君の背を追いかけて   作:ハーヴァ

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日常の1ページ

学校の休み時間、月影詩音はいつも通り友達と談笑している。友達が持ってきた雑誌を机に置いて、みんなでペラペラめくりながらおしゃべりを楽しんでいた。

 

「詩音ちゃんって、読モとかやんないの?」

 

「なんで?」

 

「いやぁー、お姉さんがモデルやってるからさ、詩音ちゃんも見たいな~って」

 

「私はやんないよ。アイドルやるつもりだし」

 

「え~、もったいな~…え、アイドル?」

 

雑誌をめくりながらそんな会話に花を咲かせていた時、友達の一人が詩音の言った「アイドル」という言葉に反応した。

 

「うん、私アイドルやるの。だからモデルはしないんだー」

 

その言葉に一瞬場が静まり返ったが、すぐに次の会話が始まる。

 

「詩音ちゃんなら絶対人気出るって!」

 

「確かに!だってこんなに可愛いんだもん!」

 

「いやいや……」

 

褒められてまんざらでもない表情を浮かべる詩音。その反応に友達は満足げな表情になる。しかしそんな中、一人疑問を浮かべる人がいた。

 

「なんでアイドル?」

 

その問いかけに、詩音は一瞬考え込む。どうしてアイドルになろうと思ったのか——それは、ずっと憧れていたから。そして、自分自身の夢を叶えるためでもあった。

 

「うーん……やっぱり、アイドルってキラキラしてて、みんなを笑顔にできるでしょ?それに、私も歌ったり踊ったりするのが好きだし!」

 

そう言うと、友達の何人かは「なるほどね!」と納得したように頷く。しかし、別の子がさらに突っ込んだ。

 

「でもさ、お姉さんがモデルやってるじゃん?それこそモデルの道もありだったんじゃない?」

 

「それは……うーん、確かにお姉ちゃんみたいになれたらすごいけど、私は私なりの輝き方がしたいんだよね」

 

詩音は少し照れくさそうにしながらも、自分の気持ちをはっきりと口にする。その言葉に、友達は「かっこいい!」と感心したように微笑んだ。

 

「じゃあさ、デビューしたら絶対教えてね!」

 

「ライブとかあったら行くから!」

 

「うん!その時は応援よろしくね!」

 

そう言って笑う詩音。その瞳は、未来のステージを夢見るように輝いていた。

 

「実際、アイドルって大変じゃない?」

 

その言葉に、詩音は少し考え込みながら答える。

 

「うーん、確かに大変なこともあると思うけど、それでもやりたいんだよね。みんなの前で歌って踊って、笑顔を届けることができたら、それが一番の幸せだし!」

 

友達はその言葉に頷きながらも、少し心配そうに言った。

 

「でも、毎日練習とか忙しいよね?」

 

「うん、私はまだ始めたばかりだから、どんなに忙しくても大丈夫!だって、やりたいことをやってるんだから、楽しくて仕方ないよ!」

 

詩音は明るく笑顔を浮かべながら言った。その姿を見た友達たちは、少し安心したように微笑んだ。

 

「詩音ちゃん、本当にやる気満々だね!応援してるからね!」

 

「ありがとう!みんなの応援があれば、どんなに大変でも頑張れるよ!」

 

詩音は心からの感謝を込めてそう言うと、みんなも嬉しそうに頷きながら、詩音を応援する気持ちを伝えてくれた。詩音はその温かい言葉に勇気をもらい、ますますアイドルとしての夢に向かって前進しようと心に誓った。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「ほら、授業始めるぞー。」

 

「あ、詩音ちゃん。また後でね!」

 

休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響く中、友達が名残惜しそうに手を振る。

 

「うん、またね!」

 

詩音も笑顔で応えながら、自分の席へと戻る。ノートを開きながらも、さっきのみんなの言葉を思い返していた。

 

——詩音ちゃんなら絶対人気出るって。

 

その言葉が胸の奥でじんわりと温かく広がる。

 

「私なら、きっとなれるよね……!」

 

