機動戦士Gundam GQuuuuuuX 蒼の炎獄 作:ミトコンドリアン
お気に入り771件、評価感想もありがとうございます。
さて、今回苦手な戦闘シーンです。たぶん駄文です。
まあでもね…飽きないようにドラマパート()はちゃんと書いたんでね。
では、どうぞ。
「…ねえ、シュウジ」
『なあに?』
「伝えなきゃいけないことがあって…」
宇宙空間を泳ぎながら、ジークアクスをガンダムに寄せ、触れるイメージをする。コクピットが無線で繋がって、シュウジの柔らかい声がした。
「実はこないだ、アキと会ったの」
『……ああ、彼と。元気だった?』
「うん。でも…」
彼はどこか寂しそうな声で返事をした。そっか…一応、アキと過ごした時間は結構あったんだっけ。シュウジとのキラキラを体験したのは私だけじゃないんだっけ。…そう考えたらなんだか苦しい。でも、言わなきゃいけない。
「あいつ…すごく怒ってた。シュウジのこと…殺すって」
『そっか』
「そっかって…軽っ」
きっと驚くだろうな、と思っていたので肩透かしを喰らう。シュウジは少しの間の後喋り出した。これは…“ガンダムが言っている”の前振りだ。
『道が交わるならば、やるしかない…と、ガンダムが言っている』
「そっか。…死なないでね。私もサポートする」
『そのつもりだよ、マチュ。今のマチュとジークアクス、とても心強い』
「…そ、そお?えへへ…」
シュウジにそんなことを言われるとやっぱり嬉しくなって…絶対に彼を護らないと、アキの好きにはさせない、と決意が固まる。そのために、
『なぁに言ってんだあ!相手方が回収してねんだ、有り難く貰ったろうぜ!』
あのたらこ唇がこんなふうに言っていたのを思い出して…そうだな、と、それ以上考えるのをやめた。
「じゃあ…いこう、ジークアクス!」
決意を固め、スラスターをふかし…ジークアクスの腕に
ーーーーー
「さて…そろそろですね」
『ええ。フフ…久しぶりね、このプレッシャー…!』
「同感です。さて…今回の敵が持ってるのは近接武装だけですから、引き撃ちも手ですけど。どうします?」
『愚問ね。スティグマを使うからには間合いに入らなきゃ』
「ですよね。…勝ちましょう」
スプレーガンを片手に構えたゲルググと共に宇宙を泳ぐ。この試合…シュウジのガンダムは本気で墜としにかかるが、マチュの機体は別だ。できるだけマチュを傷つけず無力化、撃沈させるなどもってのほかだ。ダルマにするくらいが丁度いい…が、しかし、ビームサーベルなんかを使うと不安が残る。
「熱が伝わると普通に誘爆しかねないからなあ…アレをジオン系の機体だと推察するなら、だけど」
ミノフスキー粒子の励起エネルギーは、普通に
「…お」
『時間ね。さあ、行くわよ!』
宇宙空間に信号弾が上がる。クランバトル開始の合図だ。それに気付くや否や、シイコさんが俺にケーブルをくっつけた。
「ええ。しっかり掴まっててくださいね…!」
彼女に応え、一気にスラスターを吹かす。シイコさんとのMAVで編み出した戦闘法…それは、文字通り俺を
位置バレも気にせず、高速でのアンブッシュ。相手が射撃兵装を装備していないことを利用した戦法。これが今回のやり方だった。
しかし。
「…あれ?」
視認できたジークアクスは、何やら見慣れない…いや、見慣れた黒い筒を持っている。…何本かの筒が集まったような砲身にグリップ…あれ…すごい見覚えある…。
「あっ」
『どうしたのアキト君?…あら?』
シイコさんも気づいたようだ。俺は思い出した。そういえば…初戦でビームガトリングを取り落としたままだったのを。ジークアクスはそれを構え、砲身を空転させ…まずい!!!!!
「ブレイク!ブレイクです!」
『了解っ!』
急いで回転をつけ、ワイヤーを切り離して散開する。さっきまでシイコさんのいた場所に緑色の閃光が何本も走る。おい、おいおいおい…!
「ビームガトリングパクられたぁ…!!」
自らのあり得ない失態に、嘆く声を思わず漏らしてしまったのだった。
ーーーーー
「…ッ!ビーム兵器を持ってるなんて!」
事前情報と違う武装に一瞬だけ戸惑うも、すぐに思考を切り替える。私が狙うべきは…赤い方!
