機動戦士Gundam GQuuuuuuX 蒼の炎獄 作:ミトコンドリアン
今回、悩みながら書きました。小ネタもちょっと仕込んであります。気がついたら感想で教えてね!(露骨な感想稼ぎ)
「………マチュ?」
するするとハシゴを降りてくるのは…死んだはずの友人だった。彼は薄いシャツとハーフパンツというリラックスした部屋着で降りてきて、私に驚いたような声色で話しかける。
「なんでこんな所にいるんだよ…シュウジが連れてきたの?」
「うん。…この子も“向こう側”見えたみたい」
「…はえー、変な偶然もあったもんだ」
なんだか気さくに話している。彼は柔らかい笑み…しかし、昔より元気な笑みを浮かべて私に手を振る。
「とりあえず、久しぶりだねマチュ。元気してた?」
「……………………ぉ」
「お?」
私はその笑顔に……………………
「お化けだァァァァァァアァァァァァァア!!!?!?!?!?!?!?!」
「う わ ら ば」
大きく振りかぶって、渾身の一撃を叩き込んだ。
ーーーーー
「………………マチュ、キミはねえ、極端!!」
「…ハイ…スイマセン…」
「威勢がいいのは結構、勇敢なのもね。だけどいきなり殴るこたぁないだろ!?」
「ハイ…ハンセイシテマス…」
腫れた頬をさすりさすり、彼はプンスコと擬音が聞こえてきそうな程に頬を膨らませ、私を正座させた。返す言葉もなく、私はか細い声で返事をするしかなかった。
「フウ…まあ、いいよ。それにしても、俺が死んでる事になってるなんてねえ…義父も回りくどいことをする」
「あ…そうだ、そうだったんだ…なんで生きてるの?」
「大方、戸籍上の俺の存在を死んだ事にして自由のきく私兵にでもしたいんでしょ」
「私兵…?」
「…………義父は鬼子だよ」
彼の方からつらつらと、とんでもないことが語られる。頭に変な機械を埋められてることや、ニュータイプを殺せだなんだと言われたこと…シュウジの助けで洗脳を振り切って逃げ出してきたこと。そんなことを言われてもすぐには理解できず、しばらく咀嚼する。
「ニュータイプって何?」
「俺にもわかんないけど…あの光の渦が見えるヤツなのかな」
「それって“キラキラ”のこと?」
「…………そういや、お前も見たんだっけな。どうやって見た?」
「うん…話せば長くなるけど」
私も事情を説明する。しかし、一言一言話すたび、アキの顔は赤くなったり青くなったり…隣のシュウジは面白そうにそれを見ていた。そして、アキの顔色の変化が赤色で止まり…
「ほんと…なに?なにしてんの!?運び屋を誘い出して弁償させる!?取引先についていく!?軍警をぶちのめした!?それも盗んだMSで!?すごい君は!」
「え、えへへ、それほどでも」
「褒めてるように聞こえる!?」
フー、と、コンクリ張りの床に正座をさせられている私に目線を合わせるようにしゃがみ込むアキ。彼は少し目頭を押さえた後、じろ、とニャアンを一瞥する。ニャアンがそれに小さく悲鳴を上げると、彼はまた私に視線を戻した。
「で…今回もこの運び屋ちゃんについてきたわけ?」
「あ、いや、今日は違くて」
「“クランバトル”に出たいんだって」
私の来た理由をさらりとシュウジが言ってしまった。私はやべ、と小さく声を出してしまう。それを聞いたアキは、また大きなため息をついた。
「舌の根も乾かぬうちにほんと…思ったよりもファンキーだなキミは。病院時代は知らなかったよ、そんな一面。…で、理由は?」
「え、理由?」
「クランバトルに出たい理由だよ。アレは…何度か試合を見たけど、一応遊びじゃあないらしい。死ぬ危険性だってあるんだ、頭部破壊で失格ってルールがあるとはいえMS戦だからね。で…理由は?」
