機動戦士Gundam GQuuuuuuX 蒼の炎獄 作:ミトコンドリアン
衝動に突き動かされ、2話目でございます。
お気に入り12件、さっそくありがとうございます。
この、投稿時はあまり伸びない感じ、少し昔を思い出します。やはり私もまだまだ。精進させていただきます!
改善点など感想いただけると助かります。MS戦を書いたのって初めてで…。
それではどうぞ。
コロニー外宇宙にて…二機のMSが、スラスターの光で宇宙に美しい絵を描いていた。
「くっ…ガンダム!」
大きな駆動音を立てて、ガンダムは機体の軸を逸らす。先程までガンダムの身体があったところを高速で何かが通過する。それを確認して、180°急旋回。ガンダムの言った通り…目の前に
大質量の金属同士がぶつかり合う音がする。が、青いMSには対してダメージはなかった。それどころか、ガンダムの左脚を、空いていた右腕で止められてしまった。一時的にコクピット同士を接触回線が繋ぐ。
『ニュータイプ…ニュータイプは………死ね!!!!!!』
「…きみは、あの時の」
『黙ってろ
「何をする気だ、アキト!……アキト、それが君の名前なのか?」
『ッ、やはりニュータイプか…!!!!』
ガンダムのパイロット…シュウジは青いMSのパイロットに語りかける。シュウジには確信があった。これに乗っているのは、あの時の…展望台であった少年だ。なら、なぜ自分のことをシャアと呼ぶのか。それがわからなかった。
「きみは様子がおかしい。落ち着いて話をしよう!」
『黙れシャア・アズナブル!ニュータイプに心を覗かれてたまるか……!!』
「…ッ、やはり、何かおかしい…!!!」
『おかしいのは貴様らだ、ニュータイプゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!』
「ガンダム!」
左脚を反す刀で切断しようとするMSを、頭部バルカンで牽制することで動きを止め、掴まれた左脚を軸に機体を捻り…右脚で思い切り蹴る!!
『ぐぁあっ…!クソッ、化け物がよ…!!!』
接触回線は切れた。が、依然としてシュウジには、アキトの声が聞こえていた。そして、その脳内に渦巻く、
『ニュータイプは…人類を滅ぼす…やられる前に…誰かがやらなきゃあなぁ………!!!!!』
劣等感や嫌悪感、憎悪に塗れた被害妄想。それに取り憑かれた少年が、容赦なくシュウジに弓を引く。シュウジは極力火器を使うことはなかったが、アキトは容赦なく全ての武装を使用してきた。
『沈め、ガンダム!!』
「チイッ…!」
何かを感じ取ってスラスターをふかすと、青いMS脚部のミサイルポッドから高速で何かが射出される。高速で真っ直ぐ飛ぶそれは、ガンダムに当たることなく通り過ぎ…近くを漂っていたスペースデブリに
「ニードル・ミサイル…!」
『感がいい、貴様やはりニュータイプだな…!』
避けられたのをすぐさま感知したアキトは、MSのスラスター出力を一気に上げる。殺人的な瞬間加速をもって、ガンダムへと肉薄。確実に機体・パイロット共に高負荷の機動を、アキトと青いMSは耐え切っている。常人ならば気絶する速度で、ガンダムと青いMSは渡り合う。
変則的な軌道で迫り来る青いMSは、左手にヒートサーベルを構える。そして、右手をバックパックに回し…マウントされていたガトリングを抜く。そのまま右手を伸ばし、引き鉄を一気に引き絞る!
