが山積みなんだよ」
「なら、明日また私の元へ来てくれないだろうか。その時にはきっとこの男も目を覚ますだろう」
「了解だぜ」
「わかりました」
男性を預け終えたので、ここに止まる必要も無くなった。
「それでは失礼します」
「また明日」
「それじゃあ、どこで話すか」
「でしたら、私の神社でどうでしょう。和徒のことを神奈子様と諏訪子様にも知ってもらいたいですし」
その二つの名前は昔聞いたような覚えがある。昔、早苗の家に泊めてもらった時によく聞いた名前だ。
「おっと、私はここでさよならだ。紛い者についてはどうせ明日話すんだし、折角の水入らずの状況を邪魔するほど野暮じゃないんだぜ」
「そうか、今日は色々助かった。ありがとう」
「じゃあな!」
そのまま箒に跨るが、一向に微動だにしない。
気まずそうな顔をした魔理沙が俺たちの方へ振り向いた。
「魔力使い切ってたの忘れてた...」
「ダセエ」
「ダサいですね」
「うるせええええ」
走って消えてった。
「俺たちも行くか」
「ええ、きっと驚きますよ」
「神奈子ー早苗が男連れてきたー!」
「なにいッ」
ドタドタと足音が聞こえる。
神社について早々、目のついた奇妙な帽子をかぶった幼女が神社に向かって意味深な発言をしたことが原因だろう。
「ちょっ諏訪子様、まだそんな関係じゃないですから」
「まだ?予定があるってこと?」
ニヤニヤと幼女がからかう。こんな幼そうな見た目で結構ませてるらしい。
「早苗にまとわりつく悪い虫はお前かー!」
しめ縄を背負った紫髪の女性が神社の扉を勢いよく開け、怒鳴り声が響き渡る。
「ですから、私の話を聞いてくださいいいい」
賑やかなのは良いことだ。
「本当にすまない」
「やめてください。お願いですから頭を上げてください」
「面目ない」
「まさか幼馴染が幻想入りとはねー」
「諏訪子はちゃんと反省しろ」
「いてっ」
守矢神社の居間にて、鉄拳が幼女、もとい諏訪子様の頭に打ち付けられた。
俺と早苗の関係と、幻想入りするまでの過程を説明したことで誤解は解けたようだ。
俺が子供時代、この守矢神社に行ったときも神奈子様と諏訪子様がいたというののだから驚きである。
しかし、神という種族は凡庸な人間を見分けるのが難しいらしく、俺のことは覚えていなかったらしいが。
「もう一つ謝らなければならないことがる。和徒、お前を幻想入りさせてしまったことだ」
幻想入りさせてしまった。この言葉は、まるで俺の幻想入りの原因が神奈子様達にあるみたいな言い回しだ。
「ああ、その通りだ。私たちは幻想入りする際、神社の領域に対して『守矢神社に関するものを幻想入りさせる』という処置をした。本来はそれで終わりのはずだった」
「その後、神社の領域に私たちの力が色濃く残ったものが踏み入った。」
二柱の話からある物が思い当たる。
「もしかして、私が昔あげたお守りで幻想入りしちゃったんですか?!」
「それは違う。もしそうならお守りだけが幻想入りしただろう」
「じゃあ、どうして」
泣きそうな顔で早苗が尋ねる。自分がきっかけだと考え、責任を感じたらしい。
早苗のその表情は昔と変わっていない。
「幻想入りこそしなかったものの、幻想と現実の境界線上に立ったのさ。そこで、この時期ならではのイレギュラーが起きた」
「なるほど、混沌異変だ。外の世界で最も守矢の力発する物を媒介として、早苗のカードが現代入りしてしまった。早苗が持つのは奇跡を起こす程度の能力。和徒の想いから奇跡が起きて、境界線を越えちゃったってわけだ」
「諏訪子の言う通りだ。直接的な原因は異変にあるが、きっかけは私たちだ。許してほしい」
「それを言うなら私がお守りに込める力を貸して欲しいと頼んだのが原因です!神奈子様と諏訪子様は悪くありません」
責任の所在で揉めてしまっている。これは非常によくない。