「えと…クラバやらないかって言ってきた人に…行かないと晒されそうだから…」
「………………なるほどねえ。納得できる理由でよかった」
“スマホ弁償代稼ぎ”なんてのは話せない。当たり障りのない理由を慌てて挙げると、彼は笑ってよっこらしょ、と腰を上げる。叱咤が飛んでこなかった事に驚いていると、彼はシュウジの方を向く。
「で、マヴをシュウジに頼みにきたんだな?」
「うん、僕が一緒に行こうと思う。戦え、と、ガンダムが言っている」
シュウジは赤いガンダムの方を一瞥した後、そんなことを言った。しかし、アキは渋い顔をしている。
「…………インストーラー壊れたんだろ?」
「そうだね。でも、一応ハンマーなら使えると思う」
「ハンマーだけか…不安だな」
ごにょごにょと、口を手で押さえてぶつぶつ言いながら考えている彼。そういえば、上で色々話している時にインストーラーが壊れたのなんだの聞いた気がする。…インストーラーがないとまともな武器が使えないんだっけ。一人で納得していると、アキは顔を上げていた。そして、口を開く。
「俺が出るか?」
「「え」」
シュウジと私の声がハモる。二人で顔を見合わせると、アキがまたため息をついた。
「…なんだ二人して。俺とは嫌かよ、マチュ」
「あー、嫌、ではないけど」
「………ガンダムが戦えと」
「いくらガンダムさんのお達しだってなあ…パイロットがシュウジとはいえ、まともな武器の使えないMSを、ペーペーのマチュと行かせるのは不安だ」
「じゃ、じゃあインストーラー!アキのなんでしょ?あの蒼いMSのインストーラーを外してさ、付け替えれば!」
「それはできない」「なんで!?」
反論すると、彼は親指を後手に指し歩き始める。着いてこい、ということだろうか。シュウジと、ついでにニャアンも一緒に着いて行ったのは、蒼いMSの前だった。彼がコクピットから垂れたロープにくっついている機械を握り込むと、それに引っ張られて上のコクピットへ上がっていった。少しして、その機械がシュル、と降りてくる。
「そのジップで上がってきな。…シュウジが一番先で」
またその言葉に従って、シュウジからニャアン、私の順に登る。よっこらせ、とハッチに足をかけると、先に上がった二人は興味深げにコクピット内を覗き込んでいる。なんだろう、と私も覗いてみると…そこには、“操作系の密林”とでも形容すべきだろうか。そんな様子が広がっていた。コクピットの足元にはいち、に…12本ものペダルがあり、横には操縦桿が二対。操作盤にも大量の計器やスイッチがついていて、何が何だかわからない。
「なにこれ…私が乗ったのと全然違う…こわ…」
「こんだけ複雑なのはそうないだろうね」
「操縦桿もガンダムと違う」
「腕部と脚部で別れてるんだよ。脚部は地上戦だと歩行プログラム制御だけど、空間戦でならこれで自由に動かせる」
「……こんなの動かせるの?」
「現にこれで戦えてるよ」
そんなことを口々に言う私達に、アキはコクピットの中をあちこち見て、触りながら答える。ひとしきり確認した後、彼はシートに背中を預けて言った。
「もう一度確認してみたけど…やっぱり、インストーラーの挿入口が
「え…ないことはないんじゃないの!?武器も使えてるんでしょ!?」
「たぶんだが…このMS…イフリート・エクスターンは純戦闘用に義父手ずから開発させたもんだと思う。MSと違って作業用機に転用するビジョンがなかったから、戦闘プログラムを元々内蔵してて抜くことを想定してないか、そもそも武装制限が設けられてないんじゃないかなって」
「なるほど…」