『…ッ、このMS、ビーム兵器まで扱えるのか…!炉も特注ってことか…!』
「ガンダム…当たったらまずいのか、あれは!」
シュウジの脳内に呼びかけるなにか。シュウジはそれを“ガンダムの声”であると解釈していた。今回呼びかけてきた内容は“あれに当たるな”。それに従い、機体を捻るように動かせば、目の前をビームの弾幕が通り過ぎていく。
『ビームガトリングか…!なるほど、撃っても当たんねえなら…いっぱい撃てばいいもんなあ!!!!!』
「ッ、不味い…!」
コロニー外宇宙での戦闘とはいえ、コロニーに程近いここだとビーム兵器の使用は危険だ。しかし、相手は正気を失っている。…やらなきゃ、やられる。シュウジは咄嗟に出力を絞り…ビットを二機射出した。
『ニュータイプお得意のサイコミュ兵器か!』
「無力化するぞ、ガンダム」
推進剤を積んだビットが、まるで蜂が踊るようにぐるぐると青いMSを周回する。青いMSはビットを墜とそうとビームガトリングを乱射するが、じきに見失ってしまった。そのタイミングを見計らって、シュウジは背後と右舷から2本のビームで十字砲火をかける。しかし、青いMSは墜ちなかった。それどころか…
『ッ!危ないじゃないか!!!』
「…背後に目がついてるみたい」
機体を捻り、右舷からのビームは避け…ヒートサーベルを背中に回し、ガンダムの方を向いたままサーベルでビームを弾いたのだ。その離れ業は、やはりシュウジにある事実を思い出させる。
「……君も、“向こう側が見えた”のに」
あの展望台で、彼に出会った。その時は空色の髪の少女もいたが、今はいない…しかし、彼はその場で、ガンダムと目を合わせるだけで、“向こう側”を見た。光の渦の先に。つまり、彼もシュウジと同じ…。
『ビット兵器の対策はァ…近づくッ!!』
「なんとかするよ、ガンダム」
ヒートサーベルを左手に、ガトリングを乱射しながら迫り来る青いMS。シュウジの駆るガンダムは背後に手を伸ばし…新たな武装を展開する。
『なっ、なんじゃそりゃ、うおわあッ!!!!!』
鎖に繋がれた、大質量のトゲ付き鉄球…一年戦争時、連邦軍が少数だが配備していたと言われる質量兵器、“キャノンハンマー”である。これも、本来ならばガンダムの武装としても使われる予定であったのかもしれないが、真相は定かではない。
勢いのついた鉄球をヒートサーベルで受け止めようとするも、鉄球の質量の方が上であった。サーベルは弾き飛ばされ、スペースデブリに突き刺さる。武装を一つ失った青いMSが選んだ選択は…そのままの格闘戦。
『ゔお゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ!!!!!』
「なっ、無茶だ…!」
ガトリングは邪魔だと判断したのか再びマウントに戻し、そのまま空いた両手のマニピュレーターでガンダムに取り付く!再び接触回線が繋がり、シュウジからアキトへと通信が繋がる。
『ニュータイプ…ニュータイプゥ……!!!!!』
「なぜ、そんなにも僕ら…ニュータイプを目の敵にする!」
『ニュータイプはいずれ自分たちより劣った現生人類を滅ぼす!!生物はそうやって世代交代をしてきてるんだ、これは必然だ!!!』
青いMSの右腕の装甲が音を立てて変形し…スパイク・シールドと化す。青いMSはそれを、まるで胸ぐらを掴んで殴るかのようにガンダムに叩きつけた!
「ぐうっ…!それはキミ自身の考えなのか!それとも誰かに言われたものなのか!?」
『何を言う!これは俺自身の…あれ?』
「違うだろう!キミは誰かにおかしくされている!」
『な、黙れ!!!!!』
格闘戦を挑んでくる青いMSに、ガンダムも拳を構える。マニピュレーターに負担がかかり、スパイクシールドという保護がある相手よりも不利だが…シュウジは対話のためそれを選んだ。
ついては離れの格闘戦の渦中で、シュウジとアキトは対話する。
『お前らニュータイプをこのイフリートで駆逐する…!それが俺のやるべきこと…!』
「じゃあキミは、ニュータイプをみんな殺した後、自分も死ぬつもりか!」
『…筋の通らんことを言うな!!』
右腕部スパイクシールドの一撃を避け、右腕マニピュレーターで掴み、接触回線の時間を延ばすためホールドする。
「通っているさ!キミと僕は惹かれあっている!!」
『何を戯言を…!!!』
「あそこで見ただろう、“向こう側”を!」
『…………え?』
揉み合いがぴた、と止まる。シュウジはこれを好気と見て、さらにアキトに語りかける。