「さあ、あの時の続きにしましょう!」
スラスターをふかし、一直線に飛んでいき…曲がる。スティグマを利用した円運動。死角に回り込むような機動。見敵必殺の戦法、それがスティグマ戦術…マグネットコーティングとやらのおかげで、さらに滑らかに素早くなった!
「お前はあの頃から進歩したのか、赤いガンダム!!」
そう吠え、背後からスプレーガンを撃つ。携行が容易な小型銃砲とはいえビーム兵器、当たればひとたまりも無い熱線…しかし、紙一重で避けられる。
「チッ…アキト君と同じやり方だ!」
この避け方には見覚えがある。ノールックで、背後にも目がついてるみたいなグレイズ回避は…NTの空間把握を利用したやり方。本当に虫唾が走る…!
「なら、詰みに持っていくまでよ!」
スプレーガンを一本残し、そのまま近接戦へと移行する。ガンダムが避けると同時にこちらを視認するが、そこに2本目のスプレーガンを放つ。これを避ければ残してきたスプレーガンの射撃で直撃コースだったが…相手は鉄球を盾にした!
「武装を捨てるのにも忌避感がない…でも、これで手段が減ったわね」
ほくそ笑む。相手の近接武装はもうビームサーベルだけだ。こちらもサーベルを抜いて突貫し、相手と撃ち合う。ガンダムがコクピットのモニターに大写しになった。
「ああ…待っていたわ、この時を!!」
歓喜の震えと共にガンダムを蹴り飛ばし…スティグマの本領を見せてやろうと、撃ち合った時に付けておいたワイヤーを巻き取り…
「何…ッ!?」
その直感に従ってワイヤーの固定を外し、ガンダムから離れた。スティグマ円運動をする予定だった軌跡に緑の閃光が断続的に走る。…これを察知できたのは、アキト君との関わりで
「アキト君…彼女を抑えきれていないの!?」
あのツノのついたガンダムの相方は、こちらの決闘に介入するように断続的にビームを撃ってくる。断続的で済んでいるのは、アキト君が介入しているからだろうが…イマイチ抑えきれていない。完封ができていない!
「アキト君、何を躊躇しているの!」
反射でそんなことを口に出しながら、心の中では分かっていた。伝わってくるのだ、アキト君の心情が。「友人を傷つけたくない」という心の声が。だが…甘い、としか言わざるを得ない。
「そんなのでは…死ぬわよ…!!」
戦争を知らない私のMAVを他所に、ガンダムとの死合いに再突入する。望んだものを、全てこの手に握るため。
ーーーーー
「邪魔をするなあっ!!」
腹から声を出してレバーを操作し、右腕の側面でマチュの機体を打ち付ける。その作用でマチュは宙を舞うが…ガトリングを構えてシイコさんの方に撃った。クソ、またか!
「傷つけたくないのに…なぜ分かってくれない!!」
先ほどから、マチュの射撃でシイコさんの
『アキの好きにはさせない!』
「ア゛ァ゛!?やってみろよォ!!!!!!!!」
マチュの声が伝わってくる。汚い声が出るのも構わず、こちらに向き直ったジークアクスの射撃を回避し…腕を振り翳す!
『ちょ、伸び、うわあっ!!』
「いいなこの腕、気に入った!!」
明らかに間合いの外にあった腕が
「ビームガトリングをパクられてもね…その機体じゃあまり奮わないだろ」
スラスターを吹かして体制を立て直すマチュを見据えて呟く。よく考えても見ろ。このMSは推力もジェネレータ出力もバケモノ級…だから使えるのがあのビームガトリングだ。マチュの機体の出力がどんなものかはわからんが、少なくとも俺のイフリートのように連続使用はできまい!
「出し惜しみは無しだ、痛いかもだけど我慢してね!」
『きゃっ、何…あ゛ァ゛あ゛ア゛ァ゛!!!』
脚部ミサイルポッドから、残ったスタンニードルミサイルをありったけ斉射。3本が避けられ、2本は盾で防がれるが…一本が土手っ腹に命中。電撃が走り、電撃の痛みに叫ぶマチュに心苦しくなりながら…マチュの機体に
「無理言って一本だけつけてもらった甲斐がある…!」
痺れで動けないだろうマチュの機体を圧倒的推力で振り回す。マチュにかかるGは凄まじいものだろう。ハンマー投げの勢いをつけるように振り回し続け…グロッキーになったころを見計らって、接続を切り離す!
