俺の姉ちゃんが転生者!!!   作:あえch

4 / 4
フロット村…救出大作戦!
フロット村と少年…


 

僕は食べ物と水を握り、一生懸命口に入れた。

交互に、早く、自らが生きていると証明するように。

僕は生きている。その気持ちを持って、口に押し込んでいく。

 

そのおかげだろう。痩せこけていた頬は少し張りを取り戻し、唇のひび割れは無くなった。

 

栄養が回る身体、心臓、そして脳。

僕は、そんな脳で、少し考える。

姉ちゃんは、死から何を伝えたかったのだろう?

最後の教育で、何を伝えたかったのだろう?

こんなことを考える。

 

いや、考えても意味のないことかもしれない。

そんなものはないのかもしれない。

だけど、これだけは分かる。

 

姉ちゃんは、僕に死んでほしいとは思っていない。

たくさん迷惑かけて、教わってばかりだったけど…

僕に生きていてほしい。そうやって、応援してくれていたと思う。

死んでしまった今でも。

 

そして、僕が知りたいんだ。

 

姉ちゃんは何故死んだのか。誰に殺されたのか。

僕は、死ぬまで姉ちゃんと向き合いたい。

 

そのために、今は生きるんだ。

 

「アウルスさん、教えてください」

 

僕は、目の前の村長を、尊敬の念を込めてアウルスさんと呼ぶことに決めた。

気付きを与えてくれた村長。僕は、この人に付いていく。

 

そのための一歩。少し怖いが、聞かなければならない。

この言葉を、僕は聞かなければならない。

 

「フロット村に何が起こったのか。僕は何をすべきなのかを教えてください」

 

アウルスさんは、小さく呼吸をする。

そして、息を吐きながら…

 

「分かった、説明しよう」

 

フィールド魔法、アウルスさんの作戦。

アウルスさんは、フロット村に種を落とすように、ポツポツと話し始めた。

 

─────────────────────────

 

ある者は農耕に勤しみ、ある者は自宅で悲しみに暮れていた頃。

フロット村に、男たちがやってきた。

 

男たちは下卑た笑みを浮かべ、村に足を踏み入れた。

彼らが奪ったものは計り知れない。笑顔、愛情、そして──村の誇り。

 

「フロット村に調査依頼が来ている」という言葉を並べ、侵入してきた男たち。

彼らは、村のすべてを奪い去った。

 

フロット村は高い山に位置している。群生している広大な林は村を囲み、外部からの風魔法を完璧に遮断していた。

人口は少ないが、侵略者にとって厄介な地形。

 

そんな土地で、男たちは暴れ始めた。

 

『フロット村に調査依頼が来ている』

 

この言葉は、真っ赤な嘘だった。

厳しい土地に侵入するための、醜い嘘。

 

気付いた時には、もう遅かった。

 

瞬間、心地良い風が吹いた。

男たちの醜悪な背中を押すように吹いた風。彼らは、そんな風を受け、腰にある懐刀に手を掛けた。

 

ダン。

 

同時、落ち葉のように儚く、枯れ葉のように呆気なく村人の首が飛ぶ。

 

銀白に輝く短剣を鮮血に染め上げ、男たちは多くの村人にこの言葉を突きつけた。

 

『マルトス・ガルーラは何処だ?』

 

アウルスの父、マルトス・ガルーラを探して、殺す。

それが、男たちの本当の依頼だった。

 

─────────────────────────

 

「そういうことだったんですね」

 

僕はアウルスさんから視線を外し、白い壁に浮かぶ四角い窓から外を見つめた。

かつて緑が広がっていた大地。今は黒く焼け焦げ、風が吹くたびに炭が崩れる。

 

僕が知っている広大な自然は、炭の匂いと共に、僕の瞳から消えていた。

 

この焼け野原では、外部からの風魔法を防ぐことは出来ない。

 

だから、供物を捧げてでもフィールド魔法を張る必要があったんだ。

ゼロ魔力。魔法を使わせない環境を作るために。

 

僕は、考え込みながらゆっくりと頷く。

そんな僕を見て、アウルスさんが口を開いた。

 

「正直、ネルフが私に飛び込んできた時、凄く驚いてしまってな」

 

「……すみません」

 

本当に申し訳ない。

誰だって殴られそうになったら驚くだろう。

僕は自責の念を感じ、地面を見つめた。

 

「ふっ、勘違いするな。別に責めている訳ではない」

 

この言葉に、僕は顔を上げた。

すると、そこには、自信に満ち溢れるように薄く笑う、村長の顔があった。

 

「村の皆は、襲撃者に対し怒りを燃やしている。歯を食い縛り、戦うことを決意している」

 

