用務員と七大罪   作:三水 京

15 / 19
第15話

ド〇キに車を走らせお使いで頼まれたものを購入し補填した分のお金をもらうために渡したレシートを母親に見られて家族会議が勃発しかけたりもしたが私は元気です。嘘です今肋骨の皮膚がケロイドになってて違和感が凄い。

風呂に入って鏡で直撃したところを見ているが胸を中心に放射上のあとが目に痛々しい。コレ下手に服脱げなくなっちまったぞ。

 

「治療はほぼ終わりだ、感染症の恐れも無い。火傷後も時間をかければきれいにして見せるとも。もっともそれをするのは明日の決戦を生き延びてからにしてもらいたいが。」

「もちろんだよ。魔力とかのリソースを貯めれる分には貯めて置いてくれ。…そもそも貯めれるのかどうか知らないけど。」

「君であれば貯まる量は微々たるものだ。だがこの世界では魔力がゼロと表記していい人間ばかりだから気にするものでもないよ。」

「大体ずっと思ってたんだけど素養のある人間と無い人間の違いって何?どの辺に違いが出るの?」

「そんなもん知らないよ。知っていたら君を当てにしなくったってよかったんだ。」

 

まだまだ私たちは君たちの事を知らないって事だね~と風呂桶の中で温まっているルシファー。お前めちゃめちゃ人間の世界エンジョイしてるな。

 

「…というか本当に疑問なんだけどあれでミカエルに強さの格付けで勝とうとしているのかね?詳しくない私でもさすがに無理だと思うんだが。アヤ殿もドン引きだったし。」

「うるせーな俺だってやりたくねえよ!でもやらなくっちゃいけないんだよ!未来が掛かってんだからさぁ!」

 

ほんとうにとんでもない作戦…いや、作戦というのもおこがましいさ一向にアホな思い付きだ。だが俺のちっぽけな頭と推理力ではこんな事しか思いつかなかったのだ。これはもう手掛かりがない今の状況が悪い。そうに違いない。

 

「限度はどうなったんだ限度は。いくらこちらの常識に私が疎いからって君のしようとしている行いが割かしとんでもない部類に入ることは薄々察せられるんだぞ。」

「うるさいですね…。じゃあ、もっといい案が有るなら言ってみろってんだ。形から入るのも大変なんだぞ。」

 

完全に忘れてて制服に穴が開いた女子高生連れてアレを買うのは今思い出しても特大のプレミであった。店員のお姉さんから凄い目で見てたし。通報されなかっただけでも良しとしよう。現在アヤはこの土日で制服に空いたあなを繕えないか精華院お抱えの制服屋さんに持ち込んで修繕依頼を出しに言っている無論母さんから何があったのか聞かれていたがアイロンが貫通したと訳の分からない説明をする羽目になっていた。納得する親も親だが。

 

「そういえばだけどミカエルがやらかしたら起きるこっちに有利な事って何なんだよ。あの時は流れで聞けなかったけど。というかどういう原理でこの世界侵略しようとしてるの?」

 

そう、さらっと言っていて今ふと思い出したのだがミカエルが大ポカをかましてくれればこっちにとって有利な事が起きるらしいのだ。ルシファーが今の段階で気づいているという事は無論向こうも対策してくると読んでおいた方が良いのだろうが。

 

「この世界の侵略の仕方から説明しようか。この世界をあいつらが侵略するためには三つのプロセスを踏む必要がある。一つは向こうからこちらに来ること。二つ目はこちらで依り代に取り入って絶望させること。そして三つめが絶望した依り代を門に鍵としてはめ込み天国とこの世界の深層心理をつなげる事。今はプロセス2まで終わってしまっている状況だな、そして明日の正午にプロセス3が実行される。それを止めきれなければ私たちの負けという事だ。」

「深層心理と繋げるって…それやったらお前らが破滅するんじゃないのかよ。」

「それはあくまでこちらの世界の存在規模に真正面から立ち向かった際の話だ。精神世界で十全に力を振るえる我々が深層心理に触れてさえしまえば君と私が行った催眠よりも簡単に、労力無く人類を掌握出来る。」

 

なにせ君たちは深い所でつながっていてそこから切り離す事は出来ないのだから。そうルシファーは言うがまったく分からない、何言ってんだこいつ。

 

「あー、簡単に置き換えよう。君たち人間はインターネットを使うね?」

「ああ、使うが。」

 

急にインターネットの話になった。ちょくちょく変な所にいくなこの悪魔、というかいつ知ったんだITに詳しい悪魔なのか。

 

「私は君の知識を一方的に共有しているあんな事からそんなことまでな。さて、君達は様々なブラウザを通して物事を検索するはずだ。明日の天気、有名人のスキャンダル、娯楽のために作られた映像、性欲を満たすための動画、これらを見る際にG〇〇gleやYAH〇〇、燃えているキツネなど思い思いのブラウザーを使ってみるだろう。」

「聞き捨てならない事とか言いたいことはいろいろあるがまぁ、そうだ。」

「今回の例えで言うのであれば、ブラウザーが君たち個人の意識、そして検索して出てくる内容が深層心理の情報としてくれたまえ。」

 

そこで一息おく、なんで無駄に時間かけるのかな。

 

