機動戦士Gundam GQuuuuuuX 蒼の炎獄 作:ミトコンドリアン
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今回、申し訳ないですがこれまで、そしてこれからの整理ってことで短めです。それじゃ、どうぞ。
つめたい、宇宙に浮かんでいる。
『フゥ……フゥ………フゥ…………』
息苦しくて、寒くて、呼吸が荒くなっている。
星が宇宙に輝いている。でも、見惚れている暇はない。ペダルを踏んで前へ、前へ、前へ。
家族は無事ではないだろう。私ひとりが逃げおおせ、たまたま見つけたコイツに乗って、戦火のコロニー逃避行。辛い、寂しい、暗い、怖い。
その時を思い出して…ふと、たまに思うのだ。嗚呼、
ーーーーー
おーい、朝だよ、起きなさい」
「…………………あれ」
ぼやける視界の真ん中に、明るい青のシルエットが浮かんでいる。それは私を揺り動かしているようで、しっかりした声をともなって私に呼びかけていた。
「…おかあさ…」
「俺はキミのお母さんじゃないよ!…朝ご飯できてるから、食べなさいな」
上体を起こして目を擦ると、視界が晴れてきた。私の根城、狭いアパートの一室には…元々いなかった人間が居着いている。
「目玉焼きとパン、それとスパムね。卵が安かったから昨日隣町まで走ってきた」
「…………そういえば、いるんだった」
「まだ寝ぼけてるらしいね。顔洗ってきなさい」
はあい、と出てきた言葉。無意識だった。よたよた歩いて洗面台の方に、蛇口を捻って顔を洗って…完全に目が覚めて、状況を実感しだした。
あの日…アキさんを拾ってきて匿った日を境に…彼はここに居着いた。いや、私がとどめたと言うのが正しいのだろうか。あの日の彼は相当困ってそうだったし…なんだか気の毒だった。それに…。
『迷惑かけてごめんなさい…寝る場所見つけなきゃなあ、モスクさんとこに世話になるのもアレだし…』
『 ねえ、えっと…アキさん、ですっけ』
『…マチュにはそう呼ばれてるね。まあそれでいいけど、なんだい』
『あなた、高校出てるんですよね?』
『うん、それが?』
私は…やりたい事の切れ端を、その時たしかに掴んだのだ。
『ここにいてくれて良いですから…勉強、教えてくれませんか』
ーーーーー
「アキさん、ここって…」
「ん、どりゃどりゃ…なるほど、不等式の証明ね。エト、こんだけこね回して無理なら帰納法使ってみな。それと…A<Bがそのまま無理ならCを置いてA<CとC<Bを証明してみる、って道筋かな」
「なるほど…ありがとうございます」
「いえいえ。ニャーンちゃんはちゃんとできてるから、たぶん次出たらすぐ対応できるよ」
「………ニャアン、です」
「あ、失礼。つい伸ばしちゃうね…ごめんねニャーンちゃん」
「…もういいです」
この人が側で教えてくれるようになって…もうどれくらい経っただろうか。まだまだ短い付き合いではあるが、この人はいい人だ、と実感するのには十分だった。作業的に照明の文を組み立てながら、私は口を開く。
「アキさんは、新しい仕事は順調ですか?」
「まあね。
「そうですか。…アキさん、これでいいですか?」
「お、できたかい。…………うむ、パーペキ!」
この人は…なんだか前よりお茶目な印象を受けた。しゃっ、と赤ペンで私のノートに丸をつけた彼の表情は明るい。
「いいねいいね。この調子で続けていけば“ジ工大”にも届くよ」
「そうですか?」
「基礎の飲み込みが早いのがいいね。実力も鰻登りってやつ?」
「ウナギ…?」
何やら私の知らない慣用句を用いる彼の額には、2本の角が突き出ている。結晶質で、若干透き通った翡翠色の角。人間に角といえば、絵本に出てくるような、悪魔や鬼がつけているような印象を受けたが…今の彼からは、微塵もそんな様子を感じさせない。