「インストーラーは運び屋ちゃんが持ってるんだろうがね…後払いは無理なんだろ?」
「あ…だ、駄目!!」
彼がシートの肘掛けに頬杖をつきながら発した一言で、ニャアンは手に持っていた紙袋を後ろ手に隠した。…アキめ、余計なことを言ってくれた。これじゃゆすって先にインストーラー貰うのも無理じゃないか。
「じゃ、じゃあシュウジがこれに乗るのは!?」
「ボクはガンダムの方がいい。それに…これは流石に初めてで動かせるような機体じゃない」
「とのことだ。安心しろ、俺も操縦経験豊富、一応は戦闘経験もあり、コイツも高性能。それに…俺と君とは友人だろ?なあマチュ」
得意げな笑みを浮かべ、彼は右手をこちらに差し出した。握手、だろうか。これを握り返せば、クランバトルのマヴが手に入る。そうだ、彼もあの時シュウジと戦っていた、実力は申し分ないだろう。だから、このまま申し出を受け入れてしまえば…
しかし。私の脳内にこびりついて離れない。あの光の渦の中で感じた、あの赤いガンダムとの繋がりを。あの不思議で、刺激的な感覚………“キラキラ”を、忘れることができない。アレは、アキトには見せられない。シュウジだから見せてくれた。そんな確信があった。だから…
その手に右手を重ね、下に下げさせる。
「……………………そうかい」
何でもないように、彼は笑いながら言った。
「いいのいいの、俺は別にいいから気にしないで。信頼できるヤツのがいいよね」
カラカラ笑いながらシートから降りて、コクピットから出てくる。彼はにこやかな表情のままシュウジの背中をポンポンと叩く。
「マチュを頼んだぞ?怪我とかさせたら許さんから」
「…………うん。ボクがマチュを守るよ」
「その意気だ。マチュも頑張れよ。絶対勝つんだぞ」
うっすらとした笑みのまま、彼は機械を使って下に降り…ようとして、何かに気がついて動作を止める。機械から手を離し、まるで執事がそうするようにうやうやしく手で機械を指した。
「今度はレディーファーストで、おふたりさん先に降りるといい。シュウジと俺は後な」
「…さっきも思ったけれど、なんで順番まで指図してくるの?」
「運び屋ちゃん…自分の格好、よく見てみなさい」
ニャアンが疑問を呈すると、彼はそう促してきた。その言葉に、ニャアンも私も自分の衣服を見て…はた、と気がついた。
「
「………あり、がと」
「いいんだよ。さ、先に降りねい。後でバンソーコーとかもあげよう」
ほっぺのアザが痛々しいから、と、彼はうっすら笑いながらそう言った。私はその奥に……何か、
ーーーーー
『………大丈夫?』
流し台に手をついて、洗った顔を拭かぬまま項垂れる。じゃばじゃばと蛇口から水が流れ出て、排水溝にごぼごぼと吸い込まれていくのを、じっと見つめていた。
「見ればわかるだろ?」
『…男のヒステリーはみっともない』
「ヒステリーじゃないよ。暴れても叫んでもないし。だけど…まあ、ままならないものだね、って、いじけてる」
『それはマヴを断られたから?』
「まあね…一時の鮮烈な出会いというものは、何年かの間培った友情を越える。そんな新しい学びを得たよ」
また手で流水を掬い、すでに十分に冷えている顔にかけた。コロニーの擬似重力に従って、一部はそのまま流しに、一部は首を伝ってシャツに吸い込まれていく。その感覚がはっきりと感じられる。
「でも、それ以上に心配なんだ。シュウジが何とかしてくれそうではあるが…マチュは素人だぞ。彼女が軍警をぶちのめしたことがあるとしても、やはり心配が勝つ」
『でも、彼女もニュータイプなんでしょう?シュウジだってそうだもの』
「ニュータイプってのはそんなにすごいもの?だったら俺もニュータイプに生まれたかったぜ」