「その辺で休んでるがいいさ…!!」
『うわぁあぁああっ!!』
加速のついた状態で投げ出され、マチュの機体がコロニーの外壁に叩きつけられる。壁にその形の凹みができた。…スティグマのこんな利用方も、教えてくれたのはシイコさんだ。
『スティグマは制動だけじゃなくて…相手の機体を振り回すのにも使えるの。アキト君の機体は推力が高いから、やりやすいと思うわ』
シイコさんのスティグマ戦法の、恐るべき隠されたもう一つの利点…それは、相手のMAV同士を引き剥がせること。二人の仲を引き裂き、各個撃破する…
「じゃあマチュ…そこで見てなよ」
少しの間だけしか時間は稼げないだろう。だが…二人がかりでシュウジを潰すには十分な時間だ。今行くぞシイコさん…!!
ーーーーー
「これ…本当に殺しに行ってるじゃあないですか!」
ソドンはブリッジ。エグザベの驚愕の瞳に映るのは、ソドン艦橋のモニター映像。ソドン隊が捜索している赤いガンダムが、二機のMSの猛攻に必死に耐えている様子だった。
「ゲルググを持ち出してまでやる事がこれ…どうやら赤いガンダムに相当ご執心の様子」
「黙って見ていていいんですか⁉︎このままではガンダムが破壊されるかも!」
「………」
何を黙っているんだこの人は!と、エグザベ少尉は心の中で叫ぶ。シャリアの凪いだ眼は、死合いに踊る三機が静かに反射していて…しっかりと、敵になるやもしれないMSを分析していた。
「どうやら…あのイフリート、ゲルググのものと同じ技術を施しましたね。動きが以前よりも良い」
「…ええっ⁉︎」
「え、そんなにおかしい事なんですか?」
エグザベの様子に、コモリが疑問を呈した。エグザベはそれを受けて少し俯いた後、技術面は余り明るくない彼女向けの説明を考える。
「ゲルググの駆動系って、フィールドモーター駆動…ガンダムのと同じ連邦系のを使ってるんだ」
「ガンダムのマスプロモデルですからね。しかし、あの蒼いイフリートをイフリートと考えるなら、同じ技術が適用出来るはずはない」
シャリアも会話に入り、エグザベの言いたいことの一部を代弁する。エグザベは更に続く。
「イフリートはジオンの機体だ。駆動系は流体パルス駆動。ゲルググのとは原理が違う!」
「じゃあ、あの蒼いのもガンダムの系譜ってことですか」
「それは早計な気もしますが…ああ、あの頭を見ればそう思ってしまうのもわかりますね」
頭が連邦系のバイザーの付いた頭に挿げ替えられたイフリート。バイザーの奥のクアッドアイが紅く、鮮やかな血のように光り輝いている。シャリアはそれを視界に入れる度、謎の耳鳴りに苛まれていた。しかし、そんな様子はおくびにも出さない。
「01ガンダム。大佐のキルスコアの3機目…まさか残骸が回収されていたとは」
「あれ…そういえば、EXAMの基部って頭部じゃなかったんですか?」
「そうですね。しかし、あの機体には変わらずEXAMが載っている…スペアがあったのか、それか機体の別の場所に積まれていたか」
顎に手を当てたシャリアがふむ、と小さく言い、モニターから目を外す。エグザベはそんな彼に進言する。
「後者だと思います。EXAMのオリジナルコアは全4基…一つはニムバス現少佐の乗っていたイフリート改のもの、破壊済みであるため現存数は3基。うち1基は
「………あぁ、そういえばラシット艦長以外には伝達されてないんですね」
なにか考えるような間が空いた後、シャリアはふと気がついたようにそう口に出した。怪訝な顔をしたエグザベに、シャリアは向き直り、ちょい、と手招きをした。エグザベが近くに寄ると、シャリアはそっとエグザベに耳打ちをし…
「……え?」
エグザベの表情が当惑に染まった。
ーーーーー
「逃っ、げっ、てんじゃねえよおおおっ…!!!」
紅白の機体と蒼の機体が赤いガンダムを追いかける。赤いガンダムはビームサーベルを二刀構え、二機の猛攻をなんとか耐え凌いでいた。イフリートの右腕からアイアンネイルが飛び出し、ガンダムのコクピットを貫かんと突き出されるが、ガンダムはサーベルで迎え打つ。サーベルで一刀の下に斬られることはなく、アイアンネイルとサーベルが打ち合う。
「対ビームコーティング済みとて…長くは競り合えないか!」
『…ッ!!』
「おいこら、逃げ…クソっ!!」
