【完結】吉良吉影は静かに暮らせない 作:ようぐそうとほうとふ
吉影が3階に上がるとすぐにこれまでなかった壁と、金属製の覗き窓のついた扉があった。なるほど、これが閉鎖病棟かと納得する。鍵穴は覗き窓のすぐ下にある。鍵束の中から一番くたびれた鍵を差し込んでみるとしっかりと嵌まった。
扉が開く。
なんだか空気が違った。1〜2階にはなかった
進むべきか迷う。いっそこのまま帰るのもありだ。吉影は間淵マヒルの脅しに本心から屈したわけではなかった。
確かにこのまま帰ってマヒルが犬に食い殺された場合、警察の取り調べなど面倒なことに巻き込まれるのは確実だ。だが結局死因は野生動物に襲われたのであって吉影に殺害の容疑がかかることはない。せいぜい事情聴取。警察官を言いくるめることなんて簡単だ。
それでも3階に向かったのは、この病院に入ってからの強烈な既視感の正体を確かめたいと思ってしまったせいだった。
吉影がもし幼少期にこの病院に通っていたのだとしたら、間淵マヒルの追っている杜王町の異変に吉影も無関係ではないかもしれない。
はっきりさせたい。無関係なら無関係でいい。
関係があるならば因果ごと消し去ってやる。…どうやってかは後で考えるが。
吉影は暗闇に踏み出す。
扉を開けてすぐにはデスク。そしてその向こうに鉄格子があった。二重扉になっているようだ。鉄格子の鍵もあけると、その先には廊下が延びていた。
吉影は一度デスクを調べる。デスクにあった簡易見取り図では処置室なるものが一つと、保護室がずらりと16床あるらしい。一つ一つ見なければいけないのは憂鬱だ。
まず処置室を開ける。そこは手術室に少し似ていて、大きな機械が三台置かれていた。ドラマなんかでみかける心臓マッサージをする機械に似ているが、おそらくは頭に電流を流すためのものだろう。
映画で見た知識だが、暴れ回る精神病患者にはよく電気を流して大人しくさせたと言う。
吉影は一番手前の保護室を開けた。鉄格子のはまった窓から陽が差し込んで白いマットを照らしていた。どの部屋も白いクッションで覆われた独房のようでゾッとする。しかしこれまでの部屋と違い、これら独房には『さっきまで誰かいたような』感じは一切なかった。
この病院が閉鎖されるずっと前から誰も使っていないような、そんな感じ。
期待外れだ。やはり本命は2階の診察室か。
そう思い、最後の保護室を開けたその時。
「吉影」
暗がりから、母の声が聞こえた。
「吉影」
母の声が聞こえた瞬間、吉影は反射的に飛び退いた。
半開きの保護室のドア。中からはうっすらと饐えた匂いが漂ってきている。これまでみてきた白いマットは出入り口付近から見てもわかるほど汚れていて、なんだかわからない黒い汁が部屋の奥から伝っているのがわかった。
この暗闇の向こうに、何かいる。
「どうしてお母さんの言うとおりにしてくれないの?」
これはあの気味の悪い犬が言っているんだ。母さんじゃない。理性ではわかっているはずなのに。
「吉影は、もっとちゃんとできる子よね」
いつか言われた、叱咤の言葉。それをなぜあの犬が。心を…いや、記憶を読まれているのか?たしかあの犬は間淵マヒルに対しても同じように誰かの言葉を囁いていた。
犬。罠。
「どうしてお母さんの気持ちがわからないのよッ!!」
バン、と音を立てて重い扉が開く。そして中から母親の顔をした犬が飛び出してくる。吉影は心臓を鷲掴みにされるような恐怖を感じる。それは幼い時に一度だけ感じた事があったような気がしたが、これ以上思い出すのを拒むように脳が思考停止した。
マヒルの時と同じ人面犬。しかしなんだか。
「大きいぞッ…!」
マヒルの時目の前にいたのはでかくても90センチほどの体高だったはずなのに、この犬は体高が130センチ近かった。さらに足から伸びる爪も長く、これではまるで狼だ。
逃げる。
