正義の味方を目指した生徒、黄昏ヨナ 作:お昼寝【スタジオホルス】
プラナが見つけ出した手がかりとなるファイル
それはヴァルキューレ警察学校に保管されていた、負傷者名簿であった
ミクモ …負傷者名簿?
プラナ 肯定
パス その、薄明シロさんと黄昏ヨナさん
パス 怪我をしたってこと?
プラナ …不明、現時点では憶測に過ぎません
パス あったのはこれだけだったの?名簿だけ?
パス 事件に関係するファイルとか…
プラナ 肯定、それらしいファイルは発見出来ていました
プラナ ですが…
パス ?
プラナ 今の私は可能性創造部所属となっています、シッテムの箱ではありません
プラナ 出力の制限があります、本来ならばアクセスすることは容易でしたが…
プラナ しかし、それでも大抵の機密にはアクセス出来るはずです
パス …それだけ厳重に守られていたファイル、ってこと…?
プラナ 肯定
ミクモ …なんだろう、なにかおかしい気がする
パス どうしたの?ミクモちゃん
ミクモ わからない、違和感というか、説明はできないんだけど…
ミクモ …
パス そうだ!ウタハさんなら…
ウタハ ふふふ、すまないが君達を手伝うのはここまでさ
ウタハ 頼れる規格外は割と引っ張りだこでね、他にもやることがあるんだ
パス そ、そんなぁ…
ウタハ 大丈夫、君達は答えに近づいているよ
ウタハ 君達3人なら、解決出来るさ
ビナー わ、私も居ますよ?
ウタハ おっと失礼、4人だったね
ビナー 確かにあまり力にはなれていませんが…
ウタハ 君の本体が出てきてしまっては大事になりすぎるからね、仕方ないさ
ビナー …いざとなったら私は…
ミクモ …ビナー君
ビナー この姿のまま戦います!
パス あ、うん…
ミクモ 期待してるね?
ビナー 任せてください!
ウタハ …さて、これからどうするんだい?
パス どうしよっか…
ミクモ それなんだけど…もう一回ヴァルキューレに行きたいんだ
パス もう一度?でもファイルは開けないって
ミクモ ううん、ファイルじゃないんだ
ミクモ 1人、話を聞きたい生徒がいる
ミクモ …恐らく、この件に関係があると思うから
ミクモ こんにちわ
ヨナ …あんた達は、何やら騒いでいた…?
ミクモ …黄昏ヨナさん、だよね
パス え!?
ヨナ …名乗った覚えはないっすけど
ミクモ …ごめん、まずはこちらから名乗るべきだったね
ミクモ 私は可能性創造部所属、烏我ミクモだよ
パス 同じく可能性創造部所属、重団パスだよ!
ヨナ …何の用っすか?私は忙しいっす
パス ねえ!貴方私達に依頼を出さなかった?
ヨナ 依頼…?何の話っすか
パス あ、あれ?
ヨナ 可能性創造部なんて今初めて聞いたっす
ヨナ …失礼するっす
パス …行っちゃった
パス 依頼者じゃなかったみたいだね
パス でもミクモちゃん、どうしてあの人がヨナさんだって解ったの?
パス …ミクモちゃん?
ミクモ …
パス どうしたの!?
ミクモ ううん、大丈夫
ミクモ それより、次の場所に行こう
パス 次?どこに行くの?
ミクモ …トリニティ、救護騎士団直営の…
ミクモ 総合病院だよ
ミクモ ここがトリニティの総合病院…
パス おっきいねえ!
プラナ キヴォトスでも有数の医療機関です、重病人が優先して収容されています。
パス 重病人…
パス ん、病人?
ミクモ 受付は、あっちかな?
パス ちょ、ちょっとミクモちゃん!
パス どうしたのかな、なんか様子おかしくない?
プラナ …
ミクモ こんにちわ
受付 こんにちわ、本日はどの様な要件でしょうか?
ミクモ …
ミクモ …薄明シロさんの面会に来ました
受付 …
受付 失礼ですが、身分を証明する物はなにかお持ちでしょうか?
