【完結】吉良吉影は静かに暮らせない   作:ようぐそうとほうとふ

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狂気は町に隠せない

「テメーの()()()吸わせろォオオオーーッ」

 

 その異形は走り、吉影の頭めがけて飛び上がった。

 吉影はバットを振る。しかしそれには当たらなかった。まるで幽霊のように、すり抜ける。

 

 咄嗟に腕で庇った。異形から生えた針はそのまま吉影の腕に深く刺さる。

 貫通はしなかった。だがその痛みに鳥肌が立つ。さらに驚いたのは、刺されてすぐに自分の脳裏に先ほど読んだ本の内容が洪水のように押し寄せたことだ。混乱し、振り払うことを忘れかける。

 ずぞ、という音が針から聞こえた。何かを啜り上げる音だ。そして、吉影は今日読んだあの本が()()()()()()()()()まったくわからなくなった。

 

「あぁ?!なんだこりゃあ…趣味の悪ィー本読みやがって!高三なら必死こいて勉強しろやァア!」

 

 異形は離れた。しかしすぐさままた飛びかかる。吉影は部屋のドアを開け、ゴルフクラブを持ったまま玄関へ逃げた。異形はとんとんとん…と足音を立てて追ってくる。

 

 そのまま、外へ。とっさに自転車に乗った。四時の町はまだ夜で、あたりには誰もいない。

 

 異形は追ってくる。しかし理外の速度ではない。せいぜい吉影の走る速度と同じか少し速いくらいだった。このまま自転車で走り続けていればまけるかもしれない。

 吉影は杜王町グランドホテルへ伸びる道を自転車で駆け抜けた。異形との距離はそれなりに離れたはずだ。しかし吉影は疲弊していくが、あちらは全く速度を落とさず走る。このままではジリ貧だ。

「くそっ…!」

 間淵マヒルめ。全然関係ない放課後に絡んできたくせにいざ襲われている時はいないとは。何が守るだ!

 そしてマヒルに無意識のうちに助けを求めてしまった自分に腹が立った。しかし、現状頼れるのはマヒルだけだ。

 夕方渡された番号はまだ覚えていた。ただ公衆電話からかけるにしろ、肝心の小銭がない。

 

「クソッ…この吉良吉影にみっともないことをさせやがる…ッ」

 

 自動販売機があった。吉影は自転車を乗り捨て、釣銭返却口をあけて中を確認する。ハズレだ。

 確認したらすぐに走り出す。獣がいつ追いついてくるか全くわからない。

 自動販売機を見かけ次第確認し、走り出す。それを何度か繰り返しやっと10円玉を見つけた。

 

 

 吉影は全速力で走る。運動部でもない吉影にはそろそろ限界だった。公衆電話まであと数百メートル。この距離だけ全力で走り、少しでも異形との距離をとる。

 

 公衆電話が見えた。電灯に照らされて暗闇にポツンと立っている。

 吉影は駆け込み、番号をプッシュする。

 しかしその番号は使われていなかった。間違えたのだ。苛立ちながら10円玉をまた入れて、冷静にもう一度電話をかける。今度はつながる。3回のコールの後、誰かが電話に出た。

 

『…はぁい…もしもし…』

「間淵マヒルか?」

『ん…ぅ。あー、まさか吉良吉影くん…?』

「襲われてる。しかも武器での攻撃が通じない」

『あー……。そうなんだ…』

 どうやら寝ぼけているらしい。ふざけるな。

「おい、お前はぼくを助けるんだろう」

『うん…そう。そう…だよ。えーっと…今日のさぁ。あ、昨日か…。昨日の畑の道に、きて』

「ば…どれだけ離れていると…ッ!」

『そこにいるか』

 ぶつ。電話が切れた。小銭切れだ。

 マヒルが電話に出てくれたのはまだいいが、結局は頼りにならない。

 自転車か何かを盗まなければ、そう考えながらドアを開けようとすると、それがいた。

 

 

「だぁれにデンワしてんだよぉー」

 

 

 暗闇からあの声が聞こえた。吉影はとっさに顔を庇った。予感は的中。異形は顔を狙って飛び上がり扉の隙間にぶつかった。吉影は必死にその扉を閉めようとするが、異形は頭をぐにゃりと曲げて無理やり体を捩じ込む。

 

 まずい。

 

 ずる、と音がして異形が電話ボックス内に侵入した。思いの外ぐにゃぐにゃとした体をしているせいか隙間なんて簡単にすり抜けられる。

 

 クソッ…!

 気持ち悪い上に鬱陶しい!