「あの空間で、ガンダムが言っていた。“また会おう”と!僕たちはきっと、いい友達になれる!」
『俺に、俺に友達なんて…………あれ』
「キミはニュータイプを殺すために産まれたんじゃない!そうだろう!だって…キミもニュータイプだ!」
『…………ヒュ……』
呼吸音と共に、完全にイフリートの動きが止まる。なんとか説得できたかとシュウジは安堵したが…脳裏に電流が走る。急いで操縦桿を握り直すと、イフリートが動く。
『しゃ…しゃべるなぁァァァァァァァァァァア!!』
「くっ、ダメなのか…!」
イフリートは頭部バルカンを乱射し、ガンダムに浴びせる。対したダメージにはならないが…それは、対話の拒絶を意味していた。イフリートに蹴り飛ばされ、ガンダムはコロニーの外壁に着地する。次いでイフリートも、ガンダムの目の前に着地した。
『頭に響くんだよぉ………だから、お前を、殺す!!!!!』
「…それだけはダメだ!!」
イフリートは躊躇なくビームガトリングを構え、構造物を背にしたガンダムへ向ける。ここでは流れ弾がコロニーに穴を開けてしまう。それだけは避けなければならない!シュウジの脳内に“やるしかない”の文字が浮かび、ビットを動かそうとする…が。
『殺してやァ…………え………マ、チュ?』
その言葉と共に、ぴた、とイフリートの動きが止まった。引き鉄にかかった指も止まった。シュウジがそれに違和感を覚えると…感応波がアキトの意識の向く方を捉える。それは、ガンダムのすぐ背後の構造物。
恐る恐る振り向くと、そこには宇宙展望台があった。そして、そこの手すりに掴まってこちらを驚いた表情で見ている、一人の赤い髪の少女の姿も…。
『あ、れ?マチュ、マチュって誰だっけ。いや、俺の友達、いや、俺はニュータイプを殺すために…』
イフリートのガトリングがゆっくりと降ろされる。
『いや、そうだっけ?俺はニュータイプを、でもニュータイプだって、マチュ…マチュを撃つところだった…?』
イフリートの中のアキトは頭を抑え…はた、と気がついた。自分にはマチュという友人がいた。ニュータイプを殺すことは…最初から志してなんかいなかった。イフリートのモノアイの真っ赤な光が、落ち着いた青色に変わっていく。
『え…俺………なに、して………』
「…ガンダム」
シュウジはガンダムを動かし、まるで肩を抱くようにイフリートに触れる。接触回線が繋がる。
「落ち着いた?」
『…………ご、めん』
正気に戻ったのか、アキトの声色は落ち着いていた。
『俺は………どうか、してた。目の前が真っ赤になって、お前はシャアだって思って…お前を、殺しかけて…』
「でも、今はもう大丈夫でしょ?」
『お前は…やっぱり、展望台で光を見た時の』
「僕はシュウジ。………キミの名前は?」
『……アキト・ミチナガ』
改めてアキトの口から名前を聞けたことが嬉しいのか、シュウジの顔には笑みが浮かんでいた。
「さて…話したいこともあるけれど、まずはここを離れよう。もうじき軍警が…ッ」
シュウジがそう呼びかけるのと同時に、コロニーの隔壁が開く。そこから飛び出してきたのは、二機の黒いザク。ザクマシンガンを構え、肩のプレートにはデカデカと“警察”の白文字。軍警のザクだ。まるで投降を促すかのように、こちらに向けたマシンガンの銃口をくいと動かす。
『そこのMS、投降しろ!さもなければ武力行使も辞さない!』
「何か呼びかけてきてるのかな…投降しろって?」
『オープン回線で。大人しくしろ、ってさ。ミノフスキー粒子はまだ撒かれてないみたいだ。そうか…今の主流のオープン回線周波数知らないのか、お前』
「………後で教えて」
『了解…んで、どうする?』
アキトがそう問いかけると、シュウジは落ち着いた声で返答する。慣れたものだ、との雰囲気が感じられた。
「僕はこのまま逃げて、撒いたらどこかに隠れるよ。…キミはそのまま投降して、保護してもr『いいや、やだね』…どういうこと?」
シュウジの言葉を遮ったアキトは、何言ってんだお前、と呟き、言葉を続ける。
『戻ったところで…ツィマッドの義父にまた“弄られる”かもしれない。だから戻るのは悪手。最悪の場合、またお前を殺しにくるかも』
「じゃあ……どうする?」
『ふはっ、愚問だよそりゃ。…回線を繋ごう。周波数を合わせとけよ…!』
「そうしよう。ガンダムもそうした方がいいって」
『お墨付きねぇ。なら安心だ………なっ、と!』
イフリートは突然その場から飛び退き、スラスターを急速にふかす。一瞬にして軍警ザクのうち一機の背後を取り…脚部ミサイルポッドから、ニードルミサイルが射出された!