頭に浮かんできた発想に吉影は素直に従った。そして犬はそんな吉影の思考を読んだように走り出す。
犬と人間が追いかけっこをしたところで勝敗は目に見えている。
吉影はこれまで開けてきた保護室の扉を廊下側に開け放ち、犬の進路を妨害する。犬は扉を避けようとするがその体の大きさからさらに手間取る。
思惑通り犬は扉に阻まれ若干の時間稼ぎになった。吉影はなんとか鉄格子に到達し、扉を閉め施錠した。
ざまあみろ!吉影は勝ち誇り、犬を顔を見てやる。母親の顔だが生気は全くなく、まるで死体の首がそのまま生えているようだった。それは未来を垣間見ているようで、吐き気がする。
「吉影」
犬は性懲りも無く話しかけてくる。吉影は一瞬次に何を言うのか気になったが、こんなものを相手取る気にはなれなかった。とりあえずマヒルの様子を確認しようと背を向けると。
「吉影。あんたはなんて穢らわしいのッ!!」
ゾッとした。それは吉影の中でも最も忌まわしく、恥ずかしい過去の記憶で母から投げつけられた言葉だったからだ。
その言葉に背中を押されるようにして、吉影は走る。少し首を曲げ、犬の方を見た。犬は、廊下を埋め尽くすほど大きくなっていた。犬が体を揺らす。鉄格子と壁の設置面の金具が音を立てて壊れるのがわかった。
「吉良吉影くんッ…」
間淵マヒルの声がした。
階段を上がってきた間淵マヒルが吉影の腕を掴み、階段を駆け降りる。
ほとんど同時に轟音がした。きっと鉄格子が破壊されたのだ。
「ボクの方の犬は消えた。あの犬は一体しか出せないんだ」
階段をほとんど10段飛ばしほどで
「あの犬はッ…逃げようとすればするほど強くなる!!」
「じゃあ、ボクら逃げてるわけだから今まさに強くなってるんだねッ」
「そうだ!」
2人は1階に到達した。マヒルは診療室へ駆け込み、迷いなく一つ目の罠があったファイルキャビネットを開けた。
「マヒルちゃあぁぁあーーーん」
扉の向こうで、巨大な影が言った。一階の罠をマヒルが触った事で狙いが変わったのだ。
吉影はマヒルの様子を見た。さきほど吉影が受けた攻撃と同じなら、この声の主はマヒルにとって
しかしマヒルは動じていなかった。それどころか、薄ら笑いを浮かべてる。
「吉良吉影くん。こいつらは時々ボクらの過去をほじくり返して突き付けてくる。泣いて叫んでおしっこ漏らしながら逃げ出したくなるような恐ろしい記憶なんかをね。でもボクには…ボクにだけは、それは効かないよ」
間淵マヒルは腕を伸ばす。ホームラン予告のように。そして犬と2人を隔てる扉に手をかけた。
「ボクは逃げないでいられる」
そして廊下にみっちりと詰まるような大きさになった巨大な毛皮と、そこにめり込むように生えた男の顔が目の前に現れた。平凡そうな顔だが、歪んだ笑顔が張り付いている。
刹那。マヒルの手がバットがあるかのように振られ、その男の顔が
「ほら!ほらほらほら!あはははは」
マヒルは笑いながら腕を振り回した。
犬は空気が抜けるように萎んで、マヒルの腕の動きに応じてボコボコに歪んでいく。まるでそこにバットがあるように。
「逃げなきゃ肉の塊だ」
マヒルは肩で息をしながら吉影の方を振り返った。
「なぜ逃げずにいられる。間淵マヒル…君が勇敢だからとか言わないよな」
一塊の肉のようになった犬はまるで風で散るように消えた。マヒルは振り向くと自分の頭を指さした。
「ボクは自分の『欲望を粉々に砕く』能力で、自分の『恐怖』を砕いているからね」
吉影ははっとする。以前出会った道の赤い男。あれは近づけば近づくほど体が重くなるのと同時に心の底から恐怖というものを掘り起こした。しかしマヒルは軽々とそれを無視してあれを攻撃していた。
それはたしかにこの一連の奇妙な出来事に対して立ち向かうには最適な特性だった。しかし。
「砕かれた『恐怖』は…戻るのか?」
吉影の問いにマヒルは肩をすくめた。
「それより、こいつが出てきたところに行ってみない?」