 

 そして容赦無く飛びかかり、吉影の腕に針を突き刺してきた。

 また脳内に今日やった課題が押し寄せた。そして、()()()()

 課題も予習も、やったという記憶はあるのに何をやったのかわからなくなる。こいつは、覚えたことを全て吸い取るのか?

 

 そして先ほどと同じように一度吸い終わると針が抜け、しばらく獣の動きが止まる。どうやら一度の攻撃につき一度、それも限定的な内容しか吸い取れないようだ。すかさずまたゴルフクラブを振るがやはり攻撃は当たらない。

 あちらの攻撃パターンと習性はわかった。しかしこちらの攻撃が通じないようではどうしようもない。

 

 

 無意味かもしれないが、電話ボックスの扉を閉めてから自転車に飛び乗った。

 杜王町立図書館まで自転車で、とにかくがむしゃらにペダルを漕いだ。

 

 朝焼けが見えた。もうすぐ日の出だ。

 なんてことだ。あと3時間もしたら学校が始まる。

 

 ようやく杜王図書館を通り抜け、夕方異形と遭遇した畑の道に辿り着いた。当然誰もおらず、さらに電灯すら乏しい。薄暗い中、道の真ん中に何か大きなものが落ちているのがわかった。

 まさか間淵マヒルか?ヘロヘロになりながら自転車を降り、それがなにか確認する。

 それは夕方無力化した赤い服の男だった。

 

「は?」

 

 ここにいるんじゃあなかったのか?辺りを見回す。しかし笑ってしまうくらい誰もいない。

 

 なぜ間淵マヒルは自分をここへ導いた?揶揄うため。では、ないはずだ。間淵マヒルは常に薄ら笑いを浮かべてまるで人を舐めてるように見えるが、あれは単にやつがそういう顔をしているからだ。

 言葉足らずなだけで吉影を守ると言う言葉に嘘はない。だからきっと理由がある。

 

 間淵マヒルはこれまでこの異形に襲われたであろうやつらと接触している。つまり、攻撃手段は置いといて、こいつに襲われたらどうなるのか知っているはずだ。

 記憶、と言うよりかはそのディティールを吸う。そう、こいつは頭の中を無理やり奪うのだ。そしてこの夕方撃破した『欲望』を砕かれた男。恍惚とした顔のまま地面に倒れ、動こうとしない男。ここから考えられるのは…。

 

 朝日が差してきた。そして、背後に気配を感じる。

 

 

「ガリベンヤロー!てめーの後ろにいるぜ!」

 

 

 追いつかれた。いや、目的地まで誘き寄せることに成功した、と敢えて言おう。

 吉影は倒れた赤い服の男の首を鷲掴みにして、獣の狙う位置へ掲げた。

 

 ずちゅ

 という音がして赤い服の男の顔面に異形の針が刺さった。

 

「はぇ?」

 

 と声を上げたのは異形の方だった。

「は…は……………はあ?」

 間の抜けた声。そして異形は針を抜くと、そのままコロンと倒れた。

 

 

「おやおや。なんだか呆気ないな」

 

 

 声がした。目をやるとそこにはランニングシャツを着た間淵マヒルが朝日を背にして立っていた。

「おはよう!吉良吉影くん。無事倒せたようだねッ」

「間淵マヒル……貴様…」

「何だか疲れているようだね。帰宅部でも少しは運動した方がいいよ」

「言いたいことは…山ほどある。が、まず…」

「まず?」

「全部、全部説明しろ。一から、十までだ」

 

 

 

 

 

 

 堀辺豊。

 

 ぶどうヶ丘高校3-C組。一年生の学年テストからずっと一位を取り続けているこの学校イチの秀才。

 しかし勉強以外では殆ど目立たず、一位の堀辺豊と言う名前と彼の顔が一致する者は少ない。吉影も(元から周りの人間に対する興味は薄い方だが)全くピンと来なかった。

 そんないわゆるガリ勉くんが、吉良吉影を襲った犯人だという。

 

「堀辺豊くんはあの使い魔みたいなのを使って自分の順位を脅かす存在を蹴落とし続けてた。被害にあった生徒たちは皆、勉強に打ち込んだ記憶はあるのに肝心の勉強内容が思い出せないという奇妙な症状で成績が振るわなくなったのさ。まあキツイよね。勉強した記憶があるのになんにもわかんなくなっちゃうんだもん」

 

 1年の初めの方ならまだしも、2年の後半に2位になったやつはお気の毒様だ。しかもあの異形は一度に大量の記憶を吸い取れるわけではない。つまりは執拗に、何度も何度もバカになるまで針を突き刺して中身を吸ったのだ。