アキトの脳内には、マチュやシュウジの考えが伝わるようになっていた。NT能力が成長しているのだろうか。しかし、それをもってしても、あまり長くはシュウジを留めていられない。
「さっさと死んでくれよ…!!」
『…何故、君はそんなに僕を目の敵にする!』
「マチュをこんなもんに関わらせるからだ!」
右腕からメガ粒子の光線を断続的に放つ。しかし、何処に撃たれるかわかっているかのようにぬるぬるとビームの間を抜けるガンダムの動きは気持ちが悪い。アキトはアキトで、高度な脳内演算によって正確な偏差射撃をしているのだが、それすらも超える動きだ。それに…アッガイの腕にはマグネットコーティングを施さない。だから反応が遅れているのも原因か。
闘いの最中、アキトとシュウジは会話すらできていた。NTの感応が進み、アキト側からも話せるようになった。
『僕は…何もしていない。彼女は僕と一緒に戦ってくれるけど、それは彼女の意志だ。僕が唆したわけじゃあない』
「だが、そうさせる原因を作ったのは誰だ!!」
『…向こう側を見れる人間は、見たいから見れたわけじゃないんだよ、アキト。見せたいから見せられる訳でもない』
「なんだと…!?」
アキトはその言葉に憤り…はた、と気がつく。
『君だってこの人に向こう側を見せた』
「そうか…なるほど、納得がいった!」
『そうなんだ。なら、もうこんな事はやめよう』
「いいや、もっとタチが悪いなって実感したのさ!」
自分がシイコにしたように、最初はシュウジもマチュに“見せる”目的はなかったんだろう。だから…アキトはさらに憤る。
「お前は一人の人生をめちゃくちゃにしてる自覚はあるか!!」
『その選択をするのは彼女だよ』
「そう言うと思ったぜ。お前はマチュの人生の責任を取らん。手前のためだけにお前は動いている!!」
『……僕の願いは一つだけ』
「その願いを叶えるのに、何もマチュと行く必要はないと言っている!!」
左腕のスパイクシールドと右腕のアイアンネイルで激しい格闘戦を繰り広げる二機。
「未来あるあの子よりも…もう未来のない俺を選べよ!あの子をこれ以上、こんなことに関わらせるな!!」
『…それはできない』
「何が故だ!!」
『君は歪だ。相応しくない………と、ガンダムが言っている』
「そうかい……じゃあ、お願いしますシイコさん!!」
アイアンネイルを収納し競り合いを止めると、持て余した勢いで一瞬動きががくつくガンダム。そこに急襲するのは、様子を窺っていたシイコのゲルググ!
『そう、貴方とアキト君はやり取りができているのね…はっきり言って妬けてくる!』
『くっ…!!!』
スティグマを利用した変則的な機動にアキトの妨害が入ることで、シュウジですら対応が難しくなってきた。ゲルググのスプレーガンが、イフリートのメガ粒子砲が装甲のあちこちを掠める。
側から見れば、もうシュウジはどん詰まりの状況に陥っていた。スティグマ機動にもアキトの妨害にも、どちらにも完全に対処できず、ジリジリと消耗させられる。シュウジの額に一筋の、玉のような汗が垂れ…ついに、対応をし損じる。
『この為の三本目のスティグマ……アキト君今っ!!』
「そこだ…ッ!!」
『…ッ、不味…!!!!!!』
ゲルググの急襲に対応しようとしたシュウジが、二刀に構えていたビームサーベルのうち一本を
幸いだったのが、アキトがコロニーへの流れ弾を気遣って出力を落としていたことだろう。本来の威力で放たれればビーム刃のエネルギーの散乱が起こっていたかもしれない。…しかし、それでもジリ貧には変わらなかった。
「さあ………マチュとシイコの為に死ね、シュウジ!!!!!」
『私とアキトのために………死んで、ガンダム!!!!!』
前からイフリートのアイアンネイルが、背後からゲルググのビームサーベルが迫る。シュウジの脳内に“死”が浮かび………
『まだだ…まだ終わらんよと、ガンダムが言っている!!』
コクピット後ろの装置…αサイコミュが異音を立てて動き出す。シュウジから赤いオーラのようなものが放出され…ビーム刃が
『そこ…っ!!!』
「何、だっ、不味い!!!」
まるで一本の柱のように放出されるビームエネルギーに確実な異変を感じ、左腕のシールドで受け止めにかかるイフリート。しかし…一瞬でシールドが溶解する。
「嘘だ、ろ…っ!!!」
驚愕の表情を浮かべるアキト。巨大なビーム刃がシールドを突破し、イフリートの左腕諸共コクピットブロックを…!!