問題を解き進めていると、彼の気配が薄くなっているのに気づいた。顔を上げると、彼は棚からパックの紅茶を取り出し、ポットの湯につけている。
「…………あ、これもちろん俺の金で買ったよ?」
「あっ、いえ、そういうつもりじゃなくて…ごちそうになります」
「いいんだよ。一宿一飯の恩が何日分も重なってるんだから」
彼は仕事から帰ってくると、掃除や炊事をやってくれた。流石に洗濯は、その…下着類なんかもあるからと最初は手をつけていなかったが、今ではせっせとランドリーに洗濯物を運んでくれている。
私が彼に宿を貸し、彼は家賃と家事を対価として支払う。実利だけ…実利だけの関係の筈の、奇妙な共同生活だ。
この人が自分より歳上だと聞いた時は驚いた。童顔だし上背もない、マチュより少し高いくらい。それでもどんぐりの背比べ、立って話す時はいつも見下ろす形になった。しかし…なんだか納得もできる。
「はい。結構時間経ったし、キリいいとこで休憩するといい」
「ありがとう、ございます」
かた、と温かい紅茶のカップを机の傍らに置く彼に世話を焼かれていると、なんだか不思議と…彼から父性のようなものを感じることがあるのだ。見た目や茶目っ気は年相応、いや、少し若いくらいなのに、所々が達観していて…マチュやシュウちゃんとは大違いだ。それに、彼はいつも…
「………ところでニャーンちゃん、マチュのことだけど…」
「まだ止めるつもりはないみたい…です、よ」
「そっかあ。 そっかあーっ」
マチュ。またマチュのことだ。この人は毎日と言っていいほどマチュのことを聞いてくる。私の友人に、それとなく“危険なことはやめろ”と伝えてはくれないか、とも頼まれている。……未だに、怖気付いて言えていないが。
「でも…気にしてはいるみたいです。あなたの事殺しちゃったって」
「ふうん。……………じゃあ、このまま俺の生存は隠し通す方向に行くか」
「え?」
彼が言った言葉に少し驚いた。そういえば…この人は生きているというのに、マチュに会いに行こうとしなかった。何故だろう、と考えているのを見透かされたのか、彼は横目で私を見ながら言う。
「お灸を据えるんだよ。君がやってるのは“殺し”が伴う危険性のある事だよって…気づかせるのさ」
「な、なるほど」
「ちょっとくらい考えたらわかる事だろう?なあに、直ぐにやめてくれるさ」
どこかやる気なくカラカラと笑う彼を見ながら…私は、考えていた。
マチュが……………
ーーーーー
時と場所は変わって…イズマコロニー近郊。物資を積んだ貨物船が、寒い宇宙をゆっくりと航行していた。順調そうな航行だったが、船長の額には汗が滲んでいる。
『よう艦長サン、こちら一番機。未だ異常無し。ミノ粉は?』
「未だ確認できないな。二番機の方は?」
『こちらも異常無し、デス。…本当に来るんすか?』
「ばかを言え!なんのために我が社が貴様らを雇ったと…!」
『オイオイ艦長さん…アンタらと俺らは対等な立場の筈だ。あまり感心しない言葉遣いはよしてくれよ』
『や、今のは俺の言葉がダメでした。…失礼しました』
「………ああ、わかった。反省したまえ…キミは新人かね?それにしては礼儀ができている」
船長達のいる貨物船のブリッジに、無線越しに声がふたつ響く。窓の外を見やるに、その無線は貨物船に随伴する、二機の
『ソイツはまだガキンチョだがなあ、俺よりしっかりしてるぜ』
『18、もうすぐ19!成人なんですよセ、イ、ジ、ン!合法的に働いてんですからね!』
『そう食ってかかるのが子供なんだろうよ!』
「……………クソ、本当ならばデミトリーを雇っていた筈だというのに」
無線越しに言い合いをしだしたセイバーフィッシュ…護衛のために雇った
しかし…不安なものは不安である!