『お注射しまァす!!!』
『ぐおうわあっ、こ、公務執行妨害…ッ!?』
肩部関節に突き刺さってニードルミサイルに驚愕の声を漏らしながら、ザクマシンガンの銃口をイフリートに向けるが…その瞬間、ニードルミサイルから
『わ、ただのニードルミサイルじゃないんだ…』
「…スタンニードルミサイル、かな」
『なるほど、義父にしちゃ趣味のいい武装だ!』
ニードルミサイルから送り込まれる高圧電流に、ザクの駆動系が焼けつく。正常な動作を奪われた軍警ザクは、もんどりうって宇宙を漂い始めた。
『なあっ…貴様、俺のマヴを!』
『マヴ…あ、そういやそんな用語があるんだっけ?』
「…どういう意味?」
『あー…軍用語で、簡単に言うとコンビってこと』
「…………じゃあ、今から僕たちも“マヴ”かな?」
動揺するもう一機の様子を伺いながら、回線を繋いでやり取りをするシュウジとアキト。シュウジの言葉に、アキトは困ったように笑う。
『会って少ししか経ってないのにか…ま、逃げきるまで一時的には、だな』
「わかった。よろしく、アキト」
『ああ。…話してる間に、相手さん随分連れてきたみたいだ』
「…面倒臭いね」
『ほんとだよ…まあ、こっちはガンダムもいる。なんとでもなるはずだ』
やり取りの間に、軍警ザクの応援が到着する。新たにマヴが3組…目の前にいる動けるザクは、計7機。本来ならば絶望的な人数不利。しかし…ここにいるのは、伝説的な“赤いガンダム”、そして“ツィマッドの最新鋭機”。
『ひとまず、宇宙展望台にマt…人がいた!巻き込まないよう離れるぞ!』
「その後は、そのまま撒いて逃げる?」
『それじゃ途中で別れざるを得ない。俺たちの合流も無理だ…まずは
「…どうやって?」『ハッ、決まってるでしょ…」
アキトのイフリート…イフリート・エクスターンの腕装甲が変形し、両手ともにスパイク・シールドに覆われた。まるでボクサーのファイティングポーズのように腕を構え…モノアイが、再び真っ赤に発光した!
『パイロットはそのまま…機体は死んでもらう!!!』
ーーーーー
「っあァァァァァァア!!クソ!クソ!!何をやっているアキト!そいつを殺せえええ!!!」
コロニー内部、ツィマッド社支部のオフィスにて…一人の男がモニターに向かって怒号を飛ばす。床にはポップコーンが散乱し、男はそれを気にすることなく怒りのまま地団駄を踏む。
モニターに映っているのは、細身の赤いMSとモノアイの青いMSが、追いかけてくる軍警のザクを次々と破壊していく映像。コロニー外宇宙での戦闘をライブカメラで映したもののようだ。男…ツィマッド社社長は頭を掻きむしり、赤いMS…ガンダムと、自分が手塩にかけて育て上げた“生体EXAMユニット”が乗っている青いMS…イフリート・エクスターンを恨みのこもった目で穴が開くほど見つめる。
「ニュータイプ…やはり恐ろしい。EXAMの寵児をこうも簡単に鎮める…それどころか味方につけるなどと!」
机に拳を打ちつけ、苦虫を噛み潰したような表情で男は頭を抱える。
「クソ…クルスト博士…無礼をお許しください…私には無理だったのか…」
男は思いを巡らす。まだ彼が“フラナガン機関”にいた頃…そこで、自分と同じ志を持つとある博士の下で“ニュータイプ根絶”の研究をしていたこと。そして、そのプロジェクトが憎きニュータイプ贔屓の高官、キシリア・ザビの手によって強制停止、クルスト博士は投獄されてしまったこと。…男は、自分たちが常識的に考えて許されるはずのない非人道的な実験をしていたことなど気にも留めていなかった。
「あのシャア贔屓の紫ババアめ…!ニュータイプがそんなに立派なもんかね…!!!!」
男は激怒した。必ず、あの邪智暴虐のキシリア・ザビも除かねばならないと決意した。男には人道がわからぬ。ただ、憎きニュータイプには人一倍敏感であった。
「まだスイッチは手元にある…最もいいタイミングで、また
震えた声で自らに言い聞かせるように、男はつぶやいた。
ーーーーー
心の中の衝動に突き動かされるままに、走る、走る、走る。そうしてたどり着いたのは…出会ったあの日に座っていたベンチ。
「…いない」