 陰湿で、気持ちが悪い。あの異形の姿はそんな堀辺豊の性質を映し出したのかもしれない。

 

 

「つまり、きみはあれに襲われたらどうなるのか初めから知っていたんだな」

「いやぁ。まさかあんな化け物みたいなのがチューチュー吸ってるとは思わなかったけど…」

 

 マヒルは運ばれてきたアイスティーに口をつける。ここは杜王グランドホテルのラウンジにあるカフェ。ここならば高校生はおろか、町の人も滅多にいない。吉影はあの後すぐ家に帰り、寝不足を噛み締めながら学校へ行った。

 そして放課後、約束していたこの密会場所へきたのだ。マヒルはまたもすこし遅れてやってきた。

 

「なぜそれをぼくに伝えなかった」

 

 吉影が怒っているのを見てもマヒルは何も感じてないようだった。うん?と首を傾げてすこし考えるような間があった。

 

「ああ。わっかんないのか!全て説明しないと」

 

 カチン。と、漫画でよく見かける音が自分の頭の中にしたのを感じた。知り合って3日だがもうすでに我慢の限界だ。今ここでこのクソ女をぶちのめすことができるのなら、多少の注目は目を瞑れる。

 

「そんなに怒らないでよ。吉良吉影くん。ボクをぶちのめしたら君はスッキリするかもだけど、マジでしばらく有名人だぜ。するなら闇討ちにしないと」

「………そうだな。その通りだ」

「まあもちろんぶちのめせたら、ね」

 マヒルはニヤリと笑った。日頃からバットで武装している上に、こいつにはブレーキがない。確かに今の吉影にとっては手強いかもしれない。ああ、指の先がヒリヒリと痛む。

 

「まあ頭の中を吸い出すってのなら、混乱してぐちゃぐちゃになったおじさんをぶつければきっとなんとかなるって思ったんだよね。財布を見た時わかったけど、あそこらへん一帯あのおじさんの土地だったし、あのあと調べたら家族もいなかったから」

「…もしうまくいかなかったらどうするつもりだった?」

「だから向かったんだろう?」

 まあ確かに。だがなぜしっかりランニング用の服に着替えて走ってきたのか、聞いたらきっとムカつく答えが返ってくるに違いなかった。

「2時ごろ電話が来てから攻撃されるってのもわかってたから、ボク2時まで起きてたんだぜ?なのに電話がかかってきたのは4時ときた。なにしてたの?」

「…寝てた」

「豪胆だねぇ、吉良吉影くん。でも2時間か。なんでそんなにかかったんだろう?」

「…杜王駅から歩いてきたから、じゃないか?」

「ああ、なるほど!…ふーん。杜王駅が起点で。君の家、遠いものね」

 

 マヒルは納得して追加で頼んだケーキをパクッと食べた。杜王グランドホテルも町のはずれと言っていい場所にあるのだが吉影の家からは近い。マヒルの家がどこにあるのか知らないが、こちらの方ではなさそうだ。

 

「堀辺豊くんの家に行って、一応様子をみよう。脅威が消えたとわかったら、君とボクの関係もおしまいだ」

「助かる。自分が抑えられなくなってきたところだった」

「ふ」

 

 マヒルか短く笑うと、メモを取り出して住所を確認した。そして2人して町の中心へ戻る。ようやくこの女と手を切れると思うと何だか気持ちも上向いてきた。

 

 人が多くなるにつれ吉影はマヒルとなるべく並ばないように離れた。

 思春期かよ、と内心自分でも思ったが単純にバットを持ってる目立つ女の隣にいたくなかった。

 

 しばらく歩いて、歩いて、ようやくマヒルは振り向いて「ここだよ」と言う。おおきな洋館で、いかにも金持ちの住んでいそうな門構えだった。やや古く手入れが行き届いてないようだが、それでも住んでいる家庭がそれなりに裕福であろうことは想像がつく。

 表札には堀辺と書かれていた。マヒルが躊躇いなくインターフォンを押す。ベルの音が聞こえ、しばらくしてから女性の声がした。

 

『どちら様ですか?』

「こんにちは。豊くんの友達の間淵です。頼まれていたプリントとノートを届けにきました」

『あら…少々お待ちくださいね』

 

 玄関から少し年老いた女性が出てきた。豊の母親なのだろう。少し困ったような笑顔を浮かべ、マヒルをみる。

 

「豊はちょっと、今日は…」

「存じています。でももし休むことがあったら絶対にノートとプリントを渡すと言う約束なんです。お見舞いさせてくださいませんか?」

 間淵マヒルは普段の薄気味悪い笑みと打って変わって、少し弱々しい顔で訴えかけた。母親は吉影とマヒルを交互に見てから、少しだけ渋った後結局家にあげた。

 