3階までの階段は大きな爪痕がそこかしこに残されていた。自分の逃げ出したいという気持ちがここまで大きくなってしまったことに吉影は少しショックだった。
自分の中に『逃げたい』だとか『怖い』だとか、そういう感情があるのはなんだか気恥ずかしい。まるで赤ん坊の頃寝しょんべんしてたことを思い出したような、そんな気分だ。
子供の頃の自分なんてほとんど他人で切り離して考えていた。なのに過去の恥辱を、土から蚯蚓をほじくり返すように突きつけられた。
この罠の主を1発殴るか蹴るかしてやりたい。いや、もう殺せるものなら殺してやりたい。この殺意はどちらかというと不快な虫を潰すのと同じようなものだ。
しかし吉影のそんな憂さ晴らしじみた思惑は3階の例の扉を開けてすぐなくなった。
保護室の白いクッションは元の色をほとんど残していない。部屋の奥に行くに連れて汚穢の層ができていて、その中心にあの犬の主人がいた。床に蹲り、ぴくりとも動かない。よく見ると背中がわずかに上下しており、生きているのは分かった。
髪は伸びていて男か女かもわからない。体つきもまさに中肉中背で、顔は見えない。
しかし立ち寄るとなると靴が汚れる。いや、もうそばによるだけで臭いがついてしまいそうたった。
「…吉良吉影くん。どうぞ」
「ぼくはごめんだね。お前は恐怖を感じないんだろう。行けよ」
「いやいや、怖くなくてもオエーッとかウワッとかは思うからね?」
犬の主人は吉影とマヒルの軽口にも反応を示さない。
結局マヒルがボロボロになってしまったワンピースをまくってそろりと近づき、足でつついてそいつをひっくり返した。
顔はぼうっとして、口からは涎が垂れていた。
吉影は心が壊れているんじゃないかと思った。間淵マヒルの攻撃のせいか、それともとっくの昔にそうなのかはわからない。だがこの部屋の状況からするにかなり前からここでこうして蹲っていたのかもしれない。
「白衣を着ている…。岩渕徹。医師だって」
「…2階のもう一つの診察室の主人か?」
「そうかもしれないね。そっちに行こうか」
マヒルはもうその倒れた男に興味はないようだった。前にも思ったが、マヒルは敵に対しては全く容赦も情もない。学校ではいつも周りに人がいて随分と好かれているようだが、実際の顔はどちらなのだろう。
2階の診察室の前には扉の残骸が散乱していた。
中に入ると、隣の診察室とはうってかわって散らかっていた。同じように本棚が壁いっぱいにあるが、中の本はところどころ床に落ちていて、机のそばに行くに従って本が床から積み上がっている。まるで乱読者が机に座りっぱなしでどんどん本を読んでいったようだ。床には埃の上に犬の足跡がたくさんついていた。
そんな酷い有様だったが、それでも3階のさながら事件現場のような惨状とは程遠く、吉影も中へ踏み込んだ。
「なんだかお隣とは随分毛色が違うな」
「そうみたいだね」
吉影は積み上がった本のタイトルをざっと確認する。
『念力の科学 ― 物体は意識で動かせるか』『サイコキネシスの真実 ― 人体が持つ未知の力』『超常振動波 ― 物質を操る脳のメカニズム』『精神エネルギー革命 ― 人間の意識が現実を変える』『精神波動の秘密 ― 脳が発する見えざる力』
とんだオカルト本じゃあないか。しかし春から怪異に直面してきた吉影は笑い捨てることもできないものだった。間淵マヒルに『脅威』と説明されたりかつて聞いた怪談とそっくりだったりしたために自然とお化け的なものだと解釈していたが、医者からすればこっちの方が理解しやすいのかもしれない。
「うーん、自分の力に悩んで研究していた…とかなのかな?」
「決めつけてかかるのはよくないんじゃあないか?」
「そりゃそうだけど。本人には聞けそうにないしさ」
マヒルもやや困惑しているようだった。吉影はこちらの部屋には全く既視感はなかった。とりあえず本棚の中にオカルト以外のものがないか探すが、成果はなかった。