一言だけ呟いて、また走り出す。人混みを掻き分け、次の場所へ。次に来たのは、いつかに夜景を眺めた公園の展望台。ここにも彼はいなかった。
「ウソ…嘘、嘘だよね」
次に辿り着いたのは、コロニー内の運河。ここの通りで、彼にポテトの移動屋台で奢ってもらった。ここにも、影も形もない。ただ、まだポテトの屋台の香りだけが漂ってきた。
「………ッ!」
走る、走る、走る。彼との散歩で巡った、コロニーの色々な場所をただひたすら回る。どこかにいるかもしれない、待っているかもしれない。どうしても信じられなくて。彼にもまた会える気がして。
しかし、どこにも彼はいない。ベンチにも、公園にも、川辺にも、彼は何処にもいなかった。じきに息が切れてきて、ローファーの足首に痛みすら感じてきた。それをしくしくと実感していると、なんだか急に実感が出てきた。…彼は、逝ってしまったのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…………あ」
ただどうしても信じたくなくて、彼との記憶を探ると…彼がよく口に出していた場所が思い浮かぶ。私がいないときに来るという、
展望台に上がる途中、無重力区画に入った。そういえばスカートのままだった、と一瞬だけ考えたが、すぐにそれは頭から消えた。そんなことはどうでも良かった。
「ここ、かな」
最上階に着いた。中心のエレベーターを囲うようにぐるりと展望の窓がある。人は私以外に誰も居なかった。…私以外の、誰も。それを確認して…再び実感する。もう、彼は何処にも居ない。
友人を喪うのは初めてのことであった。小学校の友人と疎遠になるとか、そういうことはいくらでもあった。しかし、本当に二度と会えなくなるのは…よりにもよって、初めてだったのである。
「…………アキ…」
星が瞬く宇宙を眺めながら、彼との最後の別れを振り返った。…別に容体が悪化してるだとか、顔色が悪いだとか、何もなかった。でも…いつもどこか距離を感じたのは、これを予見してのことだったのか?
「………ずるいな、アキ」
言って欲しかった。もう会えないのならそう言って欲しかった。そんな的外れな思いがぐるぐる頭を巡る。あの日に提案してくれた道も、もう叶わなくなってしまった。置いていくつもりもなかった、一緒に本物の重力を、海を見に行こうと思っていたのに…置いていったのは向こうのほうだった。
恋慕の情…ではない、かと言って友人に向けるにしては強すぎる感情が心の中にあった。それに初めて気がついて、やるせなさに襲われる。そのままぼうっと宇宙を眺めていると…遠くの方になにかが見える。
「…MS?」
赤いMSと青いMSが、断続的にスラスターの光を発しながら宇宙を舞っていた。ついては離れ、格闘戦と射撃戦を交互に行き来していた。
「戦ってる…?連邦の残党か何かなの…?」
よく見れば、青いMSはモノアイであった。ジオンの機体かと思ったが、見かけたことのないデザインだ。対して、赤いMSはクアッドアイ…しかし、何処かで見覚えがあった。観察していると…二機は揉み合ううちに、だんだんとこちらに近づいてくるではないか!
「え、あ、やばいかも…!」
言葉を発した瞬間、ずん!と赤いMSが展望台の目の前に着地した。それに続いて、赤いMSの向こう側に青いMSも着地し…ガトリングを赤いMSに向けた。巻き込まれて死ぬ、と感じて、咄嗟に手を前に出して意味のない防御体制をとる…が、いつまで経っても衝撃が来ない。恐る恐る手を解くと、青いMSはガトリングを下ろし、赤いMSに肩を抱かれていた。
「な、なんなの…?」
接触回線でなにかやり取りをしているのか、二機は動かない。もしや新しい機体同士の模擬戦か何かだったのか、と勝手に推測し…それがハズレだと瞬時に気がつく。何故ならば…軍警が現れたからである。
軍警の、真っ黒に白文字のザク。それが二機、マヴなのだろう。投降を促すようにマシンガンの銃口をMS二機に向けている。どうやらこいつらは不法にMSを乗り回していたようだ。
不意に、青いMSが翔ぶ。綺麗なバックステップは、スラスターの推進力のお陰で一瞬にして軍警の背後に回り込み…何かを発射し、軍警ザクを無力化せしめた!