『アキト君、邪魔!!』
「っ、シイコさん…機体が!!」
寸での所で、スティグマを利用してシイコが割り込み、こちらも出力を最大まで上げたビームサーベルで競り合いを始めた。しかし無理が祟ったのか、ゲルググの左腕も関節部が砕け、千切れてしまっていた。
フィールドモーター駆動、そしてマグネットコーティングの最大の弱点…それは、機体関節部の耐久力の低下だった。摩擦のキャンセルによって消耗は少ないが、その分一気にかかる負荷に対して脆弱だったのだ。
『アキト君、今のうちにやって!!』
「わかっ、りました…!!!」
幸い、破損は左腕だけで済んでいる。シイコの指示に従い、アキトはアイアンネイルをガンダムの頭部へと振り翳し…!!!!
はた、と気がついた。………そろそろ、マチュが
「不味った……!!」
脳裏に走る閃光に従ってカメラを向ければ、そこには…こちらに放られたビームサーベルに向けてガトリングを構えるジークアクスの姿。
『お願い………上手くいって!!』
「シイコさん、離れろ!!!」
『何…ッ!!!!!』
放射された緑のビームが…ピンク色のビーム刃に直撃する。するとどうなるか…
『ああ…っ!!』
「ッ、ぐああっ!!」
こことは違う歴史を辿った世界では、とあるニュータイプの少年が使用するテクニック…ビームコンフューズと呼ばれるものだった。エネルギーの波がゲルググとイフリートを飲み込む。イフリートは吹き飛ばされ…シイコは体勢を崩された。
『あ……………』
胴体がガラ空きになったゲルググに、ガンダムはビームサーベルを構え…ゆっくりと、コクピットブロックに…………
ーーーーーー
光の渦の中にいる。刻が、見えている。
『…………あなたは…ガンダムのパイロット』
背後に浮かんでいたのは、青髪の少年だった。落ち着いた表情で、彼は私に言った。
『僕はなにも、いろんなものを欲しいわけじゃない。僕の望みはひとつだけ………。』
『……………そうなのね』
その言葉で…肩に掛かっていた重みがふっと取れたような気がした。彼に背を向けて、あの光の渦の中心へ、ゆっくりと進んで………
「行くな…!!!!」
手首を掴まれた。驚いて振り返ると、そこにはアキト君がいた。真っ赤な目を光らせ、必死の形相で私を引き留める。
「勝手に…勝手に満足して逝くつもりだろ!そんな事ではダメだ!」
『…………私はもういいの、アキト君』
「アンタが良くても、アンタが遺す者たちはどうなる!!!はっきり言って無責任だぞ!!」
必死に引っ張られる中で、彼の言葉を聴いて………気がついた。そうだ、私の願いも、たったひとつだけだった…。
『………坊や…』
しかし、気づいてももう遅い。私は彼に手を伸ばしたまま、光の渦へ……………
『早すぎです。もうちょっと遅れてきでくださいな、相棒』
「…………え?」
誰かに背中を押された気がした。とても懐かしい声がして、それで、すこし身体が前に進んで……
「よおし、引っ張れ妖精さん!!」
『仕方ないわね…!!!!!』
彼と、彼の背後から腕を伸ばす
ーーーーー
「さ、せぇ、る、かァァァァア!!!!!!!!」
赤いオーラを噴き出し、同じく血のように赤いスラスター光の帯を引いて…イフリートの腕からメガ粒子が照射される。それはコクピットに刺さる寸前だったビームサーベルを跳ね飛ばし、なんとか直撃するのを逸らした!