小さく呟きながら、ペンを握る手に少しだけ力を込めた。まだ夢の入り口に立ったばかり。でも、いつか本当にステージに立って、みんなの笑顔を見られる日が来る。

 

そんな未来を思い描きながら、詩音は教科書を開いた。

 

これから始まる授業に集中しようとしながらも、心のどこかで夢への期待がふくらんでいくのを感じる。

 

——アイドルとしてステージに立つ。

 

それはまだ遠い未来かもしれない。だけど、こうして夢を語ったことで、ほんの少しだけ現実に近づいた気がする。

 

「絶対、なってみせる。」

 

心の中でそっと自分に言い聞かせながら、詩音は新たな一歩を踏み出す気持ちで授業のノートも開く。

 

黒板に書かれる文字をノートに写しながらも、頭の片隅では未来の自分を思い描いていた。ライトが輝くステージ、歓声に包まれる客席、そしてマイクを握る自分——。

 

「……よし。」

 

小さく呟き、ペンを走らせる手にもう一度力を込める。

 

夢はまだ始まったばかり。だけど、今日のこの気持ちを忘れなければ、きっと叶えられる——そう信じて、詩音は前を向いた

 

授業が終わり、昼休み。お母さんに作ってもらったお弁当を手に、学食に友達と向かう途中で凛音が歩いてきた。

 

詩音は凛音を見かけ、少し驚きながらもすぐに笑顔を浮かべた。

 

「おーい、お姉ちゃん!」

 

凛音は立ち止まり、詩音を見上げると、少し微笑みながら答えた。

 

「あら、詩音。学食?」

 

「あ、うん!お姉ちゃんも学食?珍しいね?」

 

「うん、今日はちょっと気分転換にね。普段は仕事で忙しくて、なかなか学食に来ることないから。」

 

凛音は少し照れくさそうに言いながら、詩音の隣を歩く。詩音はそれを聞いて、思わず笑顔になった。

 

「そうなんだ!お姉ちゃんもたまにはリラックスしないとね。」

 

「そうね、じゃあまた家でね。」

 

「どうして?お姉ちゃんも来ないの?」

 

「詩音はお友達と学食行くんでしょ?邪魔しちゃ悪いわ。」

 

凛音はそう答えて立ち去ろうとしたが、友人の1人が声を上げた。

 

「あの、凛音さんの仕事の様子を聞かせて貰えませんか?」

 

興味がありますと言いたげな表情で凛音を見つめる友人達に凛音は、観念したように詩音の隣に移動し、学食に向かった。

 

学食に着くと、詩音とその友達、そして凛音は適当な席を見つけて席を取る。

 

「そういえば、お姉ちゃん。お弁当は?」

 

凛音は軽く首をかしげながら、微笑んで答える。

 

「家に忘れてきちゃってね。だから、今日は何か頼もうかなって思ってるの。」

 

その言葉に、詩音の友達の一人が興味深そうに口を挟む。

 

「えー、凛音さんも忘れることってあるんですね。完璧ってって思ってたから、ちょっと意外!」

 

凛音は軽く笑いながら、首をかしげる。

 

「完璧に見えるのは外側だけかもしれないわね。たまには、こんな日もあるのよ。」

 

その言葉に、テーブルの友達たちも笑い出し、和やかな空気がさらに広がった。

 

「そういえば、今日何か頼むって言ってたけど、どんなのにするんですか?」と、別の友達が尋ねる。

 

凛音は少し考え込んだあと、明るく答えた。

 

「うーん、最近体調を崩しやすいから、今日は温かい定食とか、体に優しいメニューがいいなって思ってるの。」

 

詩音はそんな凛音の言葉に、心の中でほっこりとした安心感を覚えた。普段、いつも完璧な大人のお姉ちゃんが、こんな素の一面を見せると、なんだか親近感が湧く。

 

「お姉ちゃんもたまには失敗してもいいんだよね。私たちだって、完璧じゃないし!」と、詩音がにっこりと微笑む。

 

「そうよ、失敗もまた経験。今日みたいな小さな忘れ物だって、後で笑い話にできるわ。」

 