ミクモ …いえ
受付 …薄明シロさんは現在特定の方以外とは面会をお断りしております、申し訳ございませんが…
ミクモ …そうですか、わかりました
パス …ダメだったの?
ミクモ うん…どうしよっか
ミクモ !
パス そうだね…でも本当にここに居たんだ…
パス あれ?ミクモちゃん!?
ミクモ …パス、こっち
パス …
ミクモ この部屋、だと思う
パス この部屋って…
パス 名札入ってないよ?
ミクモ そうだね、でも多分ここにいる
パス …わかるの?
セリナ あら?貴方達は…
パス ?
ミクモ こんにちわ
パス えーっと…?
セリナ お話は聞いていますよ、重団パスさんですよね?
セリナ 初めまして、鷲見セリナと申します
セリナ そしてお久しぶりです、リフォームの匠さん
パス 私のこと知ってるんだ!
セリナ 色々と素敵な開発をしてると…
パス あ、あはははは!
ミクモ トリニティでも何回か建築したもんね、あの時以来かな
セリナ ペロロハウス、観光名所ですからね
ミクモ それはよかった
ミクモ …ねえセリナさん
ミクモ ここにいる…薄明シロさんに会わせて欲しい
セリナ …薄明さんは現在面会謝絶中です…特定の方以外は
パス お願いセリナさん!確かめないといけないことがあるの!
セリナ 確かめる…?どうやってでしょうか
パス え?
ミクモ …薄明さん、意識がないの?
パス ええ?
セリナ ミクモさん、貴方はどこまで知っているのですか?
ミクモ …
セリナ お会いしたところでお話は出来ない状態です、それでも?
ミクモ それでも、会いたい
ミクモ ううん、会わなくちゃいけない
セリナ 会ったら薄明さんの状態が良くなりますか?
ミクモ …わからない、多分変わらない…
セリナ …正直なんですね、貴方は
セリナ 団長には私の方から話しておきます
ミクモ …いいの?
セリナ 切実な願いだってことは顔を見ればわかりますから
セリナ それに、先生が絡んでいるのでしょう?
パス まぁ、そう言えなくはないかな
セリナ なら、大丈夫です
セリナ …どうぞ、お入りください
病室に入ると、ベッドに寝ている一人の生徒がいた
ミクモ …この人が、薄明シロさん
ミクモ …!
パス 怪我してるね…意識が戻ってないのはそのせいかな?
パス …怪我?
パス ねえミクモちゃん、おかしいよ
パス 怪我って…私達の世界は…
パス ミクモちゃん?!どうしたのさ!
ミクモ …大丈夫
ミクモ パス、話したいことがある
ミクモ 一旦、アビドスに戻ろう
パス え?もうシロさんはいいの?
ミクモ うん
ミクモ もう、受け取ったから
パス …わかった、帰ろっか
ウタハ セリナさん、ありがとうございました
ウタハ …大丈夫ですか?
パス はい、少し驚いただけなので
パス また、来てもいいですか?
ウタハ いけません…なんて、その顔を見てたら言えませんね
ウタハ どんな事情があるかはわかりませんが、シロさんの回復につながることを祈っています
ミクモ ありがとう
ミクモ …そうして私達はアビドスへ戻って来た
パス ただいま
パス …誰もいないねー
パス みんな帰ったのかな?
パス で、ミクモちゃんどうしたのさ、様子がおかしいよ?
ミクモ パス、そしてプラナ、ビナー君も
ミクモ 今から真面目な話をするね
ミクモ ちょっと長くなるかもしれない
パス …うん
プラナ 了解しました
ビナー …わかりました
ミクモ …プラナは私達の、あの別世界での冒険の話
ミクモ 聞いているんだったかな
プラナ 肯定、正確には観ていました
ミクモ あの世界で私は…ウタハさんが言った通り
ミクモ あの人…枠外の先生から力を借りたんだ
ミクモ そのおかげで、みんなに想いを伝えることができた
パス …枠外の人たちのアイ
パス うん、言葉にするのは難しいけれど、ちゃんと伝わってるよ
パス 私は私自身の欲望のためにいるからね!