「ずっと寝込んでて、お話できるかわからないんだけど」

 

 と狼狽気味の母親。

「ああでも、もうすぐ学年テストじゃないですか?試験範囲が出たって聞いたら豊くんも飛び起きますよ」

「そうだと…いいんだけど」

 ギシギシと音を立てて階段を登っていく。中は外から見たよりも傷んでいるようだった。2人は二階の1番奥のドアに案内され、豊の母親は下がった。

 

「さて。ご対面だ」

 

 マヒルは楽しそうな顔でこちらを見る。吉影は顔を顰める。絶対にそんな愉快なものではない。

 

 マヒルがドアを開けた。中からは何の反応もない。

 部屋の中に入ると、カーテンは閉め切られ薄暗かった。部屋は広く、大きな本棚と学習机の周りに乱雑に本やプラモデルが積まれていた。百科事典がずらりと並び、いかにも教育ママに育てられましたと言う感じだ。

 そして窓際のベッドに大きな塊があった。

 

 堀辺豊。彼が昨日自分を襲った犯人だ。

 やや肥満気味の体に、気弱そうな面差し。ぼんやりとした顔をして天井を見上げ、時々「あがっ」と呻いていた。

 

 あの口汚く罵る醜い見た目の異形。それを…マヒルの言葉を借りるなら…操っていた。本当に、彼が?

 

「堀辺豊くん。おーい」

 マヒルは呼びかけるが、返事はなかった。肌は紙のように蒼白で、うつろな目はぎょろぎょろと何かを追ってるようで、ただ動いているだけ。心ここにあらず、まるで動物のようだ。

 

「あーあ。報いを受けたって感じかな?」

「…あの赤い服の男の何を吸ってしまったんだ?」

「さあねぇ。かなり粉々にしてやったから、きっと全部ぐちゃぐちゃなまま吸っちゃったんだね」

 マヒルは楽しそうだった。同級生が発狂してしまっているというのにその笑みに曇りは一切なかった。

 

「治らないのか?」

「あらら、吉良吉影くん。まさか心配しているの…?」

「まさか。むしろこのままでいてくれるのがありがたいくらいだ」

 

 吉影の言葉にマヒルはうんうんと頷いた。

 

「だよねー。たくさんの人を蹴落として、苦しめて、そんなカスみたいな奴がこれからも平気でのうのうと生きてるなんて、反吐が出るよねっ」

 

 間淵マヒルは満足そうだった。まるで一仕事を終えたみたいに。

 この町に潜む人を害する何かを、そうやってバットでぶっ飛ばして、町を守るヒーローにでもなったつもりなんだろうか。自分だって加害者たちをこんな風にまともな生活が送れないまで叩きのめしている。同じ穴の狢じゃあないか。

 

 マヒルと吉影はすぐに堀辺家を後にした。そしてちょっと歩いた交差点まで行き、自ずと向き合った。

 

 

「本当にありがとう、吉良吉影くん」

 

 

 マヒルは手を差し出した。左手、傷のある醜い手。

 吉影は顔を逸らす。

 

「これでもう、君とぼくは他人だな?」

「うんっ!さよならだね」

 

 マヒルはめげずに手をブンブンと振って吉影に握手を促した。吉影は渋々、ほとんどつまむようにマヒルの手を掴んだ。マヒルはがっとその手を手繰り寄せ、固い握手を交わした。

 女子にしては硬い、そしてケロイドででこぼことした手だった。

 

 

「ばいばい」

 

 

 マヒルはそう言って背を向けて去っていく。なんというか、去り際がさっぱりとした奴だ。もう二度と関わらないでくれたらそれでいい。

 吉影はため息をついて、自宅近くまで行くバス停まで辿り着き家に帰った。

 夕食を済ませ、風呂に入り、ベッドに寝転んだところでやっと全てが片付いたことに安堵できた。三日間本当に疲れた。奇妙としか言えない出来事を目撃してしまったが、間淵マヒルと縁が切れた以上もう関わることもないだろう。そう思うと心の底からホッとした。

 昨日ほとんど寝ていないのもあって、久々に熟睡できた。

 

 

 そして翌日も、その翌日も間淵マヒルは絡んでこなかった。吉影は再び訪れた静かな学校生活に安堵した。

 これまで通り決まった時間に登校し、授業を受け、テストを受け、時々溝呂木みぞれと図書委員の仕事をこなした。深爪はもうとっくに治った。今ではもう、爪が指先から少し出るほど伸びている。

