了承してくれた方のみお読みください。読後の誹謗中傷は受け付けません。
それでは、Dr.STONE――石世界の錬金術師――の開幕です!!!
「千空、最期に伝えておきたい事がある」
「……一応言っとくが遺言なんて聞かねぇぞ」
「もちろん違うさ」
科学王国と司帝国の戦争が終結し、その過程で致命傷を負った獅子王司は、滝のそばの洞窟で友人に声をかけた。
「俺が復活させた人間の中に、
「あ゛ー、そりゃあ俺みてぇに科学大好き少年がいる可能性は低くはねぇからなぁ」
「だが、君のように文明を取り戻せると思える程に賢い人間はいなかった」
そいつらはどうした?
千空がそう訪ねる前に放たれた言葉が、千空の目を見開かせた。
「――彼を除いては」
「いたのか!!!?」
驚きで固まる千空を傍目に、司の脳はあの日の記憶を再生させる。
――司は若者のみを復活させる人類選抜を行っていた。
若く、聡く、強い若者を復活させ、老耄し、痴呆し、自己中心的な考えをもつ老害は石像の時点で破壊し殺していた。
その日も、とある若者の像――食事前だったのか、両手を合わせた状態で固まっていた――を復活液で復活させた。
ビシィ、ビシビシビシィッッツ!!!!
大抵、復活者の反応は二つに分かれる。
其の一、驚愕に目を見開くもの。
其の二、混乱に狼狽えるもの。
バキィンッツ!!!!
だが彼の反応は違うものだった。
――其の三、冷静に周囲の状況を把握するもの。
「(うん、彼は幹部クラスになれるね)」
「(ちゃんとしてますね。他と比べて脳が溶けてない)」
彼は武器を持つ司と氷月に対して冷静に見つめ、眼球だけを一瞬動かし周囲の状況を把握した。
「今は西暦5739年。我々は3700年以上も石化していた」
「……ひとまず、起こしてくれた事に関して礼を言う。ありがとうございました」
彼はきっちりと腰を曲げて頭を下げた。
「……んで、私を目覚めさせた理由は? あ、待って。その前に服とかある?」
「もちろん、詳しく話そう。あと、俺は獅子王司。司でいいよ」
「私は氷月です」
「よろしく。私の名前はボロスだ。
180を越える長身、鍛え上げられた筋肉、満月を思わせるようなブルーな瞳。
理知的な光を讃えるその瞳に、司と氷月は一瞬目を合わせた。
「(どう思う?)」
「(切れ者である事は確かのようです。もし我々を裏切るようであれば、直ぐに対処した方が良さそうですね)」
二人の懸念は、当たる事になった。
どうやって今の年月日を知ったのかというボロスの問いに対し、事の顛末も含めて正直に話した結果、ボロスの纏う雰囲気が変わった。それは殺気にも似た、怒気。
「認めらんねぇーな。司、氷月。私だって科学者は嫌いだが科学は好きだ。その科学っつう道具をどう使うかは使用者次第だろ。車で人を轢いても裁かれんのは車の製作者じゃない。包丁で人を殺しても、捕まるのは包丁を打った人じゃない」
思考するときの癖か、顔の前で両手の五指のみを合わせたボロスに対し、司が首肯する。
「そうだね。でも科学は誰でも使えるものだ。誰でも使えるからこそ、悪用しないように俺の信頼がおける人間のみに使用を許可する」
「………」
「ここは
熱を持つ司の言葉にのせるように、氷月も口を開く。
「世界を制して人類を選別しましょう。ちゃんとしない人間など復活させるに値しません」
途端、ゾアッと背筋を駆け上がる寒気、怖気。
目の前の人物から発せられる殺気、警告。
司と氷月は刹那に戦闘態勢を整えた―――瞬間。
司と氷月の足元が崩れた。
「その思考を改めない限り、私達は互いに馴れ合えない。石化から解いてくれた礼に、私は何もせずここを去ろう」
足元が崩れ、落下するまでの一瞬が引き伸ばされる。
「(今のは何だ!? 緑の妙な紋様が見えた瞬間、地面が崩れた!!)」
「(これは科学!? 私達が知らない科学技術なのですか!!? 一体どうやって!!?)」
空を飛べぬヒトは地に落ちる。
迷宮に閉じ込められていたイカロスのように、司と氷月は空を見上げる。
ただし
「ボロス!! 君は科学者だったのか!!?」
ポッカリと空いた天の穴に、影が射す。
「――………最後に訂正だけしておく。私は科学者ではない」
落とし穴の底から、ボロスを見上げる。