「……!!」
赤いMSと青いMS。先程まで戦っていた両者が何かのやり取りをすると…一気に飛び上がり、展望台から見えない場所へ。その後を増援らしい軍警ザクが追いかけていき…また、展望台に静寂が訪れた。
「…………なん、だったの?」
彼の言っていた場所に来たら、偶然にもとんでもないものを見てしまった…。しばらく呆けていると、ポケットに感じた振動。中のスマホを取り出すと、着信には“お母さん”の文字。タップして電話に出ると、心配そうな声色の母が出た。
『もしもし?今何処にいるの?もう門限過ぎてるけれど、何かあった?』
「…ごめん。忘れてた」
『そう…。ハア、あまり心配させないで。すぐに帰ってきなさい』
短いやり取りの後、電話が切れた。目の前で繰り広げられた衝撃を未だ引きずったまま、私は帰路に着いた。
ーーーーー
「…やっぱり、何かあったんじゃないの?」
「………何」
夕食のパンをもさもさ口に突っ込んでいると、お母さんがそう言った。
「だって…いつもより元気がない気がするもの」
「………別に、なにも」
「嘘。わかるわよ、親なんだから」
すでに食べ終わっているお母さんが、頬杖をつきながら私を見据える。
「学校で何かあった?」
「…違う」
「じゃあ塾?」
「…………違う」
お母さんは私のぶっきらぼうな返答を受け止め…口を開いた。
「じゃあ、もしかして…喧嘩したの?アキト君と」
夕食のシチューを掬っていたスプーンを思わず止めてしまう。…スプーンを置いて、口の中にあったものも飲み込む。少しの沈黙の後、口を開いた。
「……………もう、喧嘩もできない」
「え?」
「…………………先日、逝去したって。病院の人が言ってた。お葬式は家族だけでやるって」
食卓に気まずい沈黙が流れた。耐え切れず、さらに言葉を発する。
「信じられなくて…アキと行った色んなところを回ってた。だから、門限も破っちゃった」
「………そう。アキト君が………」
「…具合悪そうとか、なかったのに。頭痛だけで…そんな、死ぬような病気じゃないって、言ってたのに」
再び、心の中に寂しさが襲う。初めての体験に、心の中がいっぱいになる。
「将来、一緒に本物の海を見に行こうって…一緒にって、思ってたのに…!!!」
悔しかった。なんだか目の前の景色がにじんできた。心がぐちゃぐちゃになっていく。
「………おいで」
「え…?」
「マチュ、おいで」
私の様子を見て、お母さんが私を幼い頃のあだ名で呼ぶ。彼も、私をそう呼んだ。…いつからだったっけ。
「…」
お母さんは私に向かって両手を広げていた。…その胸に、飛び込む。久しぶりに、直にお母さんの温もりを感じた。
「………私には、こうする事しか出来ないけれど。それは、いつか必ず受け止めなければいけないことよ。…苦しみも、悲しみも」
「………………ッ………………ぁ……!」
胸に顔を埋めるのはいつ以来だったろうか。母が来ていたシャツに水のシミができていくのを見て、私は泣いているのだ、と気がついた。それに気がついて、堰を切ったように溢れ出す。
「ぅ………ぁ………あ、あ…なんで、なんで…!!」
「マチュ…………」
母はそれだけつぶやいて、頭を撫でてくれた。これも、いつぶりだっただろうか。ただ落ち着くまでそうしてくれた。懐かしくって、暖かい。
次第に落ち着いてきて、残ったご飯を食べてしまって…母に促されて、そのままお風呂に浸かる。少し熱めの湯に浸かって、同時に彼との思い出にも浸って…そのまま、それに蓋をした。
「……………さようなら、アキ」
湯船の湯を掬い、顔にかける。湯煙に曇る天井を仰ぎながら…一縷の寂しさとともに、そう言葉を吐き出した。
ーーーーー
「………あれ?」
『どうかしたかい?』
「あ、いや…なんか、変な感じがして」
『そうか。………こっちに行けばもうすぐだよ』
赤いガンダムのパイロット…シュウジと言うらしい。彼に着いてコロニーの地下を進む。行き先は彼がよく使っているMSの隠し場所らしい。暫くすると、それらしき場所に辿り着く。
「う、わ、なにこれ…」
『…僕が描いたんだ』
