Death, Rain and Birth   作:FOOO嘉

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A smitten woman

私はおかしくなったのかもしれない。

 

 

おかしいのは元からかっていうツッコミは入るよね。うん、わかってる。

何となく自覚はあるし、てか実際そうだし。

昔から変な子とかおかしな子って言われてきてるから自分でも「そっかな〜」とは思ってる。

そんでもって、そういう子が好かれないことも理解してた私は自分のとんでもない可愛さと振る舞いでそれを上手く誤魔化してきた。

愛嬌があって可愛ければおかしな子は「天然」と好意的に見てもらえることを幼いながら理解していたからそれなりに上手く振舞えていた。

解していたからそれなりに上手く振舞えていた。

でも、私が変わってるのは人の気持ちに共感できないとか、振る舞いの常識の無さとか、そういう滲み出てくる育ちの悪さみたいなもの由来なんだと思ってた。

少なくとも「アイアイ星からやって来たお姫様なの〜」とか、「私ね、神様の声が聞こえるんだ〜」っていう方向性じゃない。

そういう売り方はしてないし、多分ウチの社長がそんな売り方は許さない。私だって嫌だ。

そもそも変わってる自分が好きじゃなくて、「まったくアイちゃんは仕方ないなぁ」くらいに可愛い範疇で受け止めてもらえるように調整してるのに更に奇行に突っ走ってどうすんのさ。

んに「まったくアイちゃんは仕方ないなぁ」くらいに可愛い範疇で受け止めてもらえるように調整してるのに更に奇行に突っ走ってどうすんのさ。

 

 

だけど、それは私の希望であって事実とは違う。

 

 

「今日はちょっと早いな〜」

 

まん丸な月を見上げながら程よく溶けたバニラをひと掬い口にする。

ひんやりとした冷たさと、濃厚な甘さが心に沁みる。

夜中のアイス(しかもダッツ)はギルティだけど、自分を落ち着かせるために必要な行為だから仕方が無い。

あ、落ち着かせようとしてるってことは、私やっぱり動艦したんだ⋯などとセルフツッコミを入れられる程度には今の私は冷静。

そもそも落ち着くためにアイスを食べるなんていうのは過去のお話。

理由はとっくに言い訳になってしまってる。

 

 

「やっぱりアレってせんせだよね」

 

今さっき見たものを確かめるように呟く。

せんせっていうのは当然雨宮ゴロー先生。

私がせんせって呼ぶのはあの人だけ。

黒崎先生は黒崎先生。佐藤社長は「なんで俺の名前は憶えないのに」と言ってたけど、そこは同じヒゲでも色々違うから仕方ない。何て言うんだろ、人としての深み?厚み?濃さ?みたいなの。

 

ダッツをひと掬いする度に頭は冴えてくる。

シャッキリした頭で思い返せば、今さっき見たものはより鮮明になる。

ベランダの外に広がる夜の街並みを横切るように宙を駆ける人影。

真っ黒な着物を着て、腰に剣を指してるその人は間違いなく雨宮ゴロー先生だった。

 

見間違いじゃない。ていうか見間違いかどうかなんてとっくに疑ってる。

最初に見た時に何度も考えたもの。見間違え?目の錯覚?夢?

頬っぺたを抓ってみたら痛かったので夢の線は消えた。

疲れからくる目の錯覚は育児が落ち着き始めて余裕が出てきた頃に見るようになったからこれも多分違う。

いよいよ幻覚を見たのかなと自分の頭を疑ってみたけど、夜に見かける先生以外に幻覚らしいものを目にすることもなければ、幻聴とかも聞こえないから違うっぽい。

黒崎先生に聞いてみたら、「あぁ〜〜〜見ちゃったのかぁ〜〜ま、とりあえずアイちゃんが疲れてるとか病気とかじゃないから心配するな。特にそれ以外身体の具合が悪いとかは無いだろ?」という何ともはっきりしない答えが返ってきた。具合が悪いとか眠れないとかは無いからその通りなんだけど。

 

 

で、結局私はどうしたかというと。

 

 

「見えるものは仕方ないよね」

受け入れることにした。

見えてるものは見えてるんだから、見ないフリも見えないフリも出来ない。

よく考えたら見えるからって私的に困るかっていうと、そういうことも無い。

 

「今日はちょっといつもより真剣な顔してたな」

目の前を飛び立ったせんせの横顔を思い出す。

時折目にする真夜中のせんせ(によく似た黒い着物のお侍さん)観測は、今では私だけのささやかな楽しみになっている。

さやかな楽しみになっている。

私が入院していた頃のせんせが見せることの無かった怖いくらい真剣な顔は、正直カッコいい。

カッコいい顔(ヒカルとか)は珍しくないし、何ならこっちは芸能人なのでせんせよりカッコいい顔だって見慣れている。

だけど、凛々しいせんせの横顔を見ると何でか分からないけど胸の鼓動が激しくなって、身体の奥から熱くなってくる。

精神安定剤としての役割を果たしていたはずのアイスは、今では顔の火照りを冷ます清涼剤になってる。あと、映画に対するポップコーンとコーラみたいな。コーラを飲んでないだけ私って謙虚?