『…貴方もそのはず。じゃなかったら、自力で私を
「じゃあ、なぜ君は俺の体を操って俺の首を絞め殺そうとしない。ニュータイプの排除とやらがEXAMの本懐なんだろ?」
『……それは』
「語るに落ちたな。俺はニュータイプじゃないよ。誰が何と言おうとね」
ぷるぷる、と顔を左右に振って…流しに頭を突っ込んだ。そのまま流水で頭を濡らす。ざばざばとすすいで勢いよく顔を上げる。鏡にはひどく暗い顔をした自分と、背後で心配そうに俺を見つめる“妖精さん”の姿。
「恐ろしいね、ニュータイプは。今まで培った友情も、ものの見事に乗り越えてっちゃう。…それか、俺の勘違いだったのかねえ。友達だと思ってたのはさ」
『……私がいるから』
「慰めてくれるのか。AIなのに気の利いた子だね」
妖精さんに笑いかけると、彼女はそのまま近づいてくる。歩いて、俺の隣まで。
『私は…貴方との付き合いは、あの子
「…おいおい、会話できるようになってたかが二週間くらいだろ?」
『私にとっては
「ハハ、AIだな、やっぱ冗談がへ………た…………?」
彼女はそう言うと、俺の頭を両掌で挟むようにして掴む。その温もりを錯覚して間も無く、脳内に電流が走ったような気分に襲われた。
「ゔ…な、何を…!?」
『いいの。その感情は吐き出してもいいの』
「な、何してるんだ!やめ…ぁ、あ゛…!!」
『必要なことよ。彼女が心配なら…彼女の隣が空いていないなら、あなたが立ちはだかればいいの』
「俺は…そうか、俺が…………!!」
瞬間、思考がクリアになる。そこを埋め尽くすのは…身を焦がすような激情の炎。
『さあ、時には吐き出すことも重要。暴れてきて……
俺の網膜、脳内に………赤い光が焼きついて、無機質な音声が響き渡った。
ーーーーー
「おい!たかがガキ一人に何、ギャッ!!」
「なぁっ、クソ、ガキのくせ、おわぁあっ!!!」
非常ベルの鳴るどこかのアジトをずんずん進んでいく。曲がり角から駆けてくる大人二人を、拾った銃で
そのままずんずん進んでいく。たまに人が現れては、銃を構えてきたり殴りかかってきたり。しかし、俺の目にはその動作はとてもゆっくりに見えて…
「こ、こいつ化け物、ぁあ゛ーっ!!!!」
相手よりも早く引き金を引く。弾丸をもって掌から拳銃を吹き飛ばし、滑るように銃口をずらして脚を撃ち抜く。弾が切れたので、吹き飛ばした拳銃を使わせてもらおうと拾い上げる。その後、すぐにまた別の人間がやってきた。
「こ、このガキっ、よくもアタシの…キャッ!」
女性だった。しかし性別に関係はないので、弾切れをした方の拳銃を顔面に投げつける。がつ、と強かに打ち付け顔を覆う女性に、脚部に二発。適当に地面に転がした。通りすがりに顎を蹴り飛ばし、意識を刈り取った。
しばらくそんなふうに進んで…目的の部屋の前に辿り着く。その頑丈そうな扉を蹴り開け、中へ遠慮なくお邪魔する。少し豪華な内装の部屋の中には、屈強な男がひとり。そいつは不適な笑みを浮かべ、口を開く。
「ほう…カチコミたあどんだけ根性ある野郎かと思ったが…こんなチビスケだったか。気に入ったぜ。
男はぐる、と肩を回した後、握り拳を作って構える。
「だが…俺は元
男は大きく、しかし無駄のない動きで踏み込み、こちらに殴りかかってくる。俺はそれを…
「な、ア…その身体の何処にそんな、う あ あ ぁ ぁ」
驚く男の腕を引き、そのまま鳩尾に横蹴りを入れる。ひるんだ隙に突き飛ばし、拳銃を構え…二発。
「ぐっ!……へへ…やべえな…なんて
なにがおもしろいのか、痛みに歯を食いしばりながら笑う男。ずりずりと壁にもたれかかる男に、俺は口を開いた。
「お前がここのリーダーだな?…元ジオン軍人か。ほどほどに強いチームなだけある」
「ああそうさ…メンバーにはいくらか元ジオンがいるし、元は俺もア・バオア・クーに駐在してた。エースってほどじゃあないが、ザクも乗りこなしてたぜ」
「そんなことはどうでもいい。死にたくなかったら俺の願いを聞け」
「…いいぜ。だが、命が惜しいからじゃあねえ。その目…気に入ったぜ。真っ赤に光る殺意の瞳、ってか。なかなかポエットだろう?」
笑いながら軽口を叩く男…クランバトルの1チームのボスに、俺は銃口を外さず言う。
「どうしても戦いたい奴がいるんだ。今夜のクランバトル…一人、代わりに俺を出せ」
「…ほう、おもしれえ」
そう呟いた男に眉を顰めていると、部屋にチームメンバーの男が入ってくる。彼は慌てて銃を構えて、俺に向けて引き金を…
「撃つんじゃねえ!……いいか、撃つな。気に入ったんだ、コイツ」
「な、でもリーダー!」
「いいから撃つな!でねえと、先にお前の脚がエメンタール・チーズにされる…」
「………了解した、リーダー」
「だとよ。俺らももう争う気はねえ…
ゆっくりと銃口を下げる男を確認して、俺も引き金から指を外す。ズボンのベルトに銃を挟んで、しっかりとリーダーの方を見据える。
「で…バトルに出たいんだってな兄ちゃん。気合の入った宣言だ。MSはウチのを貸すか?」
「いや、自前のがある。払い下げのザクなんかより高性能だ」
「…………ほう。どんなもんだ、そりゃ」
片眉を上げて聴いてきたリーダーの男に、俺は少し考え…部屋にあったテレビのリモコンを手に取り、徐につける。少しザッピングして、ニュース番組をつけると…ほら、あった。
『赤いMSがまたイズマ・コロニーに出没しました。先日、コロニー外で所属不明の蒼いMSと戦闘行動を行った後、軍警察に対し公務執行妨害を働いたとして………」
「あの映像の蒼いのだ。イフリート・エクスターンという」
「ほう…こないだのニュースの、お前のMSか!」
「だっ、誰が信じるってんだ、こんなハッタリ!!」
もう一人の男が大声で怒鳴る。
「第一なあ!お前みたいなガキにMSが使えるわけねえ!」
「落ち着けよグレッグ。丁度よかったじゃねえか…確か今回のお前のマヴ、
「……それはあいつの不摂生のせいだ!だからってこんなガキにマヴの代わりなんて、できるもんか!」
「それは実践で証明する。開始時刻と場所を教えてくれさえすればいい」
「ガキ、言わせておきゃあ!!」
怒鳴る男…グレッグから
「しゃあっ!………え?」
「…………」
ばし、と乾いた音が部屋に響いた。グレッグの掌は、俺の頬に張り付いたまま動かない。俺の身体もびくともしない。…やはり、
「…確かに、根性のある」
「だろ〜っ?グレッグ、軍にいた頃のお前さんとは大違いだ」
「なっ、昔の話はやめてください!だいいち
「やめろやめろと言うくせに…敬語の癖は取れねえのな、なあグレッグ
「……………すまん、ボス」
「いいのよ。その代わり、時間と場所を教えてやれ」
グレッグは俺の頬から手を下ろし、部屋の机を使ってメモに殴り書く。ページをちぎり、俺にずい、と差し出した。
「必ず来いよ。さもなきゃあ、必ず探し出してチャカで“修正”してやる」
「話が長い。さっさと渡せよ」
「生意気なガキだ」
メモを受け取ると、鼻を鳴らしたグレッグはすぐに壁にかけてあった救急箱を手に取り、壁にもたれる男の方へ。手当てをするのだろう。……ふと、俺は今まで撃った奴らのことを思い出し…口を開く。
「なあ、医療品はどこだ」
「なに?まだおねだりかよガキ!」
「ガキじゃない。18、もうすぐ19だ。アキトって名前もある」
