「私のパトロンになってくれませんか?」
射命丸と名乗った少女が告げた。
パトロンってなんだ?そもそも何者だ?
「ねえ、ちょっと失礼だと思わない?家の中に入って良いなんて誰も言ってなかったと思うけれど?」
「これはこれは諏訪子さん、失礼いたしました。何分特大ネタをそちらの方が握っていると聞いて急いで来ましてね」
「特大ネタ?なんだいそれは」
「紛い者の分離ですよ」
3人(?)の視線が俺に集中する。
玄関に出ていた早苗も部屋に戻ってきた。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私、文々。新聞の新聞記者をしております、鴉天狗の射命丸文と申します、真島和徒さん」
そう言って、新聞を手渡される。
すでに名前も調査済みってことか。幻想郷にも新聞があるとは驚きだが、この調査方法はまるで週刊誌みたいだ。
「人里に出た紛い者なら確かに俺が分離した。だが、それは誰から聞いたんだ?」
「最初は慧音さんに話を伺ったのですがあなたの名前と所在を伏せられてしまいました。なので、その場にいたという魔理沙さんに聞いてみたところ、ペラペラ話してくれましたよ。早苗さんと一緒にいるということや、奇妙なベルトで女性になる話とかもね」
「「女性?!」」
そういえばベルトを拾った話はしたが幻想入りして以降の話はしていなかったな。
とりあえず、今後魔理沙に秘密の話は一切しないことを心の中で誓った。
「そういえば、私が人里で和徒に会ったときも女性の姿をしてました!あれ見間違いじゃなかったんですね」
「ああ、魔理沙の話の通りだ。このベルトを使うと女になるが、紛い者の分離ができるようになると思われる。実際俺もよく分かっていない」
「よろしければ使っているところを撮らせて頂いても?」
「構わないが、その代わりベルトを使っていない時の写真は撮るな。それが条件だ」
「なるほど、素顔バレはNGと。分かりました、その条件を呑みましょう」
ベルトが収納されたスペルカードを取り出す。
「『カオスドライバー』、変身!」
『ORIGIN』
「「「「おおおおおお!!!!!」」」」
「和徒、これ変身ベルトですよ!ロマンですね」
「和徒って女の子になると美人系より可愛い系になるんだね」
「この女子高生っぽい服装は誰のセンスなんだ?」
「次のポーズ、お願いしまーす」
パシャパシャとシャッター音が連続で鳴り、外野が騒ぎ立てる。
ていうか、これほんとに新聞の撮影なんだよな?雑誌の撮影じゃなくて。
「もう十分撮れたんじゃないか?」
「いえいえ神奈子さん。まだ肝心な部分が撮れてませんよ」
突如風が吹いた。室内なのに風が吹くと言うのは変な話である。
ヒラっ
まるでそんな効果音が鳴ったと錯覚するほど綺麗にスカートが捲れ上がる。
スカートが短いので防御力が心許ない。女子高生はよくこんなものを履いていたものだ。
パシャっ
その瞬間を逃さないシャッター音。
ボキャッ
早苗のアッパーカットが文に炸裂する。
「何撮ってるんですか...?」
「す、ずみません」
俺は特に怒っていなかったのだが、早苗の逆鱗に触れてしまったらしい。
もしかしたら高校に通っていた時に早苗もこう言った経験があったのだろうか。
「そういえば、私が和徒に会ったときは違う服装でしたが、その時は着替えたのですか?」
「あの時はこのカードを使ったんだよ」
『HIROIC』
巫女服に衣装がチェンジされる。
「「「「おおおおおお!!!!!」」」」
この反応さっきも見たぞ。先ほどまで諏訪子に介抱されていた文が立ち上がり、撮影が再び始まる。
「なるほど、ユナイトカードにはこういった使い方があったのですね」
文が言った名前、ユナイトカード。初めて聞いた名前だ。いつの間にそんな名前になったんだ?