罪深い美味さへの対価については、明日のレッスンをいつもより長く取ることで帳消しにしてもらうことにする。

頑張れ、頼むぞ明日の私。あ、もう今日の私だ。

 

一度受け入れてしまえば何でもないものもので、仕事に支障をきたすとか具合が悪いなんてことも無い。

寧ろ気分が上がって次の日の仕事のパフォーマンスが良くなるくらい。

せんせの姿を見るのは毎晩という訳じゃない。

時間も違ってて、毎週楽しみに見るテレビ番組みたいなノリではないんだけど、私には何となくせんせの姿を見ることが出来る日というのがわかるようになってきた。

天気予報みたいな何日も先まで予想が付くというのとはちょっと違う。

鉛色の雲が空を隠してるのを見て「あ、もうすぐ雨が降るなこれ」って思うのに似てる。

前兆として胸の奥が少しざわざわして、こめかみが少しだけギュッとする。

そんな時に外を見ていると、空を駆けていくせんせの姿を見ることが出来る。

自覚してから自分の中の違和感に注意するようになってからの的中率はもうほぼ100パーセント。

ほぼっていうのは一度だけお仕事で帰りが遅くなって、疲労困憊のまませんせの出待ちしてたら寝落ちしてた時。

あの時はガックリ来ちゃったな〜

スタンバってた間のお供の愛しのダッツも溶けちゃってたから、ダブルでへコんだ。

アクアには「あんまり夜中にアイスばかり食べると太るぞ」なんてノンデリなことを言われ

る始末。(もちろん、生意気なことを言う可愛い息子はおっぱいプレスの刑に処した。)

っていうか、元々賢い子だったけど小学生になってからますます大人びて生意気くんになってきてる。可愛いんだけどさ。

初めてお友達のイチゴくんを連れてきたのは小学校一年の頃だったかな。その時はもうビックリ。

まだまだ甘えん坊さんなのが抜けてなくて、アクアとのギャップにホント驚いた。アクアに慣れてるからなんだけど、6歳ってこんなに子どもなの?まだまだ赤ちゃんじゃん!!ってね。

ふわふわのオレンジ色の髪で、アクアにくっ付いて歩くイチゴくんはひよこみたいでとっても可愛い。

イチゴくんと一緒にいる時のアクアはルビーに対するのとはちょっと違ったお兄ちゃん風を吹かせまくりでこっちもとっても可愛い。

イチゴくんは黒崎先生の子どもなんだけど、奥さんに似てホント良かったと思う。

ユズちゃんとカリンちゃんというイチゴくんの妹ちゃん達にも会ったことがあるけど、この2人もめっちゃ可愛かった。

ルビーって色々な意味でおませさんなんだなってあの子達を見て思ったね〜〜

 

あ、でもお兄ちゃん大好きってところは一緒かな。

特にユズちゃんのイチゴくんを見る目はルビーのアクアに向ける目と凄く似てる。

私には兄弟がいないからわかんないけど、妹ってこういう感じなのかな。

 

 

 





⭐︎星野アイ
変色竜に襲われたこと、そして長い時間アクア(吾郎)の傍にいたことで少しだけ霊感体質に目覚めてしまう。
といっても元々そこまで霊能力の素質がある訳じゃないので、ヘアピンが変化したり、右腕が凄いことになったりはしない。
最近の趣味は子供と遊ぶことに加えて宙を駆けるせんせの凛々しい姿を見ること。
テレビ番組で最近の趣味はと聞かれて、「夜中に一人で窓の外を眺めることかな〜」と語った際のちょっと頬を染めたはにかんだ笑みが可愛すぎるとSNSでバズりまくる。

『アイちゃん夜空を眺めるのが好きって意外と清楚?』
『アイちゃんマジ乙女』
『星座に嫉妬したわ』
などといった声が上がり、夜空を眺めればモテるのでは?と思ったドルオタがいるとかいないとか。
夜空を一人眺める美少女(25歳)星野アイという図はユニコーン達の角をツヤツヤに磨いたらしい。



⭐︎星野アクア(雨宮吾郎)
(本当の)アクアの魂が回復するにつれて少しずつ漏れ出す吾郎の霊圧に反応してアイに僅かに霊感体質が付いたことにはまったく気付かない迂闊で残念な死神。
虚退治に向かう姿をアイに見られていることにはとんと気付いていない。へただなぁゴローくん。
悪意の視線には即座に察知する感覚の良さを持ちながら、好意的な視線には気付かない。
真央霊術院時代からそれは変わらず、「オイ、雨宮。貴様を見てる女がいるぞ。恋人がいるから気持ちに応える気は無いとハッキリ言ってやれ。というか言え」と元カノからの文句に対しても「そんな自意識過剰なこと言えないですって。隠密だからって気にし過ぎですよ(笑)」とまともに受けとらなかった。

直後、元カノの右ストレートが炸裂した。全部テメーのせだぞ⭐︎



【おっぱいプレスの刑】
【使用者:星野アイ、斉藤ミヤコ】
星野アイが主に息子に対して行う必殺技。
野原みさえのグリグリに相当する。
基本的に手のかからないアクアだが、時に正論は人を傷付けるを体現するかの如き生意気千万な言動をした場合に執行される体罰によるお仕置きを忌避するアイが編み出した刑。
これをするとアクアが顔を真っ赤にしてガチ照れするため、それが可愛いのと半端な注意よりも余程アクアに効果があることから用いられる。
胸の谷間で(アクアの)頭部を挟む、胸と腕で頭部を挟む胸と割り込んできたルビーで頭部を挟む等、胸で頭部を挟む形になればそれらは全ておっぱいプレスと呼称されるものである。
斉藤ミヤコも使用可能。
星野ルビー?ハハハハハ、ご冗談を。
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