「ほー、そうか。じゃあアキトさんよ、何をするってんだ!」
眉を顰めるグレッグに、俺は言った。
「申し訳ないことをしたから。…メンバーの手当て、俺も手伝うよ」
「……………へっ、無茶苦茶なガキだな、お前」
乾いた笑いを上げ、グレッグは言った。
「そこ出て右、左と曲がって赤いドアだ。まだ出るなよ!リーダーの手当てが終わったら着いていく」
ーーーーー
身体から離れ、
最初の何ヶ月かは、冷たい所にいた。暗くて動けない。周りも見えない。だけど偶に景色が見えた。…それも暗くて冷たくて、怖い場所の。
『友軍は全滅か…フ、ありがたい。これで姿を隠す必要も無くなった』
毎度毎度、怖い大人の声が聞こえた。怖くて泣いた。叫んで暴れた。そしたらその景色はしばらく消えた。でも、暫くしたら次々とやってくる。
『全ての者に裁きを…それがEXAMの力だ!』
死んでいく。いっぱい人が死んでいく。怖かった。泣きたかった。でも、泣いているはずなのに涙が出なかった。もっと綺麗な景色が見たい、元に戻りたい…ずっとそう考えていた。
暫くしたら怖い景色は見えなくなった。その時一番最後に見たのは、あの怖い大人が歯を噛み締めて、私の
『これで目覚めるはずだ…』
そんな言葉を、今もなおはっきりと思い出せる。目覚めることなど、なかった。
次に見えた景色は…病院だった。本当に目が覚めたのかと思ったけれど、体が勝手に動く。いや…これは、私の体ではなかった。
『アキトくん、具合はどう?』
『…………ずっと頭痛がします』
『そう…お注射を出しておくわ。痛みがましになるはずよ』
女医に優しい声をかけられても、この身体の持ち主…アキトは不機嫌そうな声色だ。病院のベッドに戻っても、ずっと頭痛に悩まされているから。
でも、私にとっては天国だった。前と比べれば、怖い大人も暗い景色もない。散歩できれいな景色だって見た。それに、ベッドの上でも楽しみがあった。
『………』
黙って彼が読み進める、色んな本。小説ならライトノベルから純文学まで、図鑑なら草花からMSまで。途中で頭痛に耐えかねて止めることもあったけれど…私にはそれでも、貴重な楽しみだった。
その頃だったろうか。私を頭の中に住まわす、この少年にどこかシンパシーを感じたのだ。彼も…私がいるせいとはいえ、自由に動けず苦しんでいた。そこに、奇妙な共感をした。次第に彼に友情を…いや、それ以上の感情を、一方的に抱くようになっていた。
『………ふう、疲れた』
『凄いですねアキトくん。…社長の息子さんなだけある』
『義息ですよ。引き取られたってだけ』
『それでもすごい。社内ハイスコアですよ?』
彼はたまに義父の会社の手伝いをした。シミュレータで、偶に実機に乗ってMSのテスト。宇宙に出ることもあって…怖くない、綺麗な宇宙を久しぶりに見た。
『このヅダって機体が強いんですよ、速くて。……これ、現物ありません?乗ってみたい』
『あー…一機だけあるにはあります。ですが今はやめた方がいい。整備が行き届いてないですし、まだ
『はい、お疲れ様ですオリヴァーさん』
大人の大声も、前と違ってなんだかおかしい。楽しかった。前なんかよりずっと楽しかった。そんな日常が4年ほど続いて…
『アマテさんは大変だね。勉強とか相談乗るよ?』
『あー…じゃあ、よろしくお願いしま、す?』
『敬語に違和感あるならタメ語でいいよ』
『……わかった。アキト、勉強おせーて』
『ふふ、急に気安い…いいとも!』
アマテ・ユズリハ。歳下の少女。親近感は…湧かなかった。それどころか、軽い嫉妬をしていたのだ。いつも
『アキ…単純だけどいい響きの渾名』
