引きこもり少女は異世界において神である(物理)   作:田地町 待乃

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泥酔中のピンクな主人公:
どもども。
ついさっき更新したウチの新表紙、もう見てくれたか!?
「アカネチャンカワエエヤッター」な名画やから、みんな見てな!
それにしても、むやみやったらintroductionが長くなってもうたな。
この作者、行き当たりばったりで書いとるから、構成めっちゃくちゃでスマンな。
ただ今回でウチがなんで異世界転移したか、その理由が明かされるで!
いや、あんなコト、べつに明かさんでもええんやが……サブタイに出とるから、もう遅いのや。
あと、ウチが女神扱いされとる理由とか、パンチラにも注目やで!
じゃ、またな~!

※「主人公が酔っぱらうとエセ関西弁になる」設定は数部分後にて登場予定


私が異世界転移した、その恥ずかしい理由…

 女神になって? 悪の教団と戦う? “引きこもり”つまり()()()()()()っぽく言うなら“レベル0以下”の私が?

 ……とても無理。

 首を横に振る私に構わず、蛍さんはすっと振り向いて、壁にかかった絵画を眺めた。

 そこには、鍾乳洞らしき暗闇の奥で、滝にあたって祈りをささげる巫女装束姿の女性の姿がある。

 どうしてこんな西洋風の世界で、日本的な巫女装束を?

 ともかく、その闇の中で光る白い肌は、あの午前零時、真っ暗な私の部屋に現れた地獄少女に似ていた。

 

「昔、サウステニラには女神っていう概念があって、その女神が世界を統べていたらしいの。選ばれた女の人がね、三年間、洞窟の中にこもって修行して、それで女神になるんだって」

「はい」

 

 もう、大方理解できてしまった。なぜ私が女神呼ばわりされているのかが。

 まあ、とりあえず黙って聞こう。

 

「でもみんな、〈そんな想像を絶する修行できない〉って。やらなくなっていっちゃって、それに、大事な青春の三年間を鍾乳洞の中だけで過ごさせるなんてヒドい! って、女性たちも言い出したりして」

 

 …………。

 その若い三年間を自室──と、お風呂とトイレ──の中だけで過ごした私が、今、ここに、いるわけだけれど。

 どちらにしても、確かに“外が居心地悪くない世界”であるなら、ヒトが引きこもりになる必要は皆無に等しくなる。

 蛍さんはスルッと前を向いてきた。

 

「それで、女神が統べるっていう(ことわり)を失くした世界は、無法地帯になっていったってわけ。そんななかで、『母の峠』みたいなインチキな教団が出てくるようになったの」

 

 さっき群衆の中から聞こえてきた、

 

“これはまさしく、混迷極める我が『サウステニラ』に現われし救世主”

 

 あの言葉には、そういう意味が……。

 三年以上引きこもった私の放つ不健康なオーラと、洞窟にこもりきって修行を積んだ女神の特異なムードが、彼らのなかで二重映しになったんだろう。

 

 冗談じゃない。

 メル友も理解者(せんせい)()()()失くして、一人になってしまった私のほうにこそ、救世主は必要なのに。

 さっきからずっと、全てがどうでもいいと思って、蛍さんの話に付き合っていた虚無な私だけれど、こうなるとまた“夢であってほしい”という欲求が強まる。

 

 私は大口を開けると、残りのビスケットに手を伸ばし、それを一口で飲み込んでみせた。

 他人の携帯電話だろうと、他人のデザートだろうと。どうしても気になったことがあれば手に取らせていただく。

 定石どおりに、粉が気管支へ入り込んだせいで、

 

「ンハッ! ごほっ! んぁッ! はぁ、はぁ、はぁぁっ」

 

 私はこうなった。こんなに息が荒れるのは、久しぶり? というか、数時間ぶり? まあ、数時間前には()()()()いて……。

 ともかく、これだけ盛大にむせても、この意識は現代の日本に戻ってくれない。

 いや、日本に戻ったとしても、私には救いなんてないけれど。

 