 

 暖かい日差しの風の穏やかな放課後、吉影は伸びた爪を眺めながら、図書室の貸し出し窓口に座っていた。

 隣にはみぞれが座っていて、児童書を読んでいる。

 以前みぞれから借りた本は何度か読み直そうとしたが結局面倒になり、返却した。

「面白くなかった?」

「あんまり合わなかったな」

「そっかあ。私もなんだ。吉良くんなら読破してどんな話か教えてくれるかと思ったのに」

「溝呂木さんもそんなズルを思いつくんだ」

「え?そりゃするよ、ズル。私を何だと思ってるの?」

「いや、なんていうか安心したんだ」

「安心…?なに、どういうこと…?」

 溝呂木みぞれは今日も地味で静かで、例え少しのズルを思いついても実行できない平凡な小市民だ。それに安心する。

 

 そうして、あのバスでの出来事から1週間が経った頃、テストの結果が張り出された。万年一位の堀辺豊はテストに出れなかったらしい。吉影はそれも込みで3位になるように調整した。新しい1位は誰かとみたら、なんとそこには『間淵マヒル』の名前があった。

 あの女、もしかしてずっと1位を狙っていたのか。

 そういえば、前回2位のやつはどうなったと言ったっけ。

 

 

『それがその子、怪我かなんかでしばらく休学するんだよ』

 

 

 まさか、とは思ったが。いや、ここで真相を明らかにしようとなんてしたら本当に藪蛇だ。

 間淵マヒルは1位を取れて、吉良吉影はこれまで通り3位を取れた。それでいいじゃあないか。

 

 

 吉影はマヒルの手の感触を思い出した。全然好みではない手だったが、その体温と感触はまだ残っている。

 

 

 手が、欲しい。

 

 自分だけの手。美しい手が。

 

 か弱い女を捩じ伏せて、その腕を捻り上げ、悲鳴を無視しながらその手を舐めまわしたい。

 

 

 

 隣で本を捲るみぞれの手をみた。

 自分の平穏を象徴するみぞれの手が、今一番欲しい手だと思うと何とも皮肉だ。

 

 

 ずっと、ずっと、ずっと、思っていた。

 ぼくは、女を殺してその手だけを切り取って、自分の思うままに愛したい。

 

 

 本当にできたらなんて幸せな事だろう。

 しかし自分が怪物になってしまったら、間淵マヒルは再び自分の前に現れるだろう。

 とりあえず今は間淵マヒルと会わないためにも、殺意は静かな町にひっそりと隠しておこうと思う。

 

 

 


 

To Be Continued

 


 

間淵マヒルの杜王町ぶちのめしリスト

 

No.11《あの世行きのバス》

ビビった顔が見たい。

文字通り、あの世行き。と見せかけて乗った人を死ぬほどビビらせるだけ。でもおじいさんが1人このバスのせいで心停止。アウトだよね?

学生からお年寄りまで、幅広く騙された。

紙でできてたみたいだね。

 

No.12《ぽぽぽ様》

畏れられたい。

一本道を自分への参道にするのかな?たぶん、10メートルくらい。

ご本尊であるぽぽぽ様に近づけば近づくほど体が重くなるのに加え、対象の恐怖心を掻き立てる。道にいればそこから自発的に逃れることは困難。

ぽぽぽ様に食べられると、恐怖心だけが残るみたい。日常すべてに怯えるのはやだね!

 

No.なし《メリーさん》

1番になりたかったのかな?

メリーさんそのまま。頭の中を吸うんだって。

杜王駅から攻撃対象の家まで歩くなんてちょっと健気!

私は倒してないけどメモしとく。

 

 





スタンド名: Rocket 69
本体名:谷山宏 
能力:ハリボテのバスを作り出す

破壊力: E
スピード: D
射程距離: A
持続力: A
精密動作性: C
成長性: E

スタンド名: so doggone lonesome
本体名:坑月喜代四郎
能力:徐々に対象を引き寄せ、接触すると恐怖以外の感情を失う。独特な「ポ・ポ・ポ」という音が発動のキー。

破壊力: B
スピード: C
射程距離: C
持続力: E
精密動作性: D
成長性: D

スタンド名: He's A Demon, He's A Devil, He's A Doll
本体名:堀辺豊
能力: 電話を受け取った相手を「追尾」する。杜王駅が起点。追いついたとき相手の記憶を抜き取る。

破壊力: E
スピード: D
射程距離: A(電話で繋がる限り無制限)
持続力: A
精密動作性: B
成長性: C


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