「ちょっと待ってくれ、一つ勘違いをしている。俺はこの幻想郷に来たことに後悔していない。むしろ、外の世界に飽き飽きしていたんだ。むしろお礼を言わせてくれ」
今度は逆に俺が頭を下げた。これが一番ベストな選択のはずだ。
「これで二人ともわかったんじゃない?和徒は神奈子や早苗に謝罪を求めてないし、みんなと仲良くしたいってことがさ」
そう言って諏訪子様は俺に目配せしてくる。見かけは子供だが、案外一番大人なのかもしれない。
「でも...」
「早苗はまだ納得できてない?じゃあ、こうしよう。和徒、ここにタダで住まわせてあげる」
「「え?!」」
俺と早苗の声がハモった。年頃の男女が一つ屋根の下。社会的にアウトだろ。
「ちょっと待ってくれ。女性3人の住居に男が1人混じるのはダメだろ」
「だったら聞くけど、和徒は住む場所決まってるの?」
「...決まってないです」
「なら丁度よかったじゃん。和徒はタダで住めて、私たちは幻想入りさせてしまったお詫びができる」
さらに俺にだけ聞こえるように、こう耳打ちしてきた。
「なんなら、婿に来なよ。早苗も多分気があるし、夜は邪魔しないからさ」
「ばっちょっいやっそれは」
とんでもない下ネタをぶっこんできやがった。
幼女の見た目に対して大きなギャップである。
「諏訪子様!和徒に何吹き込んだんですか?!」
「えへへ、ないしょー。神奈子はどう?この案は」
「私は構わないぞ」
「神奈子様まで!」
「早苗は何が不満なのさ」
「やっぱり、年若い男女が一緒に過ごすのは...」
ゴニョゴニョ言ってて俺の位置からは聞こえない。
「そういえば、和徒は今日までどこで過ごしてたんだっけ」
「博麗神社で霊夢に何日か泊めてもらってました」
「は????」
「ひぇっ」
思わず鳥肌が立った。ひどく寒気がする。そんな声だった。
今後一切この話題はしないと誓った。
「一応聞くけど、博麗の巫女とそういう関係になったりとかは...」
「ないです。断じてないです」
「分かりました。和徒、一緒に住みましょう」
「よろしくお願いします...」
住居が決まった。途中命の危機を感じたがなんとか助かったようだ。
ここで、神奈子様が思い出したかのように話題転換をする。
「言い忘れてたが、和徒の話には一つおかしな点がある」
「おかしな点?」
「神社の跡地に埋まっていたというベルト、カオスドライバーの存在だ」
あの時、神社の跡地には雑草が一部生えてない場所があり、そこにベルトが入った木箱が埋まっていた。
「私も諏訪子も、もちろん早苗も、ベルトに関することは何も知らない。つまり、おそらくそのベルトは私たちが幻想入りした後に埋められたんだ」
「となると、犯人っぽいのはスキマ妖怪だね」
「スキマ妖怪、八雲紫。こっちから会うのは難しいから待つしかないね」
霊夢と初めて会った日、聞いた名前だ。
「とりあえず話も一段落したし、夜ご飯にしよっか」
「準備しますね」
早苗が立ち上がった瞬間、障子に風が打ち付け、何者かの気配を感じ取った。
「私でーす、射命丸でーす」
「今行きまーす」
玄関からの呼びかけに早苗が応じる。
「どうもこんにちは早苗さん。実は本日発生した紛い者の件について取材したいのですが、10分程度でいいのでお願いしできませんか」
「分かりました、良いですよ」
「ありがとうございます。立ち話もなんですし、お邪魔させて頂きますね」
「ちょっ」
玄関からそんな話が聞こえたかと思えば、襖が開けられ、黒髪赤目に山伏が被るような帽子を被った少女が部屋に入ってきた。よく見ると、背中に黒い羽が生えている。人間ではないらしい。
「やっぱりここでしたか。探しましたよ、外来人さん。私のパトロンになってくれませんか?」
説明パートに思いの外時間をかけてしまった。