あと名前を変えました。
科学王国は大きく3つのチームに分かれた。
1つはアラシャに残ってロケットエンジンを造るチーム。
もう1つは世界を旅して素材を集めるチーム。
最後の1つはアメリカの人類復興チーム。
科学の二代巨塔である千空とゼノは二手に分かれ、日々ラボに籠もって工作をしていた。
途中、インドで復活させた龍水の実の兄にして数学の寵児、SAIを仲間に加えレイと共にプログラミングの一員となった。
世界中を復活させ、ロケットを組み立てる。
世界規模のマンパワーで科学レベルは現代のレベルまで手が届きかけてきた。
ボロスの多大な助力によりインターネットが敷設され、主要国や都市同士に通信ケーブルが繋がれた。これによって情報は瞬く間に行き交うようになり、結果科学は更に加速する。
復活させた世界の科学者の前で演説をするのは――もちろん遠隔だが――千空とゼノだ。2人が矢面に立ち、これまでの出来事を語り、科学を牽引する。
錬金術の存在についても解禁しているが、3度目の『錬金術など眉唾物』という言葉を聞いてボロスは堪忍袋の緒が切れ、リモート会議には参加しなくなった。そして司会者であったゲンは、ボロスの殺意と敵意と害意を全身に浴びて、次の日寝込んだ。
ロケット本体の作製とエンジンの作製が終わり、合体と打ち上げは日本で行われる事になり、主要なメンバー達は石神村にて久方振りの交流を楽しんでいた。
そして夜からは月面での行動について会議が開かれた。
「宇宙に行くのは、俺とゼノとボロス。この3人は確定だ。だがゼノは管制塔に残ってロケットとやり取りをする必要がある」
「無事ロケットが軌道に乗ったあと、ボロスがゼノと共に宇宙に行き、合流する」
「私は宇宙空間でも宇宙服無しで生存できるから、石化させたゼノを抱えて宇宙へ飛ぶだけだ」
そして付け加えるように、千空がレイを指差した。
「黎、テメーにしかできねぇスペシャルミッションを任せたい」
「はい! お任せください!!」
勢いの良い返事を返したレイに頷きを返したゼノは、幼なじみのスタンリーに目を向けた。
「最後に、スタン。君にはレイと共に任務をこなしてほしい」
「オーケー、任せな」
その他細々とした報告や意見交換を行ったのち、会議は終了した。
ロケットとエンジンの設計図は完璧だ。
だが組み立てにおけるヒューマンエラーまでは取り除けない。数度ロケットが爆発し、そのたびにどこが間違っていたのか、どこでエラーを起こしたのか、爆散した鉄材を掻き集めて額を合わせる日々。
打ち上げた監視衛星より、月面に奇妙な建築物があるのは確認済み。
更に、月面での戦闘を鑑みて、復活時計――リザレクション・ウォッチの作製と、ネットガングレネードの製造は着々と進んでいる。
加えて、ボロス・フラメル主導の秘密工作も進行中。
ロケット製造から数年、ついにその日は訪れた。
千空、龍水、コハクを載せたロケットが、轟音を立ててその巨体を空へ空へと押し退ける。
皆の期待と祈りを乗せて、空へ、宇宙へ、月へと目指す。
そしてついに、人の知恵と科学で3700年振りに人類は宇宙へと飛び出した。
「千空達が地球を飛び出して3日、そろそろ行くか」
賢者の石はもはや不要。ボロスは両手を合わせ、宇宙服を纏ったゼノの肩に触れた。
「後は任せたよ、皆」
石化しながらクロムやスイカ、チェルシー達に伝えたゼノは穏やかな笑みを浮かべながら石となった。
「じゃあ、行ってくる」
「おう行ってこい!!」
「頑張ってなんだよ!!」
石化したゼノを担ぎ、皆の声援を背中に受けながらボロスは宙を舞い、そしてあっという間に空へと消えていった。
地球と宇宙の境目であるカーマラインにて、肉体の慣らしを終えたボロスは、秒速2000キロで航空を始めた。
理論上、ボロスは光速で動けるが、宇宙空間におけるデブリや宇宙服の影響を考え、この速度を採用した。
そして地球からおよそ1時間半でロケットに追いついた。
「よう」
「おう」
ロケットの中に入り軽く挨拶を交わした後、ボロスはゼノの石化を解いた。
最終的な打ち合わせを済ませれば、もはや月は目と鼻の先。
「予定通り、司令船には俺が残る」
「あ゛ぁ、任せた」
腕を組み、不敵な笑みを浮かべた龍水に見送られ、千空、ゼノ、コハク、そしてボロスは月面探査船へと乗り込み本船から切離された。
かつて月を踏んだ偉大なる宇宙飛行士はこう言った。
『人間にとっては小さな一歩前だが、人類にとっては偉大な一歩だ』
なら、石の世界から十数年で月まで辿り着いた偉大なる科学者は――
「唆るぜこれは……!!!」
――目指すはタウルス・リットロウ渓谷。
宇宙車を走らせて数十分、目的地は火を見るよりも明らかだった。
「……デカいな」
「周りに浮かんでるのは賢者の石か?」
距離感がうまく掴めず、どれほどの大きさか把握できない。そしてその建築物が月面から浮いているのが、何よりもニコラ・フラメルの存在を示していた。
緊張を高めたまま近付くと、その建築物――人工衛星がゆっくりと明滅し、赤と緑の光を一際大きく放ったかと思えば、壁が引っ込みそこから黒いシルエットが身を乗り出した。
「よう……テメェがニコラ・フラメルか? 会いたかったぜ」
千空達を見送って数分経った頃。
たった1人しかいない司令船で龍水は奇妙な感覚に襲われた。
視線……!?
「誰だ!!?」
『不純物が混ざったか』
辺りを見渡しても姿は見えず。
しかし声だけは龍水の鼓膜を震わせていた。
『排除する』
「くそっ!」
一番手っ取り早いのが司令船の破壊。それすら済ませてしまえば、たとえ生きていようと放置すればそのうち死ぬ。
龍水は慌ただしく扉を開き、宇宙空間に身を投げ出した。
そして見えた。
「そうかお前が……! お前がニコラ・フラメルだったのか…! ずっと俺たちの側に――」
『無駄な足掻きを』
どういう科学か、グシャリと潰された司令船から月面へと降り立ち。龍水は睥睨する。
「ハッ、1秒粘れば一歩! 2秒粘れば二歩!! 千空たちは科学の未来へと進むだろう」
もはや自身の死は確実。
だが個人の死がチームの敗北を示す訳じゃない。
「忘れたのか? 科学の神髄は未来へとただ地道に楔を打ち続けることだ。違うか!!?」
『負け犬はよく吠える』
「道半ばで誰が倒れようとも最後に勝つのは俺たちだ!!!」
『力を伴わない理想は妄想に等しい。それ程夢を見たければ、永遠に眠らせてやろう』
あとは任せた。
龍水は挑発的な笑みを浮かべたまま、動かなくなった。
核兵器宇宙駄目らしい……どうしよう。
多分あと2,3話で完結かと思います。