「ええ、スペルカードと混同しやすいからと、数日前に紫さんが命名しました」
また出てきた。八雲紫。このベルトに関係があると考えられる人物。いつか会えるだろうか。
「霊夢に魔理沙、早苗の力を使えるなんて面白いね。もしかしたら他の組み合わせも出来るのかな?」
「でしたら和徒さん、私のユナイトカード、差し上げます」
「良いのか?!」
そう言ってSTORMと書かれたカードを渡される。
「自分のカードを持ってるなんて運の良い奴だな」
「そうなんですか?」
「私も諏訪子も持ってないんだよ。何しろ発生条件が不明だからな」
「私は取材用の手帳に挟まってました」
そういえば人里にいた紛い者もどうやってユナイトカードを手にしたのだろうか。明日聞かなくてはならない。
「それでは、話の本題に入りましょうか」
「パトロンになるとかどうって話か?」
文が解説を始める。
「はい。現在混沌異変は解決の目処が立たず、被害は増加するばかりです。事件が発覚した時には紛い者を殺すしかなくなっていることが多く、このまま時が過ぎれば人妖のパワーバランスが崩れる恐れもありました
「しかし、和徒さんなら紛い者を元に戻すことが出来る。この事実が幻想郷にもたらす影響はかなり大きい。発生不明のカードに怯える必要がなくなるのですから。
「ただし、ここで一つ問題が発生します。それは、和徒さんが幻想郷に来たばかりの外来人であると言うことです。
「新入りに対して良い顔をするところが少ないのはどこも同じです。おそらく和徒さんが事件に関わる時は大ごとになってからでしょう。
「ここで重要になってくるのが私の存在です。私は新聞記者であるため、幻想郷中の噂が入ってきます。
「なので、私が情報提供し、和徒さんが解決する。この仕組みを使えば問題解決なのですよ。
文の言っていることは正しい。だが、一つ見落としていることがある。
「俺たちが組むことが幻想郷のためになるってことはよく分かった。だけど、俺と文の個人的なメリットはなんだ?」
おそらく文はタダで人助けをするタイプじゃない。なんとなく分かる。
「鋭いですね。私のメリットは、新聞が山ほど売れると言うことです。和徒さんが解決した事件をいち早く記事にして売る。混沌異変に関する内容は関心が高くてよく売れるんですよ」
「なら、俺のメリットは?」
「混沌異変に関する新聞で儲けた利益の半分を上げます。これなら十分メリットですよね」
現在俺は金を稼ぐ手段を持っていない。守矢神社で暮らしても良いことになっているが、自分で稼げるようになるまでにはだいぶ時間がかかるだろう。
「交渉成立だ。ただし、事件解決で報酬が出た場合、全部俺のものだ」
「構いませんよ。後日契約書をお持ちしますね」
そう言って立ち上がり、退出の準備をし始める。
「それでは皆さん、お元気で」
障子が開けられ、文の黒い翼が展開されようとした時、
「そういえば、忘れてました」
一瞬にして文が至近距離に移動してきた。
ギュムっ
「胸はだいたいDくらいですかね」
ブンッ
ヒュッ
ふわっ
パシャっ
シュバッ
「さようならー」
「待てやーッッ!!!」
僅か数秒にして、俺の胸を揉んで測定し、早苗の拳を避け、風で捲れた下着を撮影して立ち去っていった。最後の早苗の声を聞いているか怪しいほどの速度であった。
立つ鳥跡を濁さずという言葉があるが、あの鴉天狗は濁しすぎではないだろうか。
「胸を揉まれるなんて初めてだ。こんな感じなんだな」
「和徒もちょっとは抵抗してくださいよッ」
「えええぇぇ」
文が書いているという新聞に目を通す。そこには「人里にて辻斬り発生」「燃える人影現る」といった胡散臭い内容が記されていた。
契約したのは失敗だったか?
早苗にアッパーカットをくらった文は諏訪子に介抱されていましたが、その際「和徒へのセクハラを許す代わりに、パンチラ写真を諏訪子に渡す」という取引をこっそりしていました。
したたかですね。取引を持ちかけたのは諏訪子の方ですが。
次回は新たな事件へ