「見るブラウザが違えばコンテンツに触れるまでの経路は異なるだろう?そのままホームページに表示されているタブをクリックするか、はたまた直接検索ワードを打ち込むか、それで出てくるものは大なり小なりの違いはあるだろうが見るもの自体は同じだ。それが君達の知識のアクセスの仕方だ。人を殺してはならない、他人の物を盗ってはならない、人を裏切ってはならない、慈悲や情けをかける言った行為は深層心理で既に知っているからだ。人間という生き物は本能で、何をなせばよいかをすでに知っているのだから。」

 

いや、育った環境が大多数を占めると思うんだけど。あんまり色んな意見が出そうな話急にすんなよ。

 

「ともかくだ、深層心理により当たり前と是認された行為は誰もが疑いを持つこと無く社会規範として認められるだろう。道行く人に殴りかかる事は今は非常識ではあるが深層心理にそれこそが常識であると刷り込まれれば誰もがそれに疑いを持つことはない。奴らがやろうとしていることは天使の行う事はすべて正義であり疑いを持つことは何よりも罪深い悪徳であると定める事だ。そうするだけで人類は簡単に家畜になる。」

 

やっぱり規模感が違うよなぁ…。とは言うもののだったら人数が多い所でやったらいいじゃんね?何もここじゃなくってさ。

 

「恐らくは私の出てきた場所がここだったから、が一番大きな理由だろうな。本来は追撃の為にこちらに来たんだろうが、依り代と思いの外早く接触出来た為目的を変更したのだろう。実際依り代確保の方が優先度は高い筈だ、死にかけの悪魔一匹放っておいてもおつりがくるプランなのだろうよ。」

 

だいぶ…こう…、行き当たりばったりなんだな…お前ら…。

 

「そうは言うが君達もだいぶ行き当たりばったりが多い種族だろう?余り人、いや悪魔の事は言えないと思うがその辺はどうなのかね。」

 

それはそれじゃん?俺は行き当たりばったりのせいでとんでもない目に遭ってる事を詰りたいだけなんだよ。

 

「おっと、ならば反論を求めるだけ無駄だったな。話を戻そう。奴らは深層心理に触れるために門を開かなければいけない。そしてそのためには大量のオドが必要になる。依り代ともなればうちに秘めるオドの量も莫大だが、オドは感情により出力される量が変わる。ちょうど君が親子の絆を守った時のように感情が高ぶればオドは爆発的に増加するのだ。その反対に抑鬱状態であればオドの出力は非常に落ちる。」

 

つまり、とここでルシファーは言葉を切った。まるで答えを求める教師のごとく俺に続きを促してくる。

 

「メグミちゃんが途轍もなく落ち込んでる今なら必要な材料が足りないから門が開けないかもしれないって事か?」

「おしい!だが不正解とするには惜しい回答だ。部分点としておこう。」

 

教師面をして楽しそうに洗面器の中でくるくると回っているしとしとのルシファーに若干腹が立ってくるが分からないものは分からないのでだったらなんだよと続きを促す。

 

「私がやったようにマナとオドは相互変換が可能な代物だ。変換率という課題こそあるがね、きっとあの間抜けは順番を間違えた!と歯噛みしている事だろう。メグミ殿のご両親の絆を残していれば足りたかもしれないがアホの事だ、あの瞬間もムカついたから、という心底下らない理由でバラバラにしていただろう?あれにそこまでの後先を考える頭はない。像も自身のマナから精製しているはずだ。最初に門を作らせればよかったが計画性が無かったため足りない分の補填を自身でしなければならなくなる。そう私は予想している。」

 

でもお前の予想通りに動くとも限らないんじゃないの?当たり前の話だが。メグミちゃんの出力次第で簡単に前提が変わる話だと思うんだが。

 

「その時はその時だ一矢報いて派手に散ろうじゃないか、契約者。」

「やだよ。死ぬんだったら一人で死んでくれ。それが嫌なら勝って生き残るぞ。」

 

そういいながら湯船から上がる。ぷかぷか浮かんでいたルシファーがひっくり返ったのを救出しながらそういえばこいつ雌…自称乙女だったな…とバスタオルに包んでもみくちゃにして水気を飛ばす。ころころと転がされている様は水にぬれたフェレットに近くなっている。自分の体の水気も拭い着替え終わったところでアヤの帰宅を告げるただいまの声が響いた。

 

決戦まであと13時間、眠れるかどうか不安になりながら母親の作った食事を食べる。これが最後の晩餐になるかもしれないという怯えを隠しながら。

 

「ごちそうさまでした。」

「ちょっと待ちなさい。」

 

母親から呼び止められる。どうしてこの人はいちいち感が鋭いのだろうか、不安や悩みがこの人にすべて筒抜けなのではないかと考えながら振り向き目線を合わせる。

 

「…逃げたかったら逃げていいのよ?ここは貴方の家なんだから。」

「なんかよく分かんねえけど、ありがとう。」

 

そう答えるのが精一杯で鼻の奥のツンとした痛みを必死にこらえる。そんなそぶりも見せてはいけない。ただ明日は普通に妹とモールに行って必要なものを買ってくるだけなのだ。ただの疑うことも無かった明日を引き寄せるために俺たちは戦ってくるのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。