『生意気なガキだな、コノヤロ……………来たか』
『ですね。行きますか』
『あたぼうよ!』
「お、おい待て、まだセンサーに反応は…!」
「艦長、センサーにミノフスキー粒子の反応を検知!来ます!」
「な…貨物船とはいえ、大型艦のセンサーより先にか!?」
貨物船の艦内にアラートが響く。何があったのか。それは簡単…戦後の混乱期に、ジオン勢力下でない中立コロニー近くの宙域は、それ相応の危険が伴うものである。
「左舷暗礁宙域よりMS接近!数は………五機!」
「チッ、宇宙海賊め…相当物資に飢えているらしいな。では、頼んだぞ!」
『了解。オイ坊主、行くぞ!』
『はいよ!』
そう。宇宙海賊…戦後の大きな問題の一つだ。宇宙海賊はその名の通り宇宙の海賊。ジオンや連邦の勢力の及ばない宙域に潜んでは通りかかる船から略奪を行うなどの狼藉をはたらく者ども。地球連邦軍の残党がそのままそうなったり、ただゴロツキどもが集まった犯罪集団であったりと成り立ちは様々だが、何にせよ、中立コロニーや地球間で貨物の運搬を行う者達にとっては悩みのタネであった。
「…ジオンはこんな場所の面倒を見る暇も、金もないらしいな!」
「ホント、最低ですよ。ジオンも連邦も」
「ああ…戦争なんかしでかしやがって、俺ら民間のことなんて…!」
恨み節を吐く船長と船員たち。しかし、その間にも海賊達は接近してきており、艦内は緊張に包まれているが…こちらにだって戦力があるのだ。
『ザクが一機、0ザクが二機…げ、リックドムが二機いる!』
『ほほう、
『おそらく。でも、海賊に堕ちちゃ世話ありませんね』
『だな。あの目潰しをまた喰らうことになるか…!』
セイバーフィッシュ二機が、ミノフスキー粒子が満ちないうちに連絡を交わす。暗礁宙域からゾロゾロと顔を出した海賊のMSたちは、貨物船を傷つけるのが目的でなく、物資の略奪が目的だろう。銃砲の類を構えつつ、発砲することなく身体を出し……ザクの頭が
「な…何だ!?」
ブリッジからその様子を見ていた船長は、何が起こったのかわかっていなかった。彼が確認できるのは、セイバーフィッシュのうち一機が機首をそちらに向けていたことだけで…
『まずはひとつ。ラクですねえ、
セイバーフィッシュ二番機からの無線に乗って聞こえてきた、嬉しそうな少年とも少女とも取れる声。そう…そのセイバーフィッシュの機首の下には、見慣れない装置がくっ付いていた。
EML…Electron Magnetic Launcher。電磁加速砲…つまるところ、レールガンである。宇宙世紀においては珍しい武装であり、セイバーフィッシュにも本来なら搭載などされない筈であるが…このセイバーフィッシュは正規軍のものではない。違法スレスレの改造が施されている。
『弾代が嵩むんだ、あまりバカスカ撃つんじゃねえ』
『銃身が超ホットになるんでそうぽこじゃか撃てませんよ。…やっこさん仕掛けてきますね!』
『分かってる、先行くぞ!』
軽口を叩き合う二人のうち、一番機が先陣を切った。野生的な男の声が聞こえてくる方だ。急加速した一番機が機体を縦に傾け、旧ザク…0ザク二機の間をすり抜ける。まるで挑発するような行動に、その二機は腹を立てたのかザクマシンガンを斉射する。
『所詮はゴロツキか、狙いが甘い!』
しかし、厚いはずの弾幕の中を、まるで木の葉がひらひらと翻るようにマニューバを行う一番機。射線を観察し、どこに避ければ当たらないかを的確に判断している。それはNTの動きではなく、経験に裏打ちされた熟練のパイロットの動きだ。
『だが…やはりこの殺しにくる感覚はやはり!』
一番機がいきなり機体をピッチし、逆方向に機首を向けた。空気抵抗のない宇宙空間でのみ可能な無茶な機動で、0ザクの片方を照準に入れた!