その言葉に、友達たちも頷きながら、学食のざわめきの中で、みんなの笑顔が一段と輝いて見えた。

 

「じゃあ、今日は皆でおいしいものを食べながら、そんな小さな失敗も楽しもう!」

 

誰かが提案すると、テーブル全体に明るい笑い声が響いた。学食の一角は、まるで家族のような温かな団欒の場と化し、凛音も詩音も、そして友達たちも、そのひとときを心から楽しんでいた。

 

食券を買い、並ぶ列の中で、みんなは次の食事が届くのを待ちながら、自然と会話を始めた。詩音は友達と笑いながら凛音の隣に立ち、ふと誰かが問いかけた。

 

「凛音さんってモデルのお仕事してるんですよね?雑誌いつも拝見してます。」

 

友達の一人が目を輝かせながら問いかけると、凛音は落ち着いた笑顔で頷いた。

 

「ええ、ありがたいことに、いくつかの雑誌や広告に出させてもらってるわ。」

 

「すごいなぁ…!撮影ってどんな感じなんですか?」

 

「そうね…テーマに合わせてスタジオや屋外で撮影することが多いわ。ヘアメイクや衣装を整えて、カメラマンさんの指示に従ってポージングをするの。簡単そうに見えて、意外と体力も使うのよ。」

 

「へぇ~!やっぱりポーズとかも研究したりするんですか?」

 

「もちろん。表情の作り方や姿勢、視線の向け方ひとつで全然印象が変わるの。だから、雑誌を読んで他のモデルのポージングを勉強したり、鏡の前で練習したりするわ。」

 

凛音が淡々と説明するたびに、友達は「なるほど~!」と感心しきりだった。

 

「詩音ちゃんもモデルやってみたら?お姉さんと一緒に撮影とか、めっちゃ見たい!」

 

「だから私はアイドルやるってば!」

 

そう言いながらも、詩音は少し照れくさそうに笑う。それを見て、凛音は少し微笑みながら言った。

 

「詩音は昔から自分のやりたいことをしっかり持ってるものね。」

 

「えへへ、そうなの!」

 

そんな二人のやりとりを見ながら、友達の一人がぽつりと呟いた。

 

「凛音さんって、すごく落ち着いてて綺麗だよね……」

 

「わかる!なんか、大人っぽいっていうか……クールな感じ?」

 

「うん、なんか『モデルさん』っていう雰囲気がある!優しいけど、ちょっと近寄りがたい感じもするかも……」

 

そんな友達の言葉に、詩音は「えー?」と意外そうな顔をした。

 

「お姉ちゃんは優しいよ?まぁ、ちょっと冷静なところはあるけど……」

 

「そうそう、まさにそれ!大人の余裕って感じ?」

 

「……大人の余裕、ね。」

 

凛音はその言葉に少し考え込むように微笑んだ。そして、ふと視線を詩音に向ける。

 

「私は、詩音みたいに素直に夢を語れる方がすごいと思うけれど。」

 

「えっ?」

 

「私はモデルの仕事をしてるけれど、最初からこれが夢だったわけじゃないの。でも、詩音はちゃんと自分の夢を持っていて、それをまっすぐ目指してるでしょう?それって、とても素敵なことよ。」

 

凛音の言葉に、詩音は少し驚いた表情を浮かべる。普段はクールで大人びている姉が、こんなふうに自分のことを認めてくれるのが嬉しくて、どこかくすぐったい気持ちになった。

 

「……ありがと、お姉ちゃん!」

 

「ふふ、どういたしまして。」

 

そのやりとりを見ていた友達は、改めて凛音の印象を抱いた。

 

「やっぱり、詩音ちゃんのお姉さんって、かっこいい……!」

 

凛音の落ち着いた雰囲気と、姉としての温かさ。モデルらしい気品と、妹を想う優しさ。その両方を感じ取った友達は、ますます憧れのまなざしで凛音を見つめていた。

 

「はい、お待ちどう様。きつねうどんだよ。」

 