しかし、ジェネレーターは破損した。どのみち爆発に巻き込まれればパイロットも死ぬ…しかし!
「間に合えええええええ!!!!!」
明らかにカタログスペックを超えた運動速度で、イフリートがゲルググに接近し…アイアンネイルをコクピットブロックに
ーーーーー
「…………やった」
向こうで爆炎が上がった。MSが爆発する光がぼうっとシュウジを照らしている。シュウジは、あの機体の胸の辺りを狙った…つまり、頭を狙って失格にさせるのでなく…本当に殺すために戦ったのだ。
戦慄していた。シュウジが人を殺した事にもだが…シュウジのところへ行くまでの、果てしなく長く高い壁に。シュウジに追いつくためには…今回みたいに遠くから支援するのでなく。一緒に戦うには、あそこまでやらなければならないのだ。
MSの爆発の光球が消え…魔女の機体とアキトの機体の両方が姿を消していた。それと同時に勝利の信号弾が上がり、ふっと肩の力が抜けて、どっと汗をかいた。額の汗をぬぐい………ふと、気がつく。
「…アキは?」
爆発の光に呑まれたから、アキの機体の姿が見えない。いや、勝利の信号弾が上がったのだから…破壊されたんだろう。残骸は見えないが、爆発した機体のパーツはドロドロに溶けてしまっている。元がどんな機体だったか分かったものではない…あの中に、アキの機体もあるのだろう。
気がついてしまった。思い出してしまった。彼と過ごした…今となっては過去のことにすぎないが、その時は本当に楽しかったひとときを。
「………………アキも死んだの?」
アキが、もう一度死んだ。……私とシュウジで殺したのだ。
ーーーーー
「……………なんということだ」
モスク・ハンの眼前には、【Winner: POMERANIANS】の文字がありありと映し出されていた。しかし、言葉はそのせいで出たのではない。…イフリートがゲルググの爆散に
肩に重くのしかかる罪悪感に、モスクはため息を漏らし、目頭を押さえ………
「う、おお…っ!!」
スラスターの風に何人かが吹き飛びそうになる。下から上がってきたMS…イフリートEXが、重厚な音を立て、MSデッキの床に片膝立ちで着地した。その手に刺さった
「…アキト君!」
装甲のあちこちが赤熱化ないし溶解しているイフリートEXから飛び降りてきたアキトは、片手に何かを持っている。…MSのコクピットに備えられていることの多い、サバイバル用の
「妖精さん、いい隙間ある!?………了解!!」
奇妙な独り言を叫び、裏に回り込み…金属板の裂け目を見つけ、斧を振り下ろす!
「えい!えい!むんっ!!!!」
強化人間の膂力を持って振り下ろされる斧が、自らも傷つきながら、確かにその隙間を広げていく。十分に広がったら、斧を放り出し、隙間へと身体を滑り込ませ………少しして、何かを抱えて出てきた!!
「アキト君、怪我は………ッ、シイコ女史!!」
飛び出してきたアキトの腕には、シイコが抱かれていた。しかし無事とは言えず…ノーマルスーツのあちこちが焼け、おそらく火傷した皮膚に癒着しているだろう。それに………左腕の、
「ッ、とりあえず…ッ!!」
「アキト君、無事でよかった!てっきりシイコ女史と一緒に…!!」
驚愕と安堵で柄にもない大声をだすモスクに、アキトは首に巻いていたスカーフをシイコの左腕にきつく巻きつけ………
「いいから救急車ァア!!!!!」
MSデッキに、天は裂け、大地は震えんとする程の怒声がこだました。
ーーーーー
「……………なんとか、なるもんだ」
イズマコロニーの大病院の一室で…アキト・ミチナガは呟いた。彼が腰掛けている椅子のすぐ側には病床が鎮座していて…そこに呼吸器やら機械やらを繋がれたまま眠っているシイコ・スガイの姿もあった。
アキトやモスクが聞かされた事によれば、重症で命の危険もあったが、運び込まれたのが早かったのでなんとか一命を取り留めたらしい。病院側には“整備不良のMSの爆発に巻き込まれた”という程で通したからクラバのことがバレる心配もない。…しかし、彼女が取り返しのつかない状態になったのは変わらない。
