褒め言葉にもならない。
だって、
輝いているのは当たり前だから。
太陽は輝いているのが当たり前だから。
僕はいつでも思ってる。
言葉にすることなく。
俺はいつでも思ってる。
言葉にするまでもなく。
君はいつだって眩しい。
「やってるな」
遠目にも特徴的なオレンジ頭はよく目立つ。
てか、小石とコンクリートの橋の下じゃいっそ目立つ。灰色尽くしの河川敷でオレンジ頭が動き回るのはそりゃあもうよく目立つ。
「また教師に目を付けられるのに」
河川敷で大立ち回り。
不良相手に大立ち回り。
もう、立派なヤンキーだ。
一体、今は何時代ですか?昭和ですか?ハイスクールな落書きですか。ろくでなしのブルースですか?知らないけど。
そもそも、中学生だけど。ピッチピチのDCですけど?
「そういや中学って停学ってあるんだっけ。出席停止だったっけ」
なんてことを思っている内に、4人目が見事な正拳突きを受けて仰向けに倒れた。
後頭部から倒れたけど大丈夫かな。
ま、大丈夫か。あれ以上馬鹿になることはないだろう。
残る獲物はあと一人。
この分なら救急車が来る前に5人全員片づけられそうだ。
最初にやられた鼻からチェーンぶら下げてる奴(横チン?ハミチン?とか呼ばれてた奴〜)を入れると6人か。
集団相手の喧嘩の立ち回りは中々大したものだ。ああいうのは空手の道場に何年通っても身に付くものじゃない。
「クソが⋯黒崎の野郎⋯ぶっ殺してやる」
カサカサと虫のように上がって来たた奴が忌々し気に大立ち回りをするオレンジ頭を見下ろしている。
頭に血が上ってすぐ側に俺がいることとにも気づいていないらしい。
確か2人目、回し蹴りで沈められた奴だ。首と顎の境目が無い一番恰幅の良い奴だ。脂肪で辛うじて失神を免れたのだろう。携帯を手にしてるところを見ると、仲間を呼ぶつもりかもしれない。
「ノブちゃんに人集めてもらいや⋯へへへ」
独り言多いなコイツ。
それにへへへって。お手本レベルの三下っぷりにうっかり感動しそうになるが、流石にもう2〜3人追加となると色々面倒だ。
負けることは無いだろうけど誰かが警察に通報したら厄介なことになる。一護の学校での噂よりもその父親からの執拗な弄りが厄介だ。うん、あのヒゲの弄りは厄介なことこの上ない。
救急車の数も足りなくなるかもしれない。
たかが喧嘩ごときに救急車を更に何台も追加となったら同じ医療従事者(元だけど)としては心苦しい。
なので、
「はい、そこまで」
「あ?」
あごナシ(命名)の手にした携帯を奪い取る。
表示には「ノブちゃん」…って愛称で登録するタイプか。
後々「あれ?フルネームなんだっけ?」と名前出て来なくなるやつだ。
「よっと」
「あ!?」
ちゃんと電源を切ってから丁寧に圧し折る。万が一何かを察して来られても面倒だし。
「流石に卑怯の上塗りはダメでしょ」
「あ!!」
一文字「あ」だけで感情を多分に表現できるのはある意味器用だ。
ちなみに今の「あ!!」は俺の胸倉を掴んで殴りかかってくるところ。
「ほいっと」
「あぁぁっ!?」
掴んできた腕を捻って、足を払ってやるとあごナシは土手を転がり落ちていく。
それなりの勢いが付いてるから怪我はするだろうけど、救急車が来るので大丈夫だろう。おそらく。
動かなくなったけど、きっと大丈夫だろう。
多分。
あごナシを沈めている間に、ハミチン一派を全滅させたオレンジ頭が椅子に縛り付けられている大男に何かを手渡している。
彼の為に身体を張ったに違いない。
あんなにボロボロになって馬鹿な奴だ。
家に帰れば妹達が怪我を見て心配するのに。
学校に行けば教師連中から不良の誹りを受けるのに。
噂を聞いた周囲がヤンキーのレッテルをより強固にするというのに。
それがわからないほど馬鹿じゃないのに、そういう馬鹿なことをする。
きっとこれからもそうなのだろう。
決して行動を改めるなんてことは無い。
誰に何を言われようと曲げるつもりなどさらさら無い。
アイツはそういう男だ。
それは俺が一番よくわかっている。
そして、そういうアイツだから好ましい。
「派手にやったな」
「なんだよ、見てたのかよ」
ぶっ倒れたオレンジ頭に駆け寄ると、ようやく俺に気付いたのか眉間に皺を寄せたまま見上げてくる。
不機嫌そうな顔に見えるがこれがデフォ。
睨みつけてくるように見えるがこれがデフォ。
顔の作りは美人で優しい母親似のはずなのに、顔を顰めると途端にゴリラの面影を出すのはいつ見ても親子というものの繋がりの不思議さを感じさせる。
「ほい」
「ん」
仰向けに倒れた友人に手を差し出すと、強い力で握られる。子どもの頃とは違う、デカくて固く骨ばった男の手。それもそうだ。もう15歳になったんだから。9歳の頃とは違う。
「立てる?」
「舐めんな」
大して力を入れて引っ張るまでも無く、自力で立ち上がる友の意地っ張りぶりに思わず苦笑が零れる。
「つーか、見てたなら加勢しろよアクア」