一方マヒルは自分が一階のファイルキャビネットの中身をぶんどったことを思い出し、それを机の資料の上に広げてみた。
「…これはカルテだね。でも中身が…」
吉影も覗き込む。カルテの中身は執拗ななまでに黒く塗りつぶされていた。べたっとした黒、おそらくはクレヨンだろうか。
これでは仮に吉影のカルテがあったとしても判別がつかない。
家に帰って父親に聞くしかないだろう。だが突然幼児期に通っていた病院を聞くの不自然だ。この既視感については真相は藪の中だろう。
「…なんだかさらにミステリーって感じがしてきたぁ」
「用事が済んだならぼくは帰るが。もう夕方になってしまう」
「ああ、そうだね。ボクも今日はお母さんと外食する予定だから探索はまた今度かなぁ」
吉影はマヒルの格好を見る。ワンピースはボロボロでカーディガンにも土埃が山ほどつもっていた。自分も多分同じくらい汚れているが、もうこれらをどうこうしようという気力も湧かなかった。
マヒルはこれまたロッカーから盗んだらしいトートバッグにカルテと机の上に置かれていたノートを放り込んだ。
深い爪痕の残った階段を降りながら、吉影はついマヒルに聞いてしまった。
「…あの犬の顔は、誰だったんだ?」
「うん?あれは…仇かな」
「仇?」
「そう。この手の傷の」
マヒルはそう言って左手をヒラヒラと振った。
逃げ出したくなるような記憶。それが刻まれた手。
不思議と、前よりも醜いとは思わなかった。
病院を出る頃には日は傾きかけていた。全速力で走ったりしたせいで腹が減ったが、この格好で先ほどのカフェに入ると不法侵入したとバレバレだ。我慢するほかない。
そうして坂を下り、片道を帰ろうとすると広々とした家の玄関先をはいていた女性が声をかけてきた。
「だ…大丈夫?!」
その女性は昼間マヒルが話を聞いていた元看護師と同じ席にいた上品そうな女性だった。なるほど、外見から連想される通りの家に住んでいるわけだ。そしてその手も、たおやかで美しい。
「ああ、はい。病院の周りをうろうろしたらこんなことに」
「よかったら少し拭いていきなさい!ちょっと待っていてね…」
親切な女性だった。家の表札には花京院とある。名前まで上品だ。
「いいな、響きが綺麗な苗字って。ボクなんてマブチだろ?小さい頃はドブチとかからかわれてさあ」
吉影は自分の苗字の響きを気に入っていたので特に返事はしなかった。花京院夫人はすぐに戻ってきた。
「はい、どうぞ」
花京院夫人が差し出したタオルで軽く顔を拭う。思ったよりも汚れていた。この状態でうっかり地元に帰らなくてよかった。
「ありがとうございます。花京院さん、ですよね?あそこの院長の桔梗さんって今どちらにいらっしゃるのかわかります?」
「ええ。今もぶどうヶ丘病院に勤めてらっしゃるわ」
「そうですか。ありがとうございます」
顔と足を拭いたマヒルをみて、花京院夫人は言い出しにくそうにしながらもう一度たずねた。
「…ねえ。本当に病院の中には入っていないのよね?」
「入ってませんよ。もしかして、なにかあるんですか?」
吉影の返事に花京院夫人は疑ってしまった自分を恥じるかのように少し目を逸らした。
「ああ…いえ…妙な話なんだけど、数年前に犬の幽霊がでるって騒ぎになったことがあって」
「はあ。犬の…」
「そうなの。病院なのに変な話よね。…入ってないならよかったわ。怖い目にあった子供がいたから気になっていて」
「ご心配どうも。廃墟探検なんて小学生で卒業ですよねぇ〜」
よく言うものだ。花京院夫人につらつらと礼を言うマヒルを横目で睨みながら、吉影は心の中で大きくため息をついた。結局今日一日中歩いて走って、収穫はほぼゼロ。散々だった。
「今日は君がいて助かったよ」