『まずは…お前だな!』
操縦桿のトリガーを引くと、装備されたコンテナからミサイルが数本発射された。誘導兵器でない、真っ直ぐ飛ぶだけのミサイル。その分速度は速いが、火薬で撃ち出す実体弾やビーム兵器とは比べ物にならない。0ザクの片方は目視で確認して、弾幕で撃ち落としてしまおうとマシンガンを乱暴に放って…それを後悔することになる。
マシンガンの弾が当たったミサイルが、宇宙空間に
『特殊塗料だ、クリーニングでも落ちねえよ…っと!』
カメラを特殊塗料で潰され、前後不覚となった0ザクの一機がめちゃくちゃに連射したマシンガンがもう一機に当たり、あえなく腰部を破損させられ、爆散。めちゃくちゃに暴れる0ザクの弾幕を潜り抜け、セイバーフィッシュ一番機がまたミサイルを撃ち出す。それをコクピット付近にマトモに喰らったザクは…着弾地点の装甲に亀裂が走ったまま沈黙した。
『震盪ミサイル…使い勝手がいいな。
そう呟いた一番機のパイロットは、輸送船付近で戦っている二番機の方へ推進する。その先では、セイバーフィッシュ二番機が二機のリックドムを文字通り翻弄していた。
『推力は負けてるが…その分的が小さいから!』
ピッチ、ヨー、ロール、その他のマニューバと宇宙空間特有の空気抵抗がないからこそできる機動で、リックドムのマシンガンを巧みに回避する。こちらは経験でなく、勘で避ける動き。
『右!?…次は、了解!おっと、助かったよありがとう!』
何やら独り言を呟いていた二番機のパイロットだったが、それでも操縦は曇らない。いや、むしろ洗練されている。痺れを切らしたリックドムの一機が、二番機を無視して輸送船の方へスラスターを吹かすが…
『あ、それやめてね』
軽い言葉と共に、スリップしながら機首をぐんとそちらに向けた二番機のEMLから超音速で射出される弾丸。背を向ける形になっていたリックドムは、それを避けることができず…首を刎ねられる。先程から、的確に殺さないように無力化している。
味方が無力化されたことに憤ったのか、幸いにも機首が射程に入っていることを確認したドムの胸部がフラッシュする!
『さて、次はお前だ…ギャッ!?』
リックドムの胸部拡散ビーム砲。ポピュラーなビーム兵器はどの威力はないが、拡散する性質とその光量により、一時的にに敵機のカメラセンサーの類を麻痺させることができる装置。それをマトモに喰らった二番機のパイロットは驚いた声を上げるが…
『オイ、誰か忘れちゃいねえか!』
機銃を斉射しながら飛んでくる一番機。リックドムの装甲に弾かれるが、被弾を感知したリックドムが一番機の方を一瞥し、そちらを優先しようとマシンガンを向け…そのマシンガンが撃ち抜かれる。
『…当たったかな?』
『ブルズアイだぞ坊主!』
マシンガンを失い、構えで守られていた腹部が空く。そこに一番機が震盪ミサイルを二発撃ち込み…リックドムは沈黙した。宇宙海賊は、あっけなく鎮圧されてしまった。
『ふいー、終わったか…珍しいミサイルですね』
『試験してくれとお上に渡された。着弾地点に衝撃波を発生させて内部計器なんかへのダメージを狙うんだと。信用に足る性能が確認されたら軍警におろすってよ』
『なるほど…確かに、テロでMSなんかが使われても簡単に鎮圧できそうですね』
一息ついてすぐに世間話を始めた傭兵二人に、貨物船の船長は口をあんぐりと開けたまま固まっている。見かねた船員の一人が発言した。
「ぐ、イズマの軍警に通報しましょう。ビーコンを投下します」
「お、おおうそうだな…まさかこれほどとは思わなかったよ」
腕を組み素直に彼らを褒める船長の表情は明るい。
「………同僚にも知らせてやらなければ。彼らも信用に足る護衛だと…」