ミクモ ははは…
ミクモ …あの力はあの場限りの…1回だけの奇跡だと思っていたんだけど
ミクモ …違ったみたい
パス というと…
ミクモ あの後、極たまにだけど声が聞こえるようになったんだ
ミクモ 生徒の声もあれば市民の人の声もあって…違う生き物の時もある
ミクモ それぞれ想い…声は違っているんだけど、共通しているのは強い気持ち
ミクモ 願い、祈り…アイに繋がるものだと思う
パス じゃあ、あの子がヨナさんだってわかったのも、シロさんに会ったのも?
ミクモ うん、二人からも聞こえたんだ
ミクモ 正確にはシロさんからはずっと届いてたみたい
プラナ …依頼のことでしょうか
パス …意識がないのに
プラナ 肯定、文字化け…解読出来なかったのはその影響だと推測できます
プラナ 実際に彼女に会うことで不足していた出力を補えたのでしょう
ミクモ …
ミクモ 今から3人にも伝えるね
パス え?出来るの?!あの時みたいに!
ミクモ …それは出来ないと思う
ミクモ 多分私が未熟だから…ごめん
ミクモ でも、私の言葉で精一杯伝えるから
ミクモ …彼女たちの想いを
パス そしてミクモちゃんは話してくれた
パス 彼女達、黄昏ヨナさんの話と
パス …薄明シロさんの話を
カンナ ヨナに対する陰口、聞いたことがあるか?
局長は私、薄明シロに対してそう聞いてきた
シロ 用無し、ですか
シロ まぁ…そうですね聞いたことはあります
シロ …確かに訓練の成績は振るっていません
シロ それに暴走する傾向もあるでしょう、そこは否めませんね
シロ 経緯も特殊ですし…そのような噂が広まるのも無理はないかもしれません
カンナ …昔のお前のようにか?
シロ …耳が痛いですね
カンナ なにからなにまで、あいつはお前に似ている
シロ …もう、知っているのでしょう?
カンナ …最初から知っている、でなければお前を担当に着けたりはしない
カンナ お前達、薄明シロと黄昏ヨナは…
カンナ あの施設で実質的な姉妹だったのだから
…私、薄明シロは災害孤児だった
あの災害
災害、ということしか公表されていない
どのような災害なのか、未だにわからない
私は巻き込まれた
あの時、私は死を感じた
幼いながらも、これから死ぬのだと感じていた
だが、助けられた
…正義の味方に
彼女は私を助けた後、まだやることがあると言い避難所までの道を教えてくれた
年齢的にはまだ幼かった私だが…彼女は私なら大丈夫、とそのまま走り去っていった
なにを根拠に…だが私は避難所まで辿り着いた
その後、避難所には何人かの幼い子が連れてこられた
最後に彼女とやってきたのが
…ヨナだった
ヨナは一番幼かった
その後災害孤児が集められた施設内でもそれは変わらなかった
なぜか特定年齢層が集中していたのも相まって、ヨナは全員から可愛がられていた
当然私も…妹のように接していた
ヨナは私の事をシロねえと呼び、慕ってくれていた…と思う
といっても、別に血がつながっているわけではなかったが
そしてある程度の年齢になったときに、私たちはそれぞれ違う学校へ振り分けられることとなった
ある程度の希望は叶えられるとのことだった
…私はヴァルキューレ警察学校を志願した
あの人…正義の味方のようになりたかったのが理由の一つ
そしてもう一つ
あの災害
当時なにもわからなかった災害について、知りたいと思ったからだ
学校へと移送される際、薬を渡された
リラックスさせるための薬、との説明だった
薬を飲むとすぐに眠気に襲われた
…そして起きたときには、ヴァルキューレの寮内だった
不思議と施設の場所等を思い出そうとしても、思い出せなかった
…私は問題児だった
正義を…理想を求めて真っすぐ進む、現実の見えていない子供だった
だが、問題児は私だけではなかった
割と多くの生徒が多かれ少なかれ、自分の正義というものは持っていた
だが、それが自分の命を…結果的に仲間の命を危険に晒す行為だと理解したとき
私達は、組織に忠を尽くすと決めた
私達は警察、全体の奉仕者
規律を重んじ、社会の為に尽くす
正義は…心の中にあればいい
それだけ、仲間の事も大事だったのだ
公安局は局長の努力もあってか、非常に団結力の強い場所だった
私は不器用だった、物覚えが悪かったのだ
だが、仲間たちが支えてくれた
…仲間たちに応えるため、私は寝る間を惜しんで努力した
月日が流れ、私はいつのまにか先輩となっていた
上にも…局長からもある程度信頼を得ていた…と思う
全ては仲間のおかげだった
…だが、ここに来たもう一つの目的
災害のことについては何一つわからなかった
資料室に籠り読み漁っても、データベースをいくら漁っても何一つ見つからない
…不自然なほどに情報がなかった
災害自体は起きているのに、情報が一切ない事など、有り得なかった
…とある日、オフの日に偶然施設の子に巡り合った
思い出話に花を咲かせようと思ったのだが…
生徒 …えっと、どちら様でしょうか?