「ちょっとー。無茶するんだから……。まあ、私もここにきてすぐの頃は、よくそういうことしたけどね」

 

 すっと、不愛想に水を差し出してくる蛍さん。

 それを飲むことで喉は落ち着いていくけれど、心は逆に荒立っていった。

 

「んグっ……なんなの……? ねえ、どうして私たち、ここにいるの!?」

 

 至極当然の疑問を、改めてぶつけてみる。

 蛍さんはそっと目を閉じて、両手を胸の上で組んでみせた。

 こうして見ていると、地下アイドルのセンターにでもなれそうな、“親しみの湧く可愛さ”を持った人だということが分かる。

 

「ここへ来た女の子たちの共通点は、私を含めて、現代日本(あっち)の世界では昏睡状態になっているらしいことなの。実際ね、一度現代日本(あっち)に帰って、またサウステニラ(こっち)に戻ってきた子たちがいて……その子たちが証言してた」

「って、いうことは、私も昏睡状態になってる……? どうして」

 

 蛍さんは怪訝そうに、私の顔を覗き込んできた。

 

「ねえ茜、あなたの日本(あっち)での最後の記憶は、どんなの?」

 

 たぶん、〈ただじっと引きこもっていただけのアナタが、どうして昏睡状態になんてなるの?〉という疑問を抱いているんだろう。

 でもそれは私自身も不思議に感じることだった。

 疲れて眠ったはずなのに、どうして?

 

 とりあえず言われた通りに、あちらでの最後の記憶をたどってみる。

 そう。数時間前、私は、私は……

 

「それが……ちょっとキゼツしちゃって」

「どうしたの? もしかしてあなた世をはかなんで……ごめん」

 

 蛍さんは間違った仮説を立てて、勝手にガクッとうなだれてきた。

 私は両手を前に突き出し、柄にもなくそれを横に振る。

 

「そうじゃないの、そんな勇気ないの。その……()()()()()て、それでちょっと失神したみたいに、ベッドに崩れ果てただけ」

 

 そう……地獄の底で待っていて下さいと先生に伝えておきながら、私には死ぬ勇気なんてなかった。

 そんな私に構わず、年月はどんどん過ぎ去っていく。

 分かり合えなかったあのクラスメイトたちは大学受験を意識しだす頃だというのに、私は時間の停まった部屋の中でジッとしているだけ。

 自分へのイラ立ちと、今の状況に対するどうしようもない焦りと、世界で孤立していることへの絶望……

 そんなストレスから、私は、しょっちゅう自分で自分を慰めていた。

 

「でも、それだけじゃ意識不明にはならないね」

 

 ああ、助、か、っ、た……。

 全てを察した蛍さんは、歩兵を2マス前進させる要領で、話題をスキップしてくれた。

 

「ベッドのすぐ脇に、細くて高い本棚があるの。それが結構グラグラしてて。お母さんは、〈お父さんに頼んで壁に叩き付けてもらったら?〉って言うんだけど、誰かを部屋に入れるのイヤで」

「うんうん。たぶん地震か何かあったのかもね」

「きっとそう。さっきの私に、意識不明になる原因があるとしたら、それしかないと思う」

 

 加えて、悪運が強いというか何というか、私には前々から“ベッドに逆向きに寝る”というクセがあった。それは、ヘッドボードのほうに足を向けて寝る、ということ。

 それは例えば、母親に騙されて教師と強制対面させられた、あのときの直前とか。

 そして細長い本棚は足元のほうに置いてあるわけだから、たぶん、私が逆向きに寝ていたことでこの頭を直撃……。

 

 今度は私が、本棚のようにグラグラし始めた。

 

「ねえ蛍さん、そんなコトして一人で盛り上がって失神したところに、本棚が倒れてきて意識不明だなんて……イヤすぎるんだけど」

 

 ()()ために使ったイカガワシイ雑誌は散乱したままだろうし、そもそも私自身の寝姿だって、行為の直後に失神したわけだから……。

 そういった雑誌はネットで買ったもので、私がメル友に「この間サイト(地獄通信)を見つけました」と書いた夜も、床に二、三冊ほど散らかっていたと思う。

 