「一護が始めた喧嘩だろ。それに俺は頭脳担当なの。野蛮な喧嘩は無理無理」
「よく言うぜ」
「喧嘩なんかで顔に傷付いたら家族が悲しむし。俺の顔は一護と違って痣とか鼻血とかが映える作りじゃないんだよ」
「俺の顔の作りが野蛮って言われてるように聞こえるんだが」
「君の父親の顔を想像してみろよ。そこに鼻血と痣と付け加えてみ」
「うぉぉぉ⋯⋯違和感無さ過ぎて何も言えねぇ⋯」
一護が苦悶の声と共に頭を抱えて蹲る。
自分の顔立ちが年々父親に似てきていることを嫌々ながらも自覚しているコイツにはさぞかし屈辱的な事実だろう。
「それにさ、俺が怪我でもしたらウチの妹にまたイヤミ言われるぞ」
「ぐ⋯⋯」
「お前ん家に黙って泊まっていくだけでチクチク言われるのに」
「うぐぐ⋯」
蹲る一護に更に追い打ちをかけてやる。
何でって?一護のリアクションが面白いから。
「.....つーかよ、あれはチクチクってレベルじゃねーぞ?俺、お前の妹に何かしたか?」
「すまない。それは俺にもわからない」
星野家の天使こと妹のルビーと一護の相性は昔から良くない。
良くないというか、悪い。
斉藤社長や一心さんで強面には免疫があるから一護のしかめっ面にビビるということは無いのだが妙に当たりがキツイ。
何故と問い質してみても「気に入らない」の一言。兄としては妹が親友を嫌っているのは悲しいものがあるのだがこればかりは俺がどうにかするものではない。
俺が今なすべきことは、
「で、君が馬芝中の茶渡君だっけ?」
「⋯アンタは?」
「俺は星野アクア。一護と一緒に君の手当もしないとな」
「いいのか?」
「一護が助けた奴を俺が助けない理由は無い」
「·····すまない」
茶渡が戸惑ったように頭を下げる。
ワイヤーで椅子にグルグル巻きにされながら、それでも律義に頭を下げるあたり、真っ直ぐな気質の持ち主だとすぐにわかる。
「おい、アクア」
一護がにやっと口の端を持ち上げる。
意地の悪い笑みだ。
意地が悪いと感じるのはコイツが何を言おうとしているのか俺が察してしまっているからだろう。
「ちゃんと名乗れよ」
ほらな。予想は案の定的中する。
「星野は偽名なのか?」
「あぁ〜⋯いや、そういう訳じゃ⋯「アクアマリン」一護テメェ⋯」
「せっかく親からもらった名前なんだから堂々と名乗れよ」
「⋯アクア⋯⋯⋯マリン」
「アクアでいいからな」
「いや、その⋯·いい名前だと俺は思う。宝石の様で、星野に、とてもよく似合っている」
心の底から振り絞るように、短く千切るように言葉を口にする茶渡の優しさと気遣いに感謝と申し訳なさが胸に込み上げた。
良い奴だ、友達になれそうだ。
それはそれとして、後で一護はシめる。
「漢字で書くと愛に久しいに愛の海で愛久愛海だ」
「なんで漢字にまで言及した。お前漢字表記にこだわる奴じゃなかっただろう」
「愛が二つも入っているのか⋯凄いな。愛をたくさん抱える男は、素晴らしいと⋯俺は思う」
「ありがとう茶渡。君とは仲良くなれそうだ。手始めに共通の友人の話題として、一護が幼馴染の子に空手で泣かされて、漏らした時のことを教えよう」
6歳の頃だ。
事前にトイレに行っておけと行ったのに一護は横着して行かなかった。
結果、たつきの正拳突きを食らった訳だ。
負けて泣くのはいつものことだったが、その時は正拳突きの拍子に漏らした。
上も下も大騒ぎとはこういうことかと、その光景を眺めながら思ったものだ。
帰宅後、一心さんは爆笑したらしい。ホント、ノンデリだよなあのヒゲ。
「アクア!!テメー!!!」
「何事もやったらやり返される。喧嘩以外でもその法則が成り立つことを知れ」
「一護。人の名前をネタにするのは良くない」
「そうだそうだ」
「じゃあオメェもきちんと名乗れよ」
「嫌だよ恥ずかしい」
それとこれとは別の話というやつだ。
★星野アクア
黒崎一護の親友という名の黒崎一護ガチ勢。
同担拒否はしないのでチャドとは仲良く出来る。
ホントは一護と同じ中学に行きたかったけど地区違うしルビーに変な虫が付かないか心配だったので断念。
本人は知らないが、一護の風評被害の元となってるボコられた不良の三割はコイツがやった。
◯黒崎一護
トラウマ必至の出来事からよくもまぁというくらい真っ直ぐに育った男。
コイツとナルトがなまじまっすぐに育ったせいで、悲しい出来事で道を踏み外したキャラの大半が単なる甘ったれとしか見られなくなったとか何とか。
タツキと同じ道場だけど、今では喧嘩で磨き上げた喧嘩空手。
喧嘩に明け暮れてても成績上位なのは親友のアクアに教えてもらってるのが大きい。
互いの妹同士は仲が良いのに、自分はルビーに嫌われてるのが密かな悩み。
★星野ルビー
絶対BL許さないマン。
ブロマンスならギリ許…せるわけねぇよなぁ!!
なお兄ちゃんガチ勢。
遊子と仲良し。いらん事を教えてる。
◯黒崎遊子
ルビーと仲良し。
愛さえあれば全て許されると宣うルビーの言葉に目から鱗がバケツいっぱい分くらい溢れた。