ーーーーー
「……ふう、疲れた」
『お疲れ様。今日はこれで終わりだったかしら』
「うん。妖精さんもありがとう」
ドックに停められたセイバーフィッシュの下から顔を出したのは、頬を黒い油で汚したアキト。…どうやら仕事で使うセイバーフィッシュの整理をしていたようだ。
「さて…帰ってニャーンちゃんにご飯作ってあげなきゃ」
『貴方は…また女のところに…』
「人聞き悪いなあ、今回はそういう関係になってないでしょ!…ただ世話焼いてるだけ。俺が、勝手に!」
『………何とかならないの、その性分』
「性分なんだから無理さ」
セイバーフィッシュの側に立っていた妖精さんが、仰向けで出てきたアキトを見下ろしている。…鏡越しでしか見えなかった妖精の像は、はっきりと肉眼で見えていた。アキトは起き上がり、ガチャガチャと工具箱をまとめ始める。そんな彼の背後から、妖精さんは話しかけてきた。
『で、例の計画については?』
「まだだねえ。…まず、
『…EXAMシステムは、きっとクルスト博士と共にいるはずよ』
「ニュータイプ排除を掲げてたイカれジジイだっけ?…気持ちは分からんでもないな」
片眉をくい、と上げたアキトの冗談めかした言葉を受けた妖精さんは、眉を顰めることで返した。
「……言っていい冗談じゃなかったね、ごめん」
『いいのよ。…訊きに行く相手はもう目星をつけてあるのね?』
「そりゃ…おれの
角を指で弾く。音叉を打つような、澄んだ音が辺りにこだました。
『…協力者がいるの?』
「もしイフリートEXが無事だったらいらなかったよ。そいつで突っ込んでぶっ壊して、脅せば聞けらあ」
『じゃあ、何処かでMSを借りてくれば?デミトリーに貸しだってあるじゃない』
「ザクⅠ、Ⅱは火力が足りない。ゲルググは関節が心配。それに…MSで突っ込むのもあまりやりたくなかったからな」
『どうして?』
片付け終わった工具箱をよっこらしょ、と持ち上げたアキトが、当然のように妖精さんに言い放つ。
「会社にはな。そこで働いてる人たちがいるんだから…設備ぶっ壊したら、直るまで路頭に迷うことになっちまうかもだろ?」
『……ちゃんと、考えているのね』
「ん、これくらいフツーフツー。一拍置けば誰でもわかるさ」
神妙な面持ちで言った妖精さんに、あっけらかんと答えたアキト。アキトの脳内の青い少女は、彼女が邪魔に思う…あの赤髪の少女について考えていた。
『一歩進んで考える。それをできる人間は、貴重なように思えるけれど』
「そうかなあ。…そうか。俺は周りの大人が良かったからなあ」
『…そうね』
アキトの人生…病室で寝起きするようになってから、ではあるが、周りの大人はまともだった。きちんと叱り、励まし、いろいろ教えてくれて…同年代より大人との付き合いが多かった気もする。まあ、大半はツィマッド社の大人たちだったが。それが、アキトの心を育てたのだ。
『見習える大人が多いのは…貴重なことなのね』
「かもな。……俺がニャーンちゃんの、あとマチュの、シュウジの世話も焼いてたのも…たぶんそれが原因だよ」
ドックから事務所に繋がる廊下を歩きながら、後ろを浮遊する妖精に向かって…アキトは言った。
「
ーーーーー
「ハア…今日も収穫なしか」
公園のベンチに座り込んだ、明るい茶色のコートを着た青年…エグザベ・オリベは肩を落とす。理由は簡単、自分のせいで盗まれたジークアクスの行方が、未だ知れないからである。
『シャリア中佐の動向も見張らなければなのに…僕は一体なにをやってるんだ!』
心中に自責がこだまする。膝の上で握り拳を作り、力が入ったせいで痛む。…先程の聞き込みで殴り飛ばされた時、手をついて擦りむいてしまったのだろう。
