魔法少女アンチ☆まじがる T-ボーン Steak   作:白鹿かかお

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第1話 国が推奨している都市伝説

 

 自身が持つ魔法。それは持っているだけで個性と呼ぶにふさわしい異能の力。誰もが羨む魔法の力。

 

 皆さんは魔法が蒸発する都市伝説を知っているだろうか。

 

 

 ――いや、違った。

 

 

 都市伝説ではない。国が推奨している政策をご存じだろうか。

 

 名前を『魔法バトル』。個人戦の魔法と魔法の真剣勝負。勝者は魔法のレベルアップを。敗者は魔法の消滅を。

 

 俺は魔法バトルを破壊する。

 ぶっ壊すために、魔法少女になったんだ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 俺は剣と魔法のファンタジー世界に転生した。

 転生した際、前世は男だったのだが今世は女。

 産まれた頃は戸惑うことも多かったが、今となれば完璧美少女。

 

 今の俺なら美少女オリンピック優勝もんだろう。

 

 前世、引きこもりのアニメオタクだった。

 そんなオタクだから、……とかではなくて、はっきり言ってこの異世界は地球以上に生きづらい。

 

 この転生した世界は、前世の地球と違って魔法が存在した。

 

 魔法は産まれたときに授かり、これからの人生を共にしていく……はずだった。

 もしも共にしていたら、その人物を印象付ける個性となっていたことだろう。

 

 

 仮に、火の魔法を使えていたら、暑苦しいくらいに勝ちに貪欲で熱血的だったり、水の魔法が使えていたら、頭が良くてクールでカッコよくて瞬時に人助けをしたりとか……。光なら勇者、闇なら実力を隠して影から……とか。

 

 そんな、もしもがあったら良かったのに。

 

 

 俺は魔法を授からなかった。だから、俺のことを周囲は魔法を持たない無能力者、つまり『無能』と呼ぶ。

 

 

 何故、俺は魔法を授からなかった?

 

 転生者だから?

 

 魔法の無い世界で暮らした記憶があるからか?

 

 それとも、才能のない無能だからか?

 

 まあ、元々持っていなかった魔法の力を求めているのは合理的な考え方ではない。

 

 

 じゃあ、何が生きづらいと思わせているかだ。

 

 

 その原因は『魔法バトル』。

 それに尽きる。

 

 

「おいおい聞いたか。モルゲンまでも自分の魔法を失ったらしいぞ。これでこのFクラスの魔法使いも残りわずかだな」

「そうだな。というかさっさと魔法を失ったほうがお貴族様の狙いの標的にならなくていいのにな」

「いや、魔法はあったほうがいいだろ。あると便利だし、何より最高にカッコいい」

「俺は別になくてもいいけどなぁ〜」

 

「ホント、実家のパン屋を継ぐやつは楽でいいな。魔法があったらすこしは就職するとき、入りやすくなるんだけど……三回負けちゃったからな〜。はぁ、それにペナルティもあるしで」

「そうだよな〜。ペナルティがあるもんなぁ~。あっそういえば、お前のペナルティって何だっけ?」

「俺は炎を操る魔法だったから、炎を見たり触ったりすると全身に激痛が走るってやつ」

「あー、見るのもダメなのか。けっこう嫌な部類のペナルティだな」

「まあ、俺のペナルティは水を飲めなかったり土に触れるとかよりは全然ましだよ。奴隷落ちしたとかもなかったし」

 

 

 俺は自分の座る席の前で話しているクラスメイトたちの言葉に、肘を付きながら聞き流す。

 

 そう、これだ。この日常と化した理不尽な内容。

 

 魔法は個性そのもの。

 だが、この世界で、個性は永遠のものとならない。

 魔法バトルがあるから。

 

 

 『魔法バトル』。

 魔法バトルは魔法と魔法による一対一の真剣勝負。バトルをするとき「リリース」とお互いに宣言をする。すると、二人だけの異空間バトルフィールドが発生する。

 その戦いをすることで勝者は『魔法のレベルアップ』を。

 

 敗者……つまり『魔法バトル』に三回負けると魔法を失い、身体に刻印が刻まれる。そればかりか、失った魔法の穴を埋めるようにペナルティが発生する。ペナルティは魔法をマイナスに作用したものとなる。

 

 

 ペナルティ。

 火の魔法使いなら、火を使えなくなる。水なら水を。風、土、草、光に闇。などなど。

 

 そして、マイナスに魔法は作用する。軽いものだと、触ることができなくなる。見ることができない。見たりすると、痛みが走っていく。重いものだと、空気に触れる、土に触れることで、激痛が走り、死亡する。痛みは人それぞれ違う。激痛の人もいれば、意識を失ってしまうこともある。逆に快感の人だっている。

 

 ペナルティは三度負けてみないと分からない。だから怖い。なのに周りの人たちは、そのことは常識なのだから。貴族階級には逆らえないからって当たり前のことだって言う。

 

 

 怖い。ペナルティが怖い。

 俺はもう、二度、バトルに負けている。

 

 

 次でペナルティが発生する。

 俺は無能力者だ。魔法は持っていない。持ってないのだから、魔法を失うこともなければ、マイナスに作用することもないはずだ。

 

 

 ペナルティの内容が全く分からない。それは『火』の魔法を失ったとき、ただ火を見ているだけで激痛が走るのか。それとも触れるだけで全身が焼けるのか。

 

 土の魔法を持っていたら、触れるだけで骨が砕けるのだろうか? 自分がどんなペナルティを受けるのか、全く分からない。ただその恐怖に押しつぶされそうになる。

 

 大丈夫。俺は、無能だ。

 

 

「あっまた、Aクラスの」

「ああ、また……」

 

 Aクラスの生徒はズカズカと俺のところまで来て、自分の意見を聞くことなく、無断で話を進める。

 

 

「僕はこれで魔法バトルに四回目の勝利を重ねる。そして僕の魔法はレベル三になるんだ! アハハ、ありがとう! 無能!」

「レベル三、昇格おめでとうございます。グラス様」

 

 俺は上辺だけの労いをする。

 

「そうさ! この僕、伯爵家次期当主グラス・オルランに敗北することを誇るといい! リリース!」

「リリース」

 

 お互いに魔法バトルの宣言をしたことで、こことは異なる空間、バトルフィールドが展開される。

 

 

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 ー

 

 

 

 

 勝敗は三十秒とないうちに決した。

 俺は敗北を宣言して負けた。

 三度の魔法バトル敗北。

 

 

 敗北は予定調和。

 

 魔法を持っていない俺が、魔法を持つグラスに負けることは仕方がない。

 

 自分の身体を見る。敗北して刻まれた刻印。

 見た感じ、ペナルティは分からない。まあ、分からなくて当たり前か。

 

 だって魔法を持っていない……魔法使いじゃないんだから。

 ああ、魔法を持っていなくてよかった。

 

 

 俺は沢山の人が魔法を失っているのを見てきた。

 魔法を失い、ペナルティに困り、奴隷落ちや絶望していたりする人たち。

 

 少し前クラスメートの一人がペナルティを受けた瞬間を見たことがある。

 

 彼の手に持っていた火の杖が突然、彼の腕を焼き始めた。『あっ……!』と彼の叫び声が響く。彼の肌が焼ける音が耳にこびりつき、見ているだけで胸が苦しくなった。恐怖で足がすくむ。

 

 

 俺はそういうのがなくて……本当によかった。

 

 みんなとは違う、無能でよかった。

 

 でも、でも、ほんとは。

 

 

 ……俺、少し期待してたんだ。隠されし力、魔法を本当は持っていて、ギリギリのところで覚醒するみたいなことを期待してた。奇跡を欲していた。主人公にはなれなかった。

 

 結果は負けて、終わり。

 

 手を前に出し強く握る。その握る手は戦いを知らなそうな少女の手。

 俺は魔法使いになれなかったが、彼から彼女になった。

 TS転生した元男で、俺は女の子。魔法も無ければ、息子もいない。俺ではなくて『わたし』。

 

 転生したわたしの身体、かなりの美少女。

 

 ん-、これからどうやって生きていこうか。わたしは可愛いからメイド見習いでもやってみようかな。

 それとも、前世のように一流自宅警備員になろっかな……。

 

 もしも、もしも魔法が使えていたら……それこそ美少女で魔法使いなんだから、アニメに出てくるような――

 

 

「――魔法少女――」

 

 

 ――になっていたことだろう。

 

 ま、そんな人生うまく行かないから、人生なんだろうけど。

 

 それに、わたしは知っている。

 実は『無能』とイジって来るヤツらがペナルティを怖がっていることを。

 

 

 

【ペナルティ用の魔道具】

 ペナルティが触れるものであれば、手袋を付ける。

 見るタイプの場合は、メガネ。その魔道具たちはあくまでも痛みを抑えるだけであり、痛みがすこし治まる程度である。

 マフラータイプやフード付きロングコートの魔道具も存在する。

 

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