そこは、壁や床一面にグラフィティが描かれた異様な部屋。シュウジはその部屋の奥の空間にガンダムを移動させ…膝立ちにしゃがませて、コクピットから降りた。展望台で見た、あの少年だ。
『キミも降りてきて』
「あ、ああ…」
集音器から彼の肉声が届く。言われた通りに、ガンダムの隣に膝立ちで腰を下ろさせ、炉を切り…コクピットを解放する。シートから立ち上がり、昇降用のジップがつけられたロープを降りた。床に降り立つと、シュウジがこちらを心配そうな目で見ている。
「なんだよ」
「…その血、大丈夫?」
「え、血?………あ、うわっ!」
ノーマルスーツのヘルメットを外すと、顎の部分に赤黒い乾きかけの血がべったりついていることに気がついた。もしやと思って目の下を拭うと、スーツにやはり血がついてくる。…どうやら、あの“昂り”が極まると血涙を流すことになるらしい。
「大丈夫、痛みはない。…それにしても、これ本当にお前が?」
「うん。“向こう側”だよ。…キミも見たでしょ?」
「展望台の時にな…なるほど、確かにあの光だ」
そうやり取りをすると、ついてきて、と言わんばかりに彼は歩き出す。格納庫のハシゴを登り…上にある、窓の割れた
「ここで寝泊まりしてる」
「…………ここで?」
そうシュウジが言う場所を見る。…目を擦って、再度見る。そこには、そう、控えめに言って…
「…何処で寝てんだ?」
「あー…敷物が埋まっちゃったから、今はガンダムで」
「じゃあここで寝泊まりしてないじゃんか!!!!」
笑いながら言うシュウジに驚愕する。
「君もここを使っていいよ」
「……………ありがとう」
ニコニコ、と人当たりのいい笑みを浮かべるシュウジに、俺は笑みを返し…
「………だけど、まず片付けが先だ!!!!!!!!」
「え、わ、わー…」
首根っこを引っ掴み、片付けに参加させるのであった…。
「やっと終わった…腹減ってきたな。メシとかあるのか?」
「……………お金、ない」
「なるほど………………あーっ、もーーーっ!!!!こうなったらなんだってやってやる!!!!」
「…ガンダム、彼は何に怒っているんだろう」
【To Be Continued…】
イフリート・エクスターン:ツィマッド社が開発したイフリート、それにEXAMシステムを搭載したイフリート改…それの系譜に当たるMS。しかし、これ本体にEXAMシステムは搭載されておらず、これだけを見るとイフリートⅡとも言えるかもしれない。
今回使用された武装は頭部バルカン、ヒートサーベル、ビームガトリング、脚部スタンニードルミサイル、腕部展開式スパイク・シールド。ガワはイフリートであるが、ガンダム量産計画の中で解析された新型の熱核反応炉を搭載しているため、ビーム兵器、それもガトリングすら容易に搭載できる。
なお、スタンニードルミサイルは射出速度による質量攻撃及び電圧による無力化を想定しているため、誘導機能はついていない。無線の使い切りウミヘビのようなものだ。
EXAMインプラント:人間の頭に埋め込み、“ヒトの身体の動きを操り、最適な入力をさせて機体を動かす”コンセプトは、何処かHADESにも似ている。あちらは機体→パイロット→機体の順に入力するが、EXAMインプラントは機体に拘らないため、操縦法さえインプットすればどんな機体でも最適に動かすことができる。
アキト・ミチナガ:呪縛をシュウジの助けにより振り切った。MSの操縦は元から上手い部類だが、EXAMインプラントの補助により反応速度が格段に上昇する。しかし、それを起動すると血涙を流すことになる。真っ赤に光る目はEXAMの証である。ちなみに外見はFateシリーズのアンデルセンを、中学二年生くらいに成長させたぐらいを想像してもらえればわかりやすい。
シュウジ・イトウ:“向こう側”のグラフィティを描き続ける謎の少年。マヴをはぐらかされ、ちょっと寂しかったりする。作者的には生活能力かけらも無さそうだと解釈したので汚部屋に住んでもらった。
アマテ・ユズリハ:悲しみを受け止め、また元の生活に…偽物のような生活に戻ることにした。
ーーーーー
いかがでした?
よければ至らない点など感想でご報告ください。励みになります。
次回もぼちぼち気が向けば書きます。では、さよなら。