『地球には秋、って季節があるらしい。季節ってのは、何ヶ月かペースで気候が変わることで…秋は一番過ごしやすい、って父さんは言ってた』
『へえ…私も、アキといると過ごしやすいよ』
『俺もだよ、マチュ!』
渾名で互いを呼ぶようになったのが面白くなかった。…苛立ってすらいた。だから…………この時を待っていた。
私はこの六年で、このEXAMの
私と彼が重なり合って、生身ですら驚異的な戦闘能力を得る。都合が良かった。実に、実に。だから……今回も利用しようではないか。
『……私のマヴ…いい響き…………』
ーーーーー
『コロニー公舎のログに残らない五秒間だけエアロックを開ける!その隙に外へ出ろ!』
“ポメラニアンズ”のメンバーのアナウンスに従って、宇宙へ。ふわりとした浮遊感に気分が高揚する。
開始位置に着くと、隣にシュウジ…“赤いガンダム”が飛んできた。それに安心を覚え…アキの顔を思い出す。
『………そうかい』
あんな寂しそうな顔をさせるつもりではなかった。しかし、あの時は…心の整理がついていなかったのだ。いきなり死んだ友人が生きてました、なんて突きつけられて、その余韻の中の提案だった。…あの時彼の手を取っていれば、という後悔もある。
「…アキ」
戻ったら謝ろう。そのために、この試合に勝とう。そう整理をつけ前を向くと、何かの信号弾が打ち上がる。…開始だ、ってことだろう。
「敵、どこ?どこにいるの?!」
ジークアクスを動かして辺りを見回す。敵影は見えない。いったい何処に…………っ!!?!?!
「なんかくるっ、キャッ!!!!!!」
目の前にピキーン、と何かが迸るのを感じて思わず機体をよじる。すると、機体があった所に
「…………あの……蒼いの…!!」
『ヤバイ!ヤバイ!』
足下の白いロボットが鳴く。そんなことはわかっている。あれは……あれは、アキだ!!
ーーーーー
「おいおいおい…あの機体、此間のニュースの!!」
「赤いのの仲間じゃなかったのか!?」
「どうやらお相手さんも…とんでもないの、引っ張ってきたようだね」
ーーーーー
『アキト…なんでキミがここに?』
「……シュウジか。ニュータイプは便利だな、無線なしでテレパシーってか」
ペダルをヒールandトウで踏み締め、スラスターを吹かす。凄まじいGももう平気だ。内臓ひとつ潰れない。
『キミはマチュの友達、ならなんで立ちはだかる』
「心配なのさ。友達とはいえ歳下、お節介くらい焼きたくなる!」
『お節介…?』
操縦桿を引いて後退。制動もいらない、このまま右に180°ターン。
「なにも殺そうってんじゃない。だが…負かすのはいいかもな。マチュのことを思うなら、クランバトルなんて諦めてもらう!」
『………させない。ガンダムもそう言っている』
「ハア…………やってみろよ、シュウジ!!!」
急加速。メーターが一気に振り切れ、操縦桿がぐっと重くなる。それを振り切って、ガンダムに向かって突貫する…!!!
「アキト・ミチナガ…イフリートEX、行くぞ!!!!」
【To Be Continued…】
アキト:マチュが心配なあまり暴走中。相当ショックだったのもある。
マチュ:友人が死んだと思ったら生きてた、なんか敵になって出てきた。
“妖精さん”:六年間の歳月で少しおかしくなってしまった。
ツィマッド社員たち:退役してそのまま降ってきた人間がまあまあいる。
イフリート・エクスターン:略称イフリートEX。エクスターンだし、EXAM搭載機だから。
ーーーーー
いかがでしたか?
よければ感想よろしくお願いします。飛んで喜びますし、できるだけ返信させていただいてます。
…感想ってうれしいんですよ。