「暫く目覚めないらしいのが幸いなのかも……いや、ただ先延ばしにするだけか…」
彼女の顔の半分を覆うように包帯が巻かれていた。火傷で酷くただれていたから、きっと跡が残ってしまう。一生残る傷跡を、彼女の随所に残してしまった。それに………最たるは、左腕だろう。
左腕は肘から先がなくなってしまっていた。反応炉の爆発でひしゃげた金属に巻き込まれたか…自分が助け出す時にひしゃげた金属に巻き込まれたか。どちらにせよ、もっと上手く助けられたら…という心持ちで、ぐらぐらしながらシイコの様子を見るアキト。
『……あなたはよくやった方よ。何もしなかったら死んでた』
「そうだね。…でも、それじゃあ満足できないなあ」
『命あっての物種と言うのよ?』
「そっか。……そうだな」
突然現れた妖精さんの言葉を受け止めて、額を押さえた後、頭をかりかりと搔き…
「これ…どーなってんの?」
『
「まじ?………もう使う予定はないけどなあ」
かつかつ、と、ひっかかりを覚えた部分を指で弾き、側から見れば奇妙な独り言を介して彼女と会話するアキト。彼は今回の件を受けて、ある一つの
「………たぶん、バチが当たったんだろうな。人を殺そうとするから」
アキトは…“反省”していた。対話やらを放り出して暴力に訴えようとするからダメだった。拒否されても根気強く行けば分かってもらえたかもしれない。だめだよ、人殺しは…と、アキトはつぶやく。
『…それしかなかったんじゃなくて?』
「それでもだよ。こう、不誠実だし。なんか取り返しのつかない事になっちゃったしさぁ…」
『諦めるの?』
妖精さんがベッドに腰掛けながら言った言葉に、少し間をおいて、アキトは返した。
「やれるならやるさ。でも……なんかこう、もうやれる事無いのかなあ、とも思ってる」
『……なら、これからどうするの?』
「暫くこのコロニーで生きて…もし定職が見つかればいいし、ダメなら他の場所に行こう」
『そう。…そう、なのね』
妖精さんはスッと顔を俯かせた後、窓の外を眺めて…アキトに向き直る。
『じゃあ、じゃあねアキト…
「え…なんだい、珍しいね」
改まった妖精さんの様子にアキトは少し戸惑うが、真摯に聞く姿勢に入った。妖精さんは無言で病室に備えられたテレビを指差す。そこには、こんなニュースが流れていた。
〈××日の午後22時頃、サイド6カミイグサコロニーのジオン軍営ニュータイプ研究所にて放火事件が発生。カミイグサコロニー警察当局の調べによると、犯人は連邦軍過激派支持のテロリストである可能性が…〉
「ひえ、物騒だね。……これがどうかした?」
『黙って聞いてて』
いつになく神妙な面持ちの妖精さんの語気の強い言葉に、アキトも少し身を引き締め…ニュースは続く。
〈また、同時にその場から、一年戦争時代の
『私は、それを
妖精さんの短い髪と赤い瞳と、端正な顔立ちがぐっと顰められた。なにか、憎悪に耐えるように…。
〈次のニュースです〉
「破壊したいって、何か不味いもんなの?」
『まだ聴いてて』
次のニュースが始まっても、妖精さんはそう言う。こっちも聴いとかなければいけないんだろ、と素直に受け入れ…集中する。
〈昨日、ジオン公国軍領サイド3、コア3にて、同所のジオン軍戦争犯罪人収容施設がテロリストにより襲撃されました。死傷者数は31人。また、収容施設の破損により、16名の囚人が脱獄しており、ジオン公国軍は全員を指名手配しています。それぞれの顔と名前は………
「おいおい、どーなってんのさジオン軍…脱獄犯がどうしたの?」
『この中に…
手配書と名前、特徴が読み上げられていく。誰も彼もピンとこないが……最後に読み上げられた名前に、妖精さんの顔つきが変わった。
クルスト・モーゼス。元ニュータイプ研究者、年齢は50…〉
『私は………こいつに
静かにそう呟いた妖精さんの瞳は…俺と同じように、真っ赤な憎悪に輝いていた。
ーーーーー
「…マチュ、大丈夫なのかな」
今日のクラバが終わった後…マチュの様子が変だった。まあ、たぶん…目の前で人が死んだからだろう。彼女はちゃんと学校に通っていたらしいし、人の死とは関わりが薄い。私でも未だに少し辛いのに、彼女なら…。