森を抜けて吉影の見知った別荘地帯に足を踏み入れたころ、マヒルは言った。吉影は頭に血が上りかける。自分がしたことといえば罠を踏んで逃げて、あの『犬』を大きくしただけ。皮肉にすら聞こえる。
「そうか?お前一人でどうにかなることだったろう。もう二度と誘わないでくれ」
「何言ってるんだよ。君がいたおかげで探索が捗った。それに、ほら。廃墟探検楽しかったよ」
間淵マヒルはにっと笑った。
吉影は素朴すぎる感想に呆れて思わず返事に窮した。友達と遊んだ帰り道のような台詞だった。清々しいやつ。そう少しでも思ってしまって悔しかった。
「じゃあ今度はぶどうヶ丘病院で桔梗医師を探そうね」
「…断る」
「いいじゃないか。ボクと君でこの町の平和を守ろうよッ」
「そんなに大切か…この町が」
「うん。大切だし大好きだよ」
町はもう夕暮れに染まっていた。
少し先をいくマヒルの影が吉影の足元まで伸びている。
町だとか、みんな、だとか。そういうぼやけた言葉に愛着なんて持てない。欲望以外の『好き』も『大切』も知らない。
間淵マヒルはやはり自分と正反対だ。
吉影の中にあるのは特別な『自分』と女の人の手だけを愛したいと言う『欲望』だけ。
自分のためなら凡庸で下らなくてつまらない煩わしいだけの他人などいくらでも踏みつけにできるし、欲望のためなら何をしたっていいと思える。
そう、たとえば人を殺したって。
吉影は本能的に理解した。
この女は、やがて自分の敵になる。
どういう形になるかはわからないが、間淵マヒルは自分に立ち塞がり、例のバットで吉影の心を粉々にしようとする。
きっといつか間淵マヒルを殺さなくてはならない時が来る。
「どうしたの?吉良吉影くん。ボクの背中をそんなに見つめて。…まあ、いいよ。受験までならこの学園のマドンナとも呼べる成績優秀スポーツ万能、ちょっぴり美少女なこのボクがひとときの…」
「断る」
「つまらない男だね、君は」
ゴールデンウィークは終わる。春の名残は消えて、梅雨がやってくる。雨がやめば夏に、そして秋から冬、また春へ。そうして全てのものは終わって、始まり、巡っていく。その繰り返しをただ植物のように生きるのならば、自分の欲望は大きな障害になるに違いない。
それでも、自分は穏やかに生きてみせる。
いや、生きれるに決まっているさ。
だって自分はそのために努力することが全く苦じゃないんだから。
ほどほどの成績に、まあまあの企業に、奥ゆかしくて目立たない、けれど少し可愛げのある女と時々付き合ったりしてみて。その女を殺したくなるのを抑えて、自分をコントロールして…。
そうして普通のレールに乗りながら、いつか自分の欲望を満たす術だって見つけるさ。
だからまずは、取り敢えず。
間淵マヒルとの散々な休日を忘れるために、明日溝呂木みぞれを放課後カフェにでも誘おうと思った。
間淵マヒルの杜王町ぶちのめしリスト
No.16《人面犬》
とにかく不気味な犬。
罠を3つ設置でき、かかった人間が逃げれば逃げるほど強くなる。一体どれくらい追いかけてくるんだろうね?
追記
あの後また病院に行ったけど、3階の人はいなくなっていた。もっとよく探索してみたけど、あの人が岩渕徹だったのかたまたまあった白衣を着た浮浪者なのかわからなかったよ。まあ、犬がいなくなる分にはいいんじゃないかな。
研究資料はどれもいわゆる超能力的なものばかりで、研究ノートもそんな感じだった。あの人は自分の力を理解したかったのかな。それを持て余してああなっちゃったのかな?
私は直観的にこの力は正義のために使えばいいってわかったけど、そういうものがない普通の人にとってはむしろ苦しみの原因になるのかもしれないね。
スタンド名: Maybe
本体名:岩渕徹
能力:罠を3つ設置し、かかった人間のもとに犬が出現する。
破壊力: D~B(対象による)
スピード: D
射程距離: D(病院の中だけ)
持続力: A
精密動作性: E
成長性: E