覚えていなかった
私の事はおろか、施設の事も、そして…
あの災害の事も全て忘れていた
…有り得ない、あれに巻き込まれた者があれを忘れることは
…絶対にない
私が見間違えたのだろうか、それとも…
…酷く寒気がした
そして、新入生が入ってくるとの話を聞いた
どんな奴かと思っていたのだが…
特徴的な八重歯、逆十字のネックレス
見間違うはずがない
私が施設で一緒に育った、黄昏ヨナだった
口調は変わっていたが、ヨナだった
嬉しかった、ヨナも同じ道を選んだのだということが
だが…
生徒 …えっと、どちら様でしょうか?
また忘れられているのではないかと思うと、怖かった
そして、それは現実のものとなった
ヨナは私を覚えてはいなかった
だが…全てを忘れているわけではなさそうだった
正義の味方に固執する様子からも、それは見受けられた
だが、少々行き過ぎている部分があった
誰しも持っていた正義だが、ヨナの場合は…
鬼気迫るものがあったのだ
それはある程度経験した者からすると非常に危うい様子に見えた
局長はそれも含めてか、私を教育担当として付けた
ヨナは不器用だった、だが努力家でもあった
周りを気にせず、少し落ち着きをもって現実を見てくれれば良い警察になれる
…私がそうしてみせる
だが、少し気になることを一部のヴァルキューレ生、特に警防局から噂を聞いた
「用無しのヨナ」
全く…また警防局か
私の時も「素人のシロ」などと噂が広まったものだった
あの時もたしか警防局だったはず…
…まぁ、ごく一部の声が大きい生徒が言っていただけみたいだが
そんなとこまで似なくてもいいものを…
生徒 ヨナですか?可愛いやつですね!
生徒 昔の私達を見てるようだねー
生徒 でも…この組織に居る以上あれは…
生徒 …本人が辛いだけ、だね
生徒 早ければ早い程、いいと思うよ
生徒 一度ガツンと言ってみますか?
シロ んん…そうか…
…なら皆に協力してもらおう
…少し荒い方法になるが、一芝居打つことにした
訓練中にヨナが我慢できなくなる状況を作り出す
その際に私が叱りつけ、後のフォローを仲間にしてもらう
悪者になるのは私だけでいい
…だが、私は失敗した
想像以上にヨナにとって
正義の味方というものは、重かった
ヨナにとって正義の味方は生きる理由そのものだったのだ
…言葉を選ぶべきだった
私はヨナの夢を、正義を
生きる理由を、真っ向から否定してしまった
そしてヨナの叫びを聞いているうちに…
自分でも気づかないうちに、涙が流れていた
初めて計算しての拳骨ではなく…反射的に手をあげていた
許せなかった
自分の命を蔑ろにしようとするヨナが
悔しかった
彼女を何一つ解っていなかった自分が
彼女にとって組織は…公安局は
居場所にはなれなかったのだ
…その日のことはそのまま報告した、私とヨナは3日間の謹慎となった
謹慎中に見知らぬ生徒が寮内に侵入しているのを目撃したが…ヨナと出くわしている間に逃げられてしまった
…そしてこれが、あの日の事件に
…今の私に繋がるとは、当時は思いもしていなかった
…続く