食券を呼び出す声が響くと、列の先頭にいた一人が、にこやかに自分の番号を確認しながら前に進んだ。友達たちのざわめきが少し高まり、次々と自分の番を待つ中、詩音はふと隣の凛音の横顔を見やった。

 

凛音はその呼び声に、ほのかな笑みを浮かべながら受け取ると、丁寧にお皿を手に取った。温かい湯気が立ちのぼるきつねうどんは、まるで今日の心温まるひとときを象徴するかのようだった。

 

「いただきます!」と、軽やかな声と共に、凛音は箸を手に取り、まずは一口。その柔らかな出汁の香りと、ふんわりとした油揚げの甘みが、今までの会話の疲れを一瞬で溶かしていく。

 

待ち時間に交わされた質問や笑い話、そして学食のざわめきの中で感じた、仲間たちとの温かい絆。凛音は、そんな日常のひとコマに、ほんの少しだけ自分自身の小さな幸せを重ね合わせるような気持ちになった。

 

詩音もまた、友達と一緒に並びながら、どこかワクワクした表情で、自分の目の前に並ぶ料理を眺めた。彼女は、これからの夢に向かって一歩ずつ前進していく自分と、今この瞬間の温もりがどちらも大切だと、心の中で静かに感じ取っていた。

 

「やっぱり、お母さんのお弁当美味しい。」

 

学食のテーブルで弁当を広げながら、詩音は友達と笑い合い、温かなひとときを楽しんでいた。お母さんが作ってくれたお弁当の変わらない味と、学食特有のざわめきが、彼女の日常に小さな安心感を与えている。

 

「ねえ、詩音ちゃん、ダンスの練習どんなかんじ?」

 

明るい声に、詩音は顔を上げた。友達の一人が目を輝かせながら尋ねる。

 

「うん、ちょっと新しいステップを試してみたんだけど、やっぱり難しくて…もっと練習しなきゃって実感したよ。」

 

そう答えると、別の友達がにっこりと笑いながら、「頑張って!」という励ましの声に、詩音は一瞬、照れ隠しのように笑みを浮かべた。そして、少し恥ずかしそうに目を伏せながらも、はっきりと口にした。

 

「ありがとう。でも、まだまだ練習中だから、すぐにアイドルデビューなんて無理かもしれないよ…」

 

友達たちは、彼女の言葉を受け止めながらも、ますます期待と応援の眼差しを向けた。

 

「そんなことないよ! 詩音ちゃんのダンス、絶対見たいんだから!」

「いつかステージで、輝く姿を見せてよ!」

 

学食のざわめきと、弁当の温かい味わいが、彼女の日常に小さな勇気を運んでくれる。詩音は、友達の声援を胸に、内心で小さな決意を新たにした。

 

「うん、もっと頑張ってみる。私、夢をあきらめないし、いつかみんなに喜んでもらえるステージを見せたいから。」

 

その瞬間、テーブルに並ぶ友達の笑顔が、まるで未来への道しるべのように感じられた。ふと、窓の外から差し込む柔らかな光が、詩音の頬を温かく照らす。彼女は、少しの不安を胸に抱えながらも、未来への期待に胸を高鳴らせた。

 

「私、アイドルとして輝く日まで、何度転んでも必ず立ち上がる。今日のこの温かな瞬間も、全部夢への一歩だと思うんだ。」

 

友達の一人がにっこりと笑いながら、「その意気だよ、詩音ちゃん! これからもみんなで応援するからね!」と声をかけると、周囲は一層和やかな空気に包まれた。

 

学食のざわめきと、テーブルを囲む仲間たちの笑い声が、まるで未来へのエネルギーとなって、詩音の心に深く染み込む。お母さんが作ってくれたお弁当の懐かしい味と、友達の温かな応援が、彼女にとって何よりも大切な宝物となった。

 

その日、詩音はひとつの約束を自分自身に課した。

「どんなに道が険しくても、必ず自分の夢に向かって進んでみせる!」

 

そして、彼女は笑顔で、これからの日々に向けた新たな一歩を踏み出す決意を固めたのだった。

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