アウルスさんは、間を作るように一拍呼吸をして、ゆっくりと言葉を続ける。

 

「物流を整え、経済的に村を豊かにした英雄…私の父。皆の決意はそんな英雄が亡くなったからであり、私の力ではない」

 

僕は、アウルスさんの父を知らなかった。

親も居なくて、僕が会話をしていたのは姉ちゃんとエマだけ。

ボクシングしか取り柄のない僕。そんな僕を変えてくれたのは、言うまでもない。

目の前にいる、今も生きている村長だった。

 

「たった一人。しかし、私は自信を持って言うことが出来る。強き少年を変えることが出来た。村長として、大いなる戦いを前にして、大きな責任を果たせた…とね」

 

強き少年。この言葉が俺に放たれた時、こう感じた。

『嬉しい』って。

もしかしたら乗せられているのかもしれない。それでも、姉ちゃんとの時間は無駄じゃなかった。そう感じることが出来たから。

 

だから僕は、アウルスさんの言葉をすんなり聞いたんだと思う。

もしも、その言葉が作戦の中核、一番危険な役割を任されるための伏線だったとしても。

 

「ネルフ、お前の役割は…」

 

僕は、拳を握りしめる。

拳の骨が浮き出て、少しだけ赤くなる。

そんな拳に降ってきた役割は…

 

「剣。私を守る、私とフロット村の剣だ」

 

これが、僕の役割だった。

 

 

『剣』ざっくりとしすぎていて、僕には役割が理解出来なかった。

詳しく聞こう。そう思って、言葉を探すように、口を小さく開けた時だった。

 

ダンっ

 

僕とアウルスさんしか居なかった部屋。

その部屋の扉が勢いよく開く。

 

そこに居たのは、オレンジ色の髪をした、眉間に皺を寄せた少年だった。

 

敵か?そう思い、僕は体を強張らせ身構える。

そんな中、隣のアウルスさんが立ち上がり言葉を放った。

 

「べリクス、どうした?」

 

「兄上!今回の作戦の中核は僕のはずです。その子供ではないはずです!」

 

べリクスと呼ばれる人物が、僕に人指し指を向ける。

指を向けられた僕は動きを止め、思考だけを回した。

アウルスさんに向けられた兄上という言葉。

同じ髪色。もしかして…

 

「アウルスさんの、弟さんですか?」

 

「あぁ、私の弟だ」

 

アウルスさんの後ろで、弟さんが舌打ちをする。

僕、嫌われてるな。

 

「ベリクス、作戦の中核にはネルフも入れる。これは頼みではない。『命令』だ」

 

「くっ、命令…分かりました。兄上」

 

ベリクスさんの不満げな顔。

呆気に取られている僕に、アウルスさんが口を開いた。

 

「ネルフ、お前も作戦の中核に他人が居るのは怖いだろうが。安心しろ。私の弟は強い」

 

僕は、小さく頷いた。

別に、不満も不安もなかった。

アウルスさんの弟だ。弱いということは無いだろう。

そもそも、僕の考えなんて関係無い。役割、作戦の中核。僕は、それを遂行するだけだ。

 

アウルスさんは気を取り直して、ゆっくりと口を開く。

 

「お前たちを作戦の中核とした戦争。徹底抗戦だ」

 

言葉が村に響く。

その日、フロット村をフィールド魔法が覆った。

 

 

─────────────────────────

 

「あれ~?フロット村に生き残り居るらしいから魔法撃ったのに、弾かれてんじゃん」

 

一人の細身の男が、軽口を叩く。

その言葉に、酒を飲みながら近づいてくる男。

 

「魔力を弾くフィールド……あれは、ゼロ魔力か。やり手が居るな」

 

男が言葉を放つ。

その男は目元に古傷を残し、身長は二メートルを超える巨漢であった。

そんな男が、フィールドを見て分析する。

分析しながら、甲冑を着る。

 

「だが、大したことはねぇ」

 

大きく息を吸って……

 

「お前ら!やり残した仕事を終わらせに行くぞ!」

 

巨漢の声に、耳を塞ぐ細身の男。

その後ろで、多くの男たちが、下卑た笑みを浮かべながら立ち上がる。

 

「あーあ、隊長本気じゃん。こりゃ、終わりだな~」

 

細身の男の声。

立ち上がった男たちは歩み始める。

 

向かう先は…

 

『フロット村』

 

小さな小さな村が、命を賭けて迎え撃つ。

フロット村の襲撃と逆襲。

大切な者を失った者たちが、命を賭けて、剣を、拳を、握りしめる瞬間であった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。