ここに来てから初めてできた同年代の友達のことを考えながら、トボトボと家まで歩く。彼女が思い詰めないといいが…そんな風に考えながら歩いたせいで、足下に注意が無くなっていた。
「あっ、とと…!!」
脚が何かに引っ掛かり、つんのめってたたらを踏む。なんとか転けはしなかったが、危なかった…不注意だった、これだから考え事をしていると、なんて考えながら、何につまづいたのか振り向いて確認すると……
「………ひ、人だ…」
そう。人…人が倒れている。革のロングコートに紙袋を持った少年だ。蹴ってしまったことに申し訳なく感じるが…難民街ではありふれたことだ。だってそうだろう、みんな自分のことで精一杯で、行き倒れなど誰も気にしない。こんな男の子がこんな風になってしまう事にやるせなさを感じつつも、私もこのまま通り過ぎるつもりだった。だけど。
「身なりが綺麗」
難民の、しかも行き倒れるような奴にしては身なりが整っている。髪の毛も汚れてはいるが、地面の泥だけ。皮脂でギトギトしているわけでもなく、風呂に入っていない人間の匂いもしない。それに、持っている紙袋もおそらく上等なものだ。それに…
「なにこれ…
彼の額から前に向かって2本、上に湾曲した突起。まるで薄いエメラルド色の
「この顔………あっ!!!」
思わず大声を出してしまう。この顔には見覚えがあった。そうだ、確かマチュの幼馴染?友達?だっけ…?あの時シュウジと一緒にいたけど、なんでか敵対しちゃったらしい子だ!
一気に気分が重くなる。ああ、この子も最期にはこんな風になってしまったんだな、と、せめて安らかに死んだことを祈る。少し目を瞑っていると…音がした。
「ご、ごぷっ、がっ」
「え…わ、わぁ…い、生きてるッ」
苦しそうにうずくまる衣擦れの音と、咳と共に血が吐き出される音に驚いて尻もちをついた。少年の端正な顔立ちが苦痛に歪む。ああ…とても嫌な事になった。顔見知りがこんな風になっているのに、放っておく事などできないじゃないか。
「と、とりあえずお家に………うっ、なんか重…っ!!」
抱えようとして失敗して、脚をずるずる引き摺るみたいになってしまった。大荷物が増えてしまって、運んでからからどうしようかとすぐさま考え出して…前から人が来た。
「ン〜?ヘヘヘッ、嬢ちゃんこんなとこで何し………ゲェッ!!!?!」
明らかにチンピラです、って見た目をしたおじさんは、下卑た表情を浮かべながら私に寄ってきて…抱えているものが何か気づいて、ギョッとした表情に切り替わる。
「お、お前、殺……!!!」
「え、ち、違う!私がやったんじゃ…!」
「ヒ、ヒイイッ!!さぁせんしたあっ!!」
抱えているこの子の顔まわりやコートの胸あたりが、彼の吐き出した血に塗れているものだから…私が死体を引き摺っていると誤解したのか、真っ青な顔で逃げ出していくチンピラに、私はこれからの前途多難を予感した。
「ワ…ワ、ワァ…ッ」
ちょっとだけ涙が滲んでしまったのは内緒である。
【To Be Continued…】
アキト:やったねアキ、角が生えたよ!何の何の何?
妖精さん:初めて彼女のやりたいことを明かした。シイコが傷ついてなんだかんだ複雑な気分だが、それはそれとしてアキトを独り占めできるようになってご満悦。
シイコ:助かりはしたし、怨嗟からは逃れられた。しかし全身大火傷and意識不明+左腕一部欠損。直に家族が見舞いに駆けつけてくるだろう。
イフリートEX:コクピットは無事だが、色んなところが焼き付いてしまった。実質再起不能だろう。しかし、シイコの命は救えたのだ。
シュウジ:悲しいね、アキト…
マチュ:そうだマチュ、お前とシュウジで殺した。
ニャアン:なんか男の子ひろった。まだちいかわだった頃のニャアン。
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いかがでしたか?
よければ感想・評価よろぴくおねげえします。
本放送はとんでもない事になってますが……ではまた次回。