 ともかく私は、その後の現代日本を想像した。

 私の破廉恥な姿に笑いをこらえられない救命隊。

 厄介娘が()()()()()ことにどこか安堵する両親。

 それから特に、“ウソと誇張の宝物庫”になっているインターネットなんかでは面白おかしく「引きこもり少女が恥ずかしいコトして昇天したらしいぞ」と、大々的に騒ぎ立てられるんだろう。

 ああ、そんな恥をお土産にして、先生のいる地獄へなんて行けない。

 私、どうすればいいの? と問う前に、蛍さんはニンマリして解説を始めた。

 

「あっちとこっちを行き来したことのある子って、決まって人命救助や大発明をしてるの。それで国王からね、王家に代々伝わる『オリハルコン製の五寸クギ』をもらったんだって」

「ごっすんクギ……!」

 

 五寸クギといえば、藁人形を木に打ち止めるために使われるもの。

 そして藁人形といえば、地獄通信の象徴。地獄少女から手渡されて、首に巻きついた赤い紐を解くことで契約が成立する……。

 

「それでね、その子、その五寸クギを綺麗にデコろうって、自分のつけてた青いリボンを巻きつけたんだって。そしたら、元に戻ってたって……イマの日本で、意識を失くす直前の自分に」

「青い紐を結ぶことで、この世界とのリンクが解かれる……? 地獄通信の逆……」

 

 熱くなった私は、蛍さんの紅茶を奪って、喉に残ったビスケットの破片を飲み干す。

 私の母が淹れた味のない紅茶──例えば教師との強制対話のときとか──とは全然違う、薫り高い美味しさ。

 けれど、今の話はそれ以上の美味だった。

 

「じゃあ私も、何かイイコトをして、ごっすん釘をもらえば……」

 

 どこか蛍さんは奇妙な含みの入った笑みを向けてくる。

 

「うん。そうかもね。ごっすんじゃなくて五寸だけどね!」

「じゃあ蛍さん、私たちの異世界転移には、地獄通信が絡んでる……?」

「だから、それをこれから探りに行くんだってば」

 

 どこか意気揚々と胸を張る蛍さんの姿に、私は、そこはかとない悲壮な決意を見た。

 意識不明にならければ来られないという、この世界。

 それに彼女は、私が気絶した原因について、事故でも病気でもなく、真っ先に〈世をはかなんだ〉可能性を指摘してきた。

 この明朗な人となりの裏には、きっと何かが潜んでいる。

 

 私の考察はよそに、蛍さんは立ち上がって私を指さしてきた。

 

「じゃあ、その町娘の姿で歩いてもらって、町人(みんな)が、さっきの()()とは別人って認識してくれるかどうか試そう。で、それが上手くいくようだったら、ちょっとした大がかりなマジックを使って、女神の威厳をアピールする!」

魔法(マジック)……」

 

 私も立ち上がると、そっと神妙に目を閉じ、

 

(籠符、アネモネサテライトっ!)

 

 心の中で、呪文を唱えた。

 アネモネの形をした弾幕が、花火のように炸裂してゆく!

 ……はずだった。

 

 目を開けた視界に入ってくるのは、ただただ沈黙、静寂、静止画。

 

「あ、ちなみにこの世界には魔法(スペル)とかはナイから」

 

 蛍さんのあまりにも乾ききった指摘に、

 

「えっ!?」

 

 私は壁際までノックバック、ドテッと尻もちをついた。

 蛍さんは、私の脚の付け根を見つめて一言。

 

「白か。らしすぎるね」

「うるさいっ」




「うるさいっ」の直後でメインタイトルが入って作品スタート!
流れる曲はもちろん『Mystic Antique』。
……というのが作者の(見えない)意図。

ただ、前書きでヒロイン本人が言っていた通り、導入だけで1万文字近く使ってしまいました……。
何か良い方法があれば、今後構成を組み直すかもしれません。
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