「いっ、つつ…後で絆創膏も買わなきゃ」
あのジャンク屋の恨めしそうな顔を思い出し、エグザベはそう呟いて、近くの薬局へ向かおうと顔を上げ…
「お兄さん、大丈夫ですか?」
「うわあっ、と!!」
目の前に立っていた、キャスケットを被った少年に驚きのけぞった。その仕草がおかしかったのか、少年はくすくす笑う。
「ああ、すいません…なんだか様子がヘンだなーって思って」
「あー、ごめん!僕は気にしなくていい、なんともないさ!」
取り繕うように笑顔を浮かべ、掌を前に出してそう言ったエグザベに…少年は顰めっ面になった。
「怪我はしてるじゃないですか。…はい、これ」
「…いいのか?あ、ありがとう」
彼が懐から取り出し、差し出した絆創膏をおずおずと受け取り、洗ってあった傷口にぺたぺたと貼っていく。貼り終わった後、エグザベは少年に向き直った。
「ありがとう。いま絆創膏の代金を払うk「あ、代金はいいです。これはなんというか…
奇妙なことを言い出した少年は、エグザベに向かって…予想だにしない言葉を吐きかけてきた。
「お兄さん…ジオンの盗まれたMSを探してるんでしょ」
「なっ、なぜそれ、っ!!!!!!」
慌てて口を押さえるが、もう遅い。からからと笑い出した少年には全てが筒抜けだ。
「面白い人だ、お兄さん。素直で実直。…信用に足る」
「信用…?」
エグザベが訝しむように少年の顔を覗き込んだ。少年の声に…エグザベは、何処かデジャヴを感じていた。何処かで、聞いたことがある。
「俺はね、
「…………な、ッ!!」
出鱈目を言っている、と思うだろう。だがしかし…あのMSの名称をこの少年は知っている。それに、ソドンが赤いガンダムを探していることさえ分かっている!
「お、教えてくれるのか!?いったい何処に…!」
「ギャッ、ちょっと落ち着いてお兄さん!!」
思わず少年の肩を強く掴んでしまい、「あ…すまない」と、恐る恐る彼から手を離したエグザベは、少年にもう一度向き直った。そんな彼の様子を見て、少年は両手を肩くらいに上げ、戯けた様子になる。
「全く…
「……………対価、か」
固唾を飲むエグザベ。この謎の少年は、一体何を要求してくるのか。間を置いて、沈黙が広がり…少年は、ゆっくりと、被っていたキャスケットを外し…………
「あんた、ジオンだろ?…EXAMシステム追っかける手伝い、してよ」
少年の二本角が指で弾かれ、音叉のように共鳴した。その澄んだ音が、エグザベの動向を良い方向へ進める福音なのか…はたまた、彼を呪う悪魔の囁きなのかはわからなかった。
エグザベは気がついた。…この少年は、あのイフリートに乗っていた少年だ。彼の額の二本の角と、彼の両の瞳が…紅く、眩く輝いていた。
【To Be Continued…】
アキト:角つき勝手に世話焼き強化人間。“大人”を自認している。次の世代の見本になる大人でなければ、という哲学を掲げている。
一番機のおっさん:元々は連邦軍人だったらしい。兵器のテストなんかを行う民間軍事会社を立ち上げて、そこの社長兼傭兵をやっている。闘争大好き!
ニャアン:ニャーンじゃないです…。アキトに勉強を教えてもらっている。家庭教師くらいのつもりが、彼に住みつかれてしまった。しかし満更でもなかったりする。…アキトに父性を感じ始めた。
マチュ:私の出番は!?…アキトのことを気にしているらしいが…?
エグザベ:みんな大好き不憫な青年。アキトに取引を持ちかけられた。どーなっちゃうんだぁぁ!?
ーーーーー
いかがでしたか?
よければ感想・評価などお待ちしております。やる気が上がります。
では、また次回。