ボロスは太陽を背にして、地の底にいる司と氷月に告げた。
「
「錬金術師?」
「うん。彼は、ボロスは確かにそう言った」
「クククッ、唆るじゃねぇか。そのボロスとかいう錬金術師に会いたくなったわ。是非とも仲間にゲットしねぇとなぁ」
錬金術は科学の前身。
石をパンに。ワインを水に。卑金属を金に変える
だがそれらは科学の発展に従い否定され、錬金術は創作の中の存在となった。
特に永遠の命を与える賢者の石に関しては。
真偽はどうであれ、自身を錬金術師と名乗る以上、一定以上の科学知識を持っていることは確かだ。
「まずはどこにいるか突き止めねぇとなぁ」
「ボロスは奈良にいるらしい。律儀に門番に伝えたそうだ」
「知ってんのかよ。ククッ、ありがてぇ情報だ。早速奈良に向けて出発しよう」
交渉役のゲンはともかく、カセキとコハクも連れた方がいいかと思考を回す千空の鼓膜を、自身の名前を呼ぶ司の声が震わせた。
「気をつけて」
「たりめぇだろ。そこでおねんねして待ってろ司」
わかっている。
司の死へのカウントダウンは始まっている。即効でボロスを連れてこなければ死神は止められない。
もし彼が賢者の石を持っているならば、司の死は止められる。永遠の命を齎せるならば、人を治す力だってあるはずだ。
「(いや、違うだろ。たらればは科学じゃねぇ。得られた結果から考察し、過程を変更して自分の望むような結果に導くのが科学だ。たとえ賢者の石を持ってなくとも、仲間にするのが100億%大事な事だ。そこから司を救う一手を考えればいい)」
科学王国の
集った仲間たちに『錬金術師を仲間にするべく奈良に行く』と言えば、反応は3つに分かれた。
グループ1 錬金術師なんているわけないじゃーんを主とする派閥(千空壊れちゃった説を説く人も内包)
主にゲンや羽京、ニッキー、陽などの現代人組。
グループ2 錬金術師ってなに?を主とする派閥
主に石神村の連中。
グループ3 千空が言ってんだからいるだろ派閥(別名思考停止グループ)
大樹と杠の2人のみ。
「司のタイムリミットまで時間がねぇ。即刻出発するぞ。交渉役のゲン、エンジニアのカセキ、近接戦闘員のコハクと遠戦戦闘員羽京、そして科学仲間のクロム。以上、俺を含めた6人で出発する。ほら急げよ!!」
「ヒィ〜、千空ちゃんってば、ホント忙しないねぇ〜」
「あはは、そうだね。でも僕はちょっと楽しみだ」
「おうよ! 錬金術とか言う知らねー技、この目で見てみてぇ!!!」
道中に必要な食料に加えて、必要になりそうな科学薬品も戦車からスケールダウンさせたスチームゴリラ号に搭載し、いざ出発。
「目指すは奈良県!! そこに俺らが求める錬金術師がいる!!!」
―――とまあ、威勢よく飛び出ていったのも束の間。
順調だった旅路は石神村より西側まで来たところで終わった。
先に違和感を覚えたのは羽京だった。
「さっきから聞こえてたんだけど、滝の音がするんだ」
「ああ゛ー……滝の音? ここから先に滝なんて無かっただろ」
「うん。だから僕の勘違いと思ってたんだけど……」
羽京の耳は、正しかった。
「……地形が、変わってやがる」
「おう、こっち側は一帯全部ボッコボコだからよ、探索すんのが難しいんだわ」
静岡県静岡市付近より西側。
そこには世界三大瀑布もかくやという程の大瀑布があった。
「ククク、そうか。良く考えりゃたりめーだ。周期はたったの数百年だぞ」
ナイアガラにも引けを取らない大瀑布を生み出したのは、日本が世界に誇る最大の山―――富士山の大噴火。
「一発でも地形変わるレベルの大惨事だっつうのによ、俺らが石化中に少なくとも4〜5回、多けりゃ10回以上ぶっ放してるわけだ!!」
千空が刹那の放心と共に自身へ呆れのため息を漏らしたところで、クロムから声がかかった。
「どうする千空? このままじゃ進めねぇぞ」
「ああ゛いまソッコーで考えてる」
「(陸路はキツイ。エンジンもタイヤもこの悪路に耐えきれるような造りをしてねぇ。無理矢理直しながら突破するとしても、日数がかかる。司のタイムリミットまで間に合わねぇ。水路はこの水量じゃ舟を作っても流される。となると、残るは空路)」
千空の脳裏に過るのは、飛行機、気球、パラグライダー、ハンググライダー。
飛行機は現状どうあがいても無理。かといって気球も作れはするが時間が無い。
パラグライダーは気球同様布がネック。
「(だが、残ったハンググライダーも、ちーと厳しいな。風を読めなければ墜落。練習もできねぇ。ぶっつけ本番でこの瀑布を端から端まで全員が飛ばなきゃならねぇんだ。そんな奇跡起こるわけねぇ――どうする?)」
たらりと冷や汗が頬を走る。
ハンググライダーだけなら、ワンチャンいける。だがそれはコハクが運転する場合だ。体力ミジンコの千空と運動能力が優れている訳では無いクロムでは飛びきれない。他のゲンや羽京、カセキだってそうだ。
ワンチャンかけてコハクに行かせることもできない。練習さえさせずに飛べだなんて、新手の自殺教唆だ。
それに科学の世界に神は不在。祈ったところで確実に行けるなんて思い上がりも甚だしい。
「(考えろ。他になんの手がある?)」
思考のトライ&エラー、脳内シュミレーションの是正。そんな思考の渦に飲まれる千空を掬い上げたのは、コハクだった。
「千空、あそこを見てみろ」
「……見えないんだが?」
「俺もジーマーで見えないよ。コハクちゃんの
「む、仕方あるまい。私の目ではあそこに家があるのが見えるぞ」
「家? こんな場所にか?」
「ホレ千空、望遠鏡じゃ」
カセキが取り出してきた望遠鏡を覗き、コハクが指差した方角に向ければ、確かに家らしきものがあった。
「クロム、あそこに住んでるのは石神村の誰かか?」
「いや、知らねぇな。それに、どうやってあそこまで行ったんだよ」
「家もどうやって建てたのかなぁ。まさか流木じゃああるまいしね〜」
「違うぞゲン、白い色から察するにあれは木じゃない」
「もしかしてモルタルか!!?」
自前の驚異の
ガン開きしたコハクの目が捉えたのは、かつて千空も使っていたモルタルだった。
「クククッ、やるじゃねーかコハク!!! モルタルを使ってる以上、あそこに住んでるのが錬金術師だ!!!」
「モルタルって決まったわけじゃないけどね〜。でも俺も千空ちゃんに賛成だね。あそこで生活するなんて、生半可な人間じゃできないでしょ」
「うん。僕も賛成。でもどうして奈良じゃなくてここにいるんだろうね」
「そんなもん、直接本人に訊きゃ良いだろ」
目的地変更。奈良から大瀑布。
これによって時間は大幅に確保でき、クラフトに費やせる時間が伸びた。
「よし、これから俺たちはハンググライダーを作る!! 時間はできたが猶予はそれ程無ぇんだ。さっさと取り掛かるぞ!!!」
「おう、ところでハンググライダーってなんだ?」
「人が空を翔ぶ為に作った人工の羽だ」
「「「空を翔ぶぅううう!!!!?」」」
顎を落とさんばかりに驚くクロム、カセキ、コハクに対し、千空は地面に筆代わりの枝を突き刺した。
「これが空を翔ぶための遥かなるロードマップだ!!」
「今までで1番ダントツで難しそうね!! 燃えちゃうわいワシ……!!!」
ハンググライダー作成ロードマップ。
①羽の作成=紙+カーボン樹脂
②骨組み=竹+鉄
以上
「短っ!!!!」
「アホほどお手軽だろ。車の屋根に飛行キット一式載せられっからな……それはともかく、場合によっては一度石神村に戻る。ハンググライダーの練習をしなきゃいけねぇからな。コハク、お前が操縦するんだ。俺らの中で1番可能性があるのはテメーだけだ」
「ハッ! 任せろ!! 何であろうとこなしてみせる!!!」
設計図は千空。
骨組みはカセキ。
その間、カーボン樹脂の作成はクロム、ゲン、羽京が担当。
設計から組み立てまで、僅か1日の出来事で、出来上がったハンググライダーを手にしたコハクは、興奮を露わに空へと翔び上がる。
「クククッ、8世紀の人間が既に試してやがるんだ。現代の人間様ができねー訳がねぇ。――そうだろ? コハク」
空を舞うコハクを追って、クロムとカセキが興奮する声を聞きながら、千空は眩しそうに目を細めたのだった。
ボロスは愚かな人間が嫌いです。この愚かなというのは、人間のくせに学ぼうとせず、他者を思う心を持たない人間のことを示します。
途中で飽きてペンを投